アラカシ(粗樫[10]学名: Quercus glauca)は、ブナ科コナラ属常緑広葉樹。別名で、クロガシ[1]ナラバガシ、ホソミノアラカシ[3]、ヒロハアラカシ[4]、ナガバアラカシ[5]ともいう。

アラカシ
Quercus glauca
Quercus glauca大阪府、2006年10月)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類I Eurosids I
: ブナ目 Fagales
: ブナ科 Fagaceae
: コナラ属 Quercus
亜属 : アカガシ亜属
Q. subg. Cyclobalanopsis
: アラカシ Q. glauca
学名
Quercus glauca Thunb.[1]
シノニム
和名
アラカシ(粗樫)、クロガシ、ナラバガシ
英名
ring-cup oak
Quercus glauca

特徴編集

常緑広葉樹の高木[11]樹皮は黒っぽい灰色で、成木でも表面に裂け目や割れ目などはなく、ほぼ平滑である[10]。若い木では、樹皮が褐色を帯びることがある[10]。若枝は紫褐色で、皮目がある[10]

互生し、長楕円形で先端が尖り、葉身は革質で硬く、葉縁の中央から先端にかけて粗い鋸歯がある[11][10]。葉の裏面は粉を吹いたように毛が多く、白味を帯びている[11][10]。芽吹きの頃の新葉は、赤褐色でよく目立つ[10]

開花期は4 - 5月で[11]雌雄異花

果実堅果(いわゆるドングリ)で、その年に熟す[11]殻斗(ドングリの入っている台のような部分)は状である。

冬芽は長卵形で、重なり合った多数の芽鱗に包まれて葉の付け根につき、枝先の頂芽は頂生側芽を伴って複数つく[10]

分布・生育地編集

中国台湾、朝鮮の済州島アジア東南部、日本に分布し、日本においては、本州宮城県以南・石川県以西、四国九州沖縄に分布する[11]

山野に生え[11]人里近くの雑木林に多く見られる。照葉樹林の構成種であるが、人為的攪乱にも強く、人手が入った二次林に特に多い。そのような森林は大体コジイとアラカシを中心とした森林になるが、極相ではタブノキなどが入るものと考えられる。照葉樹林そのものがほとんど残っていない場所でも、この種は比較的よく見られる。庭や公園にも、身近によく植えられていることも多い[10]

種内変異編集

  • 変種
アマミアラカシ Quercus glauca var.amamianaシノニムCyclobalanopsis amamiana
ホソバアラカシ Quercus glauca var. linearifolia
  • 品種
ヒリュウガシ Quercus glauca f. lacera
  • 園芸品種
ヨコメガシ Quercus glauca ' Fastigiata'
  • 交雑種
チンゼイガシ Quercus x kiusiana ハナガガシとの種間雑種
イズアカガシ(ヒメアカガシ) Quercus x yokohamensis シノニム Quercus x idzuensis アカガシとの種間雑種

天然記念物編集

都道府県指定

  • 山口県 : 秋穂二島のアラカシ - 山口県山口市秋穂二島1376番地 栄泰寺境内
  • 大分県 : 朝見神社のアラカシ林とクスノキ - 大分県別府市朝見2丁目 朝見神社境内
  • 兵庫県 : 栲幡原神社のカシ林 - 兵庫県養父市大屋町和田 栲幡原神社境内
  • 岐阜県 : 熊野神社のアラカシ - 岐阜県揖斐郡揖斐川町春日美束種本1216 熊野神社境内
  • 群馬県 : 雙林寺の千本樫 - 群馬県渋川市中郷 雙林寺境内
  • 茨城県 : 高宮神社のカシ - 茨城県常陸太田市大菅892 高宮神社境内
  • 広島県 : 鶴亀山の社叢のアラカシ林 - 広島県東広島市河内町入野恵能田 布多都宮神社境内
  • 香川県 : 根上りカシ - 香川県高松市栗林町1丁目20-16 栗林公園
  • 広島県 : 馬木八幡神社の社叢 - 広島県広島市東区馬木五丁目1370ほか 馬木八幡神社境内

市町村指定

利用編集

公園学校生け垣にもよく植栽されている[11]建築材として利用される[11]

材はシラカシに似るが木目が粗く質が劣るとされ、地方的な用途に留まる。

農具や工具の柄、餅つきの杵などの他、日本酒の撥ね木搾りの主材に利用される。

大きな木になると、樹皮の傷口から虫が入り、これにカブトムシクワガタムシが集まることがあり、クヌギほどではないが、そのような昆虫を見るのによい木である。特にヒラタクワガタの大型個体が樹洞に棲むことが多く、愛好者にとって見逃せない木とされている。

脚注編集

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus glauca Thunb.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus glauca Thunb. var. kuyuensis J.C.Liao” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus glauca Thunb. f. stenocarpa Honda” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  4. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus glauca Thunb. f. latifolia (Nakai) Hiyama” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  5. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus glauca Thunb. f. elongata (Honda) Sugim. ex Ohwi et Kitag., comb. nud.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cyclobalanopsis repandifolia (J.C.Liao) J.C.Liao” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cyclobalanopsis glauca (Thunb.) Oerst. var. kuyuensis (J.C.Liao) J.C.Liao” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  8. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus glauca Thunb. var. nudata Blume” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  9. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cyclobalanopsis glauca (Thunb.) Oerst.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月13日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 147.
  11. ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 101.

参考文献編集

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、147頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 平野隆久監修 永岡書店編 『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、101頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 茂木透写真 『樹に咲く花 離弁花1』高橋秀男勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、256-259頁。ISBN 4-635-07003-4 
  • 平野隆久写真、片桐啓子文 『探して楽しむドングリと松ぼっくり』山と溪谷社〈森の休日〉、2001年、22-23頁。ISBN 4-635-06321-6 
  • 伊藤ふくお 『どんぐりの図鑑』北川尚史監修、トンボ出版、2001年、34-35頁。ISBN 4-88716-144-1 
  • いわさゆうこ 『どんぐりハンドブック』八田洋章監修、文一総合出版、2010年、38-39頁。ISBN 978-4-8299-1176-1 
  • 米倉浩司、梶田忠「「BG Plants 和名−学名インデックス(YList)」

関連項目編集

外部リンク編集