南海8300系電車
南海8300系電車(なんかい8300けいでんしゃ)は、南海電気鉄道の一般車両(通勤形電車)である。
南海8300系電車 泉北高速鉄道9300系電車 | |
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8300系2次車 (2017年7月26日 粉浜駅) | |
基本情報 | |
運用者 |
8300系:南海電気鉄道 9300系:泉北高速鉄道 |
製造所 | 近畿車輛 |
製造年 |
8300系:2015年 - 9300系:2022年 - |
製造数 |
8300系:116両(2023年8月現在) 9300系:8両(2023年8月現在) |
運用開始 |
8300系:2015年10月8日 9300系:2023年8月8日 |
主要諸元 | |
編成 |
8300系:2・4両編成 9300系:4両編成 |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 | 直流1500V 架空電車線方式 |
最高運転速度 |
本線・空港線:110 km/h 高野線・泉北高速線:100 km/h |
設計最高速度 | 120 km/h |
起動加速度 | 2.5 km/h/s |
減速度(常用) | 3.7 km/h/s |
減速度(非常) | 4.0 km/h/s |
車両定員 |
先頭車:141名 中間車:153名 |
全長 |
先頭車:20,765 mm 中間車:20,665 mm |
全幅 | 2,830 mm |
全高 |
先頭車:4,140 mm 中間車:4,050 mm |
車体 |
ステンレス鋼 (前頭部のみ普通鋼) |
台車 |
モノリンク式ボルスタレス台車 近畿車輛KD325A/325B・KD326A/326B(8300系9次車-・9300系)[1] |
主電動機 |
全閉内扇式かご型誘導電動機 東洋電機製造製 TDK-6315-A |
主電動機出力 | 190 kW |
駆動方式 | TD平行カルダン駆動方式 |
歯車比 | 85:14 (6.07) |
編成出力 |
760 kW(2両編成) 1,520 kW(4両編成) |
制御方式 |
IGBT素子VVVFインバータ制御(8300系1-5次車) SiCハイブリッドモジュール素子(8300系6次車-・9300系)[2] |
制御装置 |
日立製作所製 VFI-HR1421D(8300系1-5次車) VFI-HR1421L(8300系6次車-・9300系)[1] |
制動装置 |
回生制動併用電気指令式ブレーキ 全電気ブレーキ |
保安装置 | 南海型ATS |
本項では、8300系をベースとする泉北高速鉄道の9300系電車についても記述する。
概要
編集本系列は、老朽化が進む7000系や7100系、6000系の置き換え、ならびに空港線をはじめとするインバウンド需要の増加に対応した情報案内サービスの充実を目的に導入され、2015年10月8日から南海本線・空港線[3]、2019年11月22日から高野線で営業運転を開始した[4]。8000系 (2代) をベースに車体や客室をリニューアルするとともに、機器類は省エネルギー効率をより一層高めたものを積極的に採用している。
これまで南海の車両は旧帝國車輛工業以来取引を続けてきたJ-TREC(旧・東急車輛製造)製が大半を占めていたが、本系列は1973年(昭和48年)の7100系2次車以来となる近畿車輛に発注された[5]。
構造
編集車体
編集車体はステンレス製で、基本的な意匠は8000系に準じているが、先頭部分をFRP製から普通鋼製に改めたほか、車体側面の雨どいを屋根上に移してすっきりとした外観としている。
車体には南海標準のブルーとオレンジの帯を配しているが、本系列では扉部分(前面貫通扉、乗務員室扉、乗降扉)の帯が省略されている。また、8000系では塗装とされた帯は再びカラーフィルムとなり、退色対策としてブルーの帯は紺色に近い色調となっている。戸袋部分には、外板の接合線を隠すため、またステンレスの反射を抑えるため濃灰色のフィルムが貼り付けられたが、2次車以降(2両編成および8306F以降の4両編成)では省略されている[2]。
屋根上の空調装置は8000系と同様のセミ集中式であるが、車外スピーカーは故障対策として空調装置の外キセから独立して搭載している。東西方向に設置した2台を専用の外キセに納め、これを空調装置の外キセ隣に1基ずつ装備する。
客室
編集車内は8000系のイメージを引き継いだ、白色系のつや消しメラミン化粧板と、茶色系の床面・座席(優先座席は青色系)の組み合わせである。窓ガラスには南海の一般車両で初めて複層ガラスが採用された。
