ダニエル・マーフィー

アメリカの野球選手 (1985 - )

ダニエル・トーマス・マーフィーDaniel Thomas Murphy, 1985年4月1日 - )は、アメリカ合衆国フロリダ州デュバル郡ジャクソンビル出身の元プロ野球選手。右投左打。愛称はマーフ(Murph)[1]

ダニエル・マーフィー
Daniel Murphy
2016年7月11日
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 フロリダ州デュバル郡ジャクソンビル
生年月日 (1985-04-01) 1985年4月1日(39歳)
身長
体重
6' 2" =約188 cm
205 lb =約93 kg
選手情報
投球・打席 右投左打
ポジション 二塁手三塁手一塁手左翼手
プロ入り 2006年 MLBドラフト13巡目
初出場 2008年8月2日
最終出場 2020年9月26日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
WBC 2017年
獲得メダル
男子 野球
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ワールド・ベースボール・クラシック
2017

経歴 編集

プロ入りとメッツ時代 編集

2006年MLBドラフト13巡目(全体394位)でニューヨーク・メッツから指名され、プロ入り。

2008年8月2日にマーロン・アンダーソン英語版故障者リスト入りに伴い、メジャーに昇格。この年は49試合に出場し、少ない打席数ながらも.313の高打率を記録。

2009年一塁手のレギュラーに定着し、打率.266・12本塁打・63打点とまずまずの成績を残した。

2010年スプリングトレーニング中に十字靭帯断裂をし、シーズンを全休した。

2011年二塁手のレギュラーとして出場し続けていたが、アイク・デービスデビッド・ライトの故障により、一塁手三塁手としても出場した。しかしシーズン後半、ブルックス・コンラッドの盗塁を阻止しようとした際に左足を負傷。最終的に109試合に出場し打率.320を記録した。

2013年8月26日から9月1日にかけて、7試合の出場で29打数13安打(打率.448)、5二塁打、7打点、2盗塁などの成績を残し、プレイヤー・オブ・ザ・ウィークを初受賞した。

2014年1月17日にメッツと570万ドルの1年契約を結んだ[2]。前半戦は、好成績を残し、自身初めてオールスターに選出された[3]

 
ニューヨーク・メッツ時代
(2015年7月25日)

2015年はシーズン開幕前のスプリングトレーニングで宗教上の理由でボイコットする事態が起きた(後述)。 シーズンでは二塁手・三塁手として130試合に出場し、これまでとは異なる質の成績を記録した。打率.281・14本塁打・73打点という打撃成績を残したが、3年連続で80以上だった三振が38まで減少した。走塁面では、3年連続2桁盗塁を記録していたが、2盗塁・2盗塁刺に終わった。チームにとって9年ぶりのポストシーズンロサンゼルス・ドジャースとのディビジョンシリーズでポストシーズン初出場を果たし、第1戦でドジャースのエースのクレイトン・カーショウから先制本塁打を放ち、勝利に貢献した。その後、第4戦、第5戦でも本塁打を放つなど活躍した。シカゴ・カブスとのリーグチャンピオンシップシリーズでは全4試合で本塁打を放つなど、17打数9安打(打率.529)、4本塁打、6打点の大活躍でMVPを受賞した。また、ディビジョンシリーズからチャンピオンシップシリーズにかけてポストシーズン6試合連続で本塁打を放ち、カルロス・ベルトラン(2004年)の持っていた歴代記録を更新した。カンザスシティ・ロイヤルズとのワールドシリーズでは、一転して打撃不振に陥った。5試合で20打数3安打(打率.150)、7三振などを記録し、第4戦、第5戦では、試合終盤で失点に繋がる失策を喫した。この年のポストシーズンで記録した7本塁打は、歴代2位タイ(1位と1本差)だった。オフの11月2日にFAとなった[4]

ナショナルズ時代 編集

 
ワシントン・ナショナルズ時代
(2016年3月18日)

