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本項ではチリ国鉄 (EFE) に在籍している・もしくは在籍していた電車について記述する。チリ国鉄の広軌(1676 mmゲージ)路線は同国のバルパライソ州(第5州)以南、首都サンティアゴ・デ・チレ(以下サンティアゴとする)の南北を結んでいる。そのうち第8州までは幹線(チリ縦貫鉄道南部区間)が電化されている。最初の区間が電化された時期は1920年代で架線電圧直流3000Vとなっている。チリでの鉄道における旅客輸送の半数以上は現在、電車によって行われている。なお、チリ国鉄は上下分離政策により施設の保有と開発を担当する機能だけを残しており、列車の運行はいくつかの子会社により行われるようになっている。

AEZ編集

AEZ
 
AEZ-44(2002年11月・サンティアゴ中央(アラメダ)駅)
基本情報
運用者 チリ国鉄(EFE)
主要諸元
最高運転速度 140km/h
設計最高速度 160km/h
車両重量 空車時:Mc車75.5t・T車63.1t・T'車62.3t
車体長 25.1m
台車 ウィングバネ式・KW5(電動台車)/KW6(付随台車)
主電動機出力 1機につき280kw
駆動方式 WN駆動
歯車比 3.05
出力 電動車1両につき280kW×4機(
制御方式 抵抗制御(総括制御)
制御装置 抵抗器
制動装置 電磁直通ブレーキ(発電ブレーキ併用)・油圧式バネブレーキ
備考 固定軸距:2800mm・心皿間距離:18.0m・車輪径:1000mm・[エア・コンディショナー
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AEZ形電車の客室内部

1973年に日本から24両が輸出された特急電車である。川崎重工業で16両、日立製作所で8両が製造された。後述するAELとともに、輸出の仲介役となった商社である日商岩井(当時)が現地ではメーカー名だと誤解される場合がある。また、現地ではその豪華な内装から"Salon"とも呼ばれる。 編成はMc+R+R'+Mc(Rはスペイン語で付随車の意味)の4両編成で、R'車はバーつきサロン車となっている。座席は日本の国鉄電車のグリーン車並みの5段リクライニングシートで、足掛けもついている。サロン車には本格的な厨房もあり、また同車の客室には座席が向かい合う中央に取り外し可能なテーブルを設置できる。客室側面の窓は二重の大窓で、ベネシャンブラインドを内蔵する(ただし末期には撤去された)。水洗便所は循環式である。客室天井の蛍光灯はグローブに覆われているが、予備の白熱灯を備えており、夜行列車での運用にも適応する。前面窓上部には竣工当時には方向幕が存在したが後に埋められてそこに編成番号が表記されるようになった。気笛は低音かつ和音のホーンである。パンタグラフは菱形の大柄なものが両先頭車に各1基取り付けられているが、普段は進行方向の1基のみ上げて使用する。コイルバネ式の台車は、電動台車の場合重量が1台10tを超えるというもので、剛性は高い。広軌のスペース上の制約ゆえか、揺れ枕吊りが台車枠の内側にある。2001年には軌道の状態が劣化し乗り心地が悪くなっていたサンチャゴとチヤンの間の軌道改良が完成し、同区間で本来の乗り心地を取り戻した。 後継車両に当たるUTS-444が導入されてからしばらくは主に夜行列車に充当された。何度か車体改修を経ている。夜行列車も廃止になると予備車の扱いとなり、2010年には営業運行を退いた。その後AEZ-44は綺麗に整備され時折サンティアゴ中央駅等で展示されている。[1]

AEL編集

 
AEL形電車
2002年タルカワノ・アレナル駅にて

AEZと前後する1972年に日本から32両が輸出された中距離用電車である。川崎重工業で20両、日立製作所で12両が作られた。 編成はMc+R+R+Mc(Rはスペイン語で付随車の意味)の4両で、車内はビニールレザー張りのセミクロスシートだが、クロスシートの部分は転換式となっている。天井の蛍光灯はグローブつきである。乗客用の側扉は両開きの自動ドアだが、片側に中間車には2箇所、先頭車には後位寄りに1箇所ある。 20年以上に渡りサンティアゴのメトロトレンでの運用を続けて来たAELだが1995~6年から離脱する編成が発生し[2]た。2001年頃にAEL-35・36・37[3]UT-440に追われ、ビオビオ州(第8州)のコンセプシオン近郊でビオトレン普通列車として運用されるようになった。 その後も数編成がメトロトレンでの最後の活躍を続けていたが最後の編成となったAEL-38が2007年に引退し[4]た。同車は離脱後はサンティアゴの留置線に留置されている[5]。 またビオトレンにおいてもUT-440が転入すると余剰となり離脱した最後の編成となったAEL-37が2013年を最後に運用を退いた[6]

