アメリカ帝国

米帝から転送)

アメリカ帝国(アメリカていこく、英語: American Empire)、アメリカ帝国主義英語: American Imperialism)とは、アメリカ合衆国の政治的、経済的、軍事的、文化的な影響力を指す用語。またアメリカ合衆国が事実上、または比喩的に帝国または帝国主義であるとみなす立場からも使用されている。日本語の略称は米帝(べいてい)。

1898年の米西戦争当時の政治漫画 - 「端から端まで1万マイル」 - アメリカ合衆国のシンボルのハクトウワシを使用して、プエルトリコからフィリピンまでのアメリカ合衆国の支配の拡大を示している。右下には100年前(1798年初頭)のアメリカ合衆国が小さい地図で示されている。
1899年にPuck magazineに掲載された戯画。アンクル・サム(アメリカ合衆国の擬人化)が、「アメリカ合衆国 - 自治の最初のレッスン」と書かれた本を使って、最前列の4名の子供(フィリピン・ハワイ・プエルトリコ・キューバ)に教えている。下部の説明文は「学校開始。アンクル・サム、文明の新入生に対して:さあ、子供達、この授業は何が何でも受けなくてはいけませんよ! でも上級生たちをご覧、少しすれば君たちも彼らのように喜ぶようになるはずだ!」
後方にはアンクル・サムの教えを受けた少年少女達(アラスカカリフォルニアテキサスニューメキシコなど)がおり、アフリカ系アメリカ人は奥で窓拭き。インディアンは玄関脇で教科書を逆さのまま開き、辮髪中国人は室内に入ろうとしている。後方の黒板には、イギリスがどのように植民地を統治し世界を文明化したかが述べられ「相手の同意を待たないことでイギリスは世界の文明を大いに進めた。米国も相手の同意に関係なく新しい領域を支配しなくてはならない、彼らが自力で統治できるようになるまでは」と書かれている

アメリカ帝国の概念が最初に普及したのは、1898年の米西戦争と、続くフィリピンの併合(米比戦争)からである[1][2]。アメリカ帝国主義という言葉は、帝国主義を肯定的にとらえるアメリカ新世紀プロジェクトなどのアメリカ合衆国の新保守主義者植民地主義に反対し独立を支持するアメリカ国内や国外の勢力、あるいは社会主義共産主義などの立場などから使用されている。

概要編集

「帝国」とは本来は、複数のより小さな国や民族などを含めた広大な領域を統治する国家のこと[3]で、帝政つまり元首が皇帝・君主であるとは限らない。古代ローマ帝国も、初期においては必ずしも皇帝位は世襲であるとは限らず、各地の群雄が皇帝として乱立(もしくは帝位を僭称)していた軍人皇帝時代であっても、帝国の体制はかろうじて維持されている。

1898年の米西戦争では、アメリカ合衆国フィリピングアムプエルトリコを獲得し、キューバを保護領とした。戦争前にはスペインの劣悪な原住民支配を批判し、世論も戦争に賛成したが、獲得後は逆に各国の独立運動を弾圧した。キューバは事実上、アメリカ合衆国の支配下におかれた[4]

1898年から1900年までのアメリカ合衆国大統領選挙では、アメリカ合衆国は「進歩の時代」を掲げてフィリピンを領有して、ヨーロッパ列強と同様に植民地主義を進めるべきとの「帝国主義者」と、アメリカ合衆国憲法の謳う共和制の価値を重視して各国の独立を支持してアメリカは他国への干渉を控えるべきとの「反帝国主義者」の間で、いわゆる「帝国主義論争」が発生した[5]。「帝国主義者」の側が勝利して共和党ウィリアム・マッキンリー大統領となり、併合を進めた。

続く米比戦争では、マーク・トウェインアンドリュー・カーネギーに代表されるアメリカ反帝国主義連盟などが、植民地主義に反対し、各国の独立運動に賛成する立場から、フィリピンの併合に反対した。

1917年にはヨーロッパでウラジーミル・レーニンの「帝国主義論」が出版され、後のマルクス・レーニン主義を支持した各国の共産党やその支持者は、社会主義共産主義の立場から「アメリカ帝国主義」とのレッテルを張った。

アメリカ例外主義編集

 
Puck誌の表紙(1901年4月6日刊行)。米西戦争後、コロンビア(米国の擬人化)が戦艦のデザインをしたボンネットを被り見繕いをしている。ボンネットには"列強(World Power)"、煙には"拡大(Expansion)"と記されている。

アメリカ例外主義とは、米国の信条歴史、政治的および宗教的制度が世界の国々の中で特別な位置を占めているという概念のことである。 [6]

哲学者のダグラス・ケルナーは、アメリカ例外主義が19世紀の社会現象でフランス人評論家、アレクシ・ド・トクヴィルが起源であると特定した。トクヴィルは「米国はいかなる制限も認められない道を進んでいる。」と記していた[7]

ドナルド・トランプは、アメリカの例外主義は「世界を侮辱している」と考えているため、「この用語は好きではない」と述べた。また彼はテキサスのティーパーティー活動家に、「あなたがドイツ人であろうと、日本人であろうお、中国人であろうと、誰にもその語を言わせたくない」と語った[8]