2016年1月6日、ワシントン・ナショナルズと3年3750万ドルで契約を結んだ[5]。シーズンでは昨年のポストシーズンの勢そのままに開幕から打撃が覚醒し、4月は月間打率.370、5月は.416の活躍で5月の月間MVPにも選ばれた。リーグ首位打者を維持したまま前半戦を終え、前半戦は打率.348、キャリアハイを更新する17本塁打を記録した。また、選手間投票で自身2度目のオールスター選出となった。シーズン終盤に臀部を痛めた影響で、9月20日以降は欠場が続いた。10月2日のシーズン最終戦に代打で登場し、この打席で安打を放てばDJ・ルメイユを抜いて打率リーグトップに立つという場面でライトフライに倒れ、結果ルメイユとは打率1厘の差でタイトルを逃した。それでも142試合に出場して打率.347・25本塁打・104打点、いずれもリーグトップの47二塁打・長打率.595を記録。ブライス・ハーパーライアン・ジマーマンらの調子が上がらない中主砲として地区優勝に貢献した。シーズンのMVP投票ではクリス・ブライアントに次ぐ2位となった。オフの12月29日に第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)アメリカ合衆国代表への参加の意思を表明した[6]

2017年はシーズン開幕前の2月9日に第4回WBCのアメリカ合衆国代表に選出された[7]。同大会ではマーフィーは二塁手としてイアン・キンズラーの控えだったため、出場機会は少なく、1安打すら記録できなかった。アメリカ合衆国は3月22日の決勝プエルトリコ戦に勝利し、初の優勝を果たした[8]。シーズンでは昨年同様に開幕から好調を維持し、前半戦をリーグトップの打率.342として二年連続でオールスターの先発メンバーに選ばれた。最後まで首位打者争いを繰り広げたが、8月にやや数字を落としたこともあり、チャーリー・ブラックモンにかわされて2年連続で打率はリーグ2位だった。144試合の出場で打率.322、23本塁打、93打点を記録し、ハーパーやジマーマンと並んでクリーンナップを形成しチームの地区優勝に貢献した。

2018年はオフシーズン中に膝のマイクロストラクチャー手術を受けた影響で、開幕から60日間の故障者リストに入った。6月12日に復帰した[9]

カブス時代 編集

 
シカゴ・カブス時代
(2018年9月1日)

2018年8月21日にマイナー選手1名と後日決定条件(選手又は金銭)とのトレードで、シカゴ・カブスに移籍した[10]。計91試合の出場で打率.299、12本塁打、42打点を記録した。

ロッキーズ時代 編集

2018年12月21日にコロラド・ロッキーズと2年契約を結んだ[11]2019年は132試合の出場で打率.279、13本塁打、78打点だった。

2020年は40試合の出場で打率.236、3本塁打、16打点を記録した。オフの10月28日にFAとなった[12]

2021年1月29日に現役引退を発表した[13]

現役復帰 編集

2023年3月29日に独立リーグであるアトランティックリーグロングアイランド・ダックスに入団することが発表され[14]、3シーズンぶりに現役復帰を果たした。37試合に出場し、打率.331、2本塁打、19打点を記録した。

エンゼルス傘下時代 編集

2023年6月12日にロサンゼルス・エンゼルスがダックスとの契約を買い取る形でマイナー契約を結んだ[15][16]。AAA級ソルトレイク・ビーズで38試合に出場し、打率.295、1本塁打、25打点という成績を残したが、メジャー昇格を果たすことはできず、8月15日に再び現役を引退した[17]

人物 編集

敬虔なキリスト教徒であり、LGBTを宗教上受け入れることができない。 2015年3月にはゲイビリー・ビーンがスプリングトレーニングに招待コーチとして現れた際にはボイコットしている[18][19]。 この際にマーフィーは「ビリーがゲイであることは受け入れられない。他の人は受け入れられても、自分は100%彼のライフスタイルを受け入れられない。」と発言[20] 。 ビーン自体はボイコットされた翌日にMLBの記事で「ダニエルが本音を言ってくれたことに感謝している。本当に。彼のチーム(メッツ)を訪れ、レポーターが彼の意見を私に聞いてくれた。彼が自分の感覚を共有することは勇気のいることで、私にとっては大変よい例であり、いつの日か彼が私の視点(ゲイであること)を受け入れてくれると嬉しい。」と声明を発表した[21]。 マーフィーも同日に声明を出し、メディアとはこの宗教的信念の話は終わりにして野球に集中したいと発表した[22]

