巻上 公一(まきがみ こういち、1956年1月25日 - )は日本音楽家、詩人、プロデューサー。作詞、作曲家であり、歌手に留まらないヴォイスパフォーマーとして国際的に知られている。演奏は、口琴テルミンなどの特殊なものから、コルネット、ベース、エレクトロニクスなど複数の楽器をこなす。静岡県熱海市出身[1]

巻上公一
生誕 (1956-01-25) 1956年1月25日(64歳)
出身地 日本の旗 日本 静岡県熱海市
学歴 神奈川県立小田原高等学校卒業
ジャンル テクノポップ
プログレッシブ・ロック
ニュー・ウェイヴ
職業 シンガーソングライター
プロデューサー
担当楽器 ボーカル
ベース
口琴
テルミン
コルネット
尺八
活動期間 1977年 -
共同作業者 ヒカシュー
公式サイト 巻上公一公式サイト

ヒカシュー」のリーダーである。巻上自身が、ヒカシューの名前は武満徹の「悲歌」にちなんでつけたと証言している。デビュー当時はP-MODELプラスチックスと並び「テクノ御三家」の一つにも数えられたが、前衛音楽、前衛ロックやフリージャズまで含めて、例外を作り出す音楽を真骨頂としているバンドとして、長期間活動している。自らをパタフィジック(形而上学をこえたものを研究する哲学)の曲と、インプロ(即興演奏)のグループと定義している。

ロシア連邦トゥバ共和国の喉歌ホーメイの日本の第一人者である。1994年から交流を続けている。2017年には、国際コンテスト現代部門で、優勝する。

略歴編集

中学校時代(湯河原町立湯河原中学校)、美術部で井上誠と知りあう。当時は8ミリフィルムのスクラッチング作品を作っていた。

高校時代(神奈川県立小田原高等学校)、戸辺淳(哲の兄)と劇団ユリシーズを結成。海琳正道(現・三田超人)を劇団の活動に引き抜く。 その他に、3年間新聞部の部長も務め、新聞部全国大会2位、首都圏最優秀などを受賞した。 その後輩に、後に「フールズメイト」を創刊する北村昌士がいた[2]

高校在学中に、劇団「東京キッドブラザーズ」のオーディションを受け、ロックミュージカル「ザ・シティ」海外公演に出演する。ニューヨークではラママ劇場、ロンドンではロイヤル・コート・シアターでの長期公演を経験する。ロンドンでキッドを退団。楠原映二ヒラリー・ウェストレイクに誘われ、ピンク・フロイドロジャー・ウォーターズがパトロンをしていたフリンジ劇団ルミエール&サン」に参加。ヘンリー・カウ[3]が音楽を担当する劇団でもあり、ここで即興の多くを学ぶ。

帰国後、原宿学校(現在の東京映像学院)で映画を学びながら、キッドを一緒に退団した深水三章堀勉とともにミスタースリムカンパニーの旗揚げに参加。プロデューサーを務める。

また同時に自身の劇団「ユリシーズ」を1976年に再結成。 1977年に虫の一生を描く前衛パフォーマンス「コレクティングネット」の音楽を山下康・井上誠に依頼した。 1978年に第2弾「幼虫の危機」を上演。この時「プヨプヨ」「幼虫の危機」などの作品が生まれた。 これらの歌をもとにその年の夏、「ヒカシュー」を結成。吉祥寺の羅宇屋でデビューした。当時はニューウェイブ全盛期だったが、当初はプラスティックスなどとともにテクノポップのバンドとみられていた。

1981年に、かつて通っていた原宿学校シナリオ科の講師であった佐藤重臣に依頼し、トッド・ブラウニングの映画『フリークス』の上映イベントを行う。

また同年、村上春樹原作、大森一樹監督作品『風の歌を聴け』に鼠役で出演した。映画では劇中劇の挿入歌もヒカシューとして提供している。また、スペクトラム、EPO、FAIRCHILD、佐藤隆など他アーティストの楽曲を作詞することもある。

他にこの頃、南伸坊提唱・糸井重里命名のパフォーマンス集団「HAND-JOE」に末井昭上杉清文鈴木祐弘山崎邦彦らと参加。また、写真家・滝本淳助も加えて「ハンジョウ・オール・スターズ(H.A.S.)」として音楽活動も行った。

なお、ヒカシューは前衛音楽のバンドとして継続して40年以上活動を続けており、現在もマンスリーで吉祥寺Star Pine's Cafeでライブを行う他、海外や地方でのツアーも行っている。

1995年にニューヨークのJohn ZornのTZADIKレーベルから出したソロヴォイスアルバム「KUCHINOHA」をきっかけに、ヨーロッパや北米のコンテンポラリーミュージックのフェスティバルにボイスパフォーマーとして招聘されるようになる。

