ダラーラ・SF19 (Dallara SF19) は、ダラーラが開発したフォーミュラカースーパーフォーミュラ2019年より使用される。

ダラーラ・SF19
東京オートサロン2019公開時
カテゴリー スーパーフォーミュラ
コンストラクター ダラーラ
先代 ダラーラ・SF14
後継 ダラーラ・SF23
主要諸元
シャシー C-FRPモノコック
サスペンション(前) プッシュロッド トーションバー ダブルウィッシュボーン
サスペンション(後) プッシュロッド ダブルウィッシュボーン
全長 5,233mm
全幅 1,910mm
全高 960mm
ホイールベース 3,115mm
エンジン NRE(ホンダ又はトヨタ) 2,000cc L4 ターボ MR
トランスミッション リカルド 6速 パドルシフト(EGS)
重量 670kg以上(ドライバー込み)
燃料 市販無鉛ハイオクガソリン
タイヤ ヨコハマ
主要成績
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概要 編集

スーパーフォーミュラ2018年シーズンまで使用されてきたダラーラ・SF14の後継車両である。イタリアのダラーラ社では、1994年の全日本F3000選手権王者のマルコ・アピチェラが開発に関わっている。2018年7月4日富士スピードウェイにてシェイクダウンが行われた[1]

開発コンセプトは、SF14の「クイック&ライト」を継承した上で、空力特性を見直し、オーバーテイクし易くなることを掲げている。これは、レース中にドライバー同士のバトルを際立たせ、エンターテイメントと競技の両立を目指すためである。前を走る車に接近した時、空力バランスが変化しないよう、車体の下(アンダーフロア)でダウンフォースを獲得することが重要視されている[2]。更に国際自動車連盟が制定した2016年F1安全基準にも対応し、現在のフォーミュラカーに求められる性能を満たしている。また、車体にはSF14の部品の多くが流用されており、運用コストの低減にも考慮されている[3]

SF14からホイールベースが50mm短くなり、タイヤサプライヤーである横浜ゴムからの要望でフロントタイヤの幅が合計20mm拡大された[1]影響もあり、開発テストを担当したドライバーからは「曲がりすぎるぐらいよく曲がる」という意見が多く聞かれる[4][5]

安全基準に沿ってノーズ先端は低くなり、フロントウィングとリアウィング翼端板には後退角が付けられ、ポッドウィングなどF1の空力トレンドが取り入れられている[2]。左右のリアウィング翼端板上部には悪天候時の追突防止のため、LEDライトを装備している。

2018年よりフォーミュラ1(F1)やフォーミュラE(FE)で順次導入が進められているコックピット保護デバイス「Halo」について、ダラーラ側では搭載・非搭載どちらにも対応可能としていた。当初 主催者の日本レースプロモーション(JRP)は非搭載の方向と説明していたが[6]、テストの結果ドライバーの視認性や乗降性に問題がなかったことから、2019年より正式に搭載した[7]

ちなみに、下級カテゴリーである全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権で使われるダラーラ・320とは、同じダラーラ社製シャシーということもありシートポジションなどがよく似ており、両方をドライブした複数のドライバーが「(SF19と320では)同じドライバーズシートが使える」と語っている[8]

次世代開発 編集

 
ダラーラ・SF23 「白虎」仕様

JRPはトヨタ・ホンダ・横浜ゴムらと共同で、本車両をベースに2023年以降のレースへの実戦投入を見据えた次世代技術の開発を行うためのテストを2022年より開始している。

SF23」と呼称する2台のテストカーには虎柄のデザインが施されることから 通称「赤虎」「白虎」と呼ばれ(「赤虎」がトヨタエンジン、「白虎」がホンダエンジン)[9]、いわゆるカーボンニュートラルの実現を目指し、バイオ燃料、カーボンコンポジット素材に代わるバイオコンポジット素材、再生可能原料で製造されたタイヤなどが順次テストされた。テストドライバーは「赤虎」は石浦宏明高星明誠ら、「白虎」は塚越広大らが務めている[10][11]

テストの結果が良好であったことから、2023年シーズンからは正式に、SF19のモノコックに新しいエアロキットを装着した「SF23」を導入することが決定。横浜ゴムの供給するタイヤも、カーボンニュートラル対応のものに切り替わる。一方で再生可能燃料の導入については同年はひとまず見送ることとされた[12]

A2RL仕様 編集

2023年3月、アブダビの先端技術研究評議会(ATRC)のプログラム開発部門『ASPIRE』が、翌年より自動運転車によるレースシリーズ『ABU DHABI AUTONOMOUS RACING LEAGUE』(A2RL)を開催し、そのベース車両としてSF23を採用すると発表した[13]

A2RL仕様車では、7台の光学カメラ・4基のレーダー・3基のLIDARセンサー・運転制御用コンピュータなどが搭載される一方で、無人運転のためHaloやブレーキランプは不要とされ外されている。エンジンもスーパーフォーミュラとは異なり、ホンダ・シビックタイプRに搭載されているK20C型を独自にチューニングしたもの(約300馬力)が使用される。11月にはドバイ・オートドロームにてダニール・クビアトのドライブによる初期テストが行われ[14]、後に「EAV24」と名付けられた。

