ツール・ド・フランス2023

ツール・ド・フランス2023は、ツール・ド・フランスの第110回目の大会。2023年7月1日から23日までの日程で開催された。

ツール・ド・フランス2023
レース詳細
コース110. ツール・ド・フランス
競技UCIワールドツアー2023 2.UWT
ステージ21
日付2023年07月01日 – 23日
距離3,405.6 キロメートル
FRA フランス
ESP スペイン
スタートビルバオ
ゴールパリ
チーム22
参加人数176
完走人数150
平均速度41.483 キロメートル毎時
獲得標高55460 m
結果
優勝DEN ヨナス・ヴィンゲゴー (Jumbo-Visma)
準優勝SLO タデイ・ポガチャル (UAE Team Emirates)
3位GBR アダム・イェーツ (UAE Team Emirates)
ポイント賞BEL ヤスペル・フィリプセン (Alpecin-Deceuninck)
山岳賞ITA ジュリオ・チッコーネ (Lidl-Trek)
新人賞SLO タデイ・ポガチャル (UAE Team Emirates)
敢闘賞BEL ヴィクトール・カンペナールツ (Lotto Dstny)
チームNED Jumbo-Visma
◀20222024▶
ドキュメンテーション

コース概要 編集

スペインのビルバオでスタートし、第3ステージの道中でフランスに入国する。その後ピレネー中央高地ジュラアルプスヴォージュと国内の5つの山脈を西から東に巡っていく。そして最終日には翌年のパリ五輪会場を経由してシャンゼリゼ通りでゴールする。

合計3405kmのコースは、発表時点から「クライマー向け」と評された[1]。2級以上のカテゴリー山岳は30峰で史上最多であり、さらに個人タイムトライアルは1ステージのみで、全長22.4kmと短く、途中に2級山岳を含む登り基調のレイアウトとなっている。

出場チーム 編集

ワールドチーム (18)プロチーム (4)

日程 編集

ステージ開催日コースtype距離 (km)獲得標高ステージ勝者全体リーダー
1  07月01日  ビルバオ  ビルバオ
 
丘陵ステージ
1823238 m  アダム・イェーツ    アダム・イェーツ  
2  07月02日  ビトリア=ガステイス  サン・セバスティアン
 
丘陵ステージ
208.92943 m  ヴィクトール・ラフェ    アダム・イェーツ  
3  07月03日  アモレビエタ=エチャノバイヨンヌ
 
平坦ステージ
193.52600 m  ヤスペル・フィリプセン    アダム・イェーツ  
4  07月04日ダクスノガロ
 
平坦ステージ
181.81434 m  ヤスペル・フィリプセン    アダム・イェーツ  
5  07月05日ポー – ラランス
 
山岳ステージ
162.73659 m  ジャイ・ヒンドレー    ジャイ・ヒンドレー  
6  07月06日タルブ – コテレ
 
山岳ステージ
144.93922 m  タデイ・ポガチャル    ヨナス・ヴィンゲゴー  
7  07月07日モン=ド=マルサンボルドー
 
平坦ステージ
169.9785 m  ヤスペル・フィリプセン    ヨナス・ヴィンゲゴー  
8  07月08日リブルヌリモージュ
 
丘陵ステージ
200.71812 m  マス・ピーダスン    ヨナス・ヴィンゲゴー  
9  07月09日サン=レオナール=ド=ノブラピュイ・ド・ドーム
 
山岳ステージ
182.43494 m  マイケル・ウッズ    ヨナス・ヴィンゲゴー  
7月10日休息日 クレルモン=フェラン
 
休息日
10  07月11日ヴュルカニア – イソワール
 
丘陵ステージ
167.23127 m  ペリョ・ビルバオ    ヨナス・ヴィンゲゴー  
11  07月12日クレルモン=フェランムーラン
 
平坦ステージ
179.81854 m  ヤスペル・フィリプセン    ヨナス・ヴィンゲゴー  
12  07月13日ロアンヌ – ベルヴィル・アン・ボージョレ
 
丘陵ステージ
168.83088 m  ヨン・イサギレ    ヨナス・ヴィンゲゴー  
13  07月14日シャティヨン=シュル=シャラロンヌ – グラン・コロンビエ
 
