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風の歌を聴け』は、大森一樹監督による日本映画1981年公開。

風の歌を聴け
監督 大森一樹
脚本 大森一樹
原作 村上春樹
製作 佐々木史朗
出演者 小林薫
真行寺君枝
巻上公一
音楽 千野秀一
主題歌 カリフォルニア・ガールズ
ザ・ビーチ・ボーイズ
撮影 渡辺健治
編集 吉田栄子
配給 ATG
公開 1981年12月19日
上映時間 100分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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村上春樹が1979年に発表した同名の作品を原作とする。

概要編集

監督の大森一樹は村上春樹と同じ芦屋市の出身で、かつ芦屋市立精道中学校の後輩に当たる[1]。当時大森は『ヒポクラテスたち』でブレイクした直後であり、小説の主人公の設定年齢や原作執筆時の村上と同じ29歳であった。主要キャストにミュージシャンの坂田明巻上公一を起用している。また、室井滋の商業映画デビュー作でもある。

カメラワークの美しさを評価する声がある[2]一方、原作の精神を具象化し切れていない[3]、まじめな青春映画になってしまった[4]などの評価がある。監督自身は好きな映画トップ3に入れるほど気に入っており[5]、監督曰く「村上さんも評価してくれていた」という[6]。主演の真行寺君枝も「私の代表作」「大変な低バジェットでしたが、あれほどに楽しかった撮影は後にも先にもこの一本に尽きます」と語っている。

演出手法について編集

映画の冒頭ではデレク・ハートフィールドの『火星の井戸』の一部が字幕で引用され、大森の『ヒポクラテスたち』と同様の手法となっている[2]。また、終盤の「小指のない女の子」と「僕」のベッドシーンが『アニー・ホール』のようにスーパーインポーズで会話を進めている点、鼠の製作した8ミリ映画の中で『ウディ・アレンのバナナ』のようにコマ落としで人物が走り回る点などについては、ウディ・アレンの影響が指摘されている[7]

大森は、ヌーヴェル・ヴァーグの作品、とりわけ「ゴダールの『男性・女性』あたり」をかなり意識して作ったと言っている[8]

原作小説との差異編集

大森は「自分の映画の一要素として原作を扱った」と語っており[2]、原作のストーリーをなぞりつつも、「小指のない女の子」の双子の姉妹や鼠の女を明示的に登場させたり、10年後の荒廃した「ジェイズ・バー」など独自のエピソードを加えている。また原作で鼠は小説を書いていたが、映画では8ミリ映画製作に替わっている。なお、原作に忠実なシーンとしては鼠と「僕」の出会いのシーンなどが挙げられる。ほか、『1973年のピンボール』のストーリーを意識したと思われる場面も登場する。

また、原作の時代設定は1970年の8月8日から8月26日であるが、同年にはまだ存在していない神戸行き高速バスが登場するなど、原作より数年後に時代が置換されていると考えられている[7]。他方で、新宿騒乱神戸まつり事件などの描写には1970年前後への大森の強い思いがあるとの指摘がある[9]ホレス・マッコイの『彼らは廃馬を撃つ』の台詞を引用し、『ベトナムから遠く離れて』のポスターを登場させているのも同様の考えからとされる[9]

スタッフ編集

キャスト編集

声の出演

備考編集

  • 村上春樹はエッセイの中でこう述べている。「『風の歌を聴け』という最初の小説を書いたとき、もしこの本を映画にするなら、タイトルバックに流れる音楽は『ムーンライト・セレナーデ』がいいだろうなとふと思ったことを覚えている。そこにはエアポケット的と言ってもいい、不思議に擬古的な空気がある。僕の頭の中で、その時代の神戸の風景はどこかしら『ムーンライト・セレナーデ』的なのだ」[11]
  • 途中で流れるビーチ・ボーイズの「カリフォルニア・ガールズ」の楽曲使用料に数百万円が費やされ、映画全体の制作費を圧迫した[6]

参考文献編集

  • 今野雄二「陽炎のメモリ-・メモリ-(「風の歌を聴け」特集)」『キネマ旬報』、827号、1982年、P.84-85
  • 川本三郎「「華麗な虚偽」より「貧弱な真実」(「風の歌を聴け」特集)」『キネマ旬報』、827号、1982年、P.86-87
  • 桂千穂「邦画傑作拾遺集-32-「風の歌を聴け」「近頃なぜかチャ-ルストン」ほか」『シナリオ』、38巻2号、1982年、P.90-92

脚注編集

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  1. ^ 村上春樹、安西水丸共著『村上朝日堂新潮文庫、58頁。
  2. ^ a b c 今野、1982年、P.84
  3. ^ 桂、1982年、P.90
  4. ^ 川本、1982年、P.86
  5. ^ 大森一樹企画による「大阪芸術大学 映像学科研究室一同お勧め映画」[1]より
  6. ^ a b 2005年、「JAGDA ONE DAY SCHOOL in OSAKA」[2]における映画上映後の監督の解説
  7. ^ a b 今野、1982年、P.85
  8. ^ ユリイカ臨時増刊 総特集村上春樹の世界』1989年6月号、52頁。大森一樹「完成した小説・これから完成する映画」。
  9. ^ a b 川本、1982年、P.87
  10. ^ 映画『八月の濡れた砂』の主演俳優、大森組の主要脇役俳優だった。
  11. ^ 村上春樹・和田誠ポートレイト・イン・ジャズ』新潮文庫、2008年2月、201-202頁。

関連項目編集

外部リンク編集