バビット(欧字名:Babbitt2017年5月1日 - )は、日本競走馬[1]。主な勝ち鞍は2020年ラジオNIKKEI賞セントライト記念[3]

バビット[1]
2022年産経賞オールカマー
欧字表記 Babbitt[1]
品種 サラブレッド[1]
性別 [1]
毛色 栗毛尾花栗毛[1]
生誕 2017年5月1日(7歳)[1]
ナカヤマフェスタ[1]
アートリョウコ[1]
母の父 タイキシャトル[1]
生国 日本の旗 日本北海道浦河町[1]
生産者 大北牧場[1]
馬主 宮田直也[1]
調教師 浜田多実雄栗東[1]
厩務員 竹下一登[2]
競走成績
生涯成績 17戦4勝[1]
獲得賞金 1億3980万円[1]
(2024年4月14日現在)
勝ち鞍
GII セントライト記念 2020年
GIII ラジオNIKKEI賞 2020年
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馬名の意味は、「人名(アイザック・バビット英語版)より。合金名(バビットメタル)」[4]

経歴 編集

出生の背景 編集

母アートリョウコは門別競馬場大井競馬場にて6戦1勝という成績を残し[5]北海道日高郡新ひだか町の聖心台牧場にて繁殖牝馬となった[6]。初年度はアサクサキングスを種付けたが産駒に恵まれず、2年目に再びアサクサキングスを配合し初仔を出産(アンナージュ[6]、後に競走馬としてデビューを果たしている。3年目はナカヤマフェスタが種付けされ、同じ新ひだか町の大典牧場に移動[7]。さらに大典牧場と親戚関係にある、浦河町の大北牧場に受胎した状態で譲渡された[6][7]2017年5月1日、大北牧場にてアートリョウコの2017(後にバビット)が誕生する。なお、アートリョウコは以後2年間でエスポワールシチーヴァンセンヌとの仔を出産し[8]2019年、8歳で結腸捻転により死亡した[7]

幼駒時代 編集

映像外部リンク
  落札時(4時間20分7秒頃)
2018北海道オータムセール 生中継 1日目(JBIS-Search×ふるさと案内所チャンネル)による動画

牧場では、「とても柔らかい動きをする馬で、素直な気性」であったという[6]。大きい体ではなかったことから[6]2018年10月1日オータムセールに上場、グランデファームに150万円(税込:162万円)で取引された[7][9]。素直な気性であるにもかかわらず、落札後、馬房へ帰るのを嫌がり放馬、雨に濡れた芝を滑ったりするなど[7]、気の強い一面を見せるなど、関係者を驚かせたという[7]。(オータムセールの様子については、右(上)の動画リンク4時間20分7秒を参照。)

映像外部リンク
  2019年5月18日の試走
2019TrainingSale hip61(JBIS-Search×ふるさと案内所チャンネル)による動画

グランデファームにて育成が行われたのち[7]、2019年5月21日の北海道トレーニングセールに上場[10]。公開調教では22秒31のパフォーマンスを見せ[11]宮田直也に500万円で落札された[7][11]。「バビット」と名付けられ、栗東トレーニングセンター浜田多実雄厩舎に預けられた。

競走馬時代 編集

 
馬名の由来となったアイザック・バビット英語版

2019年11月24日京都競馬場新馬戦(芝1800メートル)に菱田裕二を鞍上に出走[12]単勝オッズ59.7倍の11番人気の評価ながら、逃げの手を打ち2着に食い込む[13]。続いて阪神競馬場の未勝利戦(芝2000メートル)に古川吉洋を背に出走し、再び2着となる。

間隔を空けて3歳となり、春の福島競馬場開催の未勝利戦(芝2000メートル)に単勝オッズ2.9倍の1番人気に推されて出走[14]。逃げの手を打ち、後方に2馬身2分の1で離して勝利、3戦目で勝ち上がりを果たすとともに、騎乗した和田竜二にJRA通算1300勝目の節目の勝利をもたらした[14][15]

続いて、新潟競馬場の早苗賞(1勝クラス)に団野大成の騎乗で出走、このレースでも逃げの手を打ち、藤田菜七子騎乗のロータスランドとの競り合いをクビ差制して2勝目を挙げた[16]

