ボーン・スプレマシー
『ボーン・スプレマシー』(英: The Bourne Supremacy)は、2004年公開のアメリカ合衆国のサスペンス・アクション映画。『ボーン・アイデンティティー』の続編である。監督はポール・グリーングラス、出演はマット・デイモン、ジョアン・アレンなど。原題はロバート・ラドラムのベストセラーとなったスパイ・スリラー小説『殺戮のオデッセイ』の原題と同じであるが、ストーリーはまったく異なり映画オリジナルである。恋人マリーとの隠れ家を見つけられて追われたボーンと、作戦を妨害されてエージェントを失ったCIAの進む先が重なっていく。
ボーン・スプレマシー | |
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The Bourne Supremacy | |
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監督 | ポール・グリーングラス |
脚本 |
トニー・ギルロイ ブライアン・ヘルゲランド |
原作 |
ロバート・ラドラム 『殺戮のオデッセイ』 |
製作 |
パトリック・クローリー フランク・マーシャル ポール・L・サンドバーグ |
製作総指揮 |
ダグ・リーマン マット・ジャクソン ヘンリー・モリソン ティエリー・ポトク ジェフリー・M・ワイナー |
出演者 | マット・デイモン |
音楽 | ジョン・パウエル |
主題歌 | モービー「Extreme Ways」 |
撮影 | オリヴァー・ウッド |
編集 |
リチャード・ピアソン クリストファー・ラウズ |
製作会社 |
ケネディ/マーシャル ラドラム・エンターテインメント |
配給 |
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公開 |
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上映時間 | 108分 |
製作国 |
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言語 | 英語 |
製作費 | $75,000,000[1] |
興行収入 |
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前作 | ボーン・アイデンティティー |
次作 | ボーン・アルティメイタム |
続編は『ボーン・アルティメイタム』。
北アメリカでは2004年7月15日にプレミア上映されたのち、7月23日に3,165館で公開され、週末興行成績で初登場1位になり、トップ10内には7週間いた。日本では翌2005年2月11日に日劇1系列ほかで公開され、全国週末興行成績では初登場3位となり、同日封切り作品のなかではトップの成績となった。北アメリカ内での興行収入は1億7千万ドルを超え、2004年公開作品中8位である。
ストーリー
ジェイソン・ボーンとマリー・クロイツは、インドのゴアで暮らしている。記憶喪失から回復しきっていないボーンは、頻繁に見る悪夢の内容をノートに記録している。
ベルリンでは、CIA捜査官パメラ・ランディの下で働くエージェントが、7年前の2,000万ドルの盗難に関する文書「ネスキー・ファイル」を入手するため、ロシア人の情報屋と取引しようとする。しかし、オリガルヒのユーリ・グレトコフの手先であるロシア連邦保安局員のキリルによって、この取引は邪魔される。彼はエージェントと情報屋を殺害してファイルと金を盗み、ボーンの指紋を残して彼に罪を着せる。
ボーンの指紋を見つけたランディは、上司のウォード・アボットにかつてボーンが参画していたトレッドストーン作戦について尋ねる。彼女は、2,000万ドルを盗んだCIAエージェントの名前が、ネスキーのファイルに記されていることをアボットに伝える。ロシアの政治家ウラジミール・ネスキーは盗んだエージェントを特定しようとしていたが、数年前にベルリンで妻に殺されていた。ランディは、ボーンと当時のトレッドストーン作戦指揮者コンクリンが関与し、ボーンがネスキーを殺害したのではないかと考える。アボットとランディはトレッドストーンの元サポート技術者ニッキー・パーソンズを連れて、ボーンを捕らえるためベルリンに向かう。
