ユーロ圏

欧州連合における経済通貨同盟
  ユーロ圏
  欧州連合非加盟のユーロ使用地域

ユーロ圏(ユーロけん、英語: eurozone, またはeuro area)は、ユーロ (€) を共通通貨とし、唯一の法定通貨としている欧州連合(EU)加盟27カ国のうち、19カ国の通貨同盟である。ユーロ圏の通貨当局はユーロシステムである。EUの他の8カ国は自国通貨を使用し続けているが、そのほとんどは将来ユーロを採用する義務がある。

ユーロ圏は、オーストリアベルギーキプロスエストニアフィンランドフランスドイツギリシャアイルランドイタリアラトビアリトアニアルクセンブルクマルタオランダポルトガルスロバキアスロベニアスペインで構成されている。他のEU加盟国(デンマークを除く)は、参加基準を満たした場合、参加する義務がある。どの国も離脱したことはなく、そのような規定も追放される規定もない。アンドラモナコサンマリノバチカン市国は、ユーロを公式通貨として使用し、自国のコインを発行することでEUと正式に合意している。コソボモンテネグロはユーロを一方的に採用しているが、これらの国は公式にはユーロ圏の一部を構成しておらず、欧州中央銀行(ECB)やユーログループに代表を出していない。

ECBは、総裁と各国中央銀行の総裁によって運営され、ユーロ圏の金融政策を決定する。ECBの主要任務はインフレを抑制することである。通貨同盟に共通の代表、ガバナンス、財政政策は存在しないが、ユーロ圏とユーロに関する政治的意思決定を行うユーログループを通じた協力が行われている。ユーログループはユーロ圏諸国の財務大臣で構成されているが、緊急時には各国首脳もユーログループを構成する。

ユーロ圏は、2007〜2008年の金融危機以降、経済改革を実施する見返りとして加盟国に緊急融資を供与する条項を制定し、利用してきた。ユーロ圏はまた、相互の国家予算の相互評価など、限定的な財政統合も実施している。この問題点は政治的なものであり、ユーロ圏の変革のために今後どのような条項が合意されるかという点で流動的な状態にある。

ユーロ使用地域編集

ユーロ圏編集

範囲編集

1998年、11の加盟国がインフレーション率、政府財政水準、為替相場の状況、長期金利などの収斂基準を満たし、1999年1月1日にユーロの導入が正式に開始されて、ユーロ圏が誕生した。

2000年にはギリシャが基準を満たし、2001年1月1日にユーロに移行した。2002年1月1日より実際の硬貨紙幣の発行・流通が開始された。2006年にはスロベニアが基準を満たして、2007年1月1日よりユーロ圏入りを果たした。さらに2008年1月1日にはキプロスマルタで、2009年1月1日にはスロバキアで、2011年1月1日にはエストニアで、2014年1月1日にはラトビアで、2015年1月1日にはリトアニアでもユーロが導入され、バルト三国もユーロ圏となった。

これによりユーロ圏は以下の計19か国、人口3億2600万人を擁する経済圏となっている。

導入日 旧通貨 人口 面積 除外
  アイルランド 1999年1月1日 ポンド 0424万人 070282km²
  イタリア 1999年1月1日 リラ 6002万人 301230km²  
  エストニア 2011年1月1日 クローン 0134万人 045226km²
  オーストリア 1999年1月1日 シリング 0831万人 083870km²
  オランダ 1999年1月1日 ギルダー 1647万人 041526km²    
  キプロス 2008年1月1日 ポンド 0077万人 009250km²  
  ギリシャ 2001年1月1日 ドラクマ 1112万人 131940km²
  スペイン 1999年1月1日 ペセタ 4511万人 504782km²
  スロバキア 2009年1月1日 コルナ 0539万人 048845km²
  スロベニア 2007年1月1日 トラール 0201万人 020273km²
  ドイツ 1999年1月1日 マルク 8132万人 357021km²  
  フィンランド 1999年1月1日 マルッカ 0529万人 338145km²
  フランス 1999年1月1日 フラン 6339万人 643427km²      
  ベルギー 1999年1月1日 フラン 1067万人 030528km²
  ポルトガル 1999年1月1日 エスクード 1060万人 092391km²
  マルタ 2008年1月1日 リラ 0040万人 000316km²
  ラトビア 2014年1月1日 ラッツ 0201万人 064589km²
  リトアニア 2015年1月1日 リタス 0325万人 065200km²
  ルクセンブルク 1999年1月1日 フラン 0048万人 002586km²