山岳ステージ
137.82410 m  ミハウ・クフャトコフスキ    ヨナス・ヴィンゲゴー  
14  07月15日アヌマッスモルジヌ
 
山岳ステージ
151.84281 m  カルロス・ロドリゲス    ヨナス・ヴィンゲゴー  
15  07月16日レ・ジェ – サン=ジェルヴェ=レ=バン
 
山岳ステージ
1794527 m  ウァウテル・プールス    ヨナス・ヴィンゲゴー  
7月17日休息日 サン=ジェルヴェ=レ=バンフランス語版
 
休息日
16  07月18日パッシー – コンブルー
 
個人タイムトライアルステージ
22.4638 m  ヨナス・ヴィンゲゴー    ヨナス・ヴィンゲゴー  
17  07月19日サン=ジェルヴェ=レ=バン – クールシュヴェル
 
山岳ステージ
165.75405 m  フェリックス・ガル    ヨナス・ヴィンゲゴー  
18  07月20日ムーティエ – ブール=ガン=ブレス
 
平坦ステージ
184.91211 m  カスパー・アスグリーン    ヨナス・ヴィンゲゴー  
19  07月21日モワラン=アン=モンターニュ – ポリニー (ジュラ県)
 
丘陵ステージ
172.81950 m  マテイ・モホリッチ    ヨナス・ヴィンゲゴー  
20  07月22日ベルフォール – ル・マルクシュタイン
 
山岳ステージ
133.53484 m  タデイ・ポガチャル    ヨナス・ヴィンゲゴー  
21  07月23日サン=カンタン=アン=イヴリーヌパリ
 
平坦ステージ
115.1598 m  ヨルディ・メーウス    ヨナス・ヴィンゲゴー  

各賞の変遷 編集

区間 区間勝者 総合首位
 
ポイント賞
 
山岳賞
 
新人賞
 
チーム総合首位
 
敢闘賞
 
1 アダム・イェーツ アダム・イェーツ アダム・イェーツ ニールソン・パウレス英語版 タデイ・ポガチャル チーム・ユンボ・ヴィスマ アダム・イェーツ
2 ヴィクトル・ラフェ英語版フランス語版 ヴィクトル・ラフェ英語版フランス語版 ニールソン・パウレス英語版
3 ヤスペル・フィリプセン ローラン・ピション
4 ヤスペル・フィリプセン ヤスペル・フィリプセン ブノワ・コスヌフロワ
5 ジャイ・ヒンドレー ジャイ・ヒンドレー フェーリクス・ガル英語版 ワウト・ファン・アールト
6 タデイ・ポガチャル ヨナス・ヴィンゲゴー ニールソン・パウレス英語版
7 ヤスペル・フィリプセン シモン・グリエルミ英語版
8 マス・ピーダスン アントニー・テュルジス英語版
9 マイケル・ウッズ バーレーン・ヴィクトリアス マッテオ・ヨルゲンソン英語版
10 ペリョ・ビルバオ クリスツ・ニーランズ英語版
11 ヤスペル¥フィリプセン ダニエル・オス
12 ヨン・イサギレ マチュー・ファン・デル・プール
13 ミハウ・クフャトコフスキ イネオス・グレナディアーズ ミハウ・クフャトコフスキ
14 カルロス・ロドリゲス英語版 ヨナス・ヴィンゲゴー ジュリオ・チッコーネ
15 ウァウテル・プールス ジュリオ・チッコーネ チーム・ユンボ・ヴィスマ アドリアン・プティ英語版
16 ヨナス・ヴィンゲゴー -
17 フェリックス・ガル英語版 フェリックス・ガル英語版
18 カスパー・アスグリーン ヴィクトール・カンペナールツ
19 マテイ・モホリッチ
20 タデイ・ポガチャル ティボー・ピノ
21 ヨルディ・メーウス英語版 -
最終成績 ヨナス・ヴィンゲゴー ヤスペル・フィリプセン ジュリオ・チッコーネ タデイ・ポガチャル チーム・ユンボ・ヴィスマ ヴィクトール・カンペナールツ

レース結果 編集

第1ステージ - 7月1日(土) 編集

ビルバオ発着のコースは、4~2級の山岳を5つ含んだテクニカルな丘陵レイアウト。スタートからしばらくは穏やかに進んだが、2級山岳の登りで遅れたスプリンター勢、落車で負傷したエンリク・マスリチャル・カラパスなど、一部の選手たちには厳しい展開になった。残り8km地点でアダム・イェーツサイモン・イェーツが揃ってアタックを仕掛け、そのまま兄弟でワンツーフィニッシュ。1位のアダムが区間初優勝と大会最初のマイヨ・ジョーヌを獲得した[2]