また、トゥバ共和国モンゴルなどの伝統的な歌唱法「ホーミー ホーメイ喉歌)」の研究者・歌手としても知られている[4]

1994年に、白州フェスティバルに来日中のトゥバ共和国のホーメイ歌手の歌を聴いて魅了され、その場で頼んで習い始めた。翌年にはトゥバ共和国を訪問。以来毎年訪問しては現地の演奏家と交流を続けている。トゥバ共和国で開催される国際ホーメイフェスティバルではコンクールの審査員を務める。 またトゥバ共和国から歌手や研究者を招聘し、日本国内で数々の公演やホーメイフェスティバルなどを開催する他、喉歌専門のレーベルEKI ATTALを立ち上げ数々のアルバムを制作したり、ホーメイを教える催しを続けている[5]

1998年に、作演出音楽を担当した世界初の口琴室内オペラ「ホムス〜ぼくは頭をびょんびょんした」で、スイスの超絶口琴演奏家アントン・ブリューヒンを招聘。口琴ブームの火付け役となった(知久寿焼や時々自動の朝比奈尚行はこれをきっかけに口琴を知る)。

2005年の愛・地球博ノルウェーの日の司会をきっかけにノルウェーのドラマー、Thomas Strønenとのコラボーレーションがはじまる。彼のプロジェクト Food、Humcrush、Meadow、Time is a Blind Guide と相次ぎ共演する。

国内ではカルメン・マキチャラン・ポ・ランタンと共演、海外ではロシアやヨーロッパで公演と、活発な音楽活動を展開している。近年は、JAZZ ART せんがわや湯河原現代音楽フェスティバル、熱海未来音楽祭など、即興音楽(フリーインプロヴィゼーション)とダンスや美術、詩の朗読などとコラボする様々なジャンルを横断するフェスをプロデュースしている。

ボイス・パフォーマンス講座編集

自著『声帯から極楽』で歌唱の可能性の拡張をめざすとした「超歌唱法」の実践普及活動として、多摩川のいずるばでヴォイス・パフォーマンスのワークショップを毎月開催している[6]

作品編集

アルバム編集

  • 『民族の祭典』(1982年)
  • 『殺しのブルース』(1992年)
  • 『KUCHINOHA』(1995年)
  • 『ELECTRIC EEL』(1998年)
  • 『KOEDARAKE』(2005年)
  • 『TOMPAL』(2005年)MAKIGAMI SANTACHI(巻上公一、三田超人、坂出雅海)
  • 『月下のエーテル』(2006年)
  • 『TOKYO TAIGA』(2010年)АЯ(ボロット・バイルシェフ、佐藤正治、巻上公一)
  • ヒカシュー全アルバム
  1. ヒカシュー(1980年)
  2. (1980年)
  3. うわさの人類(1981年)
  4. ヒカシュー・スーパー(1981年)
  5. 私の愉しみ(1984年)
  6. 水に流して(1984年)
  7. そばでよければ(1985年、レコードのみ)
  8. なにもかも踊れ(1987年、カセットのみ)
  9. 人間の顔(1988年)
  10. ヒカシューLIVE!(1989年)
  11. 丁重なおもてなし(1990年)
  12. はなうたはじめ Humming Soon(1991年)
  13. あっちの目こっちの目(1993年)
  14. 超時空世紀オーガス02(1993年、サウンドトラック)「不思議をみつめて」2012年に改題
  15. かわってる(1996年、セルフカバーベスト)
  16. 1978(1996年、デビュー前の「練馬時代」の未発表音源集)
  17. ヒカシューヒストリー(2001年)NewYorkのTZADIKレーベルから発売
  18. 転々(2006年)
  19. 生きること(2008年)
  20. 転転々(2009年)
  21. うらごえ(2012年)
  22. 万感(2013年)
  23. ヒカシュースーパー2(2014年)
  24. 生きてこい沈黙(2015年)
  25. そばでよければ(2016)
  26. なにもかも踊れ(2016)
  27. 自殺なディスコ(2016年)
  28. あんぐり(2017年)
  29. 絶景 初回限定盤(2017年)
  30. ヒカシュー20世紀ベスト(2018年)
  31. ヒカシュー21世紀ベスト(2018年)
  32. 絶景 通常盤 (2019年)

演出作品編集

音楽編集

演劇編集

  • ユリシーズ 作演出

「不死鳥の謎」1976 「途切れた旋律」1976 「最后の晩餐」1977 「コレクティングネット」1977 「幼虫の危機」1978

  • 劇団ワンダーランド

「善悪の彼岸過ぎまで」1984

  • 小林紀子バレエシアター「そばでよければ」1985
  • チュチュランドアカデミー

「なにもかも踊れ」1987 「あたま割り人形」1987「自殺なディスコ」1989

  • プロデュース公演 「ドイナ」1995「マインドキング」1995「ホムス~ぼくは頭をびょんびょんした」1998

「エジプトロジー~わたしの頭は大トンカチだった」2000「Paradise from vocalbox」イタリアBeneton Fabrica2002

  • マキガミックテアトリック

「チャクルパ」2004「シークレットカンフーシアター」2005,2006 「チャクルパ2ザーウミの海で」2006 「テルミンランデブー」2006 「チャクルパッタム」2006 「チャクルパ3 ウルルンソナタ」2007

