奈良美智
奈良 美智(なら よしとも、1959年12月5日 - )は、日本の画家・彫刻家。世界的に評価されている美術作家で、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やロサンゼルス現代美術館に作品が所蔵されるなど日本の現代美術の第二世代を代表するひとり。 特徴的なこちらを見返す人物をモチーフにしたドローイングやアクリル絵具による絵画で知られる[2][3][4]。
なら よしとも 奈良 美智 | |
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生誕 |
1959年12月5日(61歳) 青森県弘前市 |
国籍 |
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出身校 |
愛知県立芸術大学大学院 Kunstakademie Düsseldorf |
職業 | 画家・彫刻家 |
受賞 |
名古屋市芸術奨励賞(1995年) ニューヨーク国際センター賞(2010) 芸術選奨文部科学大臣賞(2013)[1] |
経歴編集
青森県弘前市で出生後、青森県立弘前高等学校卒業まで弘前市で育つ。武蔵野美術大学を1年で中退して、1981年に愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻に入学し、1985年に卒業、1987年に同大学大学院修士課程を修了した[5]。
河合塾千種校美術研究所講師を経て渡独、1988年ドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミー(Kunstakademie Düsseldorf)に入学、A.R.ペンク(A. R. Penck)に師事し1993年にマイスターシュウラーを取得し、アカデミーを修了した。1994年から2000年まではケルン近郊のアトリエを拠点に作品を制作した。1998年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校にて非常勤客員教授を村上隆と共に3か月間務める。1995年には名古屋市芸術奨励賞を受賞した[6]。
2000年にはドイツでの12年間の生活を終え帰国した。 2001年には日本における大規模な個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」を横浜美術館で開始し、広島市現代美術館や吉井酒造煉瓦倉庫(弘前市)など開始国内の5ヶ所の美術館を巡った[7]。 2005年からは土地が安いという理由で東京近郊の田園地帯に移転している[8]。2006年度に武蔵野美術大学客員教授を務めた。2010年には米文化に貢献した外国出身者をたたえるニューヨーク国際センター賞を受賞。アジア人としてはヨー・ヨー・マに次ぐ受賞であった。2013年には芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した。 2013年以降は Blum & Poe、Pace Galleryで発表している。
人物編集
音楽が好きで[9][10]、作品制作も音楽を流しながら行う[11]。少年ナイフ、bloodthirsty butchers、THE STAR CLUB、マシュー・スウィート、R.E.M.のCDジャケットを手がけており、ニルヴァーナのカート・コバーンを模したと思われるキャラクターやthee michelle gun elephantのCDジャケットをパロディー化した作品を描いたりしている。60~70年代の洋楽にも詳しく、マイナーレーベルのSSWやロック、またルーツミュージック(特にトラッドなどの白人ルーツミュージック)にも造詣が深い。手作りの小屋の内側を中学、高校時代に聴いていたレコードジャケットで埋めた作品もある。ミュージシャンとの交流も多くニューヨークでの展覧会オープニングにYO LA TENGOやデボラ・ハリーなどが来ている。
一人で作品制作を行ってきた奈良であるが、 「Yoshitomo Nara + graf A to Z」ではクリエイター集団「graf」と共同作業で展示会場作りからの創作活動の旅を行った[12]。台湾、韓国、横浜へと移動したその展覧会の様子は、ドキュメンタリー映画 『NARA:奈良美智との旅の記録』(監督 坂部康二)として2007年に劇場公開され、後にDVDとして発売された。
カレーライスが好物で、2001年に漫画『おごってジャンケン隊』(現代洋子)にゲスト出演した際、当時のアトリエの近所にあるCoCo壱番屋をお薦めの店として挙げている。また、最近では松屋にもよく通っているとTwitterで述べている。
東北地方太平洋沖地震に関する活動の一つとして宮城県で開催されているARABAKI ROCK FEST.に2011年から連続して参加している。
主な展覧会編集
- 1984年 初の個展 (名古屋市)
- 1984年 グループ展「奈良美智、三浦孝治二人展」 SPACE DENEGA 弘前市での初の展覧会
