007 オクトパシー

007 オクトパシー』(ダブルオーセブン オクトパシー、Octopussy)は、1983年公開、ジョン・グレン監督のスパイアクション映画007シリーズ第13作目。また、イアン・フレミングの第2短編集であり、本映画の原作としては、表題作の他『所有者はある女性』が使用されている。

目次

小説編集

"Octopussy" (または、"Octopussy and The Living Daylights")はイアン・フレミングの小説007シリーズ第2短編集(単行本としては14冊目でフレミング作としては最後)で、1966年ジョナサン・ケープより出版された。日本では1966年に『007号/ベルリン脱出』のタイトルで、早川書房から井上一夫訳によりハヤカワ・ポケット・ミステリで発売され、1983年に文庫化された際『オクトパシー』に改題された。

収録作編集

オクトパシー(007号の追求) - Octopussy
本映画『007 オクトパシー』の原作。"PLAYBOY" 1966年3月号・4月号掲載。
所有者はある女性(007号の商略) - The Property of a Lady
本映画のもう一つの原作。"PLAYBOY" 1965年1月号掲載。
ベルリン脱出 - The Living Daylights (Berlin Escape)
映画『007 リビング・デイライツ』の原作。Argosy1962年掲載。
007 in New York (Agent 007 in New York)
早川書房版未収録。New York Herald Tribune1963年10月掲載。
007号/世界を行く』アメリカ版のため執筆された短編

出版編集

映画編集

007 オクトパシー
007 Octopussy
監督 ジョン・グレン
脚本 ジョージ・マクドナルド・フレーザー
リチャード・メイボーム
マイケル・G・ウィルソン
製作 アルバート・R・ブロッコリ
製作総指揮 マイケル・G・ウィルソン
出演者 ロジャー・ムーア
モード・アダムス
ルイ・ジュールダン
音楽 ジョン・バリー
主題歌 「All Time High」リタ・クーリッジ
撮影 アラン・ヒューム
編集 ジョン・グローバー
配給 MGM/UA Entertainment Co.
公開   1983年6月6日
  1983年7月2日
上映時間 130分
製作国   イギリス
  アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $27,500,000[1]
興行収入  $187,500,000[1]
配給収入   19億2000万円[2]
(1983年度洋画配給収入4位)
前作 007 ユア・アイズ・オンリー
次作 007 美しき獲物たち
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スタッフ編集

キャスト編集

ストーリー編集

 
オクトパシー・サーカスのプレート
 
実物のファベルジュの卵の一つ

アバンタイトルで、ボンドは中南米某国のトロ将軍に変装し、将軍が管理する高性能偵察機を破壊すべく侵入する。本物の将軍に見つかり一旦は拘束されるが、CIA女性アシスタントのビアンカの誘惑で敵兵を惑した隙に超小型ジェット機(通称:アクロスター)で逃走。地対空ミサイルに追尾されるものの、前述の偵察機の格納庫内をすり抜けた直後にミサイルが格納庫を直撃、結果的に任務に成功する。

その頃、東ベルリンピエロに成りすましサーカス団に潜入していた009は『レディーの卵(ファベルジュの卵)』(ロシア皇帝献上品)を持ち出したのを見つかり、サーカス団の双子の投げナイフ芸人兄弟ミーシカとグリーシカにやられ、ベルリン英国大使館公邸に『卵』を持ち込み死亡する。

ボンドはMと美術鑑定部ファニングから、サザビーズオークションに参加して『レディーの卵』の秘密をつかむように指令を受ける。ボンドらはソ連の外貨稼ぎと考えていたが、売り専門のカマル・カーンがレディーの卵を買うのに不審感を抱き、ボンドはひそかにニセ物とすり替えていた。

ボンドはカマルを追ってインドへ。カジノで対決し、彼を負かす。カマルといた女性マグダと接近。卵を奪われ、彼もまたカマルの屋敷に捕らえられる。間一髪でカマルの屋敷から脱出したボンドは、マグダの主人である謎の女性オクトパシーの住む屋敷にたどり着く。しかし、そのオクトパシーこそが、サーカス団に偽装した宝石泥棒一味のリーダーであった。ボンドはオクトパシーに一味に入るよう誘われたが断り、またしても捕らえられてしまう。

そして事件の背後には、カマルと組んだソ連タカ派のオルロフ将軍の陰謀が隠されていた。オルロフは、サーカス列車で盗んだ宝石を密輸しているオクトパシーにロシアの宝飾品を西ドイツへ密輸させる、と見せかけて、そのサーカスの大砲に核爆弾を仕掛け、興行先の米軍基地で核テロを起こそうとしていたのだ。ボンドはサーカス一味のピエロに変装して脱出に成功、そのまま列車を追う。ピエロの姿のままで…。