第2ステージ - 7月2日(日) 編集

今大会最長となる209kmのコースには、1ヶ月後のクラシカ・サンセバスティアンでも登場する山々が盛り込まれた。山岳賞トップのニールソン・パウレス英語版ら数名の逃げが形成され、メイン集団はUAE チーム・エミレーツが先導。途中UAEのメンバー同士が口論する場面が見られながらも逃げとのタイム差は縮み、最後の2級山岳でパウレスを吸収した。山頂にボーナスタイムが設定されていることから総合優勝を争うタデイ・ポガチャルヨナス・ヴィンゲゴーがアタックし、先着したポガチャルが8秒のボーナスを得た。その後数人の選手が単独アタックを試みたものの、いずれも集団を牽引するチーム・ユンボ・ヴィスマに封じられる。しかし残り1km地点で一瞬のスキを突いたヴィクトル・ラフェ英語版がロングスパートを開始し、ワウト・ファン・アールトらの猛追をしのいでツール初優勝。コフィディスにとっては15年ぶりの区間優勝となった[3]

第3ステージ - 7月3日(月) 編集

スペインとフランスの国境を跨ぐコースは、前半に低難度の山岳が連なり、後半は平坦な道が続く。この日もパウレスがスタート直後からアタックをかけ、ローラン・ピションとともに逃げる展開に。パウレスはすべての山岳を先頭で通過したのちメイン集団に戻ったが、ピションは国境を越えて156km地点まで逃げ続けた。最後はマチュー・ファン・デル・プールのリードアウトから飛び出したヤスペル・フィリプセンがスプリント勝負を制した。ゴール直前の緩やかなカーブで、背後にいたファン・アールトの進路を妨害したとして一時はフィリプセンが審議対象になったものの、無事に優勝が確定した[4]

第4ステージ - 7月4日(火) 編集

往年の名選手アンドレ・ダリガードが生まれた街ダクスから、フランス最古の自動車レース場であるノガロ・サーキットまでの道のりには、4級山岳が1つだけの平坦なルートが設定された。中間スプリントや山頂付近で前に出る選手がいたものの、概ね大集団を維持して進んでいった。サーキットに入ってからはファビオ・ヤコブセンら数人が落車する荒れた展開となるも、混乱をくぐり抜けた選手たちを抑えてフィリプセンがステージ2連勝を達成、ポイント賞でも同点2位から単独1位に上がりマイヨ・ヴェールを獲得した[5]

第5ステージ - 7月5日(水) 編集

ピレネー山脈で迎える大会最初の山岳ステージには、中間地点の超級スデ峠と終盤の1級マリー・ブランク峠が組み込まれた。スタートから30km地点でジャイ・ヒンドレージュリアン・アラフィリップといった有力選手を含む30人の先頭集団が形成された。スデ峠ではフェリックス・ガル英語版が抜け出して山頂をトップで通過し、山岳賞でも首位に立った。下り区間で先頭は再び集団に戻るが、マリー・ブランク峠の山頂手前でヒンドレーがアタックし、そのまま独走で区間優勝。初出場で初勝利と初のマイヨ・ジョーヌを手にした。後方ではヴィンゲゴーのアタックにポガチャルが付いて行けず、両者の総合成績に53秒の差がついた[6]

第6ステージ - 7月6日(木) 編集

伝統の超級ツールマレー峠など4つの山岳が登場するピレネー2日目。前半2つの山頂は先頭集団に入ったパウレスがともにトップで通過し、山岳賞1位に返り咲いた。続くツールマレーはトビアス・ヨハンネセン英語版が先頭で通過し、ジャック・ゴデ記念賞を獲得した。一方メイン集団では、ユンボ・ヴィスマによるハイペースの牽引で、マイヨ・ジョーヌを着るヒンドレーが遅れだす。山頂目前で抜け出したヴィンゲゴーとポガチャルは、先頭集団にいたファン・アールトと合流し、最後の1級コトレ・カンバスクで逃げる選手たちに追いついた。そして残り3kmでポガチャルがアタックを決めて今大会初優勝、ヴィンゲゴーは区間2位でマイヨ・ジョーヌを獲得したものの、ポガチャルとの差は25秒に縮まった[7]

