岸潤一郎

日本のプロ野球選手 (1996-)

岸 潤一郎(きし じゅんいちろう、1996年12月8日 - )は、兵庫県尼崎市出身のプロ野球選手外野手)。右投右打。埼玉西武ライオンズ所属。

岸 潤一郎
埼玉西武ライオンズ #68
2022年4月15日 京セラドーム大阪
基本情報
国籍 日本の旗 日本
出身地 兵庫県尼崎市
生年月日 (1996-12-08) 1996年12月8日(27歳)
身長
体重
174 cm
78 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 外野手
プロ入り IL / 2017年 ドラフト4位
NPB / 2019年 ドラフト8位
初出場 NPB / 2020年7月5日
年俸 1650万円(2024年)[1]
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

NPBにおける、独立リーグ出身の日本人としてのシーズン最多タイ本塁打記録保持者。

経歴

編集

プロ入り前

編集

尼崎市立難波小学校4年で「成徳イーグルス」に入団し、野球を始めた。その後、「金楽寺少年野球クラブ」へ移籍[2]捕手を中心に多くのポジションを務めた[2]。6年時にはオリックス・バファローズジュニアに選出[2]尼崎市立中央中学校時代は「西淀ボーイズ」に所属。主に投手を務め、3年時には「NOMOジャパン」に選出された[2]

明徳義塾高等学校に進学後、1年春からベンチ入り[2][3]。投手兼中軸打者として1年夏の第94回全国選手権、2年夏の第95回全国選手権、3年春の第86回選抜大会、同年夏の第96回全国選手権と4度の甲子園大会出場を果たす[2][3]。 1年夏は優勝した大阪桐蔭に敗れ、ベスト4。2年夏及び3年春はベスト8、3年夏は1回戦で岡本和真擁する智弁学園に10-4で快勝するも、2回戦で再度優勝する大阪桐蔭と対戦し、3-5で敗れた。 3年秋の長崎国体では優勝を達成した[2][4]第10回U-18アジア選手権に出場する日本代表にも選出され、準優勝に貢献。高校通算24本塁打。

高校時代の監督・馬淵史郎の母校である拓殖大学に進学し、1年春からリーグ戦に出場[5]。その一方で相次いで肩や肘の故障に見舞われていた[3]。2年夏に右肘のトミー・ジョン手術を受けるも術後の経過が思わしくなく[3][5]、3年秋に野球部を退部するとともに大学を中退[4][5]

その後、四国アイランドリーグplus(四国IL)・徳島インディゴソックスの球団社長より、両親を通じ、入団の誘いを受ける[3][4]。二度と選手としてプレーしないと決めていたが、母から「プロになれるかなれないかは別として、もう一度野球している姿を見たい」と言われたことがきっかけとなり[6]2017年11月10日、リーグのトライアウトに参加し特別合格[7]。11月12日に行われたドラフト会議において徳島より4位指名を受けた[8]。背番号は22

四国IL・徳島時代

編集

2018年、開幕時点では投手登録であったが[9]、前期シーズン中の登板はなく、後に外野手登録に変更[4][10]。主に一塁手、外野手として64試合に出場し、打率.275ながら38盗塁を記録して最多盗塁を獲得、外野手部門のベストナインを受賞した[2][5][11]

2019年、外野手登録ながらリーグ戦出場全試合を遊撃手として出場。主に1番打者を務め、出場69試合で打率.265、3本塁打、25打点、35盗塁の成績を残し[2][12]、チームの年間総合優勝に貢献した[5]。四国IL選抜チームの一員として6月上旬からの北米遠征にも参加し[2]、遠征先のカナディアン・アメリカン・リーグでは出場19試合で打率.321、1本塁打、6打点、4盗塁の成績を残している[13]

2019年10月17日に行われたNPBドラフト会議にて埼玉西武ライオンズから8位指名を受け[14]、契約金1000万円、年俸500万円で仮契約(金額は推定)を合意し、入団[15]。背番号は68[16]。なお、本ドラフトでは徳島のチームメイトでもある上間永遠が西武から7位指名、平間隼人読売ジャイアンツから育成1位指名を受けた。

西武時代

編集

2020年は7月5日にプロ入り初の一軍へ昇格。その日のオリックス・バファローズ戦(メットライフドーム)では8回裏に中村剛也の代打で初出場[17]