座席は質感の異なる2種類のクッション材を使用している。モケットは従来より大きなドット柄とし、袖仕切りの内側についてもモケットに合わせた色調とすることで、明るく暖かみのあるデザインとしている。座席定員は扉間で7人掛けだが、従来のバケットシートは廃止しスタンションポールのみによる区分としている。8000系では2人 - 3人 - 2人の区分としていたが、本系列では4人 - 3人に見直されている。
側引戸の内張りは8000系のステンレス無塗装から化粧板付きに戻され、戸先には識別用の黄色テープを施している。その足元も8000系の凹凸付き滑り止めをやめ、清掃面を考慮した平滑なゴムチップ入り防滑床材を使用している。ドアチャイム、開扉誘導鈴、扉開閉警告表示灯は引き続き装備されている。
天井は、整風板や照明器具のソケットを連続調としてデザイン性を高めている。照明にはレシップ製の直管型LED照明を採用し、8000系より数を増やして(1両あたり16本⇒24本)照度アップを図っている。
2016年に導入された2次車では、当時スーツケース等の大型手荷物の持ち込みによる混雑悪化が問題視されていたため、新たに「ラゲッジスペース」と称する多目的スペースが設けられた[2][注 1]。これに伴い、扉間の座席定員は6人(一部4人)に削減され、併せて袖仕切りの形状も用途に合わせて変更された。ラゲッジスペースは以後、南海本線向けに製造された編成を中心に配置されている。
2019年に高野線へ導入された6次車では、モケットをグレーとブラックの縞柄模様とした新型のバケットシートと藍色の吊り革が採用されている[2]。これは9000系のリニューアル企画「NANKAI マイトレイン」プロジェクトの人気投票で選ばれたデザイン[6]を一部取り入れたもので、以降の増備車の標準装備となった。また2022年製造の8次車からは、袖仕切り・側引戸・床面に木目調を採用するとともに、他の箇所も薄めの黄色系化粧板に置き換えた「NANKAI マイトレイン」仕様として登場し、「我が家のリビング」を思わせるくつろぎの空間へとアップデートされている[2][7]。
2023年に登場した9次車は、上記のラゲッジスペースと「NANKAI マイトレイン」仕様を組み合わせた新しい内装で登場している。こうしたニーズの多様化に応える客室の設計変更のあり方が評価され、本系列は泉北高速鉄道9300系とともに「2023年度グッドデザイン賞」を受賞した[8][注 2]。
なお上記の仕様変更とは別に、2023年度には列車内のセキュリティ向上と犯罪抑制のため、出入口付近への防犯カメラ設置が行われ、年度内に全車への施工が完了している[10]。
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車内(1次車)
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車内(2 - 5次車)
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ラゲッジスペース
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車内(6 - 7次車)
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車内(8次車)
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車内(9 - 10次車)
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9次車から採用されたサイン表示
旅客案内装置
編集本系列では前述のインバウンド需要に対応するため、側引戸上部に南海の通勤型電車では初となるLCD式車内案内表示装置が千鳥配置され、多言語(日本語、英語、中国語、韓国語)による情報案内が行われる。ソフトは三菱電機が開発したIPコア、セサミクロを使用しており、多彩なアニメーション表示が可能となっている。なお、広告用ディスプレイについては準備工事で、設置スペースのみ設けている。[要出典]
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LCD式旅客案内装置(南海線)
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LCD装置と路線図(高野線)
主要機器
編集制御装置
編集5次車までは、8000系を踏襲したIGBT素子によるVVVFインバータ制御装置(1C4M方式)で、速度センサレスベクトル制御の日立製作所製VFI-HR1421D形を搭載する。
6次車からは、9000系更新車に続いて南海では2例目となるハイブリッドSiC素子を適用した日立製作所製VFI-HR1421L形に変更し、省エネルギー効率がさらに向上されている[2][11]。
