ルノー・トゥインゴ

トゥインゴTwingo)は、フランスの自動車製造会社、ルノーの生産する小型乗用車である。

ルノー・トゥインゴ (現行)

概要編集

Aセグメントに分類される小型車で、4の後継として1993年に登場した。初代と2代目はフロントに横置きされた直列4気筒エンジンで前輪を駆動し、ボディ形状は3ドアハッチバックのみである。極めて短いノーズを持ちモノスペースに分類されていた初代に対し、明確なノーズを持つ2代目は一般的な2ボックスカーの車体形状を持つ。いずれも乗員や積み荷に応じて多彩なシートアレンジを可能としている。

3代目はメルセデス・ベンツとの提携によって、スマート・フォーフォーとメカニズムを共用することになったため、それまでの前輪駆動(FF)から一転してリアエンジンによる後輪駆動(RR)(実際にはエンジンがリアアクスルよりも前方にあるため、ミッドシップに近い[1])を採用し、ボディ形状も5ドアハッチバックのみとなった。

歴史編集

初代(1992-2007年)編集

トゥインゴ
 
概要
製造国   フランス
  ウルグアイ
  コロンビア
  スペイン
販売期間 1992-2007年
ボディ
乗車定員 4名
ボディタイプ 3ドアハッチバック
駆動方式 FF
パワートレイン
エンジン 1.0/1.2L I4
変速機 セミ5MT
車両寸法
ホイールベース 2,345mm
全長 3,430mm
全幅 1,630mm
全高 1,420mm
車両重量 790kg
系譜
先代 ルノー・4
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1992年9月のパリモーターショーにて発表され、翌1993年欧州で発売された。エクステリアデザインは当時ルノーの社内デザイナーで、後にデザイン担当役員を務めるパトリック・ル・ケモン(Patrick le Quement)によるものだが、そのデザインは初代ホンダ・トゥデイを元にしているともいわれており、ルノー側もこれを否定していない。

プラットフォームは既存車種から流用しない専用設計で、4本のホイールを車体の隅に追いやることで車両寸法いっぱいの広い室内空間を確保し、後席のスライドや座面ごとの跳ね上げ、前席を倒してのフラット化など、多彩なシートアレンジを実現した。しかし、スペース効率を徹底した弊害として右ハンドル仕様が設定されなかった。

駆動方式は前輪駆動。エンジンは当初、8以来のC3G型直列4気筒OHVガソリンエンジン、通称クレオンユニットの1238cc仕様が横置きで搭載され、その後1997年に1148ccのD7F型直列4気筒SOHCエンジンに置き換えられ、2001年には16バルブで高出力なD4F型エンジンも加わった。

トランスミッションは当初、一般的な5速MTのほか、「easy(イージー)」と呼ばれる2ペダルMTも設定された。これは人為的な変速操作に対して自動でクラッチ操作が行われるもので、日本ではオートマチック限定免許での運転が可能だが、自動変速モードを持たないため運転者が常に変速操作を行う必要がある。またこのシステムは故障も多く、後年リコールの対象にもなった。構造も3ペダルのMTと大差ないことから、クラッチペダルを後付けしてMT車に改造された個体も多い。2001年には「クイックシフト5」と呼ばれる自動変速モード付きのシーケンシャル5速MTが登場し、その他フランス本国ではトルクコンバータ式のATも用意されていた。

生産期間は1993年から2007年までと非常に長く、その間にマイナーチェンジが6回行われ、登場時の仕様である1stコレクションから生産終了時の7thコレクションまでに分けられる。1998年の4thコレクションへの変更でカラードバンパーの採用やヘッドライト・テールライトの意匠小変更、ダッシュボードの形状変更と助手席エアバッグの採用などが行われており、それ以前(1st - 3rd)を前期型、それ以降(4th - 7th)を後期型へと大別される。

日本での販売編集

トゥインゴの登場時、日本ではルノーの正規輸入が行われておらず並行輸入のみであったが、カーグラフィック誌が1stコレクションを並行輸入して長期テストを行うなど、注目度は低くなかった。

1995年、前年の1994年に発足した当時の輸入元であるフランス・モーターズより2ndコレクションの正規輸入が開始され、当時車両本体価格 (消費税抜き) が5MTのパックで134万円、イージーで139万円という戦略的な価格も相まって、一定の人気を得た。