2021年は初の開幕一軍入りを果たすも、9打数無安打と結果を残せず、4月17日に一軍登録を抹消される。しかしチームに故障者が続発した上、源田壮亮新型コロナウイルスに感染し、その濃厚接触者も登録抹消された関係で、5月28日に「特例2021」の代替選手として再び一軍へ昇格[18]。直後にリーグトップの盗塁数を記録していた若林楽人が左膝前十字靭帯損傷で離脱し、6月1日の対読売ジャイアンツ戦(東京ドーム)で先発出場すると鍵谷陽平から初安打、初本塁打、初打点を左中間越本塁打で記録した[19]。さらに同3日には3試合連続マルチヒットとなる初の猛打賞も記録し[20]、6月8日からの8連戦では2試合で先頭打者本塁打を放ち[21][22]、この活躍があって以降は苦しいチーム事情の中で出番を増やした。前年は一軍で両翼の守備に就いたが、金子侑司の不振等も重なり初めて一軍で中堅の守備に就き、打球判断や両翼との連係など中堅守備への適応[23][24]や2割前半の打率に苦しみながらも様々な打順で中堅手として先発起用され[25]、10月10日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦ではプロ初のサヨナラ打を放った[26]。この年は100試合に出場し、うち80試合は先発で出場した。打順別では2番が最多の30試合であったが、打率.220・出塁率.263と課題を残した[27]が、独立リーグ出身の日本人としては史上最多となるシーズン9本塁打を記録した(全体最多はフランシスコ・カラバイヨの12本塁打)。オフに、1050万円増となる推定年俸1600万円で契約を更改した[28]

2022年は4月6日の楽天戦でシーズン初本塁打を記録したが[29]股関節の怪我で調子を落とし、45試合の出場で打率.205、2本塁打、7打点に終わった。オフに150万円減の推定1450万円で契約更改した[30]

2023年は6月14日に特例2023の代替指名選手として一軍に昇格する[31]と、8月4日の対オリックス戦(ベルーナドーム)で2-2の同点で迎えた9回一死無走者の打席で阿部翔太からプロ初のサヨナラ本塁打を放った[32]。シーズン通算では61試合に出場、打率.209、3本塁打、12打点の成績であった。オフに200万円増の推定年俸1650万円で契約更改した[33]

選手としての特徴

編集

積極的でパンチ力を秘めた打撃[34][28]と50m走5秒80の俊足を活かした果敢な走塁と広い守備範囲[2][5]、内外野複数ポジションをこなすユーティリティー性が持ち味[2]

5年目の2024年シーズン中には打撃で進歩を見せ、「普段から松井(稼頭央)監督や高山(久打撃)コーチから教わっていることが、実戦で生かせています。前に突っ込まないように心掛けていて、追い込まれても変化球をヒットにできるようになってきました」と述べている[35]。また同年4月19日には本塁打を放ったが、「僕は野球を始めた小学生の頃から、1打席目にホームランが出ると、『今日は打てるわ』と調子に乗ってしまい、5打数1安打(1本塁打)に終わってしまうケースが多い。体が自然にそっち(大振り)になってしまうのです」と語っており、本塁打は「極力打ちたくない」とのこと[35]

人物

編集

明徳義塾高校時代は4度の甲子園出場を果たし、「甲子園の申し子」と呼ばれた[36]。その後は拓殖大学に進学するも、右肘の故障で野球部を退部し、大学も中退に[36]。一時は野球を断念したことから「消えた天才」と呼ばれ、テレビ番組で特集された経験を持つ[36]。岸もそのことについて「消えたんだから、天才じゃないんですよ」と笑いながら語っている[37]

高校時代から子供好きを公言しており[6]甲子園出場選手が提出するアンケートでは「将来の夢」の項目に「保育士」と記入していた[3]

ももいろクローバーZのファンでもあり、推しメン(好きなメンバー)に玉井詩織の名前を挙げている[38]

少年野球で初めて着けた背番号「22」に強い愛着を持っており、徳島時代も「初心に帰る」という意味も込めて着けていた。なお、西武入団後も岸は「22番を目指してやりたいです」と語っている[39]

詳細情報

編集

年度別打撃成績

編集
















































O
P
S
2020 西武 5 3 2 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 .000 .333 .000 .333
2021 100 338 304 29 67 9 1 9 105 30 2 1 15 1 13 0 5 49 10 .220 .263 .345 .609
2022 45 83 73 10 15 1 2 2 26 7 1 1 2 0 5 0 3 9 0 .205 .284 .356 .640
2023 61 197 177 16 37 5 0 3 51 12 3 2 4 1 11 0 4 33 6 .209 .269 .288 .588
通算:4年 211 621 556 55 119 15 3 14 182 49 6 5 21 2 30 0 12 92 16 .214 .268 .327 .596
  • 2023年度シーズン終了時

