上院
上院(じょういん、英: upper house)は、両院制議会における一方の議院の呼称。日本では参議院、イギリスでは貴族院がこれにあたる。対称となる議院は下院(かいん、英: lower house)と呼ばれる。
概要編集
両院制の議会をもつ国では、国政機関の重複という状態を避けるため、それぞれの議院に異なった性格をもたせている。一般に下院の議員には「国民の代表」という性格があり、その選出は人口に比例して行われる。これに対して、上院の議員には「地域の代表」、「州の代表」、「連邦の各構成単位の代表」、また貴族制度のある国では「階級の代表」などといった性格があり、その選出は必ずしも人口に比例したものではない。
議会制民主主義の発祥地にして現在でも貴族制度が残る英国では、かつては上院が伝統的貴族や大地主のみで構成されていたが、現在では栄典の授与によって誕生した一代貴族や、元三権の長や要職経験者、そして選出された有識者などの比率が大幅に増やされた結果、「貴族院」としての性格は薄れ、「専門家集団院」的様相を示すに至っている。
なお古代ローマを源泉とする西欧文明を継承する英・仏・西・米などの旧宗主国と、それらが支配していた旧植民地から20世紀に独立した多くの国々では、古代共和政ローマ時代 (紀元前6世紀〜) の「元老院 (ラテン語: Senatus)」という語に由来する語を上院の正式名称としている(後述する「世界の上院」節を参照)。
語源編集
「上院 (upper house)」「下院 (lower house)」という言葉は、アメリカの首都がフィラデルフィアにあった頃、議会が使用していた二階建ての公会堂(現在の独立記念館、当時の大きめな家屋と変わらないほどの小振りな建物)で、議員数の多い代議院 (House of Representatives) がその一階部分 (lower house) を、少ない元老院 (Senate) が二階部分 (upper house) を使用したことからこう呼ばれ始めたといわれる。
日本の上院編集
日本では参議院が上院に当たる。日本の場合は、他国の上院にあるような「地域の代表」や「階級の代表」といった性格よりも、衆議院と同様の「国民の代表」という性格が強い。議員定数は人口に応じて変化し、全国を都道府県で分けた「選挙区[1]」と、全国を1つの区とした「比例代表区」で構成されている[2]。各議員の任期は6年であるが、3年ごとに半数を改選する方式となっており、仮に衆議院の解散と重複した場合でも半数の国会議員が常に存在することになる。
また、衆議院に優越的な権限が与えられており、予算案、条約の批准、内閣総理大臣の指名については、衆議院の議決が優先される。
世界の上院編集
それぞれの正式名称をあげた。なお原則として日本の新聞やニュースではこれら外国の上院をすべて一律に「上院」と呼んでいる。
脚注編集
注釈編集
- ^ 14世紀前半に庶民院が分離したことで成立[3]
- ^ カナダでは英語とフランス語が公用語。表記は次の通り。英語: Senate of Canada。仏語: Sénat du Canada。
- ^ スイスではドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つが公用語。表記はそれぞれ次の通り。独語: Ständerat。仏語: le Conseil des Etats。伊語: il Consiglio degli Stati。ロマンシュ語: il Cussegl dals Stadis。
- ^ the House of Peers(英訳)[4]。
- ^ the House of Councillors(英訳)[4]。
- ^ ベルギーの公用語はフランス語、オランダ語、ドイツ語。表記はそれぞれ次の通り。仏語: le Sénat。蘭語: de Senaat。独語: der Senat。直接選出議員と指名議員はワロン語、フラマン語双方の言語圏から、共同体選出議員はワロン語、フラマン語、ドイツ語の各々の所属言語グループから選出される。
- ^ 創設は1810年。1906年のドゥーマの設置で上院化。
出典編集
- ^ 鳥取県・島根県、徳島県・高知県はそれぞれ2県の区域で1選挙区とする「合区」となっている。
- ^ “国会の地位と権能:国会の基礎知識:参議院のあらまし:参議院”. www.sangiin.go.jp. 2020年1月16日閲覧。
- ^ 近藤申一『イギリス議会政治史 上』(敬文社、昭和45年) p.100
- ^ a b 英訳(参考)。参議院 (n.d.), Guide A Brief History, 参議院 2009年9月23日閲覧。