諸元編集

AEZと数値が共通の項目は省略する。

  • 設計最高速度 130km/h
  • 空車重量 Mc 72.3 t、T 57.2 t
  • 冷房装置 なし

AES編集

 
AES形電車(2015年・3扉車)
 
AES形電車(1980年代・2扉車)

1976・1977年にイタリアフィアット社がアルゼンチンに持つ子会社のコンソーシアム名である"Fiat-Concord"の名義でフィアットの系列工場Materferで製造された電車である。 編成はM'c-Tc(スペイン語ではTはRになる)の2両1ユニット構成であり、AES-1からAES-20までの2両×20編成=40両が製造された。なおバルパライソMervalではAES-17及びAES-18・AES-20がM'c-T(後述するAES-1のTcを中間封じ込め)-Tcの3両を構成していたこともあった。 また、1両における客用乗降ドアの数が2つの車両と3つの車両が存在していた。この2種類では車内の座席配置も異なっていた。 窓及び座席配置は下の通りである。

  • 3ドア編成:d2D1D1D3・セミクロスシート
  • 2ドア編成:d2D3D2トイレ窓1・クロスシート

どちらの仕様も基本的にバルパライソ近郊線(Merval)で使用され、一時期はバルパライソ-サンティアゴ及びバルパライソ-ロスアンデスの比較的長い運用にも使用された[7]。 AESはまたいくつかの初期不良や座席が狭いことより "cachos"(「ぽっちゃり」の意味:ここでは「問題を抱えた電車である」ということを皮肉している)いうニックネームで親しまれた。

1986年2月17日にAES-16+AES-4のプエルト発マプーチョ行きの電車とAES-9のロスアンデス発バルパライソ行きの電車が正面衝突(ケロンケ鉄道事故)[8]する事故が発生した。この事故の原因は過激派により、事故の3カ月ほど前に現場付近の橋が破壊され単線で応急処置されていたことに加え、信号ケーブルが老朽化で機能しておらず、更に一部のケーブルが盗まれていたことによるものであった。スペイン語版のこの事故についてのWikipediaによれば公式では58人が死亡したと伝えられたが実際は159人の犠牲者が出たという。 この事故以外にもAESは2回ほど過激派のテロリストによる攻撃の対象となっており、1980年代にはAES-1が、1999年5月23日にはAES-5・AES-10・AES-19が放火の被害に遭っており廃車となっている[9]。AES-1は電動車(M'c)のみの被害であったために前述の通り残ったTcはその後T車代用でAES-17・AES-18・AES-20に挟まれ3両の中間として活躍した[10]

20年にも渡りバルパライソを起点に活躍して来たAESだが、1990年代の終わりにAES-8とAES-14がビオビオ州に転属しBiotren(ビオトレン)で活躍を始めた。 バルパライソのMervalでは1990年代よりAESを広告で包み話題になっていたが、2005年にアルストム製の同社・メトロポリス シリーズの一つである"Alstom X'trapolis"に全て置き換えられた。そして置き換えられたAESのうち、AES-3・AES-7・AES-11・AES-13・AES-15・AES-17・AES-18・AES-20の計8編成が先に転属していた前述の2編成の後を追い、ビオビオ州に移動した。しかし8編成全てが使用される訳では無く、実際にビオトレンでの運用に入った車両はAES-11・AES-17・AES-18・AES-20の4編成のみであった。残りの4編成はビオビオ州のTalca Mavida駅及びSan Rosend駅の側線に放置されたままとなっている[11]。 2019年現在、ビオトレンで活躍する編成もAES-11とAES-17の2編成のみとなった。

諸元編集

  • 対応電圧:直流3000V
  • 主電動機:Mc車に1500馬力(1100w)のイギリスGEC製の物を4機(1台車につき2機)
  • 駆動方式:吊り掛け駆動
  • 設計最高時速:125~130km
  • 重量:1ユニット(2両)で122.46t
  • 座席数:1ユニット(2両)で176席

UTS-444編集

 
UTS-444形電車
2002年11月、サンティアゴ中央駅にて

スペイン国鉄(RENFE)にかつて存在した444系特急電車(Serie 444)を改造して購入したもので、6編成がある。編成はMc+R+Rc(Rはスペイン語でRemorque、付随車の意)からなる3両編成で、Rc車はサロン・プレフェレンテと呼ぶ上級車室であり、客席は個別テーブルつきの1-2人掛けシートである。同車にはバーカウンターを備える。他車は2-2人掛けシートであるが、座席の向きは集団向かい合わせ式で固定されている。。便所は真空式である。列車にはTerraSurというブランド名が与えられ、主としてサンティアゴ中央駅(アラメダ駅)とタルカ駅との間で運用されている。