ただし「除外」の欄に国旗等で示した地域では、別の通貨が流通しているので、ユーロ圏には含まれない。

除外地域 通貨 法的地位 位置
  キプロス   北キプロス・トルコ共和国   新トルコ・リラ 未承認国家 キプロス島北部
  フランス   フランス領ポリネシア CFPフラン 海外領域 太平洋
  ニューカレドニア
  ウォリス・フツナ
  オランダ   アルバ アルバ・フローリン カリブ海
  アンティル アンティル・ギルダー
  ドイツ   ビュージンゲン   スイス・フラン 欧州連合領域内 飛び地
  イタリア   カンピョーネ・ディターリア

欧州連合加盟国の特別領域の中には、欧州連合の領域には含まれないが、ユーロが使われている地域がいくつかある。なおこのうちアクロティリおよびデケリアは非ユーロ圏の加盟国イギリス主権基地領域だが、隣接するキプロスのユーロが流通している(キプロス島内に位置するがキプロス領でもキプロスが主張する領土でもない)。

貨幣 地域 位置
  キプロス     グリーンライン キプロス島
  イギリス   アクロティリおよびデケリア
  フランス     マヨット   サン・バルテルミー   サン・マルタン   サンピエール・ミクロン   フランス領南方・南極地域 離島など

財政政策編集

欧州連合域内の財政政策の調整に関する主な手段は、欧州連合の全加盟国を対象とし、中でもユーロ圏16か国についてはとくに言及をしている総合経済政策ガイドラインに規定されている。このガイドラインは拘束力を持たないが、経済構造が連携しているということを考慮して、加盟国間での政策調整を企図している。

通貨の相互保証と安定性のために、ユーロ圏諸国は安定・成長協定を尊重しなければならず、この協定は赤字額や国債発行に上限を設け、違反に対しての制裁規定を定めている。協定ではもともとユーロ圏各国に対して毎年の赤字額の上限を GDP の 3% と設定し、この額を超過した国には罰則金を科すとしていた。2005年、ポルトガル、ドイツ、フランスがこの制限を破ったが、欧州連合理事会は罰則金を科さないという決定を下した。この結果、より柔軟性を持ち、赤字額の基準を加盟国の経済情勢やそのほかの要因を考慮することを含む改定が採択された。

欧州連合非加盟のユーロ使用国編集

協定による編集

  モナコ  サンマリノ  バチカン は欧州連合に加盟していないのでユーロ圏ではないが、ユーロ圏諸国と同様にユーロを使用している。これらの国ではかつて、ユーロに切り替えられた通貨を使用しており、バチカンとサンマリノではイタリア・リラと固定されていた通貨(バチカン・リラサンマリノ・リラ)を、モナコではフランス・フランと 1:1 で固定されていたモネガスク・フランをそれぞれ使用していた。

これらの諸国は、欧州連合と直接ではないが、サンマリノとバチカンはイタリアと、モナコはフランスとそれぞれ通貨協定[1]を締結した上でユーロを使用している。各協定は欧州委員会および欧州理事会において承認を受けている。

協定では、これらの3か国は毎年一定の量のユーロ硬貨について、ユーロ圏諸国同様、それぞれ独自のデザインを施して発行することができる。これらの3か国が発行した硬貨はユーロ圏の各国で有効であり、また逆にユーロ圏各国の硬貨もこれらの3か国で通用する。ただし実際には、鋳造は自国では行わず、モナコのユーロ硬貨はフランスで、バチカンとサンマリノのユーロ硬貨はイタリアでそれぞれ鋳造されている。

  アンドラは、独自のユーロ紙幣は発行できず、ユーロ圏諸国で作成された紙幣を使用することになる。ただし紙幣のデザインはユーロ圏全体で共通である。

アンドラは、かつてはフランス・フランやスペイン・ペセタを事実上の法定通貨として使用しており、正式な通貨を持っていなかった。アンドラは、スペインやフランスとは特段の通貨協定を締結していないが、アンドラでのユーロの公式な地位に関して欧州連合との間で交渉がなされている。また、2016年1月現在、2014年にThe Royal Spanish Mintから発行されたアンドラ独自デザインのユーロ硬貨が鋳造されている。

