フランクフルト・ブックフェア

フランクフルト・アム・マインで開催される書籍見本市

フランクフルト・ブックフェアフランクフルト書籍見本市フランクフルト・ブッフメッセFrankfurt Book Fairドイツ語: Frankfurter Buchmesse)は、毎年10月半ばにドイツフランクフルト・アム・マインで開催される世界最大の書籍見本市

メッセ・フランクフルト(見本市会場)
フランクフルト・ブックフェア会場風景(2008年)

世界中からの出版社マルチメディア業者が集まり書籍やソフトウェアを展示し、業者間で各国での版権やライセンスなどの取引が行われる。また国別ブースも出され、各国の出版文化についての紹介も行われる。このフェアはドイツ出版社・書籍販売店協会の子会社により主催されている。イタリアトリノの書籍見本市など他の書籍見本市の猛追も受けているが、フランクフルトは 「世界最大の書籍見本市」を称し、5日間の会期で会場の「メッセ・フランクフルト」に7,000の展示者と 300,000人近い入場者を集めている。

重要性 編集

フランクフルト・ブックフェアは出版社や著者が書籍の発売発表などを行うマーケティング上の重要イベントであるが、一方で世界中の出版社が版権の販売交渉を行う機会としても重要である。入場者は出版業界の動向を知り、世界中の出版業者と名刺交換をしネットワークをつくり、取引を行うことができる。参加者は出版社、著作権エージェント、書店、図書館、学術研究機関、作家、イラストレーター、翻訳者、映画製作会社、出版協会、印刷業者、古書販売店、ソフトウェア制作・販売業者など多数の業種にわたる。

2004年には92の国から12,000人のジャーナリストが来場しフェアの報道を行ったほか、6.691の展示業者、79カ国のブース展示、180,000人の取引来場者があった。

開会式には欧州連合やドイツはじめ各国の政治家や文学者、芸術家が式典に参加する。また1988年から毎年(それ以前にも隔年などで不定期に)テーマ国が決められており、その国の文学者・出版社が参加するシンポジウム、文化紹介イベント、展覧会などが開催される。例えば2004年アラブ諸国2005年は「ドイツにおける韓国年」にちなみ大韓民国が、2006年は経済発展の著しいインドがテーマ国となった。2007年カタルーニャの文化がテーマとなっている。2008年のテーマ国はトルコ2009年のテーマ国は中国

会期中には市内のパウルス教会ドイツ書籍協会平和賞[1][2]de:Friedenspreis des Deutschen Buchhandels, Peace Prize of the German Book Trade)が開催され、世界の傑出した小説家・学者・著述家・芸術家らから委員会が毎年一名を選出し、ドイツ連邦大統領から授賞される。「ドイツ児童文学賞」や「ドイツ書籍賞」の授賞式もこの会期中に行われている。

ドイツ系児童文学ブース、日系出版社ブースにおいて、マンガが展示されることから、マンガファンも多数訪れている。同会場では、「ドイツ・コスプレ・マイスターシャフトドイツ語版」の最終決勝戦も開催されている。

歴史 編集

 
1573年のフランクフルト書籍見本市のカタログ

フランクフルト・ブックフェアは500年以上の歴史を有する見本市である。15世紀半ばにヨハネス・グーテンベルクマインツ活版印刷を発明したさほど経たない時期に、すぐ近くのフランクフルトで地元の書籍商らによって最初の本の市が開かれた。

この市は17世紀末までヨーロッパでもっとも重要な本の見本市となってきた。しかし、神聖ローマ帝国が出版の中心地フランクフルトに反カトリック的書物に対する検閲機関(Kaiserliche Bücherkommission)を置き、出版への統制を強めたため、統制を嫌った出版業者はフランクフルトから検閲の緩いザクセン選帝侯領ライプツィヒへと続々と移転していった。18世紀啓蒙時代にはライプツィヒ書籍見本市ドイツ語版がフランクフルト書籍見本市の地位を奪った。

第二次世界大戦後、1949年にパウルス教会で戦後最初の書籍見本市が再開された。その後、出版都市ライプツィヒが東ドイツ側になったこともあり、西ドイツ側のフランクフルトがヨーロッパ最大の書籍見本市の地位に返り咲いている。