諸元編集

  • 車体長 26.2m
  • 固定軸距 2600mm(電動台車)、2500mm(付随台車)
  • 車輪径 1000mm
  • 電動車1両あたりの出力 290kW×4(三菱電機MB-3165-C)
  • ギヤ比 3.22
  • 最高速度 140km/h
  • 駆動方式 WN駆動
  • 制御方式 総括制御、抵抗制御
  • 制動方式 電気指令式ブレーキ(Knorr Kbr XI-E)、発電ブレーキ併用、電磁吸着ブレーキディスクブレーキ(電動台車は輪心ディスク)
  • 台車 油浸円筒案内(1次バネ)、空気バネ(2次バネ)
  • 冷房装置 あり

UT-440/UT-440-MC編集

UT-440UT-440-MC
 
ビオトレンで活躍するUT-440-MC
基本情報
種車 レンフェ440系電車
改造年

・UT-440:1996年~2000年

・UT-440-MC:2005年
改造数

・UT-440:16編成(うち3編成は後にUT-440-MCに改造)

・UT-440-MC:7編成(うち3編成はUT-440より再改造)
総数 両形式合わせて3両×20編成=60両
運用開始

・UT-440:1999年

・UT-440-MC:2005年
投入先

トレンセントラルMerval

FESUR(ビオトレン)

※全てチリ国鉄の子会社
備考 諸元は[12][13]及び[14]より
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UT-440形電車(2002年)
 
UT-440形電車(2007年)
 
アラメダ駅に停車中のメトロトレンのUT-440形電車


スペイン国鉄の440系近郊電車を、本国の車体更新車とほぼ同様の外見で改造し購入したもので、1編成は3両である。車内は通路を挟み2-3人掛けのクロスシートで、スペイン時代のような2等級制にはなっていない。冷房装置は新たに床下に搭載された。1997年に最初の編成が陸揚げされ、1999年から運用を開始した。主にチリ国鉄の子会社であるTMSAの手によりメトロトレンとの愛称でサンチャゴ中央駅と、第6州のサンフェルナンド駅との間(この区間は北側の一部が複線になっている)を結んでいる。 ビオビオ州とその周辺で向けに追加で購入されたものは前面デザインに差異が見られる。このデザインは"Modero Consepcion"と言う。同州の近郊電車は現在はビオトレンと称されチリ国鉄の子会社であるFESUBにより運営されている。なお、バルパライソ近郊鉄道(Merval)に配置されたUT-440は2005年までに他に転出している。UT-440の車両としての動力性能についてはUTS-444とほぼ共通である。

X'Trapolis 100編集

X'Trapolis 100 Merval
 
バルパライソの近郊電車Mervalの主力であるX'Trapolis 100
基本情報
運用者 Merval
製造年 2005年2006年
製造数 54両
運用開始 2005年11月24日
投入先 Merval
主要諸元
編成 2両×27編成(計54両)
軌間 1.676mm
電気方式 直流3000V
最高運転速度 120km/h
設計最高速度 143km/h
車体長 24.46m(1両・連結器含む)
車体幅 3.05m
高さ 3.65m
主電動機 アルストム 4ECA 1836
主電動機出力 180kw
編成出力 720kw
定格速度 60km/h
制御方式 VVVFインバーター制御
制御装置 VVVFインバーター
保安装置 ATP
備考 数値は[15]及び[16]による
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X'Trapolis Modular編集

 
バルパライソ近郊鉄道(Merval)で活躍する"X'Trapolis Modular"
基本情報
運用者 トレンセントラル(メトロトレン)Merval
製造所 アルストムバルセロナ
製造年 2013年~2015年
製造数 Mc+M'cの2両×24編成
運用開始 2014年
投入先 メトロトレンMerval
主要諸元
編成

・トレンセントラル:2両×16編成

・Merval:2両×8編成
軌間 1.676mm
電気方式 架空電車線電化方式・架線電圧直流3000V
最高運転速度 120km/h
設計最高速度 160km/h
編成定員 376人
車両定員 96人(1両あたりの着座定員)
編成重量 80.97t
全長 1両あたり2.300mm(連結器間含む)
2.940mm
全高 4.960mm(パンタグラフ高含む)
主電動機出力 1機につき320kw
出力 1280kw(1両に4機)
備考 諸元は[17][18]より
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X'Trapolis Modularは2014年にメトロトレンに、2015年[19]にバルパライソ近郊鉄道(Merval)に導入されたアルストム製の最新型車両である。最高運転速度は120km/h。

