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  • 恐竜様類
  • 恐竜形類
  • 恐竜型類

恐竜様類(きょうりゅうようるい、Dinosauromorpha)は、鳥頸類に属する爬虫類の一群である。恐竜形類(きょうりゅうけいるい)や恐竜型類(きょうりゅうけいるい)とも呼ばれる。

恐竜様類
Dinosauromorpha
生息年代:
中期三畳紀現生, 245–0 Ma
前期三畳紀の可能性もある)
Dracohors.jpg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
階級なし : 真正爬虫類 Eureptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
階級なし : 主竜様類 Archosauromorpha
階級なし : 主竜類 Archosauria
階級なし : 鳥頸類 Ornithodira
階級なし : 恐竜様類 Dinosauromorpha
学名
Dinosauromorpha
Benton1984
和名
恐竜様類 (きょうりゅうようるい)
下位分類

名称編集

Dinosauromorphaという名は1984年Michael J. Bentonにより名付けられた。1991年には、ポール・セレノによってLagerpeton chanarensisMarasuchus lilloensisPseudolagosuchus majorそして恐竜類(鳥類を含む)の最新の共通祖先とその全ての子孫というノードによるクレードとしての最初の定義がなされた[1]

Dinosauromorphaの日本語における訳語は公式に定められていない。主な訳語としては「恐竜様類」[2][3]と「恐竜形類」[4][5][6][7]、「恐竜型類」[8][9]がある。「恐竜形類」と「恐竜型類」は下位分類のDinosauriformesの訳語として用いられることがあり[2][9][5]、本項ではDinosauromorphaの訳語として「恐竜様類」を採用している。

進化史編集

2010年10月にポーランドシフィエントクシスキエ山地 (Świętokrzyskie (Holy Cross) Mountains) から報告された前期三畳紀足跡化石は恐竜様類に属するものの可能性がある。もしそうであれば、恐竜様類の起源は2億4900万年前のオレネキアン期初期にまで遡ることができる。ポーランドの小さな四肢動物の最古の足跡化石はプロロトダクティルス英語版と名付けられたが、しかし初期アニシアン期の地層から見つかっている生痕化石属 Sphingopusに属する足跡は2億4600万年前に現れたやや大きい2足歩行の恐竜様類を示している。その痕跡は恐竜の系統がペルム紀末大量絶滅のすぐ後に生まれたことを表している。その期間は恐竜の台頭はゆっくりで、三畳紀のほぼ全期に亘って長く続いたことを示している[10]

中期三畳紀にあたるアニシアン階とラディニアン階からは、南アフリカ共和国などで動物食性の恐竜様類(ラゴスクスシレサウルス)の体化石が産出しており、遅くともこの頃その他の鳥頸類から恐竜様類が分岐したことが確実視されている[11]。恐竜様類の中では複数の系統が進化しており、ラゲルペトン科やシレサウルス科などに続いて最後に出現したのが恐竜である。ラゲルペトン科は走行や跳躍に適した構造の骨を持つ全長70センチメートル未満の二足歩行の小型動物、シレサウルス科は最大3メートル程度とより大型の四足歩行動物であった[6]。シレサウルス科の四足歩行は他の恐竜様類と共通する特徴ではなく、独立に獲得されたものであると考えられている[8]。シレサウルス科は植物食性または雑食性であることが歯と顎の形状から示唆されており、また恐竜と近縁であることから、恐竜が植物食または雑食動物から進化した可能性が指摘されている。一方でシレサウルス科が独自に植物食または雑食へ進化した可能性もあり、決着はついていない[6][8]

また、ラゲルペトン科よりも恐竜に近縁でシレサウルス科よりも遠縁な恐竜様類としてマラスクス、シレサウルス科よりも近縁で恐竜そのものの可能性もある属としてニアササウルスがいる[6]

基盤的恐竜様類は後期三畳紀のノーリアン期に絶滅を迎えたが、その1つ前の時代であるカーニアン期には恐竜が登場し、ヘレラサウルスに代表されるヘレラサウルス科英語版が出現した。またノーリアン期にはより派生的な獣脚類(アベポッド類)や古竜脚類が姿を現した[11]

特徴編集

初期の恐竜様類は概して小型かつ軽量の動物であった[6]。ただし多様性に乏しかったわけではなく、四足歩行に進化したシレサウルス科など多くのグループが属していた。20世紀中にはアルゼンチンの中部三畳系であるチャナレス累層でのみ化石が産出していたため分布域も狭く見積もられていたが、2000年代以降の発見により世界中に広く分布していたことが分っている[8]