年度別守備成績

編集


外野












2020 西武 5 2 0 0 0 1.000
2021 93 161 5 3 2 .982
2022 43 46 2 2 0 .960
2023 60 93 2 0 0 1.000
通算 201 302 9 5 2 .984
  • 2023年度シーズン終了時

記録

編集
初記録

独立リーグでの打撃成績

編集










































2018 徳島 .275 64 250 218 45 60 7 6 3 18 34 15 11 4 2 38 .403 .349 5
2019 .267 69 285 243 40 65 13 3 3 25 38 32 4 4 2 35 .383 .359 3
通算:2年 .271 133 535 461 85 125 20 9 6 43 72 47 15 8 4 73 .393 .355 8
  • 各年度の太字はリーグ最高

背番号

編集
  • 22(2018年 - 2019年)
  • 68(2020年 - )

登場曲

編集

代表歴

編集

脚注

編集
  1. ^ 西武 - 契約更改 - プロ野球」『日刊スポーツ』。2023年11月18日閲覧
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 明徳義塾の「4番・エース」がユーティリティー野手で再生 岸潤一郎(徳島インディゴソックス) 【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 独立リーグ編】」『BASEBALL GATE』2019年10月1日。2021年8月12日閲覧
  3. ^ a b c d e f あの明徳スターが「もう野球は絶対やらない」からプロ再挑戦に至るまで」『web Sportiva』2018年5月20日。2021年8月12日閲覧
  4. ^ a b c d 徳島インディゴソックス・岸 潤一郎 独占インタビュー 僕が徳島で「プレイ」する理由」『高校野球ドットコム』2018年3月23日。2018年12月29日閲覧
  5. ^ a b c d e f 【ドラフト】四国IL徳島の岸潤一郎が最後の74番目で西武8位指名「最後の最後でほっとした」」『スポーツ報知』2019年10月17日。2021年8月12日閲覧
  6. ^ a b プロに「行けるものなら…」 二刀流で甲子園を沸かした元ドラフト候補の現在」『Full-Count』2018年7月10日。2021年8月11日閲覧
  7. ^ 四国開催トライアウトの合格者について (PDF)」『四国アイランドリーグplus』2017年11月11日。2021年8月12日閲覧
  8. ^ 四国アイランドリーグplusドラフト会議の結果について」『四国アイランドリーグplus』2017年11月13日。2021年8月12日閲覧
  9. ^ 2018シーズン選手登録・練習生のお知らせ (PDF)」『四国アイランドリーグplus』2018年3月29日。2021年8月12日閲覧
  10. ^ 2018後期シーズン選手登録・練習生のお知らせ (PDF)」『四国アイランドリーグplus』2018年7月26日。2021年8月12日閲覧
  11. ^ 四国アイランドリーグplus2018個人タイトル確定」『四国アイランドリーグplusニュースリリース』2018年9月19日。2021年8月12日閲覧
  12. ^ 徳島インディゴソックス 上間 永遠・岸 潤一郎・平間 隼人が夢舞台へ!」高校野球ドットコム、2019年10月18日。2021年8月12日閲覧
  13. ^ Kishi Junichiro Independent Leagues Statistics & History」『Baseball-Reference.com』(英語)。2020年3月22日閲覧
  14. ^ ILから4人の選手がドラフト指名を受けました!」『四国アイランドリーグplusニュースリリース』2019年10月17日。2021年8月12日閲覧
  15. ^ 「一日でも早く1軍昇格を勝ち取る」 西武からドラフト指名の徳島インディゴ上間、岸が仮契約」『徳島新聞』2019年11月11日。2020年8月16日閲覧
  16. ^ 西武1位宮川は松坂を目標 新入団選手の背番号一覧」『日刊スポーツ』2019年12月12日。2021年8月12日閲覧
  17. ^ 【西武】ドラ8・岸が1軍初昇格で初打席!「しっかりバットを振れた」」『スポーツ報知』2020年7月6日。2021年6月1日閲覧