主電動機
編集国内で初めての狭軌用全閉内扇式かご型誘導電動機(東洋電機製造製TDK6315-A形[注 3])を本格採用している。従来の開放形主電動機では自己通風による塵埃の侵入のため定期的な分解清掃作業を要したが、本構造の採用により「24年非分解」を実現した。
駆動方式は8000系までのWNドライブ方式(98:15)を改め、TD平行カルダンドライブ方式(85:14)を採用している[注 4]。
集電装置
編集シングルアーム式で、8000系と同一の東洋電機製造製PT-7144-B形である。Mc1車(モハ8300形)の下り方、Mc2車(モハ8400形)の上り方、Mc3車(モハ8350形)の両端に搭載する。
補助電源装置
編集8次車までは、8000系向けをベースにしたIGBT素子の静止形インバータ(東洋電機製造製SVH75-4045A1形)で、回路方式はダイレクト変換2レベルインバータ、定格出力は75kVA、2両分を負担する。直流フィルタコンデンサには乾式コンデンサを使用し、信頼性を高めている。
9次車以降は、ハイブリッドSiC素子を使用した東洋電機製造製SVH75-4045B3-M形に変更している[1][11]。
台車
編集8次車までは、従来と同様のモノリンク式ボルスタレス台車(新日鐵住金製SS-179M形・SS-179T形)である。なお、主電動機・駆動装置の変更に伴い台車枠形状は新設計とし、差圧弁は車体側に移設、空気ばねは車体ローリング剛性改善のため、中心間距離を8000系から50mm広い1,950mmとしている。
9次車からはメーカーを近畿車輛に切り替えるとともに、軸箱支持方式を円筒積層ゴム片支持方式としたKD325A/325B形・KD326A/326B形に変更されている[1][12]。
ブレーキ
編集従来車と同様のMBSA電気指令式ブレーキで、回生ブレーキ使用時の遅れ込め制御機能を有する。
空気圧縮機
編集5次車までは8000系と同様の周辺機器一体型のスクロール式で、油漏れ対策として返油機能を追加した改良品を採用している。
6次車からは9000系更新車で実績のあるオイルレスタイプに変更し、無給油による省メンテナンスを実現している[2]。
その他
編集乗務員室の構成は8000系を基本的に引き継ぐが、運転台の故障表示器は従来のものを撤去し、運転士用表示器として7.5インチ対応の液晶ディスプレイを新設している。また、車内の急激な温度変化を抑える新機能として扉選択スイッチを備えている。
運用
編集南海本線
編集2015年6月下旬から7月下旬にかけて1次車(8301F - 8305F)が近畿車輛から出場した。2015年10月8日に8301Fと8302Fが、同年11月に8303Fと8305Fが、12月1日に8304Fがそれぞれ南海線での営業運転を開始した[3]。7000系は同年10月3日に実施された引退記念イベントをもって営業運転を終了した。
2016年には2次車の2両編成(クハ8700形 - モハ8350形)6本(8701F - 8706F)が登場し[13][14]、8701Fと8702Fが9月12日より営業運転を開始した[15]。その後も2019年上半期にかけて、3 - 5次車(8306F - 8311F・8707F - 8712F)が増備され7100系の置き換えが進められたが、同年下半期より高野線向けに新造が移行したため、暫く南海本線向けの増備が滞った。2022年には9次車(8320F・8718F)が3年ぶりの南海本線向けとして落成したが、一部編成が高野線へ転属したため(詳細後述)、2024年4月現在は4両編成10本、2両編成10本が在籍する。
7100系と同様の編成パターンを組んでおり、4両から8両まで幅広い運用に充当されている。また8000系と同様、12000系と併結して特急「サザン」自由席車としての運用にも対応しており[16]、2020年12月18日から「サザン」での運行を開始している。
2021年からは制御装置VVVF化が完了した9000系との併結運転が可能となり[17]、9000系4両の和歌山市側に8300系2両を繋げた6両編成の運転も行われている。他方、登場初期に行っていた1000系2両編成との併結は、1000系がインバウンド対応工事を受けたのを機に実施されなくなっている[18]。
2022年6月より南海本線に所属する本系列を対象に、車両側面とホームの安全確認のため、車両側面カメラの設置が進められている[19]。また2023年8月29日から、本系列を使用した自動運転走行試験が和歌山港線で開始された[20][21]。
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特急「サザン」(12000系と併結)