19世紀以降編集

 
1900年の共和党のキャンペーンポスター。「政権の公約は守られた――アメリカの旗が海外の土地に立てられるのは、領土獲得のためではなく人道のためである。」(1900年7月12日 ウィリアム・マッキンリー大統領) - 左側はマッキンリーが大統領選に勝利する前の1896年の状況で、上から「民主党政権下」「銀行の取り付け騒ぎ」「スペイン支配下のキューバ」。右側はマッキンリーが大統領になって4年後の状況で、上から「共和党政権下」「たよりになる銀行」「アメリカ支配下のキューバ」(1898年の米西戦争後の状況)。

18世紀にはスペイン・ポルトガルオランダイギリスフランスなど歴代のヨーロッパ列強が、帝国主義的拡張や植民地主義を行っていた。

アメリカ合衆国は1776年に独立したが、18世紀前半はマニフェスト・デスティニー的な地続きの領土拡張を行っていた。また、イギリスからの独立を掲げて果たした事もあり、植民地主義には反対し、独立に賛成する世論が強かった。

1846年からの米墨戦争などで現在の合衆国本土域が確定した後に、中央アメリカへの干渉を本格化し、1909年からのニカラグア干渉では政府を転覆させ占領を行った。

1898年の米西戦争パリ条約により、スペイン帝国西インド諸島太平洋におけるほとんどの植民地をアメリカへ割譲し、アメリカ合衆国による植民地獲得競争への参加が本格化した。

以下は過去または現在においてアメリカ合衆国領、及び保護国(事実上、憲法上の双方)であった地域である。

上記の他、西アフリカリベリアは、アメリカ合衆国からアフリカへの解放黒人奴隷の送還と植民による「リベリア植民地」が母体となり建国され、1847年の独立ではアメリカ合衆国憲法を基本とした憲法を制定したが、アメリカ合衆国から殖民した「アメリコ・ライベリアン」が原住民に圧制を敷いた。

現在編集

 
アメリカ軍の世界的存在(2007年)。現在、米軍と米軍基地は世界中に点在している。[9]在外米軍には賛否両論ある[10][11]
  米兵数1,000人以上
  米兵数100–1,000
  軍事施設を利用

冷戦ソ連崩壊で終結した後は、アメリカ合衆国が「唯一の超大国」となった。よって後述のように、親米ならどんな圧制国でも“自由で民主的”と存在が容認され、反米ならその国の国民の自由意志により立てられた政権であっても“世界平和と民主主義の敵で討ち果たされるべき存在”というレッテルが貼られることになった。民衆により独裁体制が打ち倒された後の独裁者は、親米であればアメリカの庇護を受ける事が出来た[12][13]が、イスラム原理主義、共産主義など反米の場合はそのまま放逐され、また処刑される者もあった[14]

第二次世界大戦終結後も以下の事件の際に、アメリカ合衆国を批判する立場から「アメリカ帝国(主義)」の言葉が使用された[15]

フィデル・カストロとチェ・ゲバラは、キューバ革命当初は反米を掲げていなかったが、ピッグス湾事件以降は「アメリカ帝国主義との闘い」を主張した。

2000年代よりベネズエラウゴ・チャベスは、折に触れてアメリカの帝国主義的政策に対する批判を繰り返し[16]ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体の結成を主導した。

経済では新自由主義を推進し、特にイラク戦争ではネオコンの主張もあり外交でも国際協調主義から単独行動主義に重点を移したため、肯定的な立場からも否定的な立場からも「アメリカ帝国」との表現の使用が再び増加した[17]

アメリカ新世紀プロジェクト(PNAC)は、アメリカの愛国主義国益の立場から、PNACの原則(PNAC's principles)の中で以下のように記している。

我々は、我が国の「安全・繁栄・原則」に役立つ国際的な秩序の保存および拡張における、アメリカのある特定の役割に対して、責任を持つ必要がある — 原則の宣言、1997年6月3日[18]

『アメリカ帝国 (American Empire)』の著者で、アメリカ陸軍大佐だったボストン大学教授のアンドリュー・ベースヴィッチは、冷戦終結後にアメリカが帝国のように行動し始めている、と述べた。ノーム・チョムスキーは、世界中のすべての国家の間の「バランス」「均等」「相互の尊敬」および「調和」を維持するために、超大国単独支配の考え方を拒絶すべき、と主張した。チャルマーズ・ジョンソンは著作『アメリカ帝国への報復』で、東アジアでのアメリカ合衆国の帝国主義的政策は、報復を受けて失敗する、と主張した[19]

中央情報局でテロ対策を担当したマイケル・ショワー (Michael Scheuer) は、退職後の2004年に『帝国の傲慢』を出版し、当初は異端視されていたウサーマ・ビン・ラーディンアルカーイダが、ジョージ・W・ブッシュ政権の傲慢と無知によって共感を広げ、テロリズムを招いていると批判した[20]

日本共産党は、2004年(平成16年)改定の綱領で「いま、アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威となっている。」と述べている[21]

