ハゲタカ (映画)
『ハゲタカ』は、2009年(平成21年)に公開された日本映画[2]。
ハゲタカ | |
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監督 | 大友啓史 |
脚本 | 林宏司 |
製作 | 富山省吾 |
製作総指揮 |
諏訪部章夫 市川南 |
出演者 |
大森南朋 玉山鉄二 栗山千明 高良健吾 松田龍平 柴田恭兵 |
音楽 | 佐藤直紀 |
主題歌 | 『ROAD TO REBIRTH』 |
撮影 | 清久素延 |
編集 | 大庭弘之 |
製作会社 | 「ハゲタカ」製作委員会 |
配給 | 東宝 |
公開 |
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上映時間 | 134分 |
製作国 |
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言語 | 日本語 |
興行収入 | 8.3億円[1] |
2007年(平成19年)放送のNHK土曜ドラマ『ハゲタカ』の映画化で、作家・真山仁による一連の経済小説『ハゲタカ』シリーズの『ハゲタカ』、『ハゲタカII』(『バイアウト』改題)、『レッドゾーン』を原作に、テレビドラマの続編としてドラマの4年後を舞台に製作された[3]。
製作編集
NHK土曜ドラマ『ハゲタカ』が国内外で高い評価を得た[注 1]ことから、東宝などの製作委員会(後述の製作委員会参照)により映画化されることとなった。
ドラマから4年後が舞台で、出演者・スタッフともテレビドラマをほぼ踏襲し、原作者・真山仁が執筆した続編『レッドゾーン』をベースにテレビ版の後日談となる予定で、2009年5月公開を目指し[4]、2009年1月15日にクランクインした。
しかし、リーマン・ショックが発生し、当初予定されていた脚本(日本に進出してくる中国系ファンドを日本の金融界がどう迎え撃つかという構想だった)が、全く時流に合わない物となり、制作サイドは、時系列をテレビ版と実際の時間との中間に位置する話として、完成していた脚本をそのまま採用するか、あるいは、現在の時間軸に合わせた物にするかの決断を迫られることとなった。制作サイドは検討の結果、「現在の時間軸に合わせた物語にするために脚本を大幅に書き換え(8割程度を書き換えたと言われる)[5]、配役やその設定自体を見直す」という大胆な決断を下した。このため、当初の3月撮影終了、5月公開という予定は不可能となり、公開日は正式に6月6日と発表し直された。
ストーリー編集
かつて、外資系投資ファンドを率いて日本の企業を次々と買い叩き、一世を風靡した「ハゲタカ」こと天才ファンドマネージャー・鷲津政彦(大森南朋)。彼は自ら「鷲津ファンド」を立ち上げ三葉銀行時代の上司で企業再生家の芝野健夫(柴田恭兵)とともにあけぼの光学を立ち上げた後も、着々と企業買収を繰り返してはいたものの、「ライオンソース事件」で一向に変わらない日本社会に嫌気がさし、最近は海外のリゾート地で隠遁に近い生活を送っていた。一方、あけぼの光学を立ち上げた芝野は、日本を代表する自動車企業「アカマ自動車」に役員として迎えられ、企業再生の道を模索していた。
そんな時、芝野は海外を中心としたインターネットでアカマ自動車の悪評が流されているのに気が付き、誰かがアカマを狙っている、と考え鷲津の元を訪れ助けを求める。しかし、鷲津はこれを無下に断った。
一方、中国政府系ファンド・CLICの意向を受けたブルー・ウォール・パートナーズの劉一華(玉山鉄二)はアカマ自動車のTOBに乗り出すことを宣言する。そこには中国政府が自国へと技術を取り込みたい思惑があったのだが、劉はそれを知る由もない。一方、鷲津は劉の記者会見を知り、MGS銀行頭取・飯島(中尾彬)とアカマ自動車社長・古谷(遠藤憲一)の要請を受けホワイトナイトとしてアカマ買収に立ち向かうことを決意する。