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空港急行(9000系更新車と併結)
高野線
編集2017年度末、中期経営計画の一環として、高野線の6000系72両全車を2023年度までに順次新造車に代替する計画が公表され[22][23][24]、高野線向け本系列の新製導入が決定した。その第1陣として、制御機器や内装をマイナーチェンジした6次車(8312F・8313F)が2019年11月22日より高野線で営業運転を開始した[4]。また、同年11月30日からは泉北高速鉄道線への乗り入れが、12月2日からは6両(8314F・8713F)、2020年1月16日からは4両(8315F)の営業運転がそれぞれ開始された。以降も増備が続けられ、2020年12月22日から23日にかけて甲種輸送された8317Fと8715Fは、近畿車輛が創業100周年を迎えて初の出場車であることから、徳庵 - 吹田貨物ターミナル駅間で記念のヘッドマークを掲出した[25]。
1000系の転出を目的とし、2021年10月には8712Fが、2022年3月には8310Fと8711Fがそれぞれ南海本線から高野線に転属した[26][27]。また6000系置き換えのため、2023年7月には8311Fと8710Fが南海本線から高野線に転属した[28]。上記その他の動向により2024年4月現在、4両編成12本と2両編成8本が在籍している。
高野線では各駅停車から快速急行まで、幅広い運用に充当されている。かつては1000系50番台(1051F)と4両編成を組成した8両編成での運用も行われていた[29]。
-
高野線で運用に就く6次車(8313F)
編成
編集(2024年4月現在)[30]
4両編成22本・2両編成18本の計124両が在籍する。そのうち、南海本線(住ノ江検車区)所属車両は60両、高野線(小原田検車区)所属車両は64両となっている。
4両編成
形式 | ← 難波 関西空港・和歌山市・橋本・和泉中央 →
|
次車区分 | 製造年 | 所属 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
> モハ8300 (Mc1) |
サハ8600 (T1) |
サハ8650 (T2) |
< モハ8400 (Mc2) | ||||
機器類 | CONT, SIV | CP | SIV | CONT, CP | |||
車両番号 | 8301 | 8601 | 8651 | 8401 | 1次車 (車体側面フィルム有) |
2015年 | 南海本線 |
8302 | 8602 | 8652 | 8402 | ||||
8303 | 8603 | 8653 | 8403 | ||||
8304 | 8604 | 8654 | 8404 | ||||
8305 | 8605 | 8655 | 8405 | ||||
8306 | 8606 | 8656 | 8406 | 3次車 (ラゲッジスペース有) |
2017年 | ||
8307 | 8607 | 8657 | 8407 | ||||
8308 | 8608 | 8658 | 8408 | 4次車 (ラゲッジスペース有) |
2018年 | ||
8309 | 8609 | 8659 | 8409 | ||||
8310 | 8610 | 8660 | 8410 | 5次車 (ラゲッジスペース有) |
2019年 | 高野線 | |
8311 | 8611 | 8661 | 8411 | ||||
8312 | 8612 | 8662 | 8412 | 6次車 (座席形状変更、以下同じ) | |||
8313 | 8613 | 8663 | 8413 | ||||
8314 | 8614 | 8664 | 8414 | ||||
8315 | 8615 | 8665 | 8415 | ||||
8316 | 8616 | 8666 | 8416 | 7次車 | 2020年 | ||
8317 | 8617 | 8667 | 8417 | ||||
8318 | 8618 | 8668 | 8418 | 8次車 (内装木目調化、以下同じ) |
2022年 | ||
8319 | 8619 | 8669 | 8419 | ||||
8320 | 8620 | 8670 | 8420 | 9次車 (ラゲッジスペース有) |
南海本線 | ||
8321 | 8621 | 8671 | 8421 | 10次車 (ラゲッジスペース有) |
2023年 | 高野線 | |
8322 | 8622 | 8672 | 8422 | ||||
備考 | 弱冷車 | 女性専用車両 ステッカー |
2両編成
形式 | ← 難波/ 関西空港・和歌山市・橋本・和泉中央 →
|
次車区分 | 製造年 | 所属 | |