協定なし編集

  モンテネグロ  コソボ でもユーロが流通しているが、欧州連合は両国・地域でユーロを使用することを認める公式の通貨協定を締結していない。なおコソボでユーロが使用されているのは、主に政治的理由でセルビア・ディナールを廃したためである。

潜在的拡大編集

 
  ユーロ圏 (19)
  欧州為替相場メカニズム参加予定かつ欧州連合条約でユーロ移行義務がある欧州連合加盟国 (2)
  欧州連合条約でユーロ移行義務がある欧州連合加盟国 (5)
  ユーロ導入義務がない欧州連合加盟国 (1)
  協定によりユーロを使用している欧州連合非加盟国 (4)
  協定なしでユーロを使用している欧州連合非加盟国 (2)

加盟国のユーロ導入編集

以下の8箇国は欧州連合に加盟しているが、ユーロを導入していない。

  デンマーク  スウェーデン  ブルガリア  チェコ  ハンガリー  ポーランド  ルーマニア  クロアチア

デンマークは欧州連合条約における例外規定の対象となっている。同国は政府決定、あるいは議会の議決または国民投票を実施することとされており、これらなしではユーロの導入を求められることはない。スウェーデンにはこのような例外規定がなく、規定上は将来のある時点でユーロ導入が義務付けられている。しかし欧州連合側は、スウェーデンに対してユーロ導入を強制する意図はないということを明らかにしている。

2004年以降に加盟した国(デンマーク、スウェーデン以外の8か国が含まれる)は、収斂基準を満たせばただちにユーロを導入することとされている。このような新規加盟国に関して、単一通貨は加盟のさいの条件の一部 (part of the package) となっており、デンマーク以外は例外が認められることはない。

2004年以降に加盟した国のうちすでにキプロスマルタスロベニアスロバキアエストニアはユーロに切り替えられているが、残る7か国の経済通貨統合の第3段階への移行とユーロ導入の日程はいずれも2010年から2014年のあいだと見込まれていた。チェコの移行は2010年1月1日に設定されていたが、経済情勢のため実現は不可能になり、新たな日程は設定されていない。ハンガリーも2010年の目標日程が断念され、新たな予定は設定されていない。

2006年5月16日、欧州委員会はスロベニアに対して新たなユーロ圏国になるよう求め、2007年1月1日にユーロに切り替えた。経済通貨統合の体制に完全に移行する能力を示すことは「優良な加盟国」の必須条件のひとつである。欧州中央銀行と欧州委員会は2年ごとに報告書を作成し、そこで非ユーロ圏の加盟国の経済やその他の状況の分析をまとめ、ユーロ圏入りの適正を報告している。2004年加盟の10か国を含めた報告書が2004年10月に初めて作成された[2]。しかし、欧州中央銀行制度のなかで最も重要な位置づけをされているドイツ連邦銀行はユーロ圏の急激な拡大を批判している。

ERM-II対象国編集

2004年5月1日、この日に欧州連合に新規加盟した国の10の中央銀行欧州為替相場メカニズム (EMR-II) に組み込まれることが決定した。現在、EMR-II の対象となっているのは、以下の1国である。

ERM-II
加入日
通貨 セントラル・レート
(€)
変動幅(±) 経緯
許容 実際
1999年
01月01日
  デンマーク クローネ 7.46038 2.25% <1% ユーロ誕生の1999年に ERM-II に加入した。このとき以降、クローネはユーロに対して±2.25% の範囲内で変動することとされている。
 
  ERM-II対象国
  かつての ERM-II 対象国

デンマーク編集

2000年9月28日、デンマークにおいてユーロ導入の是非を問う国民投票が実施され、53.2% が反対という結果になった。近年の1か月ごとに実施される調査[3]では、ユーロ導入を希望する割合が半数を超えている。2007年、デンマーク議会は欧州連合条約上の4つの例外規定について、まず一部または全部の例外規定について国民投票を実施し、続いてユーロ導入の是非を問う投票を実施することの検討を開始した。その後行われた選挙で与党が勝利し、ユーロ導入に向けて必要な措置を行っていることを明らかにした[4]