スペック 編集

 
大阪オートメッセ2022公開時

(2019年3月2日時点)

シャーシ 編集

  • 全長:5,233mm
  • 全幅:1,910mm
  • 全高:960mm
  • ホイルベース:3,115mm
  • ブレーキキャリパー:ブレンボ製 6ポット、ブレンボ製 カーボンディスク
  • ホイール:チームで異なる
  • タイヤ:横浜ゴム製 Fr 270/620R13 Rr 360/620R13
  • ギヤボックス:リカルド製6速シーケンシャル、パドルシフト
  • 車両重量:670kg以上(ドライバー込み)
  • 安全基準:2016/17 FIA F1 安全基準に準拠

エンジン 編集

  • 供給メーカー:ホンダ/M-TEC(HR-417E)、トヨタ/TRD(Biz-01F)
  • 気筒数:直列4気筒
  • 排気量:2,000cc
  • 弁機構:DOHC ギア駆動 吸気2 排気2
  • 最高回転数:
  • 最大馬力:550馬力以上
  • 重量:85kg
  • スパークプラグ:チームで異なる
  • 燃料:無鉛ハイオクガソリン(サーキットで異なる)
  • 潤滑油:チームで異なる

各サーキットでのベストラップ 編集

サーキット ラップタイム(ドライバー)
ホンダエンジン トヨタエンジン
鈴鹿サーキット 1'34.533
山本尚貴/2020年第5戦)
1'34.442
ニック・キャシディ/2020年第6戦)
オートポリス 1'24.140
野尻智紀/2020年第4戦)
1'24.544
宮田莉朋/2020年第4戦)
スポーツランドSUGO 1'03.953
(山本尚貴/2019年第3戦)
1'04.288
平川亮/2020年第3戦)
富士スピードウェイ 1’19.972
(野尻智紀/2020年第7戦)
1’19.989
坪井翔/2020年第7戦)
モビリティリゾートもてぎ[15] 1’29.757
(野尻智紀/2021年第6戦)
1'30.536
坪井翔/2021年第6戦)
岡山国際サーキット 1'12.890
福住仁嶺/2019年第6戦)
1'12.700
(平川亮/2019年第6戦)

関連項目 編集

  • グランツーリスモSPORT - 2019年3月28日のアップデートで本車が追加された。実在のフォーミュラマシンの収録はメルセデス・F1 W08 EQ Power+以来となる。キャンペーンモードの「GTリーグ」では本車限定のワンメイクレースの「スーパーフォーミュラ選手権」も収録されている。
  • グランツーリスモ7 - 本作では後継であるSF23も追加されている。

脚注 編集

  1. ^ a b 【スーパーフォーミュラ】来季マシン「SF19」国内初お披露目…雨の富士でテスト開始 - Response.・2018年7月4日
  2. ^ a b ダラーラ、SF19を解説「フロア側でダウンフォースを稼ぐデザイン」”. motorsport.com (2018年7月6日).
  3. ^ SUPER FORMULA次期車両『SF19』について』(PDF)(プレスリリース)日本レースプロモーション、2013年7月4日http://superformula.net/sf/media/18release/180704_sf_news.pdf2022年4月5日閲覧 
  4. ^ 野尻智紀、2度目のSF19テスト「”曲がり過ぎる”くらいよく曲がった」 - motorsport.com 2018年10月29日
  5. ^ 小林可夢偉がSF19開発テストに参加「マシンの感覚は掴めた」 - motorsport.com 2018年10月29日
  6. ^ 2019年導入のスーパーフォーミュラ新シャシー・SF19は7月頃にシェイクダウンへ”. オートスポーツWeb. 株式会社三栄 (2018年3月10日). 2022年4月5日閲覧。
  7. ^ スーパーフォーミュラSF19、『ハロ』の採用を正式決定。視認性の確認を完了”. オートスポーツWeb. 株式会社三栄 (2018年10月26日). 2022年4月5日閲覧。
  8. ^ スーパーフォーミュラ:河野駿佑がSF19を初体験。「コーナーは戸惑うレベルではなかった」理由は”. オートスポーツWeb. 株式会社三栄 (2020年12月24日). 2022年4月5日閲覧。
  9. ^ “赤虎”“白虎”が初走行。次世代を見据えたスーパーフォーミュラの開発テストが富士で始まる - オートスポーツ・2022年4月7日
  10. ^ スーパーフォーミュラ、次世代を見据えた車両開発計画を発表。テストを石浦と塚越が担当 - オートスポーツ・2022年3月5日
  11. ^ JRP、再生可能原料比率を高めた4種類のレインタイヤをもてぎでテスト「昨年に比べ、一段レベルアップした」と塚越広大 - オートスポーツ・2023年11月21日
  12. ^ スーパーフォーミュラ、新型車両『SF23』とカーボンニュートラル対応タイヤの2023年導入を発表 - オートスポーツ・2022年12月13日
  13. ^ スーパーフォーミュラ『SF23』の自動運転レースが実現へ。アブダビで新たなレースシリーズが発足 - オートスポーツ・2023年3月20日
  14. ^ Turning a Super Formula Car into an Autonomous Racer - Racecar Engineering
  15. ^ 2021年シーズンまではツインリンクもてぎ。

外部リンク 編集