基盤的恐竜様類は後肢と骨盤の形状から、全ての属種で脚が体の真下に伸びていたことが判明しており、恐竜と同様に効率的かつ素早い動作が可能であったことが示唆されている。恐竜様類を除く主竜類にも同様の特徴が広く見られたため、恐竜の走行能力が他の爬虫類と比較して抜きんでていたために中生代で支配的な存在になったという説は説得力を失うことになった[6]。恐竜とその他の恐竜様類を区別する解剖学的特徴には寛骨臼があり、恐竜では大きく開口する一方、他の恐竜様類では小さな窪み程度に留まっている[2]

分類と系統編集

基部群はサルトプス[12][13]マラスクス、それと同一かもしれないラゴスクスラゲルペトン科に属しアルゼンチンラディニアン階から見つかっているラゲルペトン英語版アリゾナ州ニューメキシコ州テキサス州ノリアン階から見つかっているドロモメロン英語版、そしてポーランドカーニアン階に産するシレサウルスを含むシレサウルス科、 ニューメキシコ州のカーニアン階・ノリアン階で見つかっているエウコエロフィシスレウィスクス英語版とその同一属とも考えられるアルゼンチンのラディニアン階に産するシュードラゴスクス英語版[14][15]ブラジルのノリアン階から見つかったサキサウルス英語版[16]、テキサス州のカーニアン階のテクノサウルス英語版[17]タンザニアのアニシアン階に産するアジリサウルス[18]、そしてモロッコのカーニアン期からノリアン期にいたディオドルス英語版[19]が含まれる。