デンマークにおいてユーロが導入された場合のグリーンランドフェロー諸島の対応は見通しが立っていない。両地域はデンマークの自治領であるが、欧州連合の領域とはなっていない。フェロー諸島では、フェロー諸島のモチーフが印刷されたデンマーク・クローネ紙幣(フェロー・クローネ)が発行されており、グリーンランドでも同様の対応を実施することが計画されている。なお硬貨についてはデンマーク・クローネ硬貨が使用されている。

ラトビア編集

当初は2008年1月1日の導入を目標としていたが、インフレーションに関する問題のために延期を余儀なくされた[5]。2014年1月より念願のユーロを導入して現在に至る。

リトアニア編集

リトアニアは本来、2007年1月1日をユーロ使用開始の目標日に設定していたが、インフレーション率が許容限度を超えていたため欧州委員会に拒否された[6]。2006年12月、政府は新たな収斂計画を承認し、その中で政府はできるだけ速やかにユーロ圏入りを果たしたいとしているものの、2007年から2008年にかけてインフレーションが進むと見込まれるため、ユーロ導入は2010年以降が望ましいとしている[7]。2007年1月に発表された世論調査によると、ユーロ導入への反対意見が賛成意見を上回っていた[6]。2015年1月よりユーロを導入し、これでバルト三国は全てユーロを導入することになった。

ERM-II非対象国編集

 
通貨の状態  加盟国 非加盟国
ユーロ
ERM-II なし
対ユーロ固定
対ユーロ変動

ブルガリア編集

ブルガリア・レフは1997年以降はドイツマルクと、1999年以降はユーロと為替レートが固定されており、またブルガリアはすでに経済通貨統合参加基準の大部分を満たしている。そのためブルガリアは2007年夏までにERM-IIへの参加を計画していた[8]が、高いインフレーション率と経常収支赤字のために延期され、2012年の参加実現を目指すことになっていた[9][10]

2018年6月、ブルガリアは銀行同盟およびERM-IIへの参加を表明し、7月12日に銀行同盟への加盟が承認された[11]

チェコ編集

2004年の欧州連合加盟以降、チェコマクロ経済の情勢を他の加盟各国にあわせる財政・通貨政策をとってきた。現時点で最も大きな問題は巨額の財政赤字である。元来、チェコは2008年か2009年の ERM-II 入りを目指してきたが、2007年に政府は経済水準を満たす見通しが立たないとして、目標期日を2010年とした。ユーロへの切り替えは早くて2012年になる見込みとなっていた[12]。2016年1月現在、ユーロ導入への日程は見通しが立っていない。

ハンガリー編集

ハンガリーはもともとユーロの導入を2010年1月1日に計画していたが、莫大な財政赤字のために断念した。2007年の計画では2008年中頃にロードマップを作成するとして、導入の目標日程を定めていない[13]

現実的には、ハンガリーのユーロ圏入りは財務状況が好転する見通しが立たず、困難であるとされる。現状、毎年の収支の赤字額は GDP の 6% に上り、公債発行額も GDP の 69% に上っている[14]。またその発行増加率もGDP成長率を上回っている。

ポーランド編集

ポーランドは「欧州連合の総合的政策の一環」としてユーロ導入が義務付けられているが、大統領レフ・カチンスキは導入にさいして国民投票を実施したいと述べている。厳密には、ポーランド国民はすでにユーロ導入に賛成を示している。欧州連合加盟の是非を問う国民投票で 77% という多数が賛成票を投じていたが、この投票は同時に経済通貨統合を問うことも含まれていたことになる。欧州委員会委員ホアキン・アルムニアはポーランドに対して、イギリスとデンマークと同様の経済通貨統合の例外規定はないということを確認した。世論調査ではポーランド国民の多数がユーロを自国通貨とすることを望んでいる。

2006年5月、ポーランド政府はユーロ導入の目標期日を2012年1月1日に設定した。 2016年1月現在、ユーロ導入の期日は未定である。

ルーマニア編集

ルーマニア政府は2014年までのユーロ圏入りを計画していることを表明した。また2012年までに ERM-II 基準を達成するとしている[15]。欧州中央銀行総裁は2007年6月に、ルーマニアは多くの課題を抱えており、ERM-II 参加までには長い年月を要するとの見通しを示した[10]

