1976年ドイツグランプリXXXVIII Großer Preis von Deutschland)は、1976年のF1世界選手権第10戦として、1976年8月1日ニュルブルクリンクで開催された。 ニュルブルクリンク北コース“ノルドシュライフェ”で開催された最後のF1レースである。

ドイツの旗 1976年ドイツグランプリ
レース詳細
日程 1976年シーズン第10戦
決勝開催日 8月1日
開催地 ニュルブルクリンク
ドイツ ニュルブルク
コース長 22.835km
レース距離 14周 (319.690km)
決勝日天候 雨のち晴れ
ポールポジション
ドライバー
タイム 7'06.5
ファステストラップ
ドライバー 南アフリカの旗 ジョディ・シェクター
タイム 7'10.8 (Lap 13)
決勝順位
優勝
2位
3位

予選 編集

 
予選でのニキ・ラウダ
 
クレイ・レガツォーニ(予選2日目)

2年連続ドイツGPポールポジションを獲得しているニキ・ラウダが1日目の午前中に7分08秒2を記録。スペインGPから施行されたインダクションポッド規制の影響のため、7分を切った前年のポールタイムから10秒も遅れた[1]。それにジェームス・ハントクレイ・レガツォーニと続く。午後になってハントが7分06秒5でラウダを抜いて暫定1位となった。

2日目は雨のためどのドライバーもタイムを更新することができず、結局ハントのポールポジションが確定。ラウダは2位。3位にパトリック・デパイユ、4位は地元ドイツのハンス=ヨアヒム・スタックフェラーリ陣営はラウダのマシンに新しいセッティングを組んで予選に挑む予定だったが、当てが外れた格好となった。チームマネージャーのダニエル・オーデットは決勝当日の朝に全コースを使ったフリー走行の時間を設けるよう依頼したが、嘆願書の提出が遅かったため、予定を変更することはできないとして却下されている[2]

結果 編集

 
ジョディ・シェクター
 
ロルフ・シュトメレン
 
ハンス=ヨアヒム・スタック。ブランビラ車とはロールバーの高さが異なる。
 
マーチ761をドライブするヴィットリオ・ブランビラ

[3]

順位 No ドライバー コンストラクター 1回目 2回目 3回目
1 11   ジェームス・ハント マクラーレンフォード 7'10.3 7'06.5 -
2 1   ニキ・ラウダ フェラーリ 7'08.2 7'07.4 9'36.8
3 4   パトリック・デパイユ ティレルフォード 7'15.6 7'08.8 8'34.4
4 34   ハンス=ヨアヒム・スタック マーチフォード 7'10.1 7'09.1 8'13.1
5 2   クレイ・レガツォーニ フェラーリ 7'11.8 7'09.3 8'05.8
6 26   ジャック・ラフィット リジェマトラ 7'13.6 7'11.3 9'08.2
7 8   カルロス・パーチェ ブラバムアルファロメオ 7'18.7 7'12.0 -
8 3   ジョディー・シェクター ティレルフォード 7'18.0 7'12.2 9'43.0
9 12   ヨッヘン・マス マクラーレンフォード 7'15.3 7'13.0 -
10 7   カルロス・ロイテマン ブラバムアルファロメオ 7'24.9 7'14.9 8'32.4
11 10   ロニー・ピーターソン マーチフォード - 7'14.9 7'27.3
12 5   マリオ・アンドレッティ ロータスフォード 7'20.5 7'16.1 8'17.6
13 9   ヴィットリオ・ブランビラ マーチフォード 7'17.7 7'23.5 7'47.3
14 19   アラン・ジョーンズ サーティースフォード 7'27.1 7'19.9 -
15 77   ロルフ・シュトメレン ブラバムアルファロメオ 7'33.5 7'21.6[4] 8'02.3
16 6   グンナー・ニルソン ロータスフォード 7'32.5 7'23.0 9'21.0
17 22   クリス・エイモン エンサインフォード 7'35.3 7'23.1 9'06.0
18 16   トム・プライス シャドウフォード 7'25.4 7'23.3 8'11.3
19 28   ジョン・ワトソン ペンスキーフォード 7'34.9 7'23.5 8'19.8
20 30   エマーソン・フィッティパルディ フィッティパルディフォード 7'32.1 7'28.0 12'31.2
21 20   アルトゥーロ・メルツァリオ ウィリアムズフォード 7'37.2 7'28.8 -
22 24   ハラルド・アートル ヘスケスフォード 7'33.9 7'30.0 17'38.7
23 17   ジャン=ピエール・ジャリエ シャドウフォード 7'53.9 7'30.9 9'18.1
24 18   ブレット・ランガー サーティースフォード 7'44.6 7'32.7 8'16.8
25 25   ガイ・エドワーズ ヘスケスフォード 7'47.8 7'38.6 9'59.0
26・ 40   アレッサンドロ・ペゼンティ=ロッシ ティレルフォード 7'59.1 7'48.5 9'39.2
DNQ 33   レラ・ロンバルディ ブラバムフォード 7'51.4 7'51.1
DNQ 38   アンリ・ペスカロロ サーティースフォード - 8'04.2 9'09.8

決勝 編集

決勝当日は、前日の雨の影響で路面が濡れていてコースの一部では雨が降り始めていた。ほとんどのマシンはレインタイヤを装着する中、ヨッヘン・マス(マクラーレン)だけはスリックタイヤを履く。スタート後、レガツォーニがトップ、その後にハント。ラウダはホイールスピンを起こしたためスタートが遅れる。その後、路面が乾き始めたため、マス以外のマシンはタイヤ交換のためピットイン。ラウダもピットインするが、タイヤ交換に手間取って後退する。