2001年7月24日には「クイックシフト5」仕様を追加導入。しかし、同時期に登場した16Vエンジン仕様は導入されなかった。

その後、2003年前半をもって正規輸入が打ち切られたため、7thコレクションは正規輸入されなかったが、その後も一部の並行輸入業者が輸入・販売を行っていた。

バリエーション編集

トゥインゴGPL車
この時代、フランスではLPG自動車(フランス語ではLPGはGPL(Gaz de Pétrole Liquéfié)と表記する)ブームがおこる。年率500パーセントの伸びを示していた事もあり、 フランスの自動車メーカー各社は全ラインナップにLPG車をラインで生産し用意していた。 欧州メーカーや日本車もフランス向けにはLPG仕様車を投入。 他のルノー車と同様に、トゥインゴにもLPガス・ガソリン切り替え式LPG自動車が用意されていた。2009年現在では、オプションでLPG自動車に仕立てている。
KENZOバージョン
一部の国で、日本人ファッションデザイナー高田賢三の「KENZO」バージョンが発売された。

2代目(2007-2014年)編集

トゥインゴ II
 
前期型
 
後期型
概要
製造国   スロベニア
販売期間 2007-2014年
ボディ
乗車定員 4名
ボディタイプ 3ドアハッチバック
駆動方式 FF
パワートレイン
エンジン ガソリン:
1.2/1.6L I4
ディーゼル:
1.5L I4
車両寸法
ホイールベース 2,365mm
全長 3,600mm
全幅 1,655mm
全高 1,470mm
車両重量 1,000kg
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コンセプトカーが2006年のパリサロンで発表されたのち生産型は2007年のジュネーブショーで発表された。フロアパンは、2代目クリオの物をベースとしているが、衝突安全性を高めるために大幅に改良されている。生産はフランスからスロベニアノヴォ・メスト工場に移管された。また右ハンドル仕様も設計され、世界戦略車としての性格を強めた。一方で初代の長所だった多彩なシートアレンジは継承され、またセンターメーターも採用されている。車名の文字体が小文字の「twingo」から大文字の「TWINGO」に変更された。

エンジンは当初1.2リッターの自然吸気と1.2リッターターボのガソリンエンジン、1.5リッターターボのディーゼルエンジンが採用され、その後1.6リッター(134PS/6,750rpm)の自然吸気のガソリンエンジンが、新たに設定されたルノースポール仕様向けに採用されている。駆動系は3ペダルの5MTと、2ペダルのクイックシフト5の2種類である。

2011年9月、本国で2012モデルとなる後期が登場。ヘッドライトの造形が大幅に刷新された他、テールランプもテールゲート側に追加されている。

日本向け編集

  • 2008年11月7日 - 右ハンドルで、1.2リッター自然吸気にクイックシフト5を組み合わせた「QS」と、1.2リッターターボに5MTを組み合わせたGTの2グレード展開で正規輸入販売を開始したが、価格設定後に円高が進み割高感が増した為に、様々な特別装備を付けた買い得な限定車が多数発売された。
  • 2009年10月 - 待望のルノースポール(RS)の正規輸入が開始される一方で従来のQSとGTは在庫限りの扱いとなる。RSはハンドル位置は右、足回りはサーキット走行を考慮したシャシーカップ仕様だったが2010年秋に一旦導入を停止となる。
  • 2011年6月 - 専用の内外装を持つゴルディーニ仕様をやや穏やかな性格のシャシースポール仕様の足回りで導入、ハンドル位置は左に変更された。
  • 2012年
    • 7月 - 日本において後期をベースとした「ルノースポール・ゴルディーニ」を導入開始。車体色にホワイトを追加。
    • 11月 - 限定仕様車としてF1マシンのレッドブル・RB7のイメージを取り入れた「ルノースポール・レッドブル・レーシング RB7」を発売した。
  • 2013年4月26日 - ルノースポール・ゴルディーニをベースとした「ルノースポール カップ」を発表。ハンドリングを追求するためにシャシをスポールシャシからカップシャシに変更し、メガーヌ・ルノースポールでは15万円の有料色となるジョンシリウスM(イエロー)を採用しながらもゴルディーニよりも10万円安い235万円とした。発売開始は5月9日からで、30台の限定販売。

3代目(2014年- )編集

ルノー・トゥインゴ III
 
日本仕様 ZEN MT フロント(-2019年)
 
日本仕様 ZEN MT リヤ(-2019年)
 