7月5日、福島競馬場のラジオNIKKEI賞GIII)で重賞初出走。ところが、団野が当日他のレースで落馬負傷[17][18](後日骨盤骨折の診断を受けた)[17][19]ため、急遽内田博幸に乗り替わった[18][20]。1枠1番から好スタートを切って逃げ、前半1000メートル59.6秒の平均的なペースを刻み[4][20]、先頭のまま最後の直線に進入した。上がり3ハロン(600メートル)を出走メンバー中最速の35.8秒の脚を見せて後続を突き放し、勝利[4]。2位入線のパンサラッサに5馬身離しての重賞初制覇[21]、3連勝を達成した[4][20][21]。「団野騎手が育ててきた馬なので、いい競馬をしてバトンタッチしたいと思っていた。またいい馬に乗れると思うし、これをバネにしてもらって頑張ってほしい」と団野を気遣った内田は「いいスタートを切ったのでわざわざ下げる必要はないと思った。直線でも手応えは良く走っていた。スピードがあってスタミナも持ち合わせているので、多少ペースが速くても大丈夫だということが分かった」「まさかこんなにいいパフォーマンスができるとはね」と振り返っている[4][22]

9月21日、重賞2勝目を狙いセントライト記念に出走、前走と同じく好スタートから先手を取ると、サトノフラッグ以下の追撃を1馬身半差で振り切り重賞2勝目を挙げた。

10月25日、初のGI出走となった菊花賞はキメラヴェリテが逃げ、離れた2番手でレースを進め、4コーナーで先頭に立つも直線力尽き10着に敗れ、初めて連対を外す。(詳細は第81回菊花賞を参照)次走、初の古馬との対戦となった有馬記念は逃げるも13着と大敗。(詳細は第65回有馬記念を参照)

2021年2月28日、4歳初戦となった中山記念は2番人気で出走、道中逃げるも早めに後続に捕まり離れた最下位に敗れる。

その後、5月19日に右前浅屈腱炎で全治9ヶ月以上の休養を要することが発表された[23]

競走成績 編集

以下の内容は、netkeiba.comの情報に基づく[24]

競走日 競馬場 競走名 距離(馬場)


オッズ
(人気)
着順 タイム
(上がり3F)
着差 騎手 斤量

[kg]

1着馬(2着馬) 馬体重

[kg]

2019.11.24 京都 2歳新馬 芝1800m(良) 15 4 7 059.7(11人) 02着 R1:49.4(36.6) -0.7 0菱田裕二 55 レッドフラヴィア 452
0000.12.14 阪神 2歳未勝利 芝2000m(良) 16 1 2 012.90(5人) 02着 R2:01.4(35.9) -0.0 0古川吉洋 55 ディープハーモニー 456
2020.04.26 福島 3歳未勝利 芝2000m(良) 16 6 12 002.90(1人) 01着 R2:01.2(36.0) -0.4 0和田竜二 56 (ロードライトニング) 452
0000.05.23 新潟 早苗賞 1勝 芝1800m(良) 14 3 4 016.80(5人) 01着 R1:47.8(33.8) -0.0 0団野大成 56 ロータスランド 454
0000.07.05 福島 ラジオNIKKEI賞 GIII 芝1800m(稍) 12 1 1 020.20(8人) 01着 R1:47.3(35.8) -0.8 0内田博幸 53 パンサラッサ 454
0000.09.21 中山 セントライト記念 GII 芝2200m(良) 12 5 6 005.90(4人) 01着 R2:15.0(37.0) -0.3 0内田博幸 56 サトノフラッグ 462
0000.10.25 京都 菊花賞 GI 芝3000m(良) 18 6 11 012.50(3人) 10着 R3:07.6(37.7) -2.1 0内田博幸 57 コントレイル 450
0000.12.27 中山 有馬記念 GI 芝2500m(良) 16 1 1 036.2(10人) 13着 R2:36.8(38.4) -1.8 0内田博幸 55 クロノジェネシス 458
2021.02.28 中山 中山記念 GII 芝1800m(良) 14 5 7 003.70(2人) 14着 R1:48.1(38.5) -3.2 0内田博幸 56 ヒシイグアス 460
2022.09.25 中山 オールカマー GII 芝2200m(良) 13 8 13 073.10(9人) 04着 R2:13.2(36.1) -0.5 0横山典弘 56 ジェラルディーナ 474
0000.10.30 東京 天皇賞(秋) GI 芝2000m(良) 15 7 12 173.4(12人) 15着 R1:58.7(34.6) -1.2 0横山典弘 58 イクイノックス 462
2023.01.22 中山 AJCC GII 芝2200m(良) 14 4 5 014.10(6人) 08着 R2:14.5(36.0) -1.0 0横山典弘 57 ノースブリッジ 476
0000.10.08 東京 毎日王冠 GII 芝1800m(良) 12 5 5 083.80(9人) 10着 R1:46.3(35.0) -1.0 0内田博幸 57 エルトンバローズ 464
0000.11.12 福島 福島記念 GIII 芝2000m(良) 16 7 14 024.2(11人) 14着 R2:03.4(39.2) -2.5 0内田博幸 58 ホウオウエミーズ 458
2024.01.21 京都 東海S GII ダ1800m(重) 16 6 12 061.8(11人) 16着 R1:54.4(41.1) -5.2 0団野大成 57 ウィリアムバローズ 468
0000.02.11 京都 京都記念 GII 芝2200m(良) 12 1 1 082.90(9人) 03着 R2:12.5(35.5) -0.4 0団野大成 57 プラダリア 460
0000.04.14 福島 福島民報杯 L 芝2000m(良) 16 6 12 009.90(7人) 16着 R2:01.1(37.4) -2.2 0永島まなみ 57 リフレーミング 464
  • 競走成績は2024年4月14日現在