 
炎上するラウダのフェラーリ

2周目に入りコース北部のコーナー“ベルグヴェルグ”手前のカーブに差し掛かった時、ラウダのフェラーリが突然挙動を乱し、右に回転しながらフェンスを突き破ってマシン左側面から山肌に激突、炎上しながらコースに弾き飛ばされた。直後を走っていたガイ・エドワーズヘスケスはかろうじてそれをかわしたが、ブレット・ランガーサーティースはコース上に止まったフェラーリに正面から突っ込み、さらにハラルド・アートルのヘスケスも巻き込まれた。エドワーズ達3人とあとから加わったアルトゥーロ・メルツァリオによってラウダは救出され、病院に搬送される。この事故の模様は近くにいた少年によって8ミリフィルムで記録されていた[5]

レースは赤旗中断された。クリス・エイモンは事故にショックを受け再レースを棄権[6]。結局このレースがエイモンの最後のF1レースとなる[7]。1時間後にレースは再開され、ハントが終始トップを守って優勝する。2位はジョディー・シェクター、3位にマスが入った。このレース以降、チャンピオン争いの流れはハントに傾いていく。

炎上するマシンの中に45秒間取り残されていた[8]ラウダは、マンハイム大学病院に移され治療を受けた。炎とマシンが炎上した際FRP製の車体から発生したガスを吸ったために肺や血液の機能が低下したため[9]、一時期生命が危ぶまれたが、その後奇跡的に回復し約1ヶ月後のイタリアGPで復帰する事になる。

結果 編集

順位 No ドライバー コンストラクタ 周回 タイム/リタイヤ グリッド ポイント
1 11   ジェームス・ハント マクラーレンフォード 14 1:41'42.7 1 9
2 3   ジョディー・シェクター ティレルフォード 14 1:42'10.4 8 6
3 12   ヨッヘン・マス マクラーレンフォード 14 1:42'35.1 9 4
4 8   カルロス・パーチェ ブラバムアルファロメオ 14 1:42'36.9 7 3
5 6   グンナー・ニルソン ロータスフォード 14 1:43'40.0 16 2
6 77   ロルフ・シュトメレン ブラバムアルファロメオ 14 1:44'13.0 15 1
7 28   ジョン・ワトソン ペンスキーフォード 14 1:44'16.6 19
8 16   トム・プライス シャドウフォード 14 1:44'30.9 18
9 2   クレイ・レガツォーニ フェラーリ 14 1:45'28.7 5
10 19   アラン・ジョーンズ サーティースフォード 14 1:45'30.0 14
11 17   ジャン=ピエール・ジャリエ シャドウフォード 14 1:46'34.4 23
12 5   マリオ・アンドレッティ ロータスフォード 14 1:46'40.8 12
13 30   エマーソン・フィッティパルディ フィッティパルディフォード 14 1:47'07.9 20
14 40   アレッサンドロ・ペゼンティ=ロッシ ティレルフォード 13 1:43'19.8 26
15 25   ガイ・エドワーズ ヘスケスフォード 13 1:46'55.8 25
Ret 20   アルトゥーロ・メルツァリオ ウィリアムズフォード 3 ブレーキ 21
Ret 9   ヴィットリオ・ブランビラ マーチフォード 1 アクシデント 13
Ret 4   パトリック・デパイユ ティレルフォード 0 アクシデント 3
Ret 7   カルロス・ロイテマン ブラバムアルファロメオ 0 フューエルシステム 10
Ret 10   ロニー・ピーターソン マーチフォード 0 アクシデント 11
Ret 34   ハンス=ヨアヒム・スタック マーチフォード (1) クラッチ 4
Ret 26   ジャック・ラフィット リジェマトラ (1) ギアボックス 6
Ret 22   クリス・エイモン エンサインフォード (1) 出走取り消し 17
Ret 1   ニキ・ラウダ フェラーリ (1) アクシデント 2
Ret 18   ブレット・ランガー サーティースフォード (1) アクシデント 24
Ret 24   ハラルド・アートル ヘスケスフォード (1) アクシデント 22
DNQ 33   レラ・ロンバルディ ブラバムフォード - 予選不通過 27
DNQ 38   アンリ・ペスカロロ サーティースフォード - 予選不通過 28
  • 周回数に () の付いているドライバーは再レースに出走しなかった事を示す。
  • ラップリーダー - ジェームス・ハント (LAP1 - 14)

第10戦終了時点でのランキング 編集

  • :ドライバー、コンストラクター共にトップ5のみ表示。チャンピオンシップには前半8戦中ベスト7戦、後半8戦中ベスト7戦がカウントされる。ポイントはチャンピオンシップにカウントされるポイント、括弧内は総獲得ポイント。

脚注 編集

  1. ^ 『オートスポーツ』 1976年、91頁。
  2. ^ 『オートスポーツ』 1976年、92頁。
  3. ^ 『オートスポーツ』1976年、90頁。
  4. ^ ブラバム・BT44Bフォードで記録。2日目以降はブラバム・BT45に乗り換える。
  5. ^ アラン・ヘンリー著、森岡茂憲訳 『ニキ・ラウダ/不屈のチャンピオン』 ソニー・マガジンズ、1991年、71頁。
  6. ^ 『オートスポーツ』 1976年、96頁。
  7. ^ カナダGPにエントリーするが予選落ち。
  8. ^ 『F1 RACING』 2010年8月情報号、三栄書房、86頁。
  9. ^ Racing On』 455 [特集] ニキ・ラウダ、2011年、59頁。

参考資料 編集

関連項目 編集

前戦
1976年イギリスグランプリ
FIA F1世界選手権
1976年シーズン
次戦
1976年オーストリアグランプリ
前回開催
1975年ドイツグランプリ
  ドイツグランプリ 次回開催
1977年ドイツグランプリ