- 1999年1月13日 - 2月14日 個展「Walking alone」 ザ・ギンザアートスペース(現 資生堂ギャラリー。東京)[13]
- 2000年3月18日 - 6月25日 個展「Walk On」 シカゴ現代美術館
- 2000年3月24日 - 5月20日 個展「Lullaby Supermarket」 サンタモニカ美術館
- 個展「I DON'T MIND, IF YOU FORGET ME.」(2001年8月-2002年9月)
- 個展「Nothing Ever Happens」(2003年9月-2005年5月)[19]
- 2004年8月11日 - 10月11日 個展「From the Depth of My Drawer」 原美術館(以後、金津創作の森(福井県)[20]、米子市美術館[21]、吉井酒造煉瓦倉庫(下記)、ロダンギャラリー(ソウル)を巡回)
- 2005年4月16日 - 5月22日 個展「From the Depth of My Drawer」 吉井酒造煉瓦倉庫
- 2005年9月28日 - 12月18日 グループ展 奈良美智+graf「A to Z」 横浜トリエンナーレ
- 2005年10月8日 - 10月9日 グループ展 「とがびアートプロジェクト2005」長野県千曲市戸倉上山田中学校
- 2006年7月29日 - 10月22日 個展 奈良美智+graf「A to Z」 吉井酒造煉瓦倉庫[22][23]
- 2006年9月30日 - 2007年3月21日 個展「Moonlight Serenade -月夜曲」 金沢21世紀美術館
- 2006年11月3日 - 2007年1月14日 グループ展「広島市現代美術館コレクションによる『この20年の、20のアート』」 札幌芸術の森美術館
- 2007年6月2日 - 2007年10月7日 個展 奈良美智「Yoshitomo Nara 奈良美智展」 ハーグ現代美術館
- 2007年9月21日 - 2008年1月6日 個展 奈良美智+graf「Torre de Malaga (Tower of Malaga)」 マラガ現代美術館
- 2008年6月12日 - 10月26日 個展 BALTIC現代美術センター イギリス
- 2012年7月14日 - 9月23日 横浜美術館 『[nara yoshitomo:a bit like you and me] 奈良美智:君や僕にちょっと似ている』[24]
- 2014年10月3日 - 12月7日 「Greetings from a Place in My Heart」 Dairy Art Center ロンドン
- 2014年11月7日 - 11月9日 沢田マンションギャラリーroom38 『3日間の奈良美智・ドローイングショウ』
- 2015年3月6日 - 7月26日 「Life is Only One / 無常人生」 Asia society Hong Kong 香港
- 2017年7月15日 - 9月24日 「for better or worse」 豊田市美術館
その他編集
- 東京南青山にYoshitomo Nara + grafが、A to Z展の宣伝のために内装を手がけたカフェ A to Z cafe があるが、奈良だけはボランティアとして無報酬で内装のデザインに参加した。奈良本人は運営にはまったく関わっておらず、無関係である。
- 2009年ツール・ド・フランスの第18戦個人タイムトライヤルでランス・アームストロングが使用する自転車のデザインを受け持った。
- 2009年国内オークション会社高額落札TOP10に2点ランクインされる。3位「ASH NIGHT」2000年制作(落札額5,700万円)、6位「Winter Long」1999年制作(落札額4,025万円)。
- 2017年7月、作品作家論『ユリイカ 詩と批評 臨時増刊号 総特集 奈良美智の世界』(青土社)が刊行。
トラブル編集
主なテレビ出演編集
- 1999年6月18日 NHK総合「トップランナー」『奈良美智 美術作家』[26]
- 2001年8月26日 TBS「いのちの響」『奈良美智 現代美術家』
- 2001年9月21日 テレビ東京「たけしの誰でもピカソ」『現代アートの旗手 奈良美智特集』
- 2001年9月23日 NHK教育テレビ「新日曜美術館」『奈良美智×村上隆 ニューポップ宣言』
- 2006年6月25日 毎日放送「情熱大陸」『奈良美智 美術作家』
- 2006年8月 NHK教育テレビ「高校講座」『特集「美術」第2回「絵を描こう」』
- 2014年6月26日 NHK教育テレビ「ミュージック・ポートレイト」『ミュージック・ポートレイト「木村カエラ×奈良美智 第1夜』
脚注編集
- ^ “ニュース”. 『ART iT』. 2016年2月26日閲覧。
- ^ “大人を射すくめる強眼 奈良美智展によせて”. 中日新聞 (中日新聞社): pp. 朝刊 4. (1999年12月11日)
- ^ “啓蒙の時代が失った豊かな感情を呼び起こす藪睨みのこどもたち”. アサヒグラフ (朝日新聞社) (2000年5月19日号): 15. (2000-05-19).
