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ドラフト会議 (MLB)

メジャーリーグベースボール(MLB)におけるドラフト会議には以下の2つがある。

  • ファースト・イヤー英語:The Major League Baseball First-Year Player Draft)
  • ルール・ファイブ・ドラフトルール5ドラフト(英語:Rule 5 draft)

本稿では両方について説明し、単に「ドラフト」と表記した場合はファースト・イヤーを指すものとする。

目次

ファースト・イヤー編集

「ルール・フォー・ドラフト」(MLB規約の第4条に規定されていることに由来)とも呼ばれる。毎年6月上旬に開催され、以下の条件を満たす選手が指名対象となる。

  1. 当年にアメリカ合衆国カナダ、合衆国領プエルトリコの3カ国いずれかに居住し、且つ当該3カ国の高校短大コミュニティ・カレッジ大学独立リーグに在籍する選手。なお選手の国籍は問わない。[1]
    • 高校生は、卒業者(または見込み)のみ[2]
    • 4年制以上の大学生は、3年以上在学している選手、または2年以上在学している21歳以上の選手のみ
  2. 過去にMLB球団と選手契約を交わしていない
  3. 他国プロ野球でドラフト対象となっていない

あくまで戦力の均衡が目的であるため完全ウェーバー制を採用しており、指名重複(抽選)や自由獲得枠などは無い。また、指名選手と締結できるのはマイナー契約のみ。なお2018年現在、契約交渉権の期限は概ね7月中旬まで[3]で、指名権の補償などについて以下の特別規定がある(2018年現在)。

  • 前年度のドラフトで1巡目または2巡目に指名した選手と契約できなかった球団は、その選手の全体指名順位に1を加えた順位での指名権を追加で与えられる。[4]また3巡目に指名した選手と契約できなかった際は、3巡目指名後(4巡目指名の前)に指名権を1つ与えられる。なお事前に選手の同意がない限り、同一球団が同一選手を2年連続で指名することはできない。
  • 前年度の所属球団からクオリファイング・オファーを提示された選手がオファーを拒否してFAとなったうえ、当年ドラフトまでに他のMLB球団と契約した場合、流出元球団は補完指名権を得る。一方、獲得先球団は保有している指名権を少なくとも1つ以上失う。
  • 1巡目および2巡目指名終了後、『戦力均衡ラウンド』と呼ばれる補完指名が実施される。市場規模下位10球団または球団収益下位10球団のいずれかに該当する球団の中から、6~8球団に1巡目指名終了後の補完指名権が、1巡目の補完指名権を得られなかった該当球団の中から6~8球団に2巡目指名終了後の補完指名権が与えられる。この制度は2012年より実施され、労使協定見直しに伴い5年毎に細部のルールが変更されている[5]。また、戦力均衡ラウンドの指名権に限ってドラフト指名権自体のトレードが認められている。

アメリカでは学生の部活動の掛け持ちが一般的であり、野球以外のスポーツでも高い才能を発揮している学生選手も珍しくない。そのためNBANFLなど他競技のドラフトからも重複で指名されたり[6]、大学などからスポーツ奨学金(スカラーシップ)の提供を受け在学を続ける選手がおり、指名されても入団しないケースがある。また、下位指名選手は契約金や自身の将来性の評価が低いなどの理由から、入団しないことがある。このため予め何人か入団しないことを計算に入れて毎年1000人を超える大人数の指名となり、全選手の指名終了までに通常3日間を要する。[7]

またチーム関係者の親類や、知人の息子を「記念」として下位で指名するなど、思わぬ人物が突然指名を受けるケースもある。あくまでお遊びとしての指名であり、基本的に選手としては期待されていないので、大抵このような指名を受けた者は入団しないが、マイク・ピアッツァのように入団しチームの主力にまで成長する選手も稀にだが存在する。

契約金編集

各年のドラフト開催前に予め、10巡目までの全指名順位ごとに契約金の目安(Pick Value)が設定される。その合計金額が各球団の契約金推奨額(Bonus Pool)となる。各球団は、指名した選手との契約金(契約不成立の場合は提示額)の合計額をこの推奨額以下に抑えなければならない(どの指名選手にどう金額を割り振るかは球団側の自由)。仮に超えた場合は、その超過割合によって球団に罰金や翌年ドラフトの1巡目指名権剥奪といったペナルティが科せられる(なお2016年時点では、5%以内の超過であればペナルティは発生しない)[8]。このルールは2012年より適用されている。