将来のユーロ導入の際に ATM にユーロを使用できるようにしておくため、2005年に新ルーマニア・レイが導入された(1万旧レイを1新レイとするデノミネーション)ときに、新紙幣をユーロ紙幣と同じ形で発行した。旧レイ紙幣はユーロ紙幣に比べてかなり幅が大きかった。2016年1月現在、ルーマニア政府は2019年をユーロ導入の目標期日と定めている。

スウェーデン編集

スウェーデンに対しては、いかなる議定書や条約においても特例が設けられていない。しかしスウェーデンは、欧州連合でユーロが導入されても自国では使用しないことを1997年に決定しており、求められていた為替相場の安定基準の達成に努めていなかった。

1994年11月13日、スウェーデンでユーロ導入に関する最初の国民投票が実施された。この国民投票は加盟条約の批准を問うものであったが、ユーロ導入はこの加盟条約において欠かせない規定であった。結果 53% が賛成票を投じ、同時にユーロ圏入りが承認された。ところがスウェーデン政府は、共通通貨を導入するか、またその時期についてはスウェーデン議会が決めるということを、1994年8月11日の欧州連合加盟を提唱するさいに一方的に宣言した。その後1997年にスウェーデン議会は、ユーロ導入当初はこれに加わらず、時間を置いて導入することを決めた。

ユーロ導入を諮る国民投票が2003年9月14日に実施され、結果、賛成 42.0%、反対 55.9% とユーロ導入を拒否することになった。これを受けて各政党は投票結果を当面の間は守り続けると表明し、ユーロ導入の決定は先送りされた。政府系調査期間の定例調査では、世論はユーロに対して消極的になっている[16]。これとは対照的に欧州連合の調査「ユーロバロメーター」では、ユーロに対する支持が2003年では 41% だったものが、2006年には 51% となっている[17][18]

スウェーデン元首相ヨーラン・ペーションは在任中の2004年9月に、スウェーデンのユーロ導入は2010年の総選挙まではありえないと述べた[19][20]。この見方はフレドリック・ラインフェルト政権も共有しており、ユーロ導入に関して消極的な姿勢を見せている。このためスウェーデンにおけるユーロ導入は2015年まではないということがほぼ間違いなく、世論調査でも消極的な態度が見られることを念頭においても、かなり先のことになると見られる[21]

Foretagarna の調査によると、スウェーデン企業の 60% が、ユーロ圏入りしていない今の状況は不利益であると考えている。スウェーデンの企業団体の代表である Anna-Stina Nordmark-Nilsson はスウェーデンのユーロ圏入りを求めている。

スウェーデンがユーロを当面導入しないという決定は欧州連合において広く認められている。スウェーデンは1995年に欧州連合に加盟しており、1992年に署名されていた欧州連合条約における例外規定の適用を受ける機会がなかったという事情のためである。しかし1995年にはユーロはまだ存在しておらず(紙幣・硬貨の流通は2002年から、法定通貨としても1999年から有効となっている)、このため欧州委員会はそれまでにスウェーデンのユーロに関する取り組みについて法的強制力を持つ行動をとっていなかった。しかしスウェーデンのような動きをほかの新規加盟国が見せた場合は、これを許容していないにもかかわらず、スウェーデンに対しては許容しているということについて懸念の声が上がっていた。

クロアチア編集

2019年7月、クロアチアはERM-IIへの参加を申請し、2023年までにユーロ導入を目指していることが明らかになった[22] [23]

非加盟国編集

アイスランドの外相バルゲルズル・スベリスドッティルは2007年1月15日にインタビューで、欧州連合に加盟はしないもののユーロ導入の是非については検討したいと述べた。スベリスドッティルは、欧州経済領域の小規模な経済圏においては独自の通貨を維持していくのは困難だと考えている。

対ユーロ固定通貨の非加盟国編集

カーボベルデカーボベルデ・エスクードはかつてポルトガル・エスクードと、ボスニア・ヘルツェゴビナコンヴェルティビルナ・マルカはドイツマルクと、フランスの旧植民地で使われている CFAフラン、コモロ・フランおよびフランスの太平洋地域の領土で使われている CFPフランはフランス・フランと、それぞれ相場が固定されていたが、現在はユーロと相場が固定されている。

