映画・テレビ番組中の異性装

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映画・テレビ番組中の異性装英語: cross-dressing in film and television)は、サイレント映画の時代に始まった。チャーリー・チャップリンスタン・ローレルが、アメリカ合衆国にあるフレッド・カーノ英語版一座へ1910年に訪れた際、英国のミュージックホールにおける伝統的な女装を一時的に行った。 筋骨たくましい俳優として知られるウォーレス・ビアリーも、サイレント映画でスウェーデン人の女性に成りすましたことがある。 また、三ばか大将(特にカーリーことジェリー・ハワード)もまた、短編映画で女装した。このやり方は長く続いており、たいてい笑いをとるために行われた。1960年代までは厳しい検閲のため、ドラマチックな映画に異性装が用いられた。 これらとは別目的の異性装には、アルフレッド・ヒッチコックのスリラー映画『殺人!』に出てくる、フリルつきのドレスとペチコートが好きな服装倒錯を持つ殺人鬼があげられる。

映画『グレンとグレンダ』のポスター

映画やビデオにおける異性装 編集

主要人物の主要要素として 編集

異性装をおもにした映画は以下の通り

小さいながらも重要なストーリー要素として 編集

知られていない筋書きの要素として 編集

  • Les Résultats du féminism (1906),In the Year 2000 (1912、リメイク)いずれもフィルム現存なし。
  • Dirty Gertie from Harlem U.S.A. (1946)スペンサー・ウィリアムズが女性の占い師を演じた。

非喜劇的要素として 編集

上記の映画はコメディ要素として用いられたものである。 ただし、以下に示すものは、非喜劇的な要素を含んだ異性装である。伝記映画などにみられることがある。

ドキュメンタリーにおける異性装 編集

ドキュメンタリー en:Giuliani Timeではルドルフ・ジュリアーニが政府()が主催した報道関係者とのディナーに行くところが見られる。

テレビ番組における異性装 編集

ミルトン・バレルはアメリカで最も人気のあった女装コメディアンであり、1948年から1956年の間に放送されたNBCの番組に出演した際はスカートを着用していた。ハーヴェイ・コーマンは『キャロル・バーネット・ショー』で力のあるユダヤ人の母親を演じた。フィリップ・ウィルソンは『フィリップ・ウィルソン・ショー』でジェラルフィン・ジョーンズという名物キャラクターを誕生させた。

空飛ぶモンティ・パイソン』『リトル・ブリテン』『en:The League of Gentlemen』『サタデー・ナイト・ライブ』『キッズ・イン・ザ・ホール(en)』といったスケッチ・コメディーでは、男優が女装してファルセットで会話するなどといった、目で見てわかるネタがしばしば用いられている。

また、イギリスの(女性)制作チーム en:French and Saunders は、男装(女優が2人いた場合、一人だけの時もあれば両方が男装することもある)もののスケッチを制作してきた。 さらに、前述のルドルフ・ジュリアーニはドキュメンタリー以外にも『サタデー・ナイト・ライブ』で女装したことがあり、キーナン・トンプソンもこの番組内で女装することがある。