歴史編集

MLBのドラフト制度は1965年に導入された。豊富な資金力を背景に圧倒的な強さを誇っていたニューヨーク・ヤンキースにそれ以上戦力が偏りすぎるのを防ぐためであった。この結果、ヤンキースは1964年以降10年以上もリーグ優勝から遠ざかることとなり、この制度の成果は如実に現れた。さらに1969年からはプレーオフ(2地区制)が導入され、1972年からのオークランド・アスレチックスワールドシリーズ3連覇まで毎年違うチームがワールドチャンピオンとなっている。

だが、1960年代後半以降、代理人交渉制度が認められるとドラフト指名された有望選手にも代理人がつくようになり、契約金の高騰が起こっている。結果、資金力に劣るチームは指名順位が高くても目玉選手を指名できず、指名順位が低いにもかかわらず資金力のあるチームがその選手を獲得できてしまう問題も発生した。そのため前述の通り、選手に有利な契約を結ばせようと代理人が契約交渉を長引かせることを防ぐために交渉期限日を早めたり、契約金の推奨額を設定するといった対策を行なっている。

なお、1986年までは1月と6月に年2回開催されていたが、アメリカの学校の大半が6月に学年末を迎えるため、翌1987年からは現行の6月の年1回に変更された(1月に開催されていたのは同月が学年末となる短大や高校卒業者が対象だった。)[9]。また、それと同時にレギュラー・フェイズ(通常部門=ファースト・イヤー)とセカンダリー・フェイズ(第2部門=いわゆる二次ドラフト。前回のドラフトで指名されながら入団しなかった選手対象)の分割システムもなくなり、それまでのドラフトで指名された選手も全てレギュラー・フェイズに組み込まれることになった[10]

日本人の指名編集

米国・カナダ・プエルトリコの学校でプレーする留学生なども指名対象に含まれるため、当該3カ国以外の国籍を有する選手も指名されることがある。

日本国籍を有する選手では、2002年に坂本充(当時アリゾナ・ウエスタン短期大学)がコロラド・ロッキーズから初めてドラフト指名を受け入団したが、メジャー(40人枠)昇格はならなかった。2008年には鷲谷修也(当時デザート短期大学)がワシントン・ナショナルズに指名されたものの4年制大学編入のため拒否しているが、2009年に再びナショナルズの指名を受け入団した。同年には藤谷周平(当時ノーザン・アイオワ大学)もサンディエゴ・パドレスに指名されている。2013年は加藤豪将(当時ランチョ・バーナード高校)がニューヨーク・ヤンキースより2巡目(全体66位)指名され、日本人[11]最高位かつ高校生初の指名となった[12]。2018年現在、ドラフト指名による入団を経てメジャー昇格を果たした日本人選手はまだ現れていない。

世界ドラフト構想編集

MLBでは現在、前述のドラフト指名対象外となる選手(対象3カ国以外の学校・独立リーグ等に在籍する選手)はアマチュアも含めフリーエージェント扱いで自由獲得となっている。[13]

2001年頃から「世界ドラフト(International Draft)構想」が進められている。MLBにおいて中南米や東アジアを中心に外国人選手も増加傾向にあり、一方で他のメジャースポーツでは外国の選手もドラフトを経て入団しているため、MLBも同様に実施していくことを検討している段階である。ただし、指名対象となる範囲は日本プロ野球など一部プロリーグの選手を除外する方向となっている。MLB機構と選手会の間では合意に達しているが、代理人や他国のプロ野球の絡み、契約金などの問題から2012年現在実現に至っていない。

ルール・ファイブ・ドラフト編集

ルール・ファイブ・ドラフトルール5ドラフト」(Rule 5 draft)とは、有望選手が十分な活躍の場を与えられずにマイナーリーグで半ば飼い殺し状態になることを防ぐため、他チームの所属選手を指名し獲得できる制度である。名称の由来はMLB規約の第5条に規定されていることから。

毎年12月のウインターミーティング最終日に行われる。メジャーの40人枠(選手登録枠)に空きがあるチームのみ参加可能で、その年の優先権のあるリーグでレギュラーシーズン勝率の低いチームから指名権が与えられる。優先リーグは毎年交互に入れ替わる。

MLB以外では2011年11月、韓国プロ野球で新球団・NCダイノスの設立に伴って初めて開催された。

制度の悪用による過剰な引き抜きを防止するため、以下の規定がある(2018年現在)[14]