批判編集

2016年7月にIMFの独立監査機関であるIndependent Evaluation Office (IEO)がレポートを公表し、IMFがユーロ構想に関して楽観的で表面だけの分析をしていたことが明らかになった。 共通通貨ユーロ導入に先立ち、IMFはユーロの利点を強調する傾向にあった[24]。 IMFのスタッフの中にはユーロは本質的に欠陥含みであると警告していたがそれらの声は押さえつけられ、IMF内部での白熱した議論の後にユーロを支持する見解が主流となった。 毎度のようにIMFは経常収支赤字膨張によるリスクを過小評価しており、ユーロ圏周辺国への資本流入とその急停止の危険性を無視していた。 ユーロ圏内での国際収支統計危機は存在しないものとみなされており、2007年の時点でもIMFはギリシャに関してエクスターナル・ファイナンシングが懸念事項だと考えていなかった[24]

EUとIMFがギリシャへの金銭支援とその交換条件としての緊縮財政政策の強要を行った時にも、ギリシャ経済の先行きについてのIMFの試算には非常に大きなエラーがあった。 IMFは財政乗数を0.5としていたが現実にはその5倍だっただろうと考えられている。現実のギリシャのGDPはIMFの予測値よりも25%低い値であり、失業率はIMFの予測値よりもはるかに高い値であった[24]

ノーベル賞経済学者ジェームズ・トービンは、ユーロ圏には金融政策財政政策共に大きな欠陥があることを指摘する[25]。 ユーロ圏の金融政策はECB主導で実施されるが、ECBは物価の安定のみを政策焦点とするために失業への対策が疎かになる。また、ユーロ加盟国はマーストリヒト条約安定・成長協定に従わなければならず、景気の良し悪しに関わらず各加盟国は財政赤字をGDPの3%以内に抑えなければならない。このため各加盟国は不況の際に十分な拡張的財政政策を行うことができない[25]

ノーベル賞経済学者ジョセフ・スティグリッツはユーロを悲劇的な過ちと形容した。その共通通貨は、政治統合も行わないまま、そして共通通貨が内包する本質的不備を熟考することもないまま始まった。EU側の人々は、単一通貨USドルを使うアメリカ合衆国という世界第一位の経済大国の成功をみて、それを真似すべきだと述べていた[26]

ユーロという単一通貨(共通通貨とは異なる)は、アメリカが主導で導入したものである[27]

独自の金融政策がとれないために、危機に陥ったユーロ圏加盟国は自国通貨を減価させる事もできなければ政策金利を下げる事もできない。拡張型財政政策も採れない。その結果として賃金低下と多くの失業が生じる。そしてこの賃金低下は企業側を喜ばせるものであった。ユーロ自体が新自由主義的な構想だったことは十分に明らかとなっている[26]。EU側はギリシャ危機を利用して構造改革を強要した。農業分野における改革としては、EU側はギリシャに対して新鮮なミルクの定義を変えるよう命じた。以前は4日経過したミルクにはラベルがされる必要があった。 ドイツやオランダの酪農産業はミルクをギリシャを含めた欧州各国に輸出したいと考えている。ミルクの輸出には時間がかかり、4日以上経過したミルクを新鮮なミルクでないとするギリシャの法律は ドイツやオランダの酪農産業にとって不都合だろう。そしてドイツやオランダの輸出攻勢はギリシャの中小企業に痛手を追わせることになる。この例からもユーロ圏では特定の団体だけにアドバンテージが与えられることがわかる[26]