ドイツ書籍協会平和賞 編集

受賞者 国籍
1950年 マックス・タウドイツ語版   ノルウェー
1951年 アルベルト・シュヴァイツァー   フランス
1952年 ロマーノ・グァルディーニ英語版   ドイツ
1953年 マルティン・ブーバー   イスラエル
1954年 カール・ヤーコプ・ブルクハルト   スイス
1955年 ヘルマン・ヘッセ   ドイツ
1956年 ラインホルト・シュナイダードイツ語版   ドイツ
1957年 ソーントン・ワイルダー   アメリカ合衆国
1958年 カール・ヤスパース   ドイツ
1959年 テオドール・ホイス   ドイツ
1960年 ヴィクター・ゴランツ   イギリス
1961年 サルヴパッリー・ラーダークリシュナン   インド
1962年 パウル・ティリッヒ   アメリカ合衆国
1963年 カール・フリードリヒ・フォン・ヴァイツゼッカー   ドイツ
1964年 ガブリエル・マルセル   フランス
1965年 ネリー・ザックス   ドイツ
1966年 オーガスティン・ベアドイツ語版
ウィレム・A・ヴィザートゥフーフト英語版
  ドイツ
  オランダ
1967年 エルンスト・ブロッホ   ドイツ
1968年 レオポール・セダール・サンゴール   セネガル
1969年 アレクサンダー・ミッチャーリヒドイツ語版   ドイツ
1970年 アルバ・ライマル・ミュルダール
グンナー・ミュルダール
  スウェーデン
  スウェーデン
1971年 マリオン・グレーフィン・デーンホフ   ドイツ
1972年 ヤヌシュ・コルチャック   ポーランド
1973年 ローマクラブ   スイス
1974年 ブラザー・ロジェテゼ共同体   スイス
1975年 アルフレート・グロセールドイツ語版   ドイツ
1976年 マックス・フリッシュ   スイス
1977年 レシェク・コワコフスキ   ポーランド
1978年 アストリッド・リンドグレーン   スウェーデン
1979年 ユーディ・メニューイン   アメリカ合衆国
1980年 エルネスト・カルデナル英語版   ニカラグア
1981年 レフ・コペレフ英語版   ソビエト連邦
1982年 ジョージ・ケナン   アメリカ合衆国
1983年 マネス・シュペルバー英語版   オーストリア
1984年 オクタビオ・パス   メキシコ
1985年 テディ・コレック英語版   イスラエル
1986年 ヴワディスワフ・バルトシェフスキ   ポーランド
1987年 ハンス・ヨナス   ドイツ
1988年 ジークフリート・レンツ   ドイツ
1989年 ヴァーツラフ・ハヴェル   チェコスロバキア
1990年 カール・デデツィウス英語版   ドイツ
1991年 ジェルジュ・コンラッド英語版   ハンガリー
1992年 アモス・オズ   イスラエル
1993年 フリードリッヒ・ショアレッマードイツ語版   ドイツ
1994年 ホルヘ・センプルン   スペイン
1995年 アンネマリー・シンメルドイツ語版   ドイツ
1996年 マリオ・バルガス・リョサ   ペルー
1997年 ヤシャル・ケマル   トルコ
1998年 マルティン・ヴァルザー   ドイツ
1999年 フリッツ・スターン英語版   アメリカ合衆国
2000年 アシア・ジェバール   アルジェリア
2001年 ユルゲン・ハーバーマス   ドイツ
2002年 チヌア・アチェベ   ナイジェリア
2003年 スーザン・ソンタグ   アメリカ合衆国
2004年 エステルハージ・ペーテル   ハンガリー
2005年 オルハン・パムク   トルコ
2006年 ヴォルフ・レペニース   ドイツ
2007年 ソール・フリードランダー英語版   イスラエル
2008年 アンゼルム・キーファー   ドイツ
2009年 クラウディオ・マグリス   イタリア
2010年 デイヴィッド・グロスマン   イスラエル
2011年 ブアレム・サンサル   アルジェリア
2012年 廖亦武   中国
2013年 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ   ベラルーシ
2014年 ジャロン・ラニアー   アメリカ合衆国
2015年 ナヴィド・ケルマニドイツ語版   ドイツ
2016年 カロリン・エムケドイツ語版   ドイツ
2017年 マーガレット・アトウッド   カナダ
2018年 アライダ・アスマンドイツ語版
ヤン・アスマンドイツ語版
  ドイツ
  ドイツ
2019年 セバスチャン・サルガド   ブラジル
2020年 アマルティア・セン   インド
2021年 ツィツィ・ダンガレンブガドイツ語版   ジンバブエ
2022年 セルヒー・ジャダン   ウクライナ
2023年 サルマン・ラシュディ   イギリス

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  1. ^ 日本大百科全書』「コルチャック」の項目より (小学館、1994年)
  2. ^ その他の訳語にはドイツ図書流通連盟平和賞、ドイツ書店組合平和賞、ドイツ書籍平和賞、ドイツ書籍取引平和賞、ドイツ書籍流通平和賞、ドイツ出版協会平和賞など。

外部リンク 編集

関連項目 編集