「メンデルサッコンの渦巻」2014

・KAAT プロデュース「日輪の翼」音楽監督 2016

イベントプロデュース編集

  • John Zorn's Cobra 東京作戦 1993年から継続中 ホーメイフェスティバル in Japan 2001 2003
  • Jazz Art せんがわ 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 
  • 湯河原現代音楽フェスティバル 2009 2010
  • 熱海未来音楽祭 2019
  • Festival NEO-VOICE 2010(共同プロデュース 天鼓)

CDプロデュース編集

  • ボロット・バイルシェフ『アルタイのカイ 秘密の夢〜英雄叙事詩の世界』(2001 キングレコード)
  • АЯ 『TOKYO TAIGA』(2010 TZADIK) 
  • オンダール・モングンオール『Boidus tolu 虹のホーメイ』(2001 EKI ATTAL)
  • アンドレイ・モングッシュ『祈りのホーメイ』(2008 EKI ATTAL)
  • 『Kargyraa in Taiga』(2010 EKI ATTAL)
  • トゥバ・アンサンブル『エスケチェル』( 2001 CRESCENT)
  • ソロンゴ『虹という名の少女』(1997 東芝EMI)
  • 『都に雨の降る如く』(1989 東芝EMI)
  • 『ミュージック・ノンストップ〜ア・トリビュート・トゥ・クラフトワーク』(1998 東芝EMI)

出演編集

映画編集

ラジオ編集

フェスティバル編集

  • イギリスのカンパニーウィーク1994、
  • トゥバ国際ホーメイフェスティバル1995 1998 2003 2008、2013、2015、2017、2019
  • ドイツの「震える舌」フェスティバル 1999、
  • スイスのタクトロスフェスティバル1996 1999、
  • モスクワ「丸呑み或いは危険な声帯」フェスティバル 2000
  • オーストラリアのWhat is musicフェスティバル 2001、
  • オーストリア・インスブルック音楽祭 2002、
  • カナダのVicto 2003 アルタイ共和国・エルオユン2002、カイフェスティバル 2004
  • カルムキア語り部フェスティバル2005
  • ノルウェイのウルティマ現代音楽祭2005、
  • ニュージーランドのASIA-PACIFIC FESTIVAL2007、
  • 英国・ブライトンのColour out of space2008
  • オーストリア・クレムスのKONTRASTE 2008
  • スペイン・カセレスVostel Museum 2009
  • オーストリア・ヴェルス Unlimited 2009
  • ニューヨークジャパンソサエティ 2006 2008 ヒカシュー公演 2011 2017
  • カナダのVicto 2011 АЯ(ボロット・バイルシェフ、佐藤正治とのトリオ)で出演
  • the Wundergrund Festival コペンハーゲン 2011
  • NATT JAZZ ノルウェーベルゲン 2012
  • Bergen International Festival 2012
  • Kongsberg jazz 2012
  • Copenhagen Jazz Festival 2012
  • Umea MADE festival2013
  • Beyond the border 2014
  • フジロックフェスティバル Fuji Rock festival 2010 2012 2014 2017 2018 2019
  • the Stone residencies NYC 2014 2017
  • リトアニア Vilnius Jazz 2015
  • ロシア Festival Vladimir Rezitskogo, Arkhangelsk 2015
  • デンマーク G((o))NG TOMORROW festival Copenhagen 2015
  • カムチャツカ kamchatka Alhalalalai festival 2015 2016
  • ポーランド Wrocław,Jazztopad Festival 2016
  • エストニア Tallinn Music Week 2019

著書編集

関連項目編集

編集

  1. ^ ほぼ日刊イトイ新聞 - 婦人公論 井戸端会議”. 2011年8月10日閲覧。
  2. ^ そのため、初期「フールズメイト」の編集部は、巻上宅内にあった。
  3. ^ https://www.discogs.com/Henry-Cow-The-Henry-Cow-Legend/master/65994
  4. ^ ∀ガンダム』主題歌「ターンAターン西城秀樹)の冒頭などでそれを聴く事ができる。
  5. ^ 倉重奈苗「トゥバ共和国と私 自由な旋律に魅せられて 歌唱家・巻上公一さん」『朝日新聞』(朝刊)2008年5月27日付、7面。
  6. ^ 詳細は外部リンク参照

外部リンク編集