グレトコフはキリルにボーンを殺すよう指示し、キリルはゴアでボーンを見つける。ボーンはマリーを連れて車で逃げるが、途中で運転を代わったマリーがキリルに狙撃されて死んでしまう。ボーンはゴアを離れ、ナポリに向かい、そこで警備員とアメリカ領事館の調査員に身柄を拘束されるが、調査員の携帯電話のSIMカードをコピーして脱出し、そこにランディからかかってきた電話の内容から、自分がベルリンでのエージェント殺害事件容疑でCIAに追われていることを知る。
ボーンはトレッドストーン作戦に残る唯一の工作員ジャルダを訪ね、ミュンヘンに向かう。ジャルダはボーンに、トレッドストーン作戦がコンクリンの死後閉鎖されたことを告げるが、彼を捕らえようとする。ボーンはジャルダを絞殺し、ガス爆発で彼の家を破壊する。ボーンはベルリンに行き、ランディを尾行してCIAの事務所を突き止め、ニッキー・パーソンズを指名して一対一で会いたいと連絡する。
ボーンはアレクサンダー広場でニッキーを誘拐し、彼女からアボットがコンクリンの上司であったこと、ネスキー・ファイルに関するエージェント殺害でボーンが追われていることを訊き出す。ボーンは一部の記憶を取り戻し、コンクリンの命令でネスキーを殺し、そこに居合わせたネスキーの妻に罪を着せて、自殺に見せかけて殺したことを思い出す。
コンクリンの元助手のダニー・ゾーンは、エージェントの死にボーンが関与しているという報告に矛盾を見つけ、それをアボットに説明するが、アボットに殺されてしまう。ボーンはアボットのホテルの部屋に忍び込み、彼がグレトコフと電話で会話し、2千万ドル盗難事件が彼らの共犯だったことや、アボットがグレトコフにボーン殺害を依頼しているのを聴く。ボーンがアボットに姿を明かすと、アボットは自分がファイル強奪を命じたこと、ボーンを罠にはめ、ゴアで口封じをするよう仕向けたことを告白する。ボーンはアボットの告白を録音したことを示して、銃をテーブルの上に置いて立ち去る。その直後にランディがアボットの元を訪れるが、彼は自殺する。その後、彼女の手元にはアボットの録音テープが届く。
ボーンはネスキーの娘イレーナを探すためにモスクワに向かう。キリルはグレトコフから再びボーン殺害を依頼され、ボーンを見つけて狙撃し、傷を負わせる。ボーンは盗んだタクシーで逃げ、キリルから追われて壮絶なカーチェイスの末、キリルに重傷を負わせて立ち去る。グレトコフは警察に逮捕される。ボーンはイレーナに会って、彼女の両親を殺害したことを告白し、彼女に謝って立ち去る。
しばらく後、ニューヨークの事務所にいるランディにボーンからの電話が入る。彼女は録音テープのお礼に、ボーンの本名「デビッド・ウェッブ」と生年月日・出生地を告げ、会わないかと誘う。向かいのビルから彼女を眺めながら話していたボーンは、彼女に「少し休め」と言い残して人混みの中に消えていく。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |
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ソフト版 | 日本テレビ版 | ||
ジェイソン・ボーン | マット・デイモン | 平田広明 | 中村繁之 |
マリー・クルーツ | フランカ・ポテンテ | 湯屋敦子 | 山崎美貴 |
パメラ・ランディ | ジョアン・アレン | 小山茉美 | 塩田朋子 |
キリル | カール・アーバン | 根本泰彦 | 津田健次郎 |
アレクサンダー・コンクリン | クリス・クーパー | 菅生隆之 | 野沢那智 |
ワード・アボット | ブライアン・コックス | 糸博 | 瑳川哲朗 |
ニコレット"ニッキー"・パーソンズ | ジュリア・スタイルズ | 沢海陽子 | 本田貴子 |
マーティン・マーシャル次官 | トーマス・アラナ | 田原アルノ | 納谷六朗 |
ダニー・ゾーン | ガブリエル・マン | 宮本充 | 成田剣 |
トム・クローニン | トム・ギャロップ | 古澤徹 | 佐久田修 |
テディ | ジョン・ベッドフォード・ロイド | 仲野裕 | |
グレツコフ | カレル・ローデン | 内田直哉 | 金尾哲夫 |
ジャーダ | マートン・チョーカシュ | 内田直哉 | |
キム | ミシェル・モナハン | 田村聖子 | |
ジョン・ネビンス | ティム・グリフィン | 樫井笙人 |
- ソフト版:初回放送2012年9月30日『日曜洋画劇場』
- その他:浅井清己、花輪英司、渡辺英雄、加藤将之
- テレビ朝日版追加キャスト:志村知幸、永木貴依子、川端麻衣
- 日本語版制作スタッフ:演出:神尾千春、翻訳:栗原とみ子、調整:菊池悟史、制作:本田哲浩、ブロードメディア・スタジオ