エピソード 編集

  • 馬主の宮田直也は、自身初のJRA重賞制覇であるラジオNIKKEI賞優勝当時[25]、2015年生のバイオスパーク[26](2020年函館記念GIII)3着[27])とバビットの2頭のみの所有で、共にオープンクラスへ昇格を果たしている[28]
  • 2022年に天皇賞・秋に出走した際には、記者にバビットの出走を記念したチロルチョコが配られた[29]
  • あだ名は「バ」[30]
  • バビットがいる浜田多実雄厩舎の向かいにある田中克典厩舎に、好きな馬がいるのではないかとSNS上で話題になったことがある。大恵陽子はその候補としてピンハイを挙げ、田中克典は、バビットが頻繁に鳴いていたことから、気になる馬がいるのではと思っていたと語った[30]

血統表 編集

バビット血統 (血統表の出典)[§ 1]
父系 サンデーサイレンス系/ヘイロー系
[§ 2]

ナカヤマフェスタ
2006鹿毛
父の父
ステイゴールド
1994黒鹿毛
*サンデーサイレンス Halo
Wishing Well
ゴールデンサッシュ *ディクタス
ダイナサッシュ
父の母
ディアウィンク
1998鹿毛
*タイトスポット His Majesty
Premium Win
セイレイ *デインヒル
*センスオブリズム

アートリョウコ
2011 栗毛
*タイキシャトル
1994 栗毛
Devil's Bag Halo
Ballade
*ウェルシュマフィン Caerleon
Muffitys
母の母
*グランスオークス
Granse Oaks
1990 鹿毛
Nureyev Northern Dancer
Special
Dry Fly Mill Reef
Gay Missile
母系(F-No.) (FN:f3-l) [§ 3]
5代内の近親交配 Halo 4x4=12.50%、Thatch・Special 5x4=9.38% [§ 4]
出典
  1. ^ [31]
  2. ^ [32][33]
  3. ^ [31]
  4. ^ [33]