文化帝国主義編集

文芸批評家は軍隊と文化帝国主義は相関的だと非難している。ポストコロニアル理論を提唱した米国の批評家・サイードは以下のように述べた

... so influential has been the discourse insisting on American specialness, altruism and opportunity, that imperialism in the United States as a word or ideology has turned up only rarely and recently in accounts of the United States culture, politics and history. But the connection between imperial politics and culture in North America, and in particular in the United States, is astonishingly direct.[22]

International relations scholar David Rothkopf disagrees and argues that cultural imperialism is the innocent result of globalization, which allows access to numerous U.S. and Western ideas and products that many non-U.S. and non-Western consumers across the world voluntarily choose to consume.[23] Matthew Fraser has a similar analysis but argues further that the global cultural influence of the U.S. is a good thing.[24]

Nationalism is the main process through which the government is able to shape public opinion. Propaganda in the media is strategically placed in order to promote a common attitude among the people. Louis A. Perez Jr. provides an example of propaganda used during the war of 1898, "We are coming, Cuba, coming; we are bound to set you free! We are coming from the mountains, from the plains and inland sea! We are coming with the wrath of God to make the Spaniards flee! We are coming, Cuba, coming; coming now!"[25]

In contrast, many other countries with American brands have incorporated themselves into their own local culture. An example of this would be the self-styled "Maccas," an Australian derivation of "McDonald's" with a tinge of Australian culture.[26]

脚注編集

  1. ^ Lens, Sidney; Zinn, Howard (2003) [1971]. The Forging of the American Empire. London: Pluto Press. ISBN 0-7453-2100-3. http://books.google.com/books?id=qvLfIHqkOOAC 
  2. ^ Field, James A., Jr. (June 1978). “American Imperialism: The Worst Chapter in Almost Any Book”. The American Historical Review 83 (3): 644–668. doi:10.2307/1861842. JSTOR 1861842. 
  3. ^ Oxford Dictionary
  4. ^ キューバの選択〜カストロと社会主義 - 外務省
  5. ^ 「すごい!「アメリカの歴史」: 人物で読む超大国の軌跡」(レッカ社、2008年、317p) ISBN 978-4-569-67099-7
  6. ^ Frederick Jackson Turner, Significance of the Frontier at the Wayback Machine (archived May 21, 2008), sagehistory.net (archived from the original on May 21, 2008).
  7. ^ Kellner, Douglas (2003年4月25日). “American Exceptionalism”. 2006年2月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年2月20日閲覧。
  8. ^ McManus, Doyle (2017年2月8日). “The Trumpist Future: A World Without Exceptional America”. LA Times. http://www.latimes.com/opinion/op-ed/la-oe-mcmanus-american-exceptionalism-20170208-story.html 2017年4月25日閲覧。 
  9. ^ Base Structure Report : FY 2013 Baseline”. United States Department of Defense. 2017年4月9日閲覧。
  10. ^ Protesters Accuse US of 'Imperialism' as Obama Rekindles Military Deal With Philippines”. VICE News (2014年4月28日). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  11. ^ Anti-US Base Candidate Wins Okinawa Governor Race”. PopularResistance.Org. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  12. ^ フィリピンのフェルディナンド・マルコス
  13. ^ 2012年の北朝鮮の“人工衛星打ち上げ”に対しては思いとどまるよう様々な手段で示威・制裁を行なったが、インドICBM実験(公言されている)に対しては何ら批判をしていない。
  14. ^ ルーマニアニコラエ・チャウシェスク
  15. ^ USA's cowboy democracy is terrorism dressed in noble clothes(アメリカのカウボーイ民主主義は“高貴な装い”を纏ったテロリズム) セルゲイ・ワシレンコフ、プラウダ2013年10月7日(英語)
  16. ^ オバマ政権の「帝国主義的主張」を批判 ベネズエラ・チャベス大統領単独インタビュー - BBCワールド ジャパン株式会社 PR Times
  17. ^ 「ネオコンとアメリカ帝国の幻想」(編・監訳:フォーリン・アフェアーズ・ジャパン、監訳:竹下興喜 、朝日新聞出版、2003年)
  18. ^ Statement of Principles
  19. ^ 『アメリカ帝国への報復』(チャルマーズ・ジョンソン、集英社、2000年)
  20. ^ 「帝国の傲慢」(マイケル・ショワー、日経BP社、2005年)
  21. ^ 日本共産党綱領(2004年1月17日 第23回党大会で改定)
  22. ^ Said, Edward. Culture and Imperialism, speech at York University, Toronto, February 10, 1993.”. 2001年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年2月23日閲覧。
  23. ^ Rothkopf, David In Praise of Cultural Imperialism? Archived 2012-01-19 at the Wayback Machine. Foreign Policy, Number 107, Summer 1997, pp. 38–53
  24. ^ Fraser, Matthew (2005). Weapons of Mass Distraction: Soft Power and American Empire. St. Martin's Press 
  25. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。「Pérez, Louis A 1998」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません
  26. ^ Our Story | About Macca's | McDonald's AU”. mcdonalds.com.au. 2016年11月10日閲覧。

関連書籍編集

関連項目編集

アメリカ外交編集

冷戦編集

政治思想編集