2019年- モデル 
概要
製造国   スロベニア
販売期間 2014年-
ボディ
乗車定員 4名
ボディタイプ 5ドアハッチバック
エンジン位置 リアエンジン
駆動方式 後輪駆動
パワートレイン
エンジン H4B 0.9L 直列3気筒DOHC ターボ
H4D [2]1.0L 直列3気筒DOHC NA
変速機 5MT
6DCT
サスペンション
前:マクファーソン/コイル 後:ド・ディオンアクスル/コイル
車両寸法
ホイールベース 2,490mm
全長 3,590mm
全幅 1,640mm
全高 1,550mm
車両重量 ゼン:960㎏ インテンス:1010㎏ インテンスキャンパストップ:1030㎏
その他
姉妹車 スマート・フォーツー
スマート・フォーフォー
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2014年のジュネーブモーターショーでワールドプレミア。

エクステリアはローレンス・ヴァン・デン・アッカーが提唱する近年のルノーのデザインアイコン「サイクル・オブ・ライフ」に則ったものであり、フロントは大型のCIマークを中心に、左右のヘッドライトをグリルでつなぐ特徴あるものとなっている。なお、デザインテイストは往年の名車「5」の影響を色濃く受けている[3]

ボディは5ドアのみだが、リヤドアのノブをルーテシア同様にCピラーへのヒドゥンタイプとすることで、一見3ドアのように見せている。また、RR(実際にはリアミッドエンジン・後輪駆動(RMR)レイアウト[1])の採用で、先代比で全長を100 mm短縮しながらも室内長を130 mm延長することと相まって、使い勝手を向上させている。

エンジンは大幅にダウンサイジングされ「SCe 70」と「Energy TCe 90」の2種を設定。前者はスマートフォーツー/フォーフォーと共通の999 ccの自然吸気で、最高出力70 psと最大トルク91 N·mを発揮。販売国に応じて、アイドリングストップ機能を組み合わせられる。後者は898 ccと排気量が落とされる代わりにターボの組み合わせとなり、最高出力90 ps・最大トルク135 N·mを誇り、「ユーロ6」に適合すべくアイドリングストップが標準装備となっている。また、エンジンは限られたリヤスペースに設置するため、斜め49度に傾けて搭載する工夫が施されている。

開発はルノーが打ち出した案を基に、メルセデス・ベンツが賛同する形でルノーが主導となり行われた[4]

生産はスロベニア[5]にあるルノー・ノヴォメスト工場にて、フォーフォーとともに行われる(フォーツーはフランスのダイムラー・ハンバッハ工場製)。

日本向け編集

  • 2016年7月14日 - 日本仕様を正式発表(販売開始は9月15日から)。
    • 全車右ハンドル+直3・0.9Lターボ(Energy TCe 90)+6速EDCのみとなり、グレードは「INTENS(インテンス)」とキャンバストップ仕様の「INTENS Canvas Top(インテンス キャンバストップ)」の2種から構成される。
    • また、日本市場発売を記念して、「5S(サンク・エス)」と「Pack Sport(パック・スポール)」の2種の特別仕様車を台数限定(ともに50台)で先着予約受付を開始(両車とも7/14で完売)。「5S」は通常グレードに非設定の1.0L・NAエンジン(SCe 70)+5速MTの組み合わせであり、「Pack Sport」は「INTENS」をベースに16インチアロイホイールやボディサイドストライプ、専用生地のシートなどを特別装備した[6]
  • 2017年
    • 1月6日 - エントリーグレード「ZEN(ゼン)」を追加。「INTENS」と同じ0.9Lターボエンジン+EDC仕様のほか、限定車「5S」と同じ1.0L・NAエンジン+5MT仕様を加えた2種を設定(キャンバストップの設定は無し。いずれも右ハンドルのみ)。
    • 6月29日 - 特別仕様車「NOCTURNE(ノクターン)」を限定100台で発表。「INTENS」をベースに外装色を「ブルー ノクターンM」で仕上げ、16インチアロイホイール、専用サイドストライプ、レザー調×ファブリックコンビシート、プライバシーガラスなどを特別に装備。フランスでは「COSMIC(コズミック)」の名で出している特別仕様車と(ステアリング位置以外)ほぼ同一仕様であるが、日本では「トゥインゴ・パリ」として訴求しているため、「宇宙」を意味するコズミックではイメージが合わないと判断され、仕様名を変更している[7]
    • 10月19日 - 「GT」を200台限定で発売開始。エンジンは「INTENS」に搭載済の0.9Lターボを109PS/170N・mに引き上げ、5MTと組み合わせられる。チューニングはルノー・スポールが担当。前後ダンパーを専用チューンとし、40%剛性が向上。さらにスタビライザーも強化されている。エクステリア(ボンネットとサイドパネル)にはNACAダクトをイメージしたデカールも備わる。17インチアロイホイールはトゥインゴの発売前に出したコンセプトカーの「Twin’Run(トゥインラン)」のデザインを踏