 
X'Trapolis Modular
 
メトロトレンで運用されているX'Trapolis Modular


中国中車製電車(形式名未定)編集

2020年3月より導入され[20]、ビオトレンで活躍中の2編成が残るAESとUTS-440を「全て」置き換える予定の中国中車製の電車である[21]。3両×10編成が導入予定であり、アルストムCAFと中国中車で入札を競った結果、中国中車が落札。非電化区間用の3両×2編成の気動車と共にビオトレンへの納入が決定した[22]。 車内はクロスシート車椅子スペースを配置し、混雑時にも対応できるよう吊り手棒の他につり革を設置。乗り降り用の自動ドア上と車内端の天井には案内用の電光掲示板も設置される予定である[23]。3両での定員は813人[24]

脚注編集

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  1. ^ https://www.flickr.com/photos/viasur/47967689973/in/photostream
  2. ^ http://treneschilenos-listadodeunidades.blogspot.com/2006/12/automotores-elctricos.html?m=1
  3. ^ http://treneschilenos-listadodeunidades.blogspot.com/2006/12/automotores-elctricos.html?m=1
  4. ^ https://www.flickr.com/photos/erikcespedes/7022856491
  5. ^ https://www.flickr.com/photos/erikcespedes/7022856491
  6. ^ https://twitter.com/EmilioBeseler/status/982636683630907393?s=09
  7. ^ https://latragediadequeronque.wordpress.com/2013/11/21/los-trenes-de-la-muerte/
  8. ^ https://latragediadequeronque.wordpress.com/2013/10/25/la-peor-tragedia-en-la-historia-de-chile/
  9. ^ https://www.trenesdechile.cl/
  10. ^ https://www.trenesdechile.cl/
  11. ^ https://www.jaracid.cl/?page_id=273
  12. ^ https://www.trenesdechile.cl/ut440bt.html#cabecera
  13. ^ https://www.trenesdechile.cl/ut440mt.html#cabecera
  14. ^ https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A7440%E7%B3%BB%E9%9B%BB%E8%BB%8A
  15. ^ https://es.m.wikipedia.org/wiki/X%27Trapolis_100
  16. ^ https://en.m.wikipedia.org/wiki/X%27Trapolis_100
  17. ^ https://es.m.wikipedia.org/wiki/X%27Trapolis_Modular#
  18. ^ https://www.alstom.com/our-solutions/rolling-stock/xtrapolis-range-flexible-and-modular-suburban-trains
  19. ^ https://www.railjournal.com/passenger/commuter-rail/alstom-emus-enter-service-in-valparaso/
  20. ^ https://www.railjournal.com/fleet/crrc-wins-chilean-multiple-unit-order/
  21. ^ https://www.diarioconcepcion.cl/ciudad/2018/10/27/china-se-adjudica-la-construccion-del-nuevo-biotren-carros-llegaran-en-2020.html?amp=1
  22. ^ https://www.railjournal.com/fleet/crrc-wins-chilean-multiple-unit-order/
  23. ^ https://www.soychile.cl/Concepcion/Sociedad/2018/09/08/555083/Realizaron-apertura-de-ofertas-economicas-para-adquirir-nuevos-en-el-Biobio-y-La-Araucania.aspx?fbclid=IwAR2Ks4FIkSMuRrX6DZqPOE9C_La0cwRIJcVpydZG_DBWwl0lwYYjEOCpceQ
  24. ^ https://www.soychile.cl/Concepcion/Sociedad/2018/09/08/555083/Realizaron-apertura-de-ofertas-economicas-para-adquirir-nuevos-en-el-Biobio-y-La-Araucania.aspx?fbclid=IwAR2Ks4FIkSMuRrX6DZqPOE9C_La0cwRIJcVpydZG_DBWwl0lwYYjEOCpceQ

参考文献編集

  • 鉄道車両輸出組合報 (日本鉄道車両輸出組合)
  • 蒸気機関車から超高速車両まで (川崎重工業 車両事業本部)
  • Album de Material Rodante (スペイン語) (RENFE)
  • 鉄道ジャーナル別冊 年鑑'87 日本の鉄道 (鉄道ジャーナル社/第77ページ:「年間の出来事と87年の展望」-「2月17日:チリのサンチアゴ北西140kmのリマチェ近くで夜、衝突事故が起こり、少なくとも69人死亡。510人ケガ。現場は複線区間だが、1年前に過激派の爆弾テロで一部を破壊され単線運転していたうえ、通信線が切断されていたらしい。」)

関連項目編集