詳細情報 編集

年度別打撃成績 編集

















































O
P
S
2008 NYM 49 151 131 24 41 9 3 2 62 17 0 2 0 1 18 1 1 28 4 .313 .397 .473 .871
2009 155 556 508 60 135 38 4 12 217 63 4 2 4 6 38 4 0 69 13 .266 .313 .427 .741
2011 109 423 391 49 125 28 2 6 175 49 5 5 3 2 24 2 3 42 14 .320 .362 .448 .809
2012 156 612 571 62 166 40 3 6 230 65 10 2 0 4 36 5 1 82 12 .291 .332 .403 .735
2013 161 697 658 92 188 38 4 13 273 78 23 3 0 5 32 2 2 95 13 .286 .319 .415 .733
2014 143 642 596 79 172 37 2 9 240 57 13 5 0 5 39 3 2 86 15 .289 .332 .403 .734
2015 130 538 499 56 140 38 2 14 224 73 2 2 0 6 31 10 2 38 15 .281 .322 .449 .770
2016 WSH 142 582 531 88 184 47 5 25 316 104 5 3 0 8 35 10 8 57 4 .347 .390 .595 .985
2017 144 593 534 94 172 43 3 23 290 93 2 0 0 3 52 14 4 77 16 .322 .384 .543 .928
2018 56 205 190 17 57 9 0 6 84 29 1 0 0 2 13 2 0 17 4 .300 .341 .442 .784
CHC 35 146 138 23 41 6 0 6 65 13 2 0 0 1 7 0 0 23 1 .297 .329 .471 .800
'18計 91 351 328 40 98 15 0 12 149 42 3 0 0 3 20 2 0 40 5 .299 .336 .454 .790
2019 COL 132 478 438 56 122 35 1 13 198 78 1 1 0 4 32 1 2 74 10 .279 .328 .452 .780
2020 40 132 123 10 29 3 0 3 41 16 0 0 0 1 7 2 0 21 3 .236 .275 .333 .608
MLB:12年 1452 5755 5308 710 1572 371 29 138 2415 735 68 25 7 48 364 56 25 709 124 .296 .341 .455 .796
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績 編集



一塁(1B) 二塁(2B) 三塁(3B) 左翼(LF)
















































2008 NYM - - - 32 50 1 2 1 .962
2009 101 790 74 10 81 .989 - - 27 56 1 3 1 .950
2011 52 419 36 4 36 .991 24 36 55 2 5 .978 28 13 43 4 4 .933 1 1 0 0 0 1.000
2012 12 46 4 0 5 1.000 138 228 325 15 69 .974 - -
2013 7 70 5 2 3 .974 150 263 391 16 86 .976 - -
2014 1 0 0 0 0 .--- 126 209 347 15 88 .974 16 6 26 0 4 1.000 -
2015 17 117 14 1 12 .992 69 118 166 6 32 .979 42 16 71 6 5 .935 -
2016 WSH 21 134 16 1 14 .993 117 194 265 9 76 .981 1 1 1 1 0 .667 -
2017 - 139 218 353 9 86 .984 - -
2018 14 82 4 0 8 1.000 - - -
CHC 38 53 69 4 9 .968 33 53 61 2 17 .983 - -
'18計 14 82 4 0 8 1.000 71 106 130 6 26 .975 - -
2019 COL 110 909 109 9 97 .991 3 0 3 0 1 1.000 - -
2020 29 228 27 3 29 .988 - - -
MLB 364 2795 289 30 285 .990 837 1372 2035 78 469 .978 87 36 141 11 13 .941 60 107 2 5 2 .956
  • 各年度の太字はリーグ最高

表彰 編集

記録 編集

背番号 編集

  • 28(2008年 - 2015年)
  • 20(2016年 - 2018年8月20日)
  • 3(2018年8月22日 - 同年終了)
  • 9(2019年 - 2020年)