  18. ^ 西武が大量14選手入れ替え 「特例2021」で コロナ感染の源田ほか、金子、木村ら抹消」『Sponichi Annex』2021年5月28日。2021年5月28日閲覧
  19. ^ 「ホームランボール奥さんに渡したい」西武岸潤一郎プロ初安打は本塁打」『日刊スポーツ』2021年6月1日。2021年6月1日閲覧
  20. ^ 大観衆◎。岸潤一郎(明徳義塾出身)が巨人戦で初本塁打から計7安打」『高校野球ドットコム』2021年6月3日。2021年6月3日閲覧
  21. ^ 西武・岸、初の先頭打者弾「結果がホームランになって良かった」」『サンスポ』2021年6月10日。2021年6月21日閲覧
  22. ^ 西武・岸潤一郎、今季2度目の初回初球先頭打者弾「自分の持ち味」」『サンスポ』2021年6月13日。2021年6月21日閲覧
  23. ^ 契約にも影響? 西武・ニールがいまだ抜け出せない〝負の連鎖〟」東スポ、2021年8月19日。2021年10月10日閲覧
  24. ^ 西武、サヨナラならずも2点差追いつきドロー 川越と岸がミスを取り返す活躍」『BASEBALL KING』2021年8月24日。2021年10月10日閲覧
  25. ^ 西武が目の前に抱える課題解消へ光… “地獄を見た男”岸潤一郎が示す可能性」『Full-Count』2021年9月15日。2021年10月10日閲覧
  26. ^ 岸、反省生きたサヨナラ打 プロ野球・西武」『時事通信』2021年10月10日。2021年10月10日閲覧
  27. ^ 西武・岸 「1番より好き」2番定着名乗り 「状況に応じたバッティングができるように」」『Sponichi Annex』2021年11月21日。2021年12月2日閲覧
  28. ^ a b 西武・岸潤一郎、1050万円増の年俸1600万円で更改「今年の成績以上をもちろん目指して頑張っていきたい」」『サンスポ』2021年12月2日。2021年12月5日閲覧
  29. ^ 岸が岸を打った!西武が楽天から2者連続ソロ本塁打」『Sponichi Annex』スポーツニッポン、2022年4月6日。2023年1月16日閲覧
  30. ^ がんばれ若獅子!週刊・埼玉西武ライオンズ [@ganbarewakajisi] (2022年11月29日). "#岸潤一郎 選手契約更改". X(旧Twitter)より2022年11月30日閲覧
  31. ^ 【西武】若林楽人を特例2023で登録抹消 岸潤一郎が初昇格「2番・右翼」でスタメン出場」『東スポWEB』2023年6月14日。2024年7月21日閲覧
  32. ^ 西武・岸潤一郎「消えた天才」が人生初サヨナラ本塁打「苦しい時期があったからこそ今がある」」『スポニチ Sponichi Annex』2023年8月4日。2024年7月21日閲覧
  33. ^ 【西武】岸潤一郎「結果が求められる年齢。もっとできた」と反省も200万円増に「感謝」」『日刊スポーツ』日刊スポーツ新聞社、2023年11月17日。2024年7月4日閲覧
  34. ^ 西武岸潤一郎「積極的なバッティングできた」先制打で定位置獲得へアピール」『日刊スポーツ』2021年8月9日。2024年6月2日閲覧
  35. ^ a b 野村克也氏を思い出させる西武27歳 松井監督は高評価も…「打ちたくなかった」豪快弾」『Full-Count』2024年4月20日。2024年7月11日閲覧
  36. ^ a b c 「自分では苦労したとは思っていません」“消えた天才”とも呼ばれた西武・岸潤一郎に高まる期待…昨年夏にアドバイスを求めた選手とは?(市川忍)」『Number Web』2021年6月18日。2022年4月16日閲覧
  37. ^ 岸潤一郎「消えた天才」と呼ばれた男はいかにして復活したのか」『FRIDAYデジタル』2021年8月29日。2022年4月16日閲覧
  38. ^ 西武・岸潤一郎『球界モノノフ四天王』入りで走れ!プロ初ヒット初HRから3日で7安打の大暴れ」『文化放送』2021年6月4日。2021年8月24日閲覧
  39. ^ 西武ドラ8岸、思い出の背番号「22」を目指す 「68」から「少しでも若くしたい」」『Full-Count』2019年12月12日。2021年9月24日閲覧
  40. ^ 埼玉西武ライオンズ 選手登場曲 2022」『埼玉西武ライオンズ オフィシャルサイト』Seibu Lions、2022年4月11日。2022年4月15日閲覧

関連項目

編集

外部リンク

編集