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金正日政治軍事大学(キムジョンイルせいじぐんじだいがく/朝鮮語表記:김정일정치군사대학교)とは、北朝鮮平壌市に本部をおく大学である。別名を「朝鮮労働党130連絡所」「人民軍695軍部隊」ともいう[1]

概要編集

金正日政治軍事大学は北朝鮮の首都平壌にあり、朝鮮労働党朝鮮人民軍、政府機関などの幹部となりうる人材を育成する大学である。ここでは主体思想に代表される政治思想教育が徹底して行われる。単なるスパイ養成専門の大学ではない。入学には、学業優秀は当然として、主体思想を身に付け他に模範となる者であって、朝鮮労働党や政府幹部の推薦が必要とされている。

沿革編集

金正日政治軍事大学は朝鮮労働党中央党三号庁舎の作戦部に属する。中央党三号庁舎は「朝鮮半島の平和統一というものはありえず、武力による赤化統一によって実現する」とする金日成金正日の指導に基づいて組織された機関である。中央党三号庁舎は、北朝鮮が武力統一を実現するため、韓国内部に反政府勢力を構築する工作員を必要とした。そのため金正日政治軍事大学は当初、対南(対韓国)工作員を養成するための教育機関として発足し、その後、対日本中国米国ヨーロッパ諸国に対応する工作員の養成に対象を広げた。同時に、現役工作員が居住しながら、再教育を受けるための招待所も創設された。また、戦前の陸軍中野学校の教育精神を見習って工作員を教育している。

  •   - 金剛学院が設置される
  •   - 政治学校に改称
  •  1960年代 - 金星政治軍事大学に改称
  •  1980年代 - 朝鮮労働党中央委員会直属政治学校に改称
  •  1992年1月25日 - 金正日政治軍事大学に改称 

所在地編集

平壌市兄弟山区域鶴山里と龍城区域新美里一帯の広大なキャンパスを持つ。 なお、北朝鮮の地図では金正日政治軍事大学を行政地域として表示しておらず、外部に住所を知らせる場合は「平壌市牡丹峰区域平和二洞」という仮の住所を表示する。

交通編集

順安飛行場(平壌国際空港)から平壌市内に入る際、左側に大きな放送アンテナが2つ設置された山が見える。この山を越えたところに金正日政治軍事大学の区域がある。

校風編集

校風は「無法者」とされる。学生は過酷な訓練を経て無法者に変わる。例えば1984年には、第19期生が平壌市の中心地にある遊園地で、一般人や軍人に暴行するという事件が起こり大きな社会問題になった。また第21期生35名が、北朝鮮人民軍の一個大隊をあっという間に倒した事件がある。

学科編集

以下の3つの班(学科)があるとされる。

  •  情報班
  •  外国語班
  •  戦闘員班

軍事訓練編集

北朝鮮の朝鮮労働党作戦部に属する工作員養成機関として、学生に対して射撃格闘水泳無線語学主体思想などを徹底的に教育する。 また、4年制大学の一般課目も教育する。現在の教育期間は6年2ヶ月である。なお、第10期生・第11期生の卒業当時の教育期間は2年であった。また金賢姫は1年間の短期コースを受けた。

陸上訓練編集

  • 新兵訓練は6ヶ月間行われる。
  • 25kgの砂袋を背負い、毎日5kmの距離を1時間で走る。
  • 毎月一度、25kgの砂袋を背負い、40kmの山道を3時間30分で走りきる訓練を行う。
  • 地図を頭にたたきこんで、深い山道を数十キロ歩く「地形学単独訓練」を行う。
  • 数十分以内に穴を掘って潜り込むピット訓練を行う。
  • 自動車の運転を習得する。
  • オートバイの運転を習得する。

水中訓練編集

  • 1年生は10kmを3時間以内で泳げなければならない。
  • 2年生は50kmを泳げなければならない。
  • 150気圧の酸素ボンベを使いながら、30kmの距離を2時間で一度も頭を出さず目標に到達する。
  • 潜水しながら大型船に接近し、船舶を奪う訓練を行う。
  • 氷点下の水中にじっと20分間つかる寒冷克服訓練を行う。

格闘訓練編集

  • 股を割る訓練を行う。
  • 素手でブロックを割る訓練を行う。
  • 棍棒で打たれる訓練を行う。
  • 酒瓶を砕いたガラスの上で半裸で横になり、苦痛に耐える訓練を行う。

短刀操法編集

  • 短剣で相手の急所を刺す訓練を行う。

射撃訓練編集

海上訓練編集

  • 工作船の操縦、無線通信、レーダー操作の訓練を行う。
  • モールス通信の訓練を行う。

合法訓練、半合法訓練、非合法訓練編集

  • 変装訓練を行う。
  • 進入訓練を行う。
  • 盗みの訓練を行う。
  • 拉致訓練を行う。
  • テロ訓練を行う。実際の放送局を使った放送局破壊訓練がある。

教育編集

主体思想を徹底的に叩き込まれ、以下の学課を学習する。

  •  革命歴史
  •  労作
  •  思想
  •  哲学
  •  情報学

語学編集

潜行相手国で、本国人と見分けがつかないよう語学教育を施す。金賢姫は日本語に関して、日本人と区別がつかないほど堪能である[2]

韓国化訓練編集

工作員が韓国人化するための訓練を5ヶ月間行う。 訓練場所である韓国人化教育会館は地下のトンネルにあり、韓国のソウルを再現している。

例えば、薬局における実習では、拉致してきた本物の薬剤師と買い物の実習をする。 また、韓国軍の内情について非常に詳しく学ぶ。 このほか、カラオケの訓練もするという。

映画編集

日本の『新幹線大爆破』、『陸軍中野学校』や、アクション映画などの300本を越える外国の映画を見る。なお、『新幹線大爆破』は、金正日が「スパイになる者にはかならず一度は見せるべき映画だ」と指示したため、学生に見せるようになった。

教官編集

指導員は工作員がなる。また、他の海軍軍事大学を首席で卒業した軍人が務めたことがあるが、他大学出身であったため、いじめにあい転出したとされている。

外国人化訓練では、李恩恵などのように、拉致された外国人が務める。 安明進は大学の構内で拉致された日本人を6名、その他の分校や招待所915病院で十数名を見たと証言しており、さらに何時、何処でどのように拉致したかについての証言を先輩の工作員から聞いている。

生徒数編集

全生徒数は400人を越える。1998年当時、訓練された工作員は3000名、作戦待機中の工作員は2000名と言われた。

予算編集

金正日政治軍事大学の予算は、北朝鮮の一つの州をまかなえる程巨額であるという。

卒業生の進路編集

卒業生は、作戦部が保有している開城沙里院清津元山南浦海州などの連絡所に配属され、さらに専門教育を施される。また作戦が終わると招待所で再教育される。なお、清津連絡所対日工作も行っている。対日進入は容易であるため、卒業生の中で成績の低い生徒が配属されるとされる。もっとも成績の良い生徒は対南(対韓国)工作に従事する。

著名な卒業生編集

分校編集

  • ボンファ政治大学

参考文献編集

  1. ^ 安明進(著)・金燦(訳)『北朝鮮拉致工作員』(徳間文庫2000年ISBN 978-4198912857
  2. ^ 金賢姫(著)・池田菊敏(訳)『金賢姫全告白 いま、女として』(文藝春秋1991年ISBN 4163456406ISBN 4163456503

外部リンク編集