興行成績編集

本作は1983年の映画の世界興行成績で、『スター・ウォーズ ジェダイの復讐』に次ぐ第2位で、ショーン・コネリーがジェームズ・ボンド役に復帰した「番外編」である『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の第4位を凌いだが、この年は2本の007映画が上位を占める結果となった[3]。日本では1983年度の外国映画配給収入で第4位だった[4](『ネバーセイ・ネバーアゲイン』は1984年度の外国映画配給収入で第6位であった[5])。米国では1980年代の007シリーズ最大のヒットとなった。

キャラクター・キャスト編集

  • 本作は経営破綻したUAを買収したMGMが手掛けたシリーズ最初の作品で、ロジャー・ムーアは前作を最後に降板を表明し、また、M役のバーナード・リーも故人となっていたため、シリーズ初のリブートを試み、ボンド役にジェームズ・ブローリン、マネーペニー役にミカエル・クラヴェルをキャスティング、製作しようとしたが、かねてより噂されていたショーン・コネリーとケヴィン・マクローリーによる『サンダーボール作戦』のリメイク作品『WARHEAD(後の『ネバーセイ・ネバーアゲイン』)』の製作開始が不可避の状況になり、しかも、その主演をロジャー・ムーアが務めるという情報が流れ、例え製作規模で勝っても認知度の高い二大ボンド対馴染みのない新ボンドではあまりにも分が悪いと判断したMGMはブローリンの出演をキャンセル、コネリ-×ムーアのタッグを引き離すため、ムーアに破格の出演料を提示、翻意させることに成功。認知度、規模、スタッフの錬度など、総合的に『ネバーセイ・ネバーアゲイン』を上回り、興行面でも勝利を収める。2代目のマネーペニーになる予定だったクラヴェルは結局、ロイス・マクスウェル扮する初代マネーペニーの助手、ペネロプ・スモールボーン役になり、本作のみの出演となる。とはいえ、原語版でボンドはマネーペニーのことをしばしば「ペニー」と呼んでおり、ペネロプの愛称も「ペニー」であることから、マネーペニーの後釜に据えることを想定していたことが窺える。また、新M役にはムーアが友人でシリーズの出演歴もあるロバート・ブラウンを推薦した。因みにクラヴェルは戦争映画の名作『大脱走』の脚本を書き、作家としても『将軍 SHOGUN』などのベスト・セラーを持つジェームズ・クラヴェルの娘である。
  • モード・アダムスは『黄金銃を持つ男』に続き、役柄を変えての二度目の出演で、この後に『美しき獲物たち』でもカメオ出演した[6]。シリーズ中三作品に登場したボンドガールは彼女のみ。また、メインのボンドガール最年長記録を更新。
  • 当初、オクトパシー役はフェイ・ダナウェイに打診したが、条件が合わず、続いてバーバラ・カレラにオファーを出すが、彼女は皮肉にも『ネバーセイ・ネバーアゲイン』への出演を決めた後だった。
  • 今回はマネーペニーに新しく助手としてペネロプ・スモールボーンを迎えている。マネーペニーから「細部にわたるおぞましい説明」を受けてボンドに興味をなくす。マネーペニーの後任と噂されたこともあったが、MI6の他の部署に異動されたため以来登場していない。
  • ムーンレイカー』までMを演じていたバーナード・リーが前作『ユア・アイズ・オンリー』の撮影直前に死去したため(同作ではMは登場せず、休暇中という設定でMの代わりに情報部の幕僚主任ビル・タナーがボンドに指令を出していた)、今作よりロバート・ブラウンが新任のMを演じている。この人物は、『私を愛したスパイ』で潜水艦に乗船していたハーグリーヴス提督[7]。前任のMはボンドが一般任務の頃からの付き合いのため、ボンドの類稀な能力や資質を認めて、彼の破天荒な仕事ぶりと快楽主義的な生き方に対しても比較的寛容だった(立場上は注意している)が、このMはそれとは異なり、ボンドの評判や人間性を侮るような態度を見せている。ロバートは『消されたライセンス』までMを演じ、2003年に他界。『ゴールデンアイ』ではこのMについて一言だけセリフが存在する。
  • ビジャイ役のビジャイ・アムリトラジは、当時現役のインド人プロテニス・プレーヤーだった(ウィンブルドン選手権全米オープンの男子シングルスで、それぞれ2回ずつ準々決勝進出。世界ランキング最高16位)。本作でもテニス・ラケットを武器にするシーンがある。
  • 日本での公開に先立って、ロジャー・ムーア本人が来日(3度目)。「笑っていいとも!」、「夜のヒットスタジオ」などにゲスト出演もした。なお、後者にはリタ・クーリッジもゲストで出演し、スタジオで映画主題歌を熱唱した。
  • 映画化するにあたって題名の“OCTOPUSSY”の後半が英語では卑猥な単語のため、主演のモード・アダムズは当初嫌がったという[6]
  • 1982年8月22日、本作の製作準備中だったプロダクション・デザイナーのピーター・ラモントの乗った旅客機が、インド国内でハイジャックされた。隣の乗客に自分が007映画関係者であることを話すと、秘密兵器はないのか聞かれたという。
  • 列車でのアクションの撮影中、ボンドのスタントとして車両の側面につかまっていたマーティン・グレイスは、コンクリートの柱に接触して全治六か月の重傷を負った。