- ^ “『内なる女の子』の怒り”. 美術手帖 (美術出版社) (2000年7月号): 50–53. (2000-06-17).
- ^ “奈良美智プロフィール”. 青森県立美術館. 2016年2月26日閲覧。
- ^ “名古屋市芸術賞年度別受賞者一覧”. 名古屋市. 2016年2月26日閲覧。
- ^ “奈良美智プロフィール”. 青森県立美術館. 2016年2月26日閲覧。
- ^ “奈良美智”. 筑摩書房. 2016年2月26日閲覧。
- ^ “パンクと思春期”. 美術手帖 (美術出版社) (2000年7月号): 104–106. (2000-06-17).
- ^ “パンクの持つ退廃美に魅かれていたんだ”. ローリングストーン日本版 (インターナショナル・ラグジュアリー・メディア) (2009年7月1日号): 40–41. (2009-06-10).
- ^ “音楽を聴いていると画が描けるんですよ。”. Brutus (マガジンハウス) (2002年7月15日号): 64. (2007-07-01).
- ^ “展覧会を創りつづけること、それが奈良美智とgrafの旅。”. Brutus (マガジンハウス) (2006年8月1日号): 112–117. (2006-07-15).
- ^ “いつわりのない子供の叫び”. 朝日新聞 (朝日新聞社): pp. 夕刊. (1999年1月21日)
- ^ “子どもの世界 奈良美智展から 制作過程も一つの作品”. 神奈川新聞 (神奈川新聞社). (2001年9月11日)
- ^ “不思議な子供たちの魔力”. 産經新聞 (産經新聞社): pp. 朝刊 14. (2002年1月27日)
- ^ “見る側の気持ち映す少女”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社): pp. 夕刊 11. (2002年2月21日)
- ^ “心に響く特異な造形”. 北海道新聞 (北海道新聞社): pp. 夕刊. (2002年6月28日)
- ^ “『驚き』の連鎖が生んだアート・プロジェクト『奈良美智展 弘前』を支えた民の力”. 雑誌地域創造 (財団法人地域創造) (2003年第15号): 10-13. (2003).
- ^ “アメリカでも大きな共鳴を呼ぶ 奈良美智の巡回展”. Invitation (フェデリコ書房) (2003年11月号): 135. (2003-11).
- ^ “奈良美智の無限空間 自選の絵画、造形170点”. 福井新聞 (福井新聞社): pp. 朝刊 15. (2004年11月10日)
- ^ “親しみある空間感じて”. 日本海新聞 (新日本海新聞社): pp. 朝刊 8. (2005年3月2日)
- ^ “集大成、レトロな『街』に”. 朝日新聞 (朝日新聞社): pp. 朝刊 27. (2006年8月17日)
- ^ “美術の枠組みからの解放”. 東京新聞 (中日新聞社): pp. 朝刊 20. (2006年8月12日)
- ^ “子ども描写、原点へ 奈良美智展、深み増す”. 朝日新聞 (朝日新聞社): pp. 朝刊. (2012年8月14日)
- ^ ““NY落書き逮捕報道”に奈良美智氏、ブログで事実誤認指摘と謝罪 奈良美智”. オリコンニュース (2009年3月11日). 2019年11月3日閲覧。
- ^ 奈良美智 ナイーブワンダーワールド, KTC 中央出版, (2001)
外部リンク編集
- 奈良美智インタヴュー すべてをつなぐまなざしに宿るもの-IMA ONLINE
- 奈良美智オンラインフォトギャラリー-IMA ONLINE
- オンラインフォトコンテスト 審査員:奈良美智-IMA ONLINE