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避難所のピクトグラム

避難所(ひなんじょ、英: refuge, shelter, evacuation area)とは、避難するための施設場所のこと。

目次

概説編集

避難所とは、避難するための施設や場所のことである。様々なタイプの避難所がある。 様々な分類・用語があるうるが、たとえば次のような分類・用語がある。

  • 一時避難場所 - 一時的に避難する場所。災害時の危険を回避するため、または帰宅困難者が交通機関が回復を待つために一時的に待機するなどといった用途が想定されている。
  • 広域避難場所 - 一時避難所より大人数を収容できる避難所。一時避難所が危険になったときに避難する。
  • 収容避難場所 - 短期間、避難生活を送るための避難所。
  • 福祉避難場所 - 災害時に自宅での生活が困難で、その中でも介護や福祉サービスを必要とする人々のための避難所。通常、平時に社会福祉施設保健センターである場所が指定される。
  • シェルター - 英語圏で用いられている、かなり広い概念。

一般に仮設住宅は避難所に分類されない。

日本の避難所の区分・名称編集

従来の災害対策基本法においては、”切迫した災害の危険から逃れるための避難場所”と、”損壊した自宅に戻れないなどの理由で避難生活を送るための避難所”が必ずしも明確に区別されておらず、東日本大震災では被害拡大の一因ともなったと指摘されている。

このため、2013年6月に改正された災害対策基本法において、切迫した災害の危険から逃れるための緊急避難場所(指定緊急避難場所)と、一定期間滞在し、避難者の生活環境を確保するための避難所(指定避難所)が明確に区別された[1]

指定緊急避難場所編集

指定緊急避難場所は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合にその危険から逃れるための避難場所として、洪水や津波など異常な現象の種類ごとに安全性等の一定の基準を満たす施設又は場所を市町村長が指定する(災害対策基本法第49条の4)。

ひとまず危険を回避するための場所であり、災害に対して一定の安全性がある頑丈な建物や、危険が及ばないと考えられる開けた場所(グラウンド駐車場など)が指定されている。地震、津波、土砂災害、洪水など災害の種類ごとに適した場所が異なり、例えば土砂災害や火事に対しては適しているが洪水や津波の場合浸水の恐れがあるため不可というような場所がある[2]

指定避難所編集

指定避難所は、災害の危険性があり避難した住民等を災害の危険性がなくなるまでに必要な間滞在させ、または災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させるための施設として市町村長が指定する(災害対策基本法第49条の7)。

一定の期間滞在するための場所であり、ある程度の人員を屋内に収容できる学校体育館公民館などが指定されている。指定緊急避難場所を兼ね、そのまま滞在できる場所もある[2]

日本の行政の避難所編集

災害対策基本法に基づいて、各自治体で地域防災計画が立てられ、それに沿って設置されている。

一例として東京都の避難所について解説する。

東京都の避難所編集

東京都の行政で「避難所」と呼ばれているのは、区・市・町・村によってあらかじめ指定されている避難施設のことである[3][4]、災害発生時に、避難者に安全・安心の場を提供する目的で、区長・市長・町長・村長が開設・管理・運営するものである[4]。対象者(避難者)としては次のような人々が想定されている[4]

  • (1)災害によって現に被害を受けた人
    • 家屋の倒壊などによって、自宅では生活できない人
    • 食料、生活物資などが不足するため、自宅では生活できない人
  • (2) 災害によって、現に被害を受けるおそれがある人
    • 避難勧告避難指示が発せられた人
    • (避難勧告・避難指示は発せられてなくても)緊急に避難する必要がある人

避難所は、被災者の生命の安全を確保する役割と、一時的に生活する施設としての重要な役割を果たす。東京都の避難所では次のような生活支援を提供する[5]

東京都の避難所はなどが主体となって指定し、学校公民館などの公共施設を指定している[5]耐震構造耐火構造鉄筋構造のものが指定され、収容人数は、3.3平米あたり2名と計算している[5]

避難所の運営編集

被災者が滞在し生活する避難所(指定避難所)の運営は、地域防災計画の上では自治体(市区町村)の職員が行うと定められているものの、実際には被災当事者を含めた地域住民、施設管理者、自治体職員、また場合により外部から駆けつけたボランティアなどが連携して行う。被災者は自治体職員などが「面倒を見てくれるだろう」という考えに陥りがちだが、自主的に関わった避難者が運営主体となり行政などがそれを支援する形が理想とされる[6][7][8]

開設の段階から、自治体職員が駆け付けるまでに時間を要するため、速やか開設できるよう、実際には施設の管理者(公民館や公共施設ではその職員、学校では教職員など)のほか、自治会や町内会、自主防災組織、ボランティアなどが鍵を管理するのが実態である[6]

また具体的運営は、秩序を保ち集団生活を円滑に過ごせるよう、運営組織を立ち上げ、リーダーや各担当の役割分担を決めて行われる。ここで、誰もが経験したことがない避難所生活において混乱やトラブルはつきものであり、どの程度準備できていたかにより、運営の成・否は大きく左右される。そのため、普段から運営計画(マニュアルなど)の作成や訓練を行っておくこと、地域の自主防災組織を主体とする準備が有効とされている。なお、高齢者、乳幼児や妊産婦、障害者、外国人、怪我人や病人、家族を亡くしたもの(特に遺児)など、多様なケースの避難者がおり、準備でも実際の運用でも配慮が必要である[6][7][8]