秘密兵器編集

 
アクロスター
  • 超小型ジェット機アクロスター(米国 Bede Aircraft 社製造のBD-5 )
  • セイコーの腕時計を、二種類使用。一つは「デジボーグ」で、ファベルジュの卵に仕込まれた発信機の電波に反応し、場所を探知した。もう一つは「TVウォッチ」で、ボンドがカマルの宮殿に突入する際、Qがカメラで撮影した映像を受信し、液晶画面に映し出した[8][9][10]
  • Qは前述のカメラを搭載した熱気球を自ら操縦しながら、カマルの宮殿に突入するボンドを支援する。気球にはユニオンジャックのカラーリングが施されている。
  • モンブランの万年筆。封入された強酸で、鉄格子を溶解。ファベルジュの卵に仕込まれた盗聴器の受信機にもなっている。
  • ワニ型潜水艇。ワニに偽装した一人乗りの小型潜水艇で、オクトパシーの宮殿に潜入する際に使用。
  • この他、インドのQの研究室で以下のものを開発中。
    • インド魔術のように、巻いてあるロープが伸び、それにつかまって上に登れるもの。途中で折れて実験は失敗。
    • 棘(とげ)のついたの扉。ノッカーを叩くと勢いよく開き、叩いた人間を壁との間に挟んで突き刺す。
  • 敵側の兵器として、サッグ(インドの殺し屋集団)のノコギリ型殺人ヨーヨーが登場。

主題歌編集

アメリカの女性シンガー、リタ・クーリッジが起用され、映画とは別タイトルの「All Time High」が主題歌となった。イギリスの「ミュージック・ウィーク」誌では、最高位75位、アメリカの「ビルボード」誌では、最高位36位と両国共にチャートでは振るわなかった。さらに、ジョン・バリーが担当した同サウンドトラック・アルバムは、チャート入りを果たせなかった。

その他編集

 
モンスーン・パレス
 
レイク・パレス
  • Q開発のボンドカーは登場しないが、インドの市街地ではオート・リクシャー(三輪タクシー)でアクションを展開する。これらのオート・リクシャーは本作の撮影用に特注されたもので、最高速度は100km/hに達する。
  • オルロフ将軍のメルセデス・ベンツ250SE(撮影では250Dも使用)を盗み、パンクしたホイールをレールにはめてオクトパシーの乗った列車を追跡。
  • 西ドイツで、公衆電話で電話中の女性のアルファロメオ・GTV6を盗み、アウトバーンBMWのパトカー(5シリーズ)、バイクとカーチェイスを繰り広げる。
  • サザビーズを出たボンドは、ボンドストリートのキオスクで雑誌を買う(ロンドンのサザビーズは、実際にボンドストリート沿いにある)。
  • デリーに向かったカマル・カーンを追ったボンドは、ヘリコプターでタージ・マハル付近を通り、ヤムナー川に着水する。
  • インドのロケは、デリーという設定のシーンも含め、大部分がウダイプルで行われた。カマル・カーンの宮殿は、同地ピチョーラー湖畔の山頂にあるモンスーン・パレス、オクトパシーの宮殿はピチョーラー湖に浮かぶ小島に建てられたレイク・パレスで撮影された。レイク・パレスはマハーラーナー(王侯)の宮殿だったが、ホテルに改装されており、ボンドが劇中で投宿したホテルも、ここで撮影されている。撮影中は、出演者の宿泊先ともなった。
  • オクトパシーが移動に使う列車は、イギリスのニーン渓谷鉄道(Nene Valley Railway)で撮影された。
  • ジョン・グレン監督の「トレードマーク」は鳩。今回は、ボンドがモーンスーン・パレスの壁面を移動する際、急に飛び立つ。
  • 蛇使いに変装したビジャイが、最初にボンドと落ち合う際の合図に、笛で「ジェームズ・ボンドのテーマ」を吹く。
  • カマルに追われて逃げるボンドが、木から木へ飛び移る際、ターザンの雄たけびを上げる。この声は、メトロ・ゴールドウィン・メイヤーが、ターザン映画のために作り上げたものである。第1作より007シリーズの配給を行ってきたユナイテッド・アーティスツは、1981年にMGMに買収されていた。
  • ボンドが携行する拳銃はワルサーP5。しかし、ボンドはなぜかワルサーPPKと呼ぶ。007シリーズでこの銃が登場するのは、本作と『ネバーセイ・ネバーアゲイン』のみである。
  • サーカス団の列車が東ドイツから西ドイツへ越境する場面で、西ドイツ側に You are entering the American Sector の文字が書かれている。この掲示は西ベルリンの検問所にのみ設けられていたもので、東西ドイツ直接の検問所にはなかった。
  • 東ドイツ駐留ソ連軍の陸軍兵士がAK-47を携行しているのに対し、KGB兵士はオーストリア製のシュタイヤーAUGを使っている。
  • 本作はシリーズ史上初めて、主題歌(“All Time High”)の歌詞の中に作品のタイトル(“Octopussy”)が織り込まれていない作品となった。また、作品タイトルと主題歌のタイトルが異なるのは『私を愛したスパイ』(原題=“The Spy Who Loved Me”、主題歌=“Nobody Does It Better”)以来、2作品めである。
  • 2012年に公開されたアメリカ映画の『テッド』では、本作が主人公のジョンと恋人のローリーの思い出の映画という設定で、作中でジョンがローリーと復縁する為に、ノラ・ジョーンズのライブに飛び入り参加して本作の主題歌「All Time High」を歌うも、音程がずれた散々な歌唱の為に大ブーイングを浴びるシーンが挿入された。