---|---|---|---|---|---|
クハ8700 (Tc1) |
< > モハ8350 (Mc3) | ||||
機器類 | SIV | CONT, CP | |||
車両番号 | 8701 | 8351 | 2次車 (ラゲッジスペース有) |
2016年 | 南海本線 |
8702 | 8352 | ||||
8703 | 8353 | ||||
8704 | 8354 | ||||
8705 | 8355 | ||||
8706 | 8356 | ||||
8707 | 8357 | 3次車 (ラゲッジスペース有) |
2017年 | ||
8708 | 8358 | ||||
8709 | 8359 | 4次車 (ラゲッジスペース有) |
2018年 | ||
8710 | 8360 | 高野線 | |||
8711 | 8361 | 5次車 (ラゲッジスペース有) |
2019年 | ||
8712 | 8362 | ||||
8713 | 8363 | 6次車 (座席形状変更、以下同じ) | |||
8714 | 8364 | 7次車 | 2020年 | ||
8715 | 8365 | ||||
8716 | 8366 | 8次車 (内装木目調化、以下同じ) |
2022年 | ||
8717 | 8367 | ||||
8718 | 8368 | 9次車 (ラゲッジスペース有) |
南海本線 |
凡例
- CONT:制御装置
- SIV:静止形インバータ
- CP:空気圧縮機
6200系50番台以降の新形式車については、系列のなかでの電動車・制御車・付随車等の付番を以前の「xxx1形」標準(例外あり)から「xxx0形」標準へ変更している。
泉北高速鉄道9300系電車
編集泉北高速鉄道は2022年11月、新型通勤車両として9300系4両編成2本を導入すると発表した[31]。
導入コスト抑制のため、車体や走行機器類は8300系の2022年増備車と共通設計である[12]。
帯色は泉北高速鉄道のラインカラーのブルー、先頭部は既存の車体色を踏襲するアイボリー塗装として、飽きのこないシンプルなデザインにまとめている[12]。
内装は全体を濃い木目調仕上げとして、落ち着きと安らぎの空間を演出している。座席モケットは泉北伝統の赤系(優先席は黄系)のモケットを継承しつつ、本形式向けにアレンジした縞柄模様のものを採用している。これにより、新しさの中に馴染み深さが感じられる「泉北らしさ」を表現している[12]。
編成は、中百舌鳥方から9300形 (Mc1) - 9600形 (T1) - 9650形 (T2) - 9400形 (Mc2) の2M2T組成である[12]。
2023年8月8日、9301F・9302Fが難波駅 - 和泉中央駅間で運行を開始した[32]。なお当初は、追加増備の予定がないとされていた[12]が、2024年3月には2次車となる9303F・9304Fが導入され[33]、2024年4月現在は4両編成4本が活躍している。
本形式および南海8300系は「2023年度グッドデザイン賞」を受賞しており[8]、発表後には記念ヘッドマークが掲出された[34]。
-
車内
編成表
編集(2024年4月現在)
4両編成
形式 | ← 難波・中百舌鳥 和泉中央 →
|
次車区分 | 製造年 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
> 9300 (Mc1) |
9600 (T1) |
9650 (T2) |
< 9400 (Mc2) | |||
機器類 | CONT, SIV | CP | SIV | CONT, CP | ||
車両番号 | 9301 | 9601 | 9651 | 9401 | 1次車 | 2022年 |
9302 | 9602 | 9652 | 9402 | |||
9303 | 9603 | 9653 | 9403 | 2次車 | 2023年 | |
9304 | 9604 | 9654 | 9404 | |||
備考 | 弱冷車 | 女性専用車両 ステッカー |
凡例
- CONT:制御装置
- SIV:静止形インバータ
- CP:空気圧縮機
脚注
編集注釈
編集- ^ 2014年頃のインバウンド急増から空港急行に利用客が集中するようになり、着席した乗客がスーツケースを身体の前側に構えることで車両の通路が塞がれ、トラブルが生じかねない状態となっていた。このため混雑を緩和するべく、手荷物用のスペースとしてラゲッジスペースを整備した。なおラゲッジスペース自体は手荷物専用ではなく、ベビーカースペースや立席スペースとしての活用も考慮されており、その旨をピクトグラムにて案内している。
- ^ 受賞が公表された2023年10月5日から、8301F + 8701Fの先頭部に記念ヘッドマークが掲出された[9]。