以下の分岐図は Nesbitt (2011) を簡略化したものである。†は絶滅を表す。

 恐竜様類 Dinosauromorpha 

ラゲルペトン科 Lagerpetidae 

 恐竜形類 Dinosauriformes 

マラスクス Marasuchus 

 竜団類 Dracohors 

シレサウルス科 Silesauridae 

 恐竜類 Dinosauria 

鳥盤類 Ornithischia 

 竜盤類 Saurischia 

竜脚類 Sauropodomorpha 

獣脚類 Theropoda 

以下の分岐図は Kammerer et al. (2020)[20] に基づく。

鳥中足骨類

Aphanosauria  

鳥頸類
翼竜様類

スクレロモクルス

翼竜類  

ラゲルペトン科

コンゴナフォン  

PVSJ 883

イクサレルペトン

ラゲルペトン  

ドロモメロン  

恐竜様類=恐竜形類
竜団類

シレサウルス科  

恐竜類  

ラゴスクス  

Dinosauromorpha(恐竜様類)、Dinosauriformes(恐竜形類)、Dracohors(竜団類、ドラコホール)についての諸説編集

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ Langer, M. C.; Nesbitt, S. J.; Bittencourt, J. S.; Irmis, R. B. (2013). “Non-dinosaurian Dinosauromorpha”. Geological Society, London, Special Publications. doi:10.1144/SP379.9. 
  2. ^ a b c マーク・A・ノエル 『アメリカ自然史博物館 恐竜大図鑑』久保美代子(訳)、田中康平(監訳)、化学同人、2020年12月10日、23頁。ISBN 978-4-7598-2051-5 
  3. ^ 『世界の巨大恐竜博2006 生命と環境─進化のふしぎ』日本経済新聞社NHK、NHKプロモーション、日経ナショナルジオグラフィック社、2006年、26頁。 
  4. ^ D. E. Fastovsky、D. B. Weishampel 『恐竜学入門 ─かたち・生態・絶滅─』真鍋真(監訳)、藤原慎一、松本涼子(訳)、東京化学同人、2015年1月30日、361頁。ISBN 978-4-8079-0856-1 
  5. ^ a b 松田眞由美 『語源が分かる 恐竜学名辞典』小林快次藤原慎一(監修)、北隆館、2017年1月20日、454頁。ISBN 978-4-8326-0734-7 
  6. ^ a b c d e f ダレン・ナイシュ、ポール・バレット 『恐竜の教科書 最新研究で読み解く進化の謎』小林快次久保田克博千葉謙太郎田中康平(監訳)、吉田三知世(訳)、創元社、2019年2月20日、40-42頁。ISBN 978-4-422-43028-7 
  7. ^ 冨田幸光對比地孝亘三枝春生池上直樹平山廉仲谷英夫恐竜類の分岐分類におけるクレード名の和訳について」『化石』、日本古生物学会、2020年、 24頁、 doi:10.14825/kaseki.108.0_23ISSN 2424-2632 
  8. ^ a b c d 久保泰「三畳紀の恐竜型類における植物食と二足歩行の進化」『福井県立恐竜博物館紀要』第10巻、福井県立恐竜博物館、2011年、 55頁。
  9. ^ a b 池尻武仁 (2018年5月12日). “2018年「オリジン・オブ・恐竜」(上):再考、三畳紀初期恐竜グループの定義”. Yahoo! JAPAN. 2021年3月18日閲覧。
  10. ^ Brusatte, S.L.; Niedźwiedzki, G.; Butler, R.J. (2010). “Footprints pull origin and diversification of dinosaur stem lineage deep into Early Triassic”. Proceedings of the Royal Society B 278 (1708): 1107–1113. doi:10.1098/rspb.2010.1746. PMC 3049033. PMID 20926435. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3049033/. 
  11. ^ a b グレゴリー・ポール 著、東洋一、今井拓哉、河部壮一郎、柴田正輝、関谷透、服部創紀 訳 『グレゴリー・ポール恐竜辞典 原著第2版』共立出版、2020年8月30日。ISBN 978-4-320-04738-9 
  12. ^ Saltopus, a dinosauriform from the Upper Triassic of Scotland. Michael J. Benton and Alick D. Walker. Earth and Environmental Science Transactions of the Royal Society of Edinburgh / Volume 101 / Special Issue 3-4, pp 285 - 299 Royal Society of Edinburgh 2011 Published online: 17 May 2011 doi:10.1017/S1755691011020081
  13. ^ Baron, M.G., Norman, D.B., and Barrett, P.M. (2017). A new hypothesis of dinosaur relationships and early dinosaur evolution. Nature, 543: 501–506. doi:10.1038/nature21700
  14. ^ Irmis, Randall B.; Nesbitt, Sterling J.; Padian, Kevin; Smith, Nathan D.; Turner, Alan H.; Woody, Daniel; Downs, Alex (2007). “A Late Triassic dinosauromorph assemblage from New Mexico and the rise of dinosaurs”. Science 317 (5836): 358–361. doi:10.1126/science.1143325. PMID 17641198. 
  15. ^ Nesbitt, Sterling J.; Irmis, Randall B.; Parker, William G.; Smith, Nathan D.; Turner, Alan H.; Rowe, Timothy (2009). “Hindlimb osteology and distribution of basal dinosauromorphs from the Late Triassic of North America”. Journal of Vertebrate Paleontology 29 (2): 498–516. doi:10.1671/039.029.0218. 
  16. ^ Ferigolo, J.; Langer, M.C. (2006). “A Late Triassic dinosauriform from south Brazil and the origin of the ornithischian predentary bone”. Historical Biology 19 (1): 1–11. doi:10.1080/08912960600845767. http://www.journalsonline.tandf.co.uk/(ciigzuqwmoomny2lspjqn155)/app/home/contribution.asp?referrer=parent&backto=issue,3,14;journal,1,8;linkingpublicationresults,1:300240,1. 
  17. ^ Nesbitt, Sterling J.; Irmis, Randall B.; Parker, William G. (2007). “A critical re-evaluation of the Late Triassic dinosaur taxa of North America”. Journal of Systematic Palaeontology 5 (2): 209–243. doi:10.1017/S1477201907002040. 
  18. ^ Nesbitt, S.J.; Sidor, C.A.; Irmis, R.B.; Angielczyk, K.D.; Smith, R.M.H.; Tsuji, L.M.A. (2010). “Ecologically distinct dinosaurian sister group shows early diversification of Ornithodira”. Nature 464 (7285): 95–98. doi:10.1038/nature08718. PMID 20203608. 
  19. ^ Christian F. Kammerer, Sterling J. Nesbitt, and Neil H. Shubin (2011) The first basal dinosauriform (Silesauridae) from the Late Triassic of Morocco. Acta Palaeontologica Polonica (in press) doi:10.4202/app.2011.0015 [1]
  20. ^ Kammerer, Christian F.; Nesbitt, Sterling J.; Flynn, John J.; Ranivoharimanana, Lovasoa; Wyss, André R. (2020-07-28). “A tiny ornithodiran archosaur from the Triassic of Madagascar and the role of miniaturization in dinosaur and pterosaur ancestry” (英語). Proceedings of the National Academy of Sciences 117 (30): 17932–17936. doi:10.1073/pnas.1916631117. ISSN 0027-8424. PMC 7395432. PMID 32631980. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7395432/. 
  21. ^ a b 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「cau2018」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  22. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「ezcurra2020」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
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関連項目編集

  • 翼竜 - 恐竜様類と姉妹群を成す。

外部リンク編集