日本語吹替編集

役名 俳優 TBS DVD/BD 機内上映版
ボンド ロジャー・ムーア 広川太一郎 羽佐間道夫
オクトパシー モード・アダムス 来宮良子 唐沢潤
カーン ルイ・ジュールダン 田口計 森田順平
マグダ クリスティナ・ウェイボーン 榊原良子 櫨山めぐみ
オルロフ スティーヴン・バーコフ 坂口芳貞 成田剣
ゴゴール ウォルター・ゴデル 大宮悌二 島香裕
M ロバート・ブラウン 石森達幸 中博史
マニーペニー ロイス・マクスウェル 好村俊子 泉裕子
Q デスモンド・リュウェリン 丸山詠二 白熊寛嗣
サドルディン アルバート・モーゼス 沢木郁也 宗矢樹頼
ビジャイ ビジャイ・アムリトラジ 秋元羊介 羽多野渉
ゴビンダ カビール・ベディ 西村知道 五王四郎
ミシカ/グリシカ デイヴィッド・マイヤー
アンソニー・マイヤー
星野充昭
グレイ国防大臣 ジェフリー・キーン 伊井篤史 佐々木省三
ジム・ファニング ダグラス・ウィルマー 加藤正之 佐々木睦
ビアンカ ティナ・ハドソン 伊倉一恵
ペネロプ・スモールボーン ミカエラ・クラヴェル 滝沢ロコ
ソビエト連邦議長 ポール・ハードウィック 小関一
レンキン ピーター・ポーテウス 塚田正昭
シェッツィ ブレンダ・カウリング 巴菁子
赤い車のティーンエイジャー ゲイリー・ラッセル 菅原淳一
  • TBS版 - 初回放送1988年9月6日20:00-22:24 『ザ・ロードショー』※キングレコードから発売の特別版DVDに収録。
※「ザ・ロードショー」で延長枠初放映された唯一の007作品(本編約122分)。
プロデューサー - 上田正人、演出 - 小山悟、翻訳 - 木原たけし、効果 - 遠藤堯雄/桜井俊哉、調整 - 小野敦志、製作 - 東北新社/TBS
  • DVD/BD版 - 初出2006年11月22日発売 DVD アルティメット・コレクション
演出 - 福永莞爾、翻訳 - 谷津真理、調整 - 金谷和美、製作 - 東北新社

参照編集

  1. ^ a b Octopussy” (英語). The Numbers. 2009年6月21日閲覧。
  2. ^ 1983年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  3. ^ Movie list by worldwide gross” (英語). WorldwideBoxoffice.com. 2009年6月21日閲覧。
  4. ^ 日本映画産業統計”. 日本映画製作者連盟. 2009年6月22日閲覧。
  5. ^ 日本映画産業統計”. 日本映画製作者連盟. 2009年6月22日閲覧。
  6. ^ a b “Interview with Maud Adams” (英語). (2004年9月4日). http://www.bbc.co.uk/wiltshire/content/articles/2004/09/24/maudadams_feature.shtml 2009年7月9日閲覧。 
  7. ^ 実際にロバート・ブラウンはハーグリーヴスを演じている。
  8. ^ ボンドウォッチプロジェクト
  9. ^ Q Branch at Her Majesty's Secret Servant
  10. ^ James Bond Gadget Watch History at the watchismo times

外部リンク編集