統計編集

ユーロ圏とその影響地域の人口編集

対ユーロ 大陸 対欧州連合 人口 国・地域
ユーロ ヨーロッパ   加盟
(ユーロ圏)
3億3595万   オーストリア   ベルギー   キプロス   フィンランド   フランス   ドイツ   エストニア   ギリシャ   アイルランド   イタリア   ルクセンブルク   マルタ   オランダ   ポルトガル   スロベニア   スロバキア   スペイン   ラトビア   リトアニア
非加盟 270万   アンドラ   コソボ   モナコ   モンテネグロ   サンマリノ   バチカン
固定   加盟 875万   ブルガリア
非加盟 400万   ボスニア・ヘルツェゴビナ
アフリカ
CFAフラン
1億1000万   ベナン   ブルキナファソ   カメルーン   中央アフリカ   チャド   コートジボワール   赤道ギニア   ガボン   ギニアビサウ   マリ   ニジェール   コンゴ共和国   セネガル   トーゴ
オセアニア
CFPフラン
海外領域 50万   フランス領ポリネシア   ニューカレドニア   ウォリス・フツナ
アフリカ
(非CFAフラン)
非加盟 3500万   カーボベルデ   コモロ   モロッコ
変動幅 ヨーロッパ   加盟 800万   デンマーク
合計 4億9600万 44か国5地域

脚注編集

  1. ^ Agreements on monetary relations (Monaco, San Marino, the Vatican and Andorra)” (英語). EUROPA. 2010年4月1日閲覧。
  2. ^ Convergence Report 欧州中央銀行 - リンク先で22言語から選択可能、いずれもPDF形式。
  3. ^ Dagbladet Børsen Meningsmålinger Archived 2007年12月3日, at the Wayback Machine. 2007年4月7日 (デンマーク語、PDF形式)
  4. ^ Stratton, Allegra (2007年11月22日). “Danes to hold referendum on relationship with EU” (英語). guardian.co.uk. 2009年4月4日閲覧。
  5. ^ Inflation will delay euro adoption in Latvia: Standard & Poor's EU business 2006年3月8日 (英語)
  6. ^ a b Lithuanians Divided on Euro Adoption Angus Reid Global Monitor 2007年1月2日 (英語)
  7. ^ Adoption of the Euro in Lithuania リトアニア銀行 2007年1月3日 (英語)
  8. ^ България започва тестове за въвеждане на еврото преди лятото money.bg 2007年1月26日 (ブルガリア語)
  9. ^ Koinova, Elena (2007年11月30日). “Bulgaria's budget of reform” (英語). Sofia Echo. 2009年4月4日閲覧。
  10. ^ a b ECB: Introductory statement with Q&A 欧州中央銀行 2007年6月6日 (英語)
  11. ^ ユーロ圏財務相、ブルガリアの銀行同盟加盟申請を承認 ユーロ加盟の第一歩
  12. ^ State of practical preparations (June 2007) for the future enlargement of the euro area 欧州委員会 (英語、PDF形式)
  13. ^ Hungary's euro adoption hinges on economy overhaul Budapest Business Journal 2007年3月23日 (英語)
  14. ^ The World Factbook - Hungary アメリカ中央情報局 (英語)
  15. ^ Guvernul a aprobat Programul de convergenţă ルーマニア政府プレスリリース 2007年1月24日 (ルーマニア語)
  16. ^ EMU-/eurosympatier 1997-2007 スウェーデン統計庁 2007年6月19日(スウェーデン語)
  17. ^ Eurobarometer 60.1 欧州委員会 2004年2月19日(スウェーデン語)
  18. ^ Eurobarometer 66 欧州委員会 2006年12月22日(スウェーデン語)
  19. ^ Mats Hallgren Nuder känner sig utanför efter Sveriges EMU-nej Svenska Dagbladet 2005年7月15日(スウェーデン語)
  20. ^ Joachim Kerpner Allt fler säger NEJ! Aftonbladet Nya Medier 2004年9月12日(スウェーデン語)
  21. ^ STT Ruotsin yrittäjät haluavat mukaan euroon Talentum.com 2007年7月10日(フィンランド語)
  22. ^ ユーロ導入に向けて大きく前進したクロアチア ~ただし中東欧コア国への波及効果は見込めず
  23. ^ クロアチアのユーロ導入準備に向けた見通しが明らかに
  24. ^ a b c IMF admits disastrous love affair with the euro and apologises for the immolation of Greece A. Evans-Pritchard, The Daily Telegraph, 29 Jul 2016
  25. ^ a b J. Tobin, Policy Opinions, 31, (2001)
  26. ^ a b c How a Currency Intended to Unite Europe Wound Up Dividing It P.S. Goodman, The New York Times, 27 Jul 2016
  27. ^ La réunion secrète du 11 juin 1965 au département d’état américain sur l’union monétaire européenne

関連項目編集

外部リンク編集