こうして「ハゲタカ」鷲津と「赤いハゲタカ」劉のアカマをめぐる攻防戦の幕が切って落とされた。しかし国家規模の巨額資本をバックに攻勢を仕掛ける劉に対し、鷲津はただ圧倒され成すすべもない。ついにはアカマが行っていた労働法違反を劉に突き止められ脅された古谷によって、アカマはブルー・ウォールとの提携を決定。鷲津はホワイトナイトの座から降ろされてしまう。
そこで鷲津はドバイにてオイルマネーを調達、かつては敵対関係であった西乃屋旅館社長・西野(松田龍平)の協力を得ると、アカマのファイナンシャル・アドバイザーを務めるアメリカの大手投資銀行「スタンリー・ブラザーズ」に買収提案を行う。それは、劉やCLIC、更には世界中のマーケットを巻き込んだ、いわば「資本主義の破壊」への壮絶なるシナリオの幕開けでしかなかった。
登場人物編集
主要人物編集
- 鷲津政彦
- 演 - 大森南朋
- 鷲津ファンド代表で、「ハゲタカ」の異名を持つ天才ファンドマネージャー。あけぼの光学を立ち上げた後も引き続き企業買収を続けていたが、旧態依然として変わらない日本経済に愛想を尽かして国外で暮らしており、国内ではすでに「過去の人」扱いされている(死んだとのうわさも立った)。芝野らの要請を受け、劉と対決することに。
- 劉一華
- 演 - 玉山鉄二
- ブルー・ウォール・パートナーズ代表。中国の寒村出身で、残留日本人孤児三世。ホライズン社で「使い走り」をしていた際に鷲津と出会っている。幼少の頃に農作業中に「アカマ自動車」製の赤い車を見たのをきっかけにアカマ自動車に強い想い入れがある。しかし何故、田舎町で日本車を見たか本人も謎である。
- 三島由香
- 演 - 栗山千明
- 東洋テレビのニュースキャスター。34歳となった現在でも現場取材をこなす。
- 守山翔
- 演 - 高良健吾
- アカマ自動車派遣工。劉にそそのかされ、アカマ自動車への糾弾デモを行う。
- 古谷隆史
- 演 - 遠藤憲一
- アカマ自動車代表取締役社長。
- 西野治
- 演 - 松田龍平
- 西乃屋旅館社長。IT社長時代の人脈を利用し、鷲津の策に協力する。
- 飯島亮介
- 演 - 中尾彬
- アカマ自動車の筆頭株主であるMGS銀行頭取。
- 芝野健夫
- 演 - 柴田恭兵
- アカマ自動車執行役員。三葉銀行出身で、三葉時代は鷲津の上司であった。その後三葉を退職して企業再生家に転身し、鷲津と組んであけぼの光学を立ち上げ経営を軌道に乗せると、その実績を評価されアカマ自動車に役員として迎えられた。
その他の人物編集
- 村田丈志
- 演 - 嶋田久作
- 鷲津ファンド社員。調査担当。
- 中延五郎
- 演 - 志賀廣太郎
- 鷲津ファンド社員。不動産取引のエキスパート。
- 野中裕二
- 演 - 小市慢太郎
- 東洋テレビ報道局プロデューサー。
- デイビッド・ブラックマン
- 演 - グレゴリー・ペーカー
- アメリカの大手投資銀行「スタンリー・ブラザース」の社員で、アカマ自動車ファイナンシャル・アドバイザー。
- ジム・ブラウン
- 演 - クリストファー・ペレグリニ
- ブルー・ウォール・パートナーズ社員。
- 柴崎大輔
- 演 - 脇崎智史
- 東洋テレビ報道局ディレクター。
- 青木
- 演 - 浜田晃
- アカマ自動車の重役。
- アンナ
- 演 - エマ・ハワード
- 鷲津ファンド社員。鷲津の秘書。
- 若槻猛
- 演 - 野村修一
- 鷲津ファンド社員。
- 李克仁
- 演 - 貴島功一朗
- ブルー・ウォール・パートナーズ社員。
- 孫
- 演 - 明日嘉
- ブルー・ウォール・パートナーズ社員。
- 張健祥
- 演 - 中村譲
- ブルー・ウォール・パートナーズ社員。
- 坂本
- 演 - 津田健次郎
- スタンリー・ブラザース証券日本支社・社員。
- 男
- 演 - 滝藤賢一
- 公園で劉一華を襲う男。
※最終的な編集段階での脚本の大幅な変更に伴い、石丸謙二郎(裁判長役)などエンドロールに名前だけが登場するが、出演シーンはカットされたキャストも存在する。