- ^ 定格出力190kW、定格回転数1,900rpm、端子電圧1,100V、定格周波数96Hz。
- ^ 南海でTD平行カルダン駆動を採用しているのは2000系、50000系、2300系で、いずれも東洋電機製造製の主電動機を使用している。また歯車比も全て85:14である。
出典
編集- ^ a b c d 「南海電気鉄道 現有車両主要諸元表」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、280-281頁。
- ^ a b c d e f g 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、52-54頁。
- ^ a b “南海電鉄8300系が営業運転を開始”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2015年10月14日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。 2016年5月4日閲覧。
- ^ a b “南海高野線で8300系が営業開始”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2019年11月23日). オリジナルの2021年2月12日時点におけるアーカイブ。 2019年11月25日閲覧。
- ^ “南海電鉄、新型車両8300系公開! 近畿車輛が製作、今秋デビュー - 写真83枚”. マイナビニュース (2015年9月2日). 2015年11月1日閲覧。 アーカイブ 2022年11月19日 - ウェイバックマシン
- ^ “「NANKAI マイトレイン」特設サイト”. 南海電気鉄道ホームページ. 2024年6月27日閲覧。
- ^ “お客さまに‘なんかいいね’を届けたい。(新造車両編)”. 南海電気鉄道ホームページ. 2023年11月23日閲覧。 アーカイブ 2024年2月13日 - ウェイバックマシン
- ^ a b “南海電気鉄道8300系車両、及び泉北高速鉄道9300系車両が「2023年度グッドデザイン賞」を受賞” (PDF). 南海電気鉄道・泉北高速鉄道 (2023年10月5日). 2024年6月28日閲覧。
- ^ “南海8300系にグッドデザイン賞受賞記念ヘッドマーク”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2023年10月7日) 2024年6月28日閲覧。
- ^ “2024年度鉄道設備投資計画について” (PDF). 南海電気鉄道 (2024年5月14日). 2024年6月19日閲覧。
- ^ a b 「南海電気鉄道 現有車両プロフィール2023」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、255-256頁。なお本文献には補助電源装置につき6次車と9次車で仕様変更があると記載があるが、実際は9次車のみで誤記であるため注意。
- ^ a b c d e f 「泉北高速鉄道9300系」『鉄道ピクトリアル』2023年9月号(通巻1015号)、電気車研究会、2023年、116頁。
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- ^ “南海本線で8300系2次車が試運転”. 鉄道ファン. railf.jp 鉄道ニュース (交友社). (2016年9月3日). オリジナルの2021年2月12日時点におけるアーカイブ。 2016年9月13日閲覧。
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参考文献
編集- 南海電気鉄道(株)鉄道営業本部車両部車両課 泰中直樹「新車ガイド 南海電気鉄道8300系」『鉄道ファン』2015年11月号(通巻655号)、交友社、2015年、58-64頁。
- 「南海電気鉄道株式会社8300系車両用電機品 (PDF) 」 『東洋電機技報』第132号、東洋電機製造、2015年10月、25 - 27頁(インターネットアーカイブ)。
- 「CAR INFO 3000系の老朽取換え用として導入した新形式車両 泉北高速鉄道9300系」『鉄道ファン』2023年9月号(通巻749号)、交友社、2023年、78-79頁。
外部リンク
編集- 新型車両「8300系」を導入します (PDF) (南海電気鉄道公式ニュースリリース)
- 南海8300系登場。(ネコ・パブリッシング『鉄道ホビダス』編集長敬白アーカイブ 2015年9月14日・インターネットアーカイブ)
- 9300系 DEBUT!(泉北高速鉄道特設ページ)