その他作品における異性装 編集

  • オーストラリアの男性コメディアンであるバリー・ハンフリーズは、いくつかの番組でデイム・エドナ・エバレッジとして登場したことがある。
  • en:Bosom Buddies - トム・ハンクスピーター・スコラーリの演じる2人の男が、安い女性専用のホテルに泊まるために女装する。
  • en:Are You Being Served? - しばしばジョン・インマンが女性役を演じ、フランク・ソーントンなどのキャスト陣も女装して出演することがある。
  • M*A*S*H - マックスウェル・クリンガーが兵役から逃れるために女装する回がある。
  • You Can't Do That On Television - コメディ・スケッチ(とくに初期)において、様々な理由で男性キャラクターがドレスを着用する作品がいくつかあった。
  • en:Golden Girls - ドロシー・ゾボナーク(ビアトリス・アーサー)の兄弟であるフィル・ペットリロ(本篇中には登場しない)は異性装者と設定されている。ペットリロがエピソード『Ebbtide's Revenge』で死亡した際、ペットリロの妻アンジェラは夫をテディベアと一緒に埋葬した。それを見たアンジェラは自分のルームメイトに「兄さんはベニー・ヒルのスケッチのような死に方をしたわ!(It looks like he died in a Benny Hill sketch!)」と言った。
  • らんま1/2 - 男性の格闘家らんまが、性別転換を起こしてしまう日本の漫画。衣装も含め、らんまの性別は本人の意思とは関係なく変わってしまい、コミカルで不釣り合いな異性装者になってしまうこともある。また、この作品には紅つばさと小夏という女装家や、久遠寺右京という男装家も登場する。右京に至っては、性別の変わったらんまにポテンシャルな恋愛的関心を抱くこともある。
  • en:The Drew Carey Show - ドゥルーの兄弟であるスティーブ・ケアリーは異性装者である。
  • フレンズ - チャンドラーの父親(演:キャスリーン・ターナー)には女装癖がある。
  • アレステッド・ディベロプメント - デヴィッド・クロス演じるトバイアス・フュンケが家族とよりを戻すため、イギリス人のナニーであるミセス・フェアーボトムに変装する(ネタ元はミセス・ダウト)。シリーズを通してトバイアスは同性愛者であることを秘密にしていたが、このことが原因でがバレてしまう。
  • en:Saved by the Bell - ザックとスクリィーチュが護身もしくは笑いをとるために女装するときがある。
  • リロ&スティッチ - ケヴィン・マクドナルド(吹き替え:三ツ矢雄二)演じるプリークリーは女性の格好をしている。
  • デクスターズラボ -エピソード『Dimwit Dexter』『Remember Me?』『Tribe Called Girl』『The Big Sister』において主人公デクスターが女装するシーンがある。
  • セーラームーンシリーズ - 第1作の悪役ゾイサイトがセーラームーンになり済ます回がある。『セーラームーンSuperS』において、フィッシュ・アイが女性らしい格好をする。『セーラームーンS』と『セーラームーンセーラースターズ』においては、天王はるか(セーラーウラヌス)が制服を含め男性と思わせる格好をし、複数のキャラクターから男性と間違われることがある。
  • ロックマンエクゼ - 悪役であるガウス・マグネッツ(英:Magnus Gauss)が女装[2]したところ、Dr.ワイリーがついてきてしまったことがある(ストリーム35話「クィーンファイト!」)。 なお、ガウス・マグネッツはテンションが上がると、女装してオカマ口調で話す癖がある。
また、海外で放送されなかった回においては、メインキャラクターのうち3名がアイドル歌手AKIに変装してさらわれた少女たちを救う[3][4](1期27話「アイドルになります!」)という内容になっている。
  • en:He's a Lady - 2004年に放送されたリアリティ番組シリーズ。たがいに女装するなどといった内容を含んでいる。
  • en:You Rang, M'Lord? - レズビアンの異性装者シシーは、短髪で片眼鏡クラヴァットといういでたちである。
  • 桜蘭高校ホスト部 - 主人公の藤岡ハルヒは花瓶を割ってしまい、その弁済のために雑用係として働いていたが、ある時、彼女の素顔がホスト部員によって、男性と間違えられたことから、よく男装して接客している。また、ホスト部のメンバーも原作10巻(光と薫と、ハニーこと光邦がハルヒを聖ロベリア女学院の白百合の会・ヅカ部から遠ざけるために女装。アニメ版でも同じ理由で環と鏡夜も女装)、 11巻 (光と薫がの羽をもつ魔女の衣装を着る)、 15巻 (光と薫と環とモリがアリス役で登場し、鏡夜がアリスの母親と黒の女王役で登場する)、20巻 (光とハルヒのデートの監視のために光邦が女装する。なお、監視にはほかのホスト部員全員がかかわっている。)など、複数の場面で女装している。
  • ポケットモンスター - ロケット団コジロウがドレスやスカートをはく場面がいくつかあり、空気で膨らませて作ったビキニを着る場面もあった。サトシや、ロケット団のムサシニャースたちも、コジロウ程ではないが、異性装シーンがある。