- 日曜洋画劇場にて放映された際には、ボーン、キリル、グレツコフの一部のロシア語の台詞の吹き替えがソフト版のキャストで追加収録された。また、ホテル・ブレッカーの従業員などソフト版では原語音声が流用されていた部分も新たに日本語に吹き替えられた。
- 日本テレビ版:初回放送2007年11月9日『金曜ロードショー』
製作
企画
前作『ボーン・アイデンティティー』(2002年)の構想時には、続編を作る予定はなく、マット・デイモンもそうコメントしていた。ビジネスのために作られた続編にファンががっかりすることが多々あるからだ[3]。しかし、今回から監督をすることになったポール・グリーングラスの熱意や構想、復讐劇のようなストーリーにひねりを加えた脚本などを知ってやる気になったという[4]。
撮影
公開の2週間前になって、グリーングラスとデイモンは別のエンディングを思いつき、二人はプロデューサーを説得してデイモンは『オーシャンズ12』の撮影から抜け出してそのシーンを再撮影した。[5]
作品の評価
映画批評家によるレビュー
レビュー・アグリゲーターのRotten Tomatoesでは196件のレビューで支持率は82%、平均点は7.20/10であった。批評家のコンセンサスは「スリルを伴った、よくできた続編」というものであった[6]。Metacriticでは39の批評に基づいて73/100の加重平均スコアであり、「一般的に好評」を示している[7]。CinemaScoreでの観客による投票は、A+からFのうち「A-」の平均評点であった[8]。
シカゴ・サンタイムズの ロジャー・エバートはこの映画に4点満点中3点をつけ、「監督のポール・グリーングラスがこの素材を重厚に扱い、良い俳優をよくできた脇役に起用したことが、この映画をそのジャンル以上に引き上げている」と書いている[9]。
受賞歴
脚注
- ^ a b c “The Bourne Supremacy (2004)” (英語). Box Office Mojo. 2010年2月6日閲覧。
- ^ 2005年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
- ^ “Matt Damon for "The Bourne Supremacy"”. Dark Horizons. 2023年2月23日閲覧。
- ^ “Matt Damon The Bourne Supremacy”. Female.com.au. 2021年2月23日閲覧。
- ^ Armstrong, Stephen (2008年6月8日). “A whirlwind in action”. The Guardian. 2021年1月30日閲覧。
- ^ "The Bourne Supremacy". Rotten Tomatoes (英語). Fandango Media. 2023年1月23日閲覧。
- ^ "The Bourne Supremacy" (英語). Metacritic. Red Ventures. 2023年1月23日閲覧。
- ^ “Find CinemaScore” (Type "Bourne" in the search box). CinemaScore. 2021年7月8日閲覧。
- ^ Ebert, Roger (2004年7月23日). “Damon makes 'Bourne' a supreme thriller”. Chicago Sun-Times. 2023年2月23日閲覧。
関連項目
- マルチ・スズキ・インディア・ジプシー1300
- アレクサンダー広場 - 同広場などベルリン都内の数か所で撮影が行われている。ボーンがベルリン警察に追われるシーンでは、互いに離れた別々の地点の映像がつなぎ合わされ、あたかも一連の逃走ルートであるかのように編集されている。このほか、アムステルダム(ニッキー登場シーン)、ナポリ(駐車場)、モスクワ(一部のみ)のシーンもベルリンで撮影された。
外部リンク
- 公式サイト[リンク切れ]
- THE BOURNE SUPREMACY - ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンによるDVD特設サイト[リンク切れ]
- 公式ウェブサイト(英語)[リンク切れ]
- ボーン・スプレマシー - allcinema
- ボーン・スプレマシー - KINENOTE
- The Bourne Supremacy - オールムービー(英語)
- The Bourne Supremacy - IMDb(英語)