代表歴 編集

脚注 編集

  1. ^ Explaining Nats Players Weekend nicknames MLB.com (英語) (2017年8月25日) 2017年9月22日閲覧
  2. ^ Anthony DiComo (2014年1月18日). “Mets agree to one-year contracts with Parnell, Murphy” (英語). MLB.com. 2016年1月7日閲覧。
  3. ^ Anthony DiComo (2014年7月14日). “Years of hard work lead Murphy to All-Star Game” (英語). MLB.com. 2016年1月7日閲覧。
  4. ^ Transactions | mets.com” (英語). MLB.com (2015年11月2日). 2015年11月4日閲覧。
  5. ^ Bill Ladson (2016年1月6日). “Murphy officially inks three-year deal with Nats” (英語). MLB.com. 2016年1月7日閲覧。
  6. ^ Source: Murphy, Goldy to play for US in Classic MLB.com (英語) (2016年12月29日) 2017年3月16日閲覧
  7. ^ USA Baseball Announces 2017 World Baseball Classic Roster Archived 2017年2月12日, at the Wayback Machine. USABaseball.com: The Official Site of USA Baseball (英語) (2017年2月9日) 2017年3月16日閲覧
  8. ^ American Beauty: USA dominates PR in final World Baseball Classic (英語) (2017年3月22日) 2017年3月23日閲覧
  9. ^ https://www.cbssports.com/mlb/news/nationals-activate-daniel-murphy-from-dl-and-itll-be-so-interesting-to-see-how-he-plays/
  10. ^ Jamal Collier (2018年8月21日). “Nats send Murphy to Cubs, Adams to Cards” (英語). MLB.com. 2018年8月22日閲覧。
  11. ^ Rockies sign Daniel Murphy” (英語). MLB.com. 2019年1月8日閲覧。
  12. ^ Rockies' Daniel Murphy Enters Free Agency” (英語). MLB Trade Rumors. 2020年10月28日閲覧。
  13. ^ Daniel Murphy Retires” (英語). MLB Trade Rumors. 2021年1月29日閲覧。
  14. ^ THREE-TIME MAJOR LEAGUE ALL-STAR DANIEL MURPHY JOINS DUCKS”. Long Island Ducks Baseball (2023年3月29日). 2023年3月31日閲覧。
  15. ^ Injuries & Moves: Angels sign veteran infielder Daniel Murphy” (英語). MLB.com (2023年6月13日). 2023年6月14日閲覧。
  16. ^ DANIEL MURPHY’S CONTRACT PURCHASED BY LOS ANGELES ANGELS” (英語). Long Island Ducks Baseball - Affordable Family Fun on Long ... (2023年6月12日). 2023年6月14日閲覧。
  17. ^ 3回球宴選出のマーフィーが2度目の現役引退、6月からエンゼルスとマイナー契約”. 日刊スポーツ (2023年8月16日). 2023年8月19日閲覧。
  18. ^ Craig, Mark (March 4, 2015) "Billy Bean responds to Daniel Murphy's comments on homosexuality", Newsday.
  19. ^ Ackert, Kristie (March 4, 2015)Mets second baseman Daniel Murphy is done discussing his beliefs about homosexuality, New York Daily News.
  20. ^ Ackert, Kristie (March 3, 2015) "Mets second baseman Daniel Murphy says he disagrees with gay lifestyle as Billy Bean, MLB's inclusion ambassador, visits club" New York Daily News.
  21. ^ Axisa, Mike (March 4, 2015) "Billy Bean responds to Daniel Murphy: 'I appreciate Daniel spoke his truth'", CBSSports.com.
  22. ^ Rubin, Adam (March 4, 2015) "Murphy now to talk baseball only", ESPN.com.
  23. ^ “メジャーリーグ シルバースラッガー賞発表 引退オルティスの名も”. スポニチアネックス. (2016年11月11日). https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2016/11/11/kiji/K20161111013703170.html 2016年11月11日閲覧。 

関連項目 編集

外部リンク 編集