脚注 編集

注釈 編集

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p バビット”. JBISサーチ. 2022年10月30日閲覧。
  2. ^ 【有馬記念】バビット担当の竹下厩務員 先輩の夢、ファンの夢…思い乗せ挑む初舞台”. スポーツニッポン. 2022年7月23日閲覧。
  3. ^ 【セントライト記念】バビット逃げ切りで4連勝」『デイリースポーツ』。2020年9月21日閲覧。
  4. ^ a b c d e 【ラジオNIKKEI賞】バビット圧逃!5馬身差V」『サンケイスポーツ』、2020年7月6日。2020年9月9日閲覧。
  5. ^ アートリョウコの競走成績”. netkeiba.com. 2020年9月10日閲覧。
  6. ^ a b c d e ラジオNIKKEI賞 GIII 重賞ウイナーレポート”. 競走馬のふるさと案内所. 2020年9月10日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h 重賞制覇レポート『バビット』大北牧場編(ラジオNIKKEI賞)”. Pacalla(パカラ). 2020年9月10日閲覧。
  8. ^ 繁殖牝馬情報:牝系情報|アートリョウコ”. JBISサーチ. 2020年9月10日閲覧。
  9. ^ 日高軽種馬農協 - 取引成績速報”. www.hba.or.jp. 2020年9月10日閲覧。
  10. ^ 61 アートリョウコ2017”. 日高軽種馬農業協同組合. 2020年9月9日閲覧。
  11. ^ a b 2019年度トレーニングセール上場馬一覧(3開催分)”. 馬市ドットコム. 2020年9月10日閲覧。
  12. ^ 【メイクデビュー】(京都5R)~レッドフラヴィアが勝利」『競馬実況web』ラジオNIKKEI。2020年9月11日閲覧。
  13. ^ 【2歳新馬】京都5R 1番人気レッドフラヴィアが4馬身差の圧勝V」『サンケイスポーツ』、2019年11月24日。2020年9月11日閲覧。
  14. ^ a b 3歳未勝利|2020年04月26日”. netkeiba.com. 2020年9月11日閲覧。
  15. ^ 「【福島6R】和田 バビットでJRA通算1300勝!現役11人目「周りの方々に感謝」」 『スポーツニッポン』、2020年4月26日、2020年9月13日閲覧
  16. ^ 【早苗賞】ナカヤマフェスタ産駒 バビットが未勝利から連勝”. 競馬のおはなし. 2020年9月11日閲覧。
  17. ^ a b レーン2日間騎乗停止処分」『中日スポーツ・東京中日スポーツ』。2020年9月11日閲覧。
  18. ^ a b 先週の制裁 |”. 競馬ブック. 2020年9月11日閲覧。
  19. ^ 福島7、10Rで落馬…団野大成、津村明秀騎手が骨折」『サンケイスポーツ』、2020年7月6日。2020年9月11日閲覧。
  20. ^ a b c 【ラジオNIKKEI賞】バビット 代打内田で3連勝!直前乗り替わり何の「どんどん加速」5馬身差」『スポーツニッポン』。2020年9月11日閲覧。
  21. ^ a b バビット5馬身差で快勝、重賞初V ラジオNIKKEI賞」『日本経済新聞』。2020年9月11日閲覧。
  22. ^ 【ラジオNIKKEI賞】バビットが5馬身差逃げ切りで重賞初V 内田「団野騎手が育ててきた馬。いい競馬をしてバトンタッチしたいと思っていた」 スポーツ報知、2020年7月5日、2020年9月13日閲覧
  23. ^ 【JRA】バビットが右前浅屈腱炎で全治9ヶ月以上 昨年のセントライト記念など重賞2勝」『netkeiba.com』。2021年5月19日閲覧。
  24. ^ バビットの競走成績”. netkeiba.com. 2020年9月10日閲覧。
  25. ^ 抽出[2020年度 重賞出走レース|宮田直也の馬主成績]”. netkeiba.com. 2020年9月11日閲覧。
  26. ^ バイオスパーク”. netkeiba.com. 2020年9月11日閲覧。
  27. ^ 函館記念|2020年07月19日”. netkeiba.com. 2020年9月11日閲覧。
  28. ^ “週末の出走馬確定”. 日刊スポーツ. https://p.nikkansports.com/goku-uma/member/news/news.zpl?topic_id=10102&id=202007090000714&year=2020&month=7&day=9 2020年9月11日閲覧。 
  29. ^ 日刊ゲンダイ 競馬 (2022年10月29日). “これを記者席で消費するには勿体なく──。浜田調教師より「バビット秋天出走」チロルチョコを頂戴しました。確かに、屈腱炎を克服し、中4週での2戦目。無事に大舞台へと立てる喜びは人一倍かと。 これを見た横山典弘騎手。「こんなのあるの!? いいねぇ」#バビット #チロルチョコ #天皇賞・秋”. @gendai_keiba. 2023年2月23日閲覧。
  30. ^ a b 【田中克典調教師】根性娘・ピンハイが“大人っぽく”変化? クラシックの経験を糧に牝馬の頂点を目指す”. netkeiba. 2023年2月23日閲覧。
  31. ^ a b 血統情報:5代血統表|バビット”. JBISサーチ. 2020年8月19日閲覧。
  32. ^ バビット - Babbitt - 競走馬データベース”. 競馬ラボ. 2021年11月20日閲覧。
  33. ^ a b バビットの血統表”. netkeiba.com. 2020年9月10日閲覧。

外部リンク 編集