  • 犬夜叉 - 蛇骨が女性らしい格好をし、犬夜叉にちょっかいを出す。
  • ボーイ・ミーツ・ワールド - 後期エピソードにおいて異性装をするキャラクターが出てくる。
  • あぃまぃみぃ!ストロベリー・エッグ - 主人公の天和響は女性教師のみの学校で教職に就き、そのために女装をする。
  • 神秘の世界エルハザード - 水原誠は、正体不明の種族に攫われたロシュトリア王国のファトラ王女に非常に似ていたことから、王女の替え玉をさせられる。
  • 処女はお姉さまに恋してる - 主人公の宮小路瑞穂は祖父の遺言により、女装して寮住まいをしつつ、女子校へ通うようになる。
  • ふしぎ遊戯 - 朱雀七星士の一人である柳宿(ぬりこ)は、亡くなった妹に思いを馳せ女装している。また、そのマンガの中盤には、野蛮でかつ人喰いで、男性排斥主義者の女性の住む女誠国では、殺されるのを避けるために、朱雀七星士たちは女装しなければならなかった。ちなみに後者は、放送コードの関係でアニメ化に際してカットされたが、人気のある部分だったため、OVAの特典としてそのモチーフを基にギャグストーリとして復活した。
  • グラビテーション - 主要人物である新堂愁一は、自分の姉妹校の女子用制服を着ており、由貴瑛里の気を引くためにメイドの格好をしたことがある。
  • プリンセス・プリンセス - 男子校が舞台のこの作品は、生徒に活気を与えるために女装するという制度がある。
  • ホーリーオークス(Hollyoaks) - 登場人物のクリス・フィッシャー(Kris Fisher)は異性装者である。
  • WWEレスラーのダスティン・ローズ - 金色のコスチュームとペイントで身を包んだ性倒錯ギミックの『ゴールドダスト』になったことがある。また、WWEの関係者で異性装をしたことのあるレスラーにはヴィトー・ログラッソがいる。
  • スポンジ・ボブ - 複数の話でスポンジ・ボブの女装シーンがある。ボブの親友であるパトリックも『オイラはパトリシア(原題:That's No Lady)』という回で 暗殺者から身を守るために女装したことがある。
  • NARUTO -ナルト- - 登場人物である白(ハク)が死ぬまで女装していた。
  • en:Young Americans(2000) - 登場人物の中に、男装している人物がいる。
  • 『五人と一匹』のTVシリーズ
  • Dårfinkar & dönickar - 主人公シモーヌが転校してすぐ、先生がシモンと発音したことで男性と間違われた。
  • おいら女蛮(すけばん) - 女蛮子(すけばんじ)は冒頭で学校を入退学を繰り返したために、新たな学校へ転入させられ、その後は女子高生として過ごしていく。本作は2006年には映画化もされている。[5]
  • イギリスのスタンダップ・コメディアン兼俳優のエディー・イザードは、自分を'executive'もしくは'action'な異性装者とし、『オーシャンズ12』を含む複数の映画に出演する際や、自分のスタンダップ・コメディのDVD『en:Live at the Ambassadors』(1993年)、 『Unrepeatable』(1994年)、『Definite Article』(1996年)、『en:Glorious』(1997年)、『en:Dress to Kill』(1999年)、『Circle』(2002年)、『en:Sexie』(2003年)をリリースする際も女装している。
  • ハートキャッチプリキュア! - 主要な登場人物の一人である明堂院いつきが、病弱な兄・さつきに代わって家督を継ぐために、自家の運営する明堂学園中等部に男装して登校し、生徒会長を務めている。そのために、主人公・花咲つぼみがいつきを男性と間違えて一目惚れする描写もあった。
  • ときめきメモリアル - 登場人物の一人である伊集院レイは家のしきたりで女子は外では男子とし生きなければならない為、男装して登校。しかし主人公への告白時には元の女子の姿で告白場所に現れる。

映画・テレビ番組中における異性演技 編集

演者が自分の性とは反対の役を演じる際、異性装をしていなかったりトランスジェンダーを行っている人物でない場合もある。 これはコミカルな要素を含んでいる場合もある。

なお、ナンシー・カートライトが『ザ・シンプソンズ』でバート・シンプソンを演じるなどといった、テレビアニメにおいて女性の声優が男性のキャラクターを演じることはよくあることである。その逆も存在する。

脚注 編集

  1. ^ 1993年12月31日、ネブラスカ州で、実際に起きた事件を基に描いている。
  2. ^ ロックマンエグゼストリーム これまでのお話 第27話~第39話 →第35話「クィーンファイト!」(2005.6放送 テレビ東京)
  3. ^ 新X-STADIUM Vol.7 (ジーベック 2002.9頃 ウェブアーカイブ)
  4. ^ ロックマンエグゼ 27話 アイドルになります! - 萌え萌えアニメ日記(2002/09)
  5. ^ おいら女蛮〈スケバン〉 @ ぴあ映画生活

参考書籍 編集

  • 吉永みち子 『性同一性障害 性転換の朝(あした)』 集英社〈集英社新書〉、213、214頁。