指定外の避難所編集

災害発生時、様々な理由から、予め自治体が定めている指定避難所以外の場所に滞在して生活する被災住民がしばしばみられる。こうした被災住民は、行政・地域による安否確認が難しい、物資などの支援が行き届きにくいなどの課題があるとされている[9][10]

避難所以外で過ごす理由としては、指定避難所が満杯である、プライバシーや防犯上の懸念がある、乳幼児や介護の必要な者がいて迷惑をかけたくない・周囲の目が気になる、また、地震や津波等で指定避難所が被災して使えなくなった・余震などで安全性に不安が生じた、避難所の過密を避けたい、ペットと一緒に避難ができない、避難所への距離が遠い・移動手段がないなど、多様な理由が報告されている[9][11][12]

被災していない親類や友人の家に避難する事例や、公民館・集会所、廃校、行政施設などの(指定外の、あるいは避難所ではなく一時の緊急避難場所に指定された)公共施設に避難する事例があるほか、寺院など宗教施設、老人ホームや保育所などの福祉施設宿泊施設飲食店など、住民によく知られた公共性・公益性の高いところに避難する事例がある。これらのような施設がない地域では、民間の施設や近隣の個人の住宅といった公共性・公益性の高くないところに避難した事例もある(東日本大震災など)[13][10]

自宅敷地や広場などにて自家用車で寝泊まりすることを車中避難車中泊と呼び、狭隘なためエコノミークラス症候群の危険性が高いことが知られている。公共施設敷地のほか、スーパーコンビニの駐車場など車を置き滞在する事例もある(熊本地震[12]

また、自宅が損壊しながらも、損壊の程度が軽い部屋などでライフラインの制限を受けながら過ごす在宅避難、 自宅敷地内の物置小屋倉庫農業用ハウステントなどを代用し”仮住まい”として過ごす軒先避難という言葉は[14][15]、東日本大震災や熊本地震を契機に使われ知られるようになった。

こうした指定外の避難者の課題に対して、行政などの支援側はその把握に努めるべき、また住民側も避難所・避難者の存在を知らせ支援を求める情報発信を行うよう努めるべきという指摘がある[9]

帰宅困難者への支援編集

帰宅困難者への対策として、一時的に帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設が各自治体により指定されている。また東京など首都圏では、徒歩で帰宅する者を支援するためにトイレや水の提供などに協力する帰宅支援ステーションの制度があり、コンビニ、ファーストフード店・ファミリーレストラン等の飲食店、ガソリンスタンドなどの企業と協定が結ばれている[16]

脚注編集

  1. ^ 緊急避難場所」と「避難所」について (pdf)”. 滋賀県総合政策部防災危機管理局. 2017年3月31日閲覧。
  2. ^ a b 指定緊急避難場所とは?指定避難所との違いと検索方法」、防災テック 2018年5月20日更新、2019年4月13日閲覧
  3. ^ 「避難所管理運営の指針」(平成25年2月版)
  4. ^ a b c 「避難所管理運営の指針」(平成25年2月版)、p.4
  5. ^ a b c 「避難所管理運営の指針」(平成25年2月版)p.5
  6. ^ a b c 避難所開設・運営とは」、ハザードラボ(プロデュース・オン・デマンド)、2019年4月13日閲覧
  7. ^ a b 避難所を考えよう『避難所運営の主役は誰だ?』」、静岡県地震防災センター、2016年12月26日、2019年4月13日閲覧
  8. ^ a b 防災ミニ講座 > 宮﨑賢哉「第22回 避難所運営ゲーム(HUG)研修・授業実施のポイント」、災害救援ボランティア推進委員会、2015年4月20日、2019年4月13日閲覧
  9. ^ a b c 熊本地震 指定外避難所に3万6000人 本震翌日」、毎日新聞、2016年5月11日付、2019年4月13日閲覧
  10. ^ a b 荒木裕子、坪井塑太郎、北後明彦、「津波被災後の指定外避難所の発生傾向に関する研究」、『日本建築学会計画系論文集』、82巻、741号、pp.2885-2895、2017年。doi:10.3130/aija.82.2885
  11. ^ 三重県防災会議専門部会「防災・減災対策検討会議」 平成28年度第2回 の開催結果 資料4.熊本地震を踏まえた「避難所外避難者」の支援対策」、三重県 防災対策部 防災企画・地域支援課、2019年4月13日閲覧
  12. ^ a b Bosai Plus、「〈 2016年熊本地震 〉【暫定とりまとめ 3】被災者支援 〜教訓は活かせたか」、防災情報新聞、2016年5月5日付、2019年4月13日閲覧
  13. ^ 東日本大震災における個人宅の事例では、日頃から祭りなどの行事を通じて地域のつながりが密であり、避難生活においても自治会や青年団が炊き出しや物資調達を行うなど、共同作業が円滑に行える環境が存在していた。
  14. ^ 荒木裕子、宇田川真之、髙田洋介ほか、「指定避難所以外に避難者が発生した場合の対応に関する研究 ―2016年熊本地震における益城町を事例として―」、地域安全学会論文集、31巻、pp.167-175、2017年 doi:10.11314/jisss.31.167
  15. ^ ヤンヤン、「 テレビウォッチ > 私見「クローズアップ現代+」 > 熊本地震2年―空きあるの入居できない仮設住宅なぜ?いまだに物置や倉庫で軒先避難」、J-CASTニュース、2018年4月14日、2019年4月13日閲覧
  16. ^ 帰宅困難者対策」、防災首都圏ネット(九都県市首脳会議 防災・危機管理対策委員会)、2019年4月13日閲覧

参考文献編集

関連項目編集

外部リンク編集