スタッフ編集
- 監督 - 大友啓史
- 脚本 - 林宏司
- 原作 - 真山仁(講談社文庫)
- 製作 - 富山省吾
- 製作統括 - 岡田円治、小野直路、島谷能成、入江祥雄、安永義郎、喜多埜裕明、石井博之、宮路敬久、大宮敏靖、大月昇、宮本章一
- エグゼクティブ・プロデューサー - 諏訪部章夫、市川南
- 企画・プロデューサー - 訓覇圭、遠藤学
- 製作プロデューサー - 前田光治
- キャスティングプロデューサー - 城戸史朗
- プロダクション統括 - 金澤清美
- 撮影 - 清久素延
- 美術 - 花谷秀文
- 録音 - 湯脇房雄
- 照明 - 川辺隆之
- 編集 - 大庭弘之
- 助監督 - 會田望
- 音楽 - 佐藤直紀
- 音楽プロデューサー - 岩瀬政雄
- 音楽スーパーバイザー - 島津楽貴
- 経済監修 - 森生明
- 経済考証 - 勝又幹英
- 金融考証 - 鎌田伸尚
- 法律考証 - 南賢一
- 製作委員会 - NHKエンタープライズ、東宝、講談社、博報堂DYメディアパートナーズ、ヤフー・ジャパン、TOKYO FM、日本出版販売、TSUTAYAグループ、読売新聞、ニッポン放送
- 製作プロダクション - 東宝映画
関連商品編集
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映画の公開に合わせ、2009年5月にドラマのノベライズ本が「TV版 ハゲタカ」として主婦と生活社から上下2巻で発売された。
受賞歴編集
- 第33回日本アカデミー賞
- 優秀主演男優賞(大森南朋)
- 優秀助演男優賞(玉山鉄二)
テレビ放送編集
『映画「ハゲタカ」 -スペシャル・エディション-』と題し、新たに編集を加えた特別編集版を、何年も映画番組の放送が無かったNHK総合テレビにて2010年8月7日の21時から22時48分に「スペシャル・エディション」が放送。
スコープサイズの画面左右をトリミングしたハイビジョンサイズで、尺も約106分と短くなっている。番組冒頭でテレビシリーズのあらすじ紹介が行われた。
劇中に登場する「アカマGT」について編集
アカマ自動車の社長室には、初代から3代目までのアカマGTのミニチュアが飾られている。初代はS310型ダットサン・フェアレディ(1962年 - 1970年)に似せたイメージになっており、2代目はS30型日産・フェアレディZ(1969-1978年)に大型のフロントグリルを付けたようなモデルになっている。このうち初代と3代目は茨城県鉾田市の有限会社イバフルによって実車が製作された。初代はハードトップを装着したNA型ユーノス・ロードスターベースの「ダックスガーデン (DUCKS-GARDEN)・ロードスター311タイプ3」に新しくデザインされたフロントグリルが装着された。3代目にはマツダ・RX-8ベースの「ダックスガーデン・RX-8 ストラーレ (Strale)」が使用された。
脚注編集
注釈編集
出典編集
- ^ 「2009年 日本映画・外国映画 業界総決算 経営/製作/配給/興行のすべて」『キネマ旬報』2010年(平成22年)2月下旬号、キネマ旬報社、2010年、 173頁。
- ^ ““ハゲタカ”大森南朋、セリフの多さに悲鳴 柴田恭兵は「あぶない刑事」気分で演技?”. cinemacafe.net (2009年5月13日). 2018年6月12日閲覧。
- ^ 永田哲也 (2009年6月5日). “NHKエンタープライズが『ハゲタカ』を映画化した本当の理由”. 日経トレンディネット (日経BP社) 2018年12月4日閲覧。
- ^ 読売新聞2008年11月15日
- ^ “金融危機で脚本の8割改変!『ハゲタカ』撮影開始に大森南朋、玉鉄、柴田恭兵ら集結”. cinemacafe.net (2009年1月17日). 2018年6月12日閲覧。