第7ステージ - 7月7日(金) 編集

モン=ド=マルサンからボルドーまで、ランドの森の東側を沿うような平坦なルートが設定された。先頭から単独で逃げ続けたシモン・グリエルミ英語版は4級山岳までで平均45km/hのハイペースを記録しこの日の敢闘賞に選ばれた。ピエール・ラトゥールナンス・ペテルスが先頭に代わるも、残り3.5km地点で集団に吸収された。ゴール前スプリントではこれまで通りファン・デル・プールがフィリプセンを牽引していたが、早めのスパートをかけたマーク・カヴェンディッシュに反応したフィリプセンはすかさず後を追い、差し切って区間3勝目を挙げた[8]

第8ステージ - 7月8日(土) 編集

今大会2つ目の200km超えのステージは、後半に3級・4級山岳が3つ並んだ丘陵レイアウト。一時は逃げとメイン集団の差が5分以上になるも、登り区間で徐々に距離を詰めていった。その道中では前日2位のカヴェンディッシュが140km地点での落車でリタイア、残り6kmでもサイモン・イェーツとミケル・ランダが集団落車に巻き込まれ、復帰できたものの総合順位を落とした。上り坂に置かれたゴールを目指す先頭ではマッズ・ピーダスンがスプリントを始め、追いかけるライバルたちを振り切り優勝した[9]

第9ステージ - 7月9日(日) 編集

大会1週目を締めくくる山岳ステージには、観光地としても知られる火山ピュイ・ド・ドームでの超級山頂フィニッシュが設定された。前半区間では先頭集団に入ったパウレスが2つの4級山岳をトップで通過し、着実に山岳賞ポイントを積み重ねた。ピュイ・ド・ドームの登りが始まるタイミングでマッテオ・ヨルゲンソン英語版が抜け出すも、残り4km地点から追い上げたマイケル・ウッズがゴール目前で逆転しツール初優勝。総合上位勢ではポガチャルが終盤にアタックをかけ、ヴィンゲゴーとのタイム差を17秒まで縮めた[10]

第10ステージ - 7月11日(火) 編集

大会2週目は、世界遺産「シェヌ・デ・ピュイ火山帯」の中を縫うように引かれた丘陵コースから始まった。序盤にはヴィンゲゴー、ポガチャル、サイモン・イェーツらがアシスト陣を連れてメイン集団の前に出る場面もあったが、ほどなく吸収された。その後ペリョ・ビルバオワレン・バルギルら7人が抜け出し、そこにアラフィリップら追走組が合流する。2分後方のメイン集団ではファン・デル・プールとファン・アールトが抜け出しをはかるも、先頭に追いつくことはできなかった。残り1km地点でゲオルグ・ツィマーマン英語版がアタックし、これにビルバオが反応する。一時牽制状態になるが、残り200mから加速したビルバオがそのまま先頭でゴール。総合順位を11位から5位に上げた[11]

第11ステージ - 7月12日(水) 編集

同年の第2回ツール・ド・フランス・ファムが開幕するクレルモン=フェランからムーランまでの平坦ルート。レースはスタート直後に抜け出した3人を、スプリンターを擁するチームが牽引するメイン集団が追う状態が続いた。途中大雨が降ったものの大きなトラブルはなく、最後まで逃げ続けたダニエル・オスも残り13.5kmで吸収された。ゴール前スプリントではアレクサンダー・クリストフディラン・フルーネヴェーヘンが追い抜くが、背後のフィリプセンが先頭に出て大会4勝目を手にした[12]

第12ステージ - 7月13日(木) 編集

中央高地とジュラ山脈を結ぶコースには、ワインで有名なボジョレー地方の起伏に富んだレイアウトが設定された。2つ目の3級山岳までは逃げが決まらず、先頭集団が形成されたのはコースの後半に差しかかるところだった。残り47km地点でファン・デル・プールが独走を開始するも、最後の2級山岳で追いつかれる。再び先頭集団がひとつになったところ、31kmを残してヨン・イサギレがアタックし、後方と1分近い差をつけて7年ぶり2回目の区間優勝を挙げた[13]

第13ステージ - 7月14日(金) 編集

フランス革命記念日に用意されたのは、平坦路の先に3年ぶり3回目の登場となる超級グラン・コロンビエ峠があるだけのシンプルなコース。110km地点で20人の先頭集団が形成され、メイン集団とは4分弱の差で登坂を開始した。まずはカンタン・パシェ英語版がアタックをかけるが、残り13kmで追走の選手たちに追いつかれた。ほどなくしてミハウ・クフャトコフスキが加速し、2位集団との差を広げていく。そのまま単独でゴールしたクフャトコフスキが、グラン・コロンビエにおける3人目の勝者となった。後方では残り400m地点でポガチャルがアタックし、ヴィンゲゴーと4秒差の3位に入ったことで、ボーナスタイムと合わせて総合タイム差を8秒縮めた[14]