規定編集

ロースターによる制限
メジャーの40人枠に登録されていない選手(マイナー契約選手)のみ指名できる。
このため、ルール5ドラフト実施前になると多くのチームがロースターの再編成(指名されたくない自軍選手とメジャー契約を結んで40人枠に登録し、代わりに何人かをDFAなどにする)を行なう傾向がある。
在籍年数による制限
18歳以下で入団した選手のうち、ルール5ドラフト実施日の時点で在籍年数5年未満の選手は指名できない[15]
19歳以上で入団した選手のうち、ルール5ドラフト実施日の時点で在籍年数4年未満の選手は指名できない[16]
メジャーリーグ・フェイズ[17]
指名したMLB各チームは、ドラフト指名前の所属元チームに100,000ドルを支払わなければならない。また、指名した選手は来シーズン全期間メジャーの25人枠に登録し続けなければならない(故障者リストなどへの一時離脱登録は可能だが、アクティブ・ロースター登録日数が90日未満だった場合は再来年も25人枠への登録義務を負う)。
来シーズン途中に対象選手をトレードすることも可能だが、トレード先のチームでも引き続き25人枠への登録は義務となる。
故障者リストなどに登録せず対象選手を25人枠から外す場合は、速やかに元チームへ選手を返還し、元チームは50,000ドルを払い戻さなければならない。なお、元チームが選手の返還を望まない場合、または元チームと移籍先チームで直接トレード交渉が成立した場合は、移籍先チームが完全な選手保有権を獲得し、25人枠から外すことも可能になる(近年では2011年スコット・ダイアモンドの例がある)。
マイナーリーグ・フェイズ[18]
MLBのチームとは別に、マイナーリーグ(AAA)のチームもAAクラス以下の所属選手を指名することができる。
AAAのチームが指名した場合(Triple-A Phase)は、相手チームに24,000ドルを支払わなければならない。また、指名した選手は来シーズンAAAの開幕ロースターに登録しておかなければならない。ただし、途中でロースターから外してもかまわない。
なお、2015年まではAAのチームも選手を指名可能だったが(Double-A Phase)、2016年以降はTriple-A Phaseのみ実施されている。

ルール・ファイブ・ドラフトによって移籍した主な選手編集


脚注編集

  1. ^ “大リーグ通信”. 産経新聞. http://www.sankei.com/premium/news/150607/prm1506070005-n1.html 2016年10月31日閲覧。 
  2. ^ 当該3カ国の高校における卒業時期は概ね5月から6月上旬で、MLBドラフト会議と同時期である。
  3. ^ 2006年までは翌年ドラフト会議の1週間前まで。2007-2011年は概ね8月中旬まで。
  4. ^ 例えば、前年の全体20位指名の選手と契約できなかった場合は全体21位の指名権を得る。
  5. ^ Competitive Balance Draft Picks”. MLB.COM. 2018年12月14日閲覧。
  6. ^ MLBとNFLを掛け持ちしたボー・ジャクソンのように複数のプロスポーツを経験した選手も少ないながら存在する。
  7. ^ 指名人数は日本の10倍 熾烈な競争社会を生み出すMLBドラフト”. Full-count. 2016年10月31日閲覧。
  8. ^ “2016 Draft bonus pools, pick values”. MLB.com. http://m.mlb.com/news/article/170470526/2016-draft-bonus-pools-pick-values 2016年6月9日閲覧。 
  9. ^ 「FREE AGENT DRAFT HISTORY」『1990大リーグ総ガイド』 週刊ベースボール1990年4月28日増刊号 ベースボール・マガジン社 29頁
  10. ^ 「日米野球徹底比較」『1988米大リーグ総ガイド』 週刊ベースボール1988年4月30日増刊号 ベースボール・マガジン社 41頁
  11. ^ 加藤豪将はMLBドラフト指名時、アメリカと日本の多重国籍資格保有者である。
  12. ^ “ヤンキースが日本人の加藤内野手を指名”. 日刊スポーツ. (2013年6月7日). http://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/f-bb-tp2-20130607-1139206.html 
  13. ^ 日本人アマチュア選手ではマック鈴木多田野数人田澤純一が自由獲得で契約後メジャー昇格を果たしている(2012年現在)。
  14. ^ RULE 5 DRAFT(MiLB.com)
  15. ^ 2006年までは4年未満
  16. ^ 2006年までは3年未満。
  17. ^ Rule 5 Draft(MLB.COM)
  18. ^ Rule 5 Draft”. Baseball-Reference.com. 2018年12月14日閲覧。
  19. ^ クレメンテの移籍当時は現行制度のようなルール5ドラフトは存在しなかったが、飼い殺しを防ぐ目的の『マイナーリーグ・ドラフト』と呼ばれる制度が存在した。

関連項目編集

外部リンク編集