第14ステージ - 7月15日(土) 編集

アルプス山脈1つ目の山岳ステージは、3級、1級3連続、そしてボーナスタイム付きの超級と、徐々に山が険しくなっていくレイアウトだった。スタート直後に大規模な落車が発生したため、レースは30分間中断に。この事故が原因でルイ・メインティースエステバン・チャベスらがリタイアとなった。最初の3級山岳はダニエル・フェリペ・マルティネス、続く2つの1級山岳はジュリオ・チッコーネが先頭で通過、チッコーネは単独で次の山頂を目指したが、登りの途中でファン・アールトが牽引するメイン集団に吸収された。超級ジュー・プラーヌ峠の登りでは、山頂まで3.7kmのところでポガチャルがアタックするも、2km走ったところでヴィンゲゴーに追いつかれ、山頂目前で仕掛けた2度目のアタックは、前方の撮影用オートバイに行く手を阻まれ実らず。今度はヴィンゲゴーがアタックして山頂を先頭で通過した。最後の下り区間でカルロス・ロドリゲス英語版とアダム・イェーツが合流すると、すぐさま単独先頭に立ったロドリゲスが逃げ切って優勝。今大会最年少のステージ勝者となった。ポガチャルとヴィンゲゴーは5秒遅れでそれぞれ2位と3位に入り、山頂とゴールの合計ボーナスタイムの差でヴィンゲゴーが1秒リードを広げた[15]

第15ステージ - 7月16日(日) 編集

前年にマウンテンバイク・レースの世界選手権が開催されたレ・ジェをスタートし、後半に5つの山岳を登るルート。序盤はアラフィリップとアレクセイ・ルツェンコの2人を、30人以上の追走集団が追う展開になった。50km地点でメイン集団ではまたも落車が発生。前日と異なりレースは中断されなかったため、先行する選手たちとの差は7分以上に広がった。先頭集団ではチッコーネが2つの1級山岳で計14点を獲得し、山岳賞で首位パウレスと同点に並んだ。続く3級山岳でマルク・ソレル、ファン・アールト、クリス・ニーランツ英語版ウァウテル・プールスの4人が抜け出すが、下り区間でニーランツが落車、ソレルも遅れ先頭はファン・アールトとプールスの2人に。そして2級山岳でアタックしたプールスはファン・アールトとの差を広げていき、最後の1級山岳も単独で登り切ってツール初優勝を挙げた。ヴィンゲゴーとポガチャルは6分後に並んでゴールし、10秒差で大会2週目を終えた[16]

第16ステージ - 7月18日(火) 編集

唯一の個人タイムトライアルのコースは、獲得標高こそ高くないものの登坂区間が多いレイアウトが設定された。2級ドマンシー峠からゴールまで6km以上登りが続くため、通常のバイクに乗り換えるかタイムトライアルバイクのまま走り切るか、選手によって戦略が分かれた。前半に出走した中では、レミ・カヴァニャが35分42秒を記録し、これが当面の基準タイムとなる。ドマンシー峠では登坂区間のタイムが速い上位4名に山岳ポイントが与えられるが、こちらはチッコーネが最速を記録し、山岳賞で単独首位に立った。ファン・アールトがカヴァニャを15秒上回るトップタイムを出し、総合上位の選手でも更新できないまま、総合2位のポガチャルとマイヨ・ジョーヌを着るヴィンゲゴーが出走する。ポガチャルは全ての中間計測地点でファン・アールトを上回るが、直後のヴィンゲゴーはそれを更に上回る全体ベストタイムを記録し続けた。登りでバイクを乗り換えたポガチャルはファン・アールトより1分12秒速いタイムで暫定トップに立つが、まもなくヴィンゲゴーがTTバイクのまま記録した優勝タイムは、ポガチャルを1分38秒上回るものだった。ヴィンゲゴーにとってはツールのタイムトライアルステージ初優勝であり、ポガチャルとの差を1分48秒まで広げることにも成功した[17]

第17ステージ - 7月19日(水) 編集

獲得標高が5,000mを超える今大会のクイーンステージには、2020年大会に初めて登場した超級ロズ峠が組み込まれた。また、その前にも3つの山岳(1級・1級・2級)があり、ゴール地点のクールシュヴェル飛行場では最大勾配18.66%の滑走路を登る。最初の1級山岳をチッコーネが先頭で通過すると、下り区間で30人ほどの先頭集団が形成された。続く2つの山頂もチッコーネが先頭通過し、結果的に山岳賞首位を守れるだけの得点を重ねた。メイン集団がロズ峠中腹を過ぎたところでポガチャルが失速、すかさずユンボ・ヴィスマがペースを上げタイム差を広げにかかる。先頭ではガルが単独で山頂を通過し、サイモン・イェーツが2位、ヴィンゲゴーは途中撮影車両が目の前で停止してしまうトラブルに見舞われながらも、ビルバオやダヴィド・ゴデュらの3位集団に合流した。ガルは最後までサイモン・イェーツらを寄せ付けず、独走でツール初優勝を達成、総合で8位になり山岳賞でも2位に上がった。ヴィンゲゴーが1分52秒差の4位に入ったのに対し、ポガチャルは7分37秒差でレースを終え、両者のタイム差は7分35秒に拡大した[18]

第18ステージ - 7月20日(木) 編集

1週間ぶりとなる平坦ステージは、前日に登ったロズ峠の麓をスタートし、ブルー王立修道院まで向かうルート。スタート直後からカスパー・アスグリーンヨナス・アブラハムセン英語版ヴィクトール・カンペナールツの3人が飛び出して逃げ集団を形成、残り66km地点でパスカル・エインコールン(英語版)もここに合流した。2分以内の差で追いかけるメイン集団は、ゴールが近づくにつれ前を捕らえようとするが、スーダル・クイックステップの選手がペースを落とすよう働きかけたこともあり、なかなか差を詰められない。残り500mまで先頭を牽引したカンペナールツが離れると、残る3人は後ろとの距離を保ったままスプリントを開始、真っ先に加速したアスグリーンが先頭を譲らず逃げ切り勝利を収めた[19]

第19ステージ - 7月21日(金) 編集

ジュラ県の産業振興プロジェクト「メイド・イン・ジュラ」を記念して行われた本ステージでは、県内の丘陵地帯にコースが敷かれた。序盤からペーター・サガンらアタックをかける選手が相次ぐが、メイン集団もタイム差を広げまいとハイペースで進み、一時は付いて行けない選手たちで後方集団が出来るほどであった。しかし100kmを過ぎるとメイン集団は一転して減速し、逃げを容認する展開となった。その後は逃げ切りを狙う選手と、集団スプリントに持ち込みたい追走組という構図が続く。カンペナールツとサイモン・クラークが飛び出すが、足を攣ったクラークは後方に下がり、3級山岳でアタックをかけたアスグリーン、マテイ・モホリッチベン・オコナーの3人がカンペナールツを抜いて先頭に立った。最後はアスグリーンとモホリッチが横並びでゴールし、写真判定の末モホリッチに軍配が上がった[20]

第20ステージ - 7月22日(土) 編集

事実上の最終ステージには、133.6kmの短さに6つの山岳(2級×3、3級、1級×2)が詰め込まれた。序盤の下りでロドリゲスとセップ・クスが落車し、どちらも流血を伴う怪我を負うが、メディカルカーの処置を受けながら完走している。レース前半は先頭集団に入ったチッコーネがすべての山頂を先頭で通過し、4つ目の山岳で他の選手が逆転できない点差になったため山岳賞首位が確定した。続く1級山岳ではティボー・ピノが単独でアタックを開始した。出身地が近くこの年で引退を表明していたことから、沿道の観客から大きな声援が送られた。最後の山頂はメイン集団から追いついたガル、ポガチャル、ヴィンゲゴーの3人が先頭で通過し、その先の平坦区間でイェーツ兄弟が合流した。ゴール目前でヴィンゲゴーがスプリントを仕掛けると、アダムのリードアウトを受けたポガチャルが抜いて大会2勝目を挙げ、ボーナスタイムの差で8秒を取り返した[21]

第21ステージ - 7月23日(日) 編集

サン=カンタン=アン=イヴリーヌを出発しパリシャンゼリゼ通りまで向かう最終日には、イヴリーヌ県内のパリ五輪競技会場を巡るルートが設定された。スタート直後に総合敢闘賞に選出されたカンペナールツが飛び出すパフォーマンスを見せ、以降は各々が記念撮影に興じた。大会最後の4級山岳はチッコーネがチームメイトを連れて先頭で通過し、1点を加算した。シャンゼリゼ通りの周回コースに入ると、クフィアトコフスキやポガチャルらが飛び出し、それをメイン集団が捕らえる展開が続く。そしてコンコルド広場のゴールにはフィリプセン、フルーネヴェーフェン、ピーダスン、そしてヨルディ・メーウス英語版の4人が横並びで飛び込み、写真判定を制したメーウスがワールドツアー初優勝を達成した[22]

最終成績 編集

  •   総合順位

ヨナス・ヴィンゲゴーが、第6ステージから一度もマイヨ・ジョーヌを譲らず総合連覇を果たした。2位は前年に続いてタデイ・ポガチャル、3位のアダム・イェーツはキャリア最高順位(2016年の4位)を更新した。

  •   ポイント賞

集団スプリントゴールの場面ではすべて2位以内に入る安定した速さを見せたヤスペル・フィリプセンが、前年は届かなかったマイヨ・ヴェールを手中に収めた。

  •   山岳賞

3週目に大きく得点を伸ばしたジュリオ・チッコーネが受賞。イタリア国籍の選手がマイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュを獲得するのは、クラウディオ・キアプッチ1991年1992年)以来31年ぶりである。

  •   ヤングライダー賞

タデイ・ポガチャルが前人未到の4年連続受賞を達成した。2020年第4ステージで初めて袖を通してから、本大会最終日をもって受賞対象から外れるまで、マイヨ・ブラン着用日数はのべ75日に達した。

  • 総合敢闘賞

連日果敢な逃げを見せ、ステージ敢闘賞にも2回選出されたヴィクトール・カンペナールツが受賞した。

  • チーム総合首位

ヴィンゲゴーを擁するチーム・ユンボ・ヴィスマがチーム成績でも1位になり、表彰台に2人を送り込んだUAE チーム・エミレーツが続いた。

総合成績 編集

 総合順位
選手チーム時間
1.   ヨナス・ヴィンゲゴー  Jumbo-Visma82時間05分42秒
2.   タデイ・ポガチャル  UAE Team Emirates+ 7分29秒
3.   アダム・イェーツ UAE Team Emirates+ 10分56秒
4.   サイモン・イェーツ Team Jayco AlUla+ 12分23秒
5.   カルロス・ロドリゲス Ineos Grenadiers+ 13分17秒
6.   ペリョ・ビルバオ Bahrain Victorious+ 13分27秒
7.   ジャイ・ヒンドレー Bora-Hansgrohe+ 14分44秒
8.   フェリックス・ガル AG2R Citroën Team+ 16分09秒
9.   ダヴィド・ゴデュ Groupama-FDJ+ 23分08秒
10.   ギヨーム・マルタン Cofidis+ 26分30秒
11.   ティボー・ピノ Groupama-FDJ+ 28分03秒
12.   セップ・クス Jumbo-Visma+ 37分32秒
13.   トム・ピドコック Ineos Grenadiers+ 47分52秒
14.   ラファウ・マイカ UAE Team Emirates+ 56分36秒
15.   ジョナタン・カストロビエホ Ineos Grenadiers+ 56分37秒
16.   クリス・ハーパー Team Jayco AlUla+ 57分29秒
17.   ベン・オコナー AG2R Citroën Team+ 1時間04分59秒
18.   ウィルコ・ケルダーマン Jumbo-Visma+ 1時間06分46秒
19.   ミケル・ランダ Bahrain Victorious+ 1時間12分41秒
20.   ヴァランタン・マドゥアス Groupama-FDJ+ 1時間14分10秒
出典: ProCyclingStats


脚注 編集

  1. ^ 4つの山岳フィニッシュが登場 クライマー向きの2023年ツール全貌が明らかに”. cyclowired.jp. 2023年7月24日閲覧。
  2. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第1ステージ結果速報】イェーツ兄弟がラスト8.8kmの逃避行、初日マイヨ・ジョーヌはグランツール初区間優勝の弟アダム”. J SPORTS. 2023年7月29日閲覧。
  3. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第2ステージ結果速報】ヴィクトル・ラフェが大会2日目にしてフランスに勝利をもたらし、コフィディスは15年ぶりのツール区間優勝”. J SPORTS. 2023年7月29日閲覧。
  4. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第3ステージ結果速報】今大会最初のスプリント勝負はヤスペル・フィリプセンに軍配”. J SPORTS. 2023年7月29日閲覧。
  5. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第4ステージ結果速報】ファンデルプールに牽かれたフィリプセンがスプリント勝負で2連勝、マイヨ・ヴェールに袖を通す”. J SPORTS. 2023年7月30日閲覧。
  6. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第5ステージ結果速報】ツール初出場のジャイ・ヒンドレーがピレネー初日を制しマイヨ・ジョーヌ獲得!ポガチャルはヴィンゲゴーから総合タイムを53秒落とす”. J SPORTS. 2023年7月30日閲覧。
  7. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第6ステージ結果速報】復活のポガチャル、ラスト2.8kmのアタックでユンボの思惑を粉砕し総合タイム差を25秒まで詰める区間優勝、マイヨ・ジョーヌはヴィンゲゴーへ”. J SPORTS. 2023年7月30日閲覧。
  8. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第7ステージ結果速報】ヤスペル・フィリプセンがスプリントステージ今大会3勝目、カヴェンディッシュに競り勝つ”. J SPORTS. 2023年7月30日閲覧。
  9. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第8ステージ結果速報】新しいチーム名になったリドル・トレックが嬉しい1勝目、マッズ・ピーダスンが上り基調スプリントを制す、カヴェンディッシュは鎖骨骨折でリタイア”. J SPORTS. 2023年7月31日閲覧。
  10. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第9ステージ結果速報】マイケル・ウッズが伝説峠でツール区間初優勝、ポガチャルがヴィンゲゴーから8秒さらう”. J SPORTS. 2023年7月31日閲覧。
  11. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第10ステージ結果速報】荒れ狂う展開の中、逃げにのったビルバオが冷静にツール区間初優勝を掴み取る、総合順位も5位までジャンプアップ”. J SPORTS. 2023年8月1日閲覧。
  12. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第11ステージ結果速報】中央山塊に別れを告げる移動ステージでフィリプセンが強さを見せ今大会4勝目”. J SPORTS. 2023年8月1日閲覧。
  13. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第12ステージ結果速報】サバイバルステージはレース巧者のヨン・イサギレがラスト30.9kmで抜け出し7年ぶりのツール区間優勝”. J SPORTS. 2023年8月1日閲覧。
  14. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第13ステージ結果速報】逃げに乗ったクフィアトコフスキが超級山頂ステージ区間勝利、ポガチャルが総合タイム8秒詰める”. J SPORTS. 2023年8月2日閲覧。
  15. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第14ステージ結果速報】大規模落車で7人がリタイア、カルロス・ロドリゲスがグランツール区間初優勝、ヴィンゲゴーが総合タイム1秒稼ぐ”. J SPORTS. 2023年8月2日閲覧。
  16. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第15ステージ結果速報】かつての最強アシスト、ワウト・プールスがグランツール区間初優勝!「ツールのステージ優勝するのが夢だった」”. J SPORTS. 2023年8月3日閲覧。
  17. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第16ステージ結果速報】勝敗を決める個人タイムトライアル、互角に見えた総合争いはヴィンゲゴーの爆走でポガチャルに1分48秒差”. J SPORTS. 2023年8月4日閲覧。
  18. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第17ステージ結果速報】クイーンステージを制したのはフェリックス・ガル、ヴィンゲゴーがポガチャルに総合タイム7分35秒差”. J SPORTS. 2023年8月5日閲覧。
  19. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第18ステージ結果速報】ゼロキロファーストアタックからの逃げ切り勝利を決めたのはカスパー・アスグリーン、ウルフパックに歓喜をもたらす”. J SPORTS. 2023年8月6日閲覧。
  20. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第19ステージ結果速報】残り距離31.6kmで抜け出した3人で逃げ切り勝利!ハンドル投げ勝負はマテイ・モホリッチに軍配”. J SPORTS. 2023年8月7日閲覧。
  21. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第20ステージ結果速報】ヴォージュ山地の難ステージをポガチャルが区間勝利、ピノが地元でツールの山々にお別れ、第110代マイヨ・ジョーヌはヨナス・ヴィンゲゴー”. J SPORTS. 2023年8月9日閲覧。
  22. ^ 【ツール・ド・フランス2023 第21ステージ結果速報】シャンゼリゼでのスプリント勝負はヨルディ・メーウスがWT初勝利、ヴィンゲゴーがツール総合2連覇”. J SPORTS. 2023年8月9日閲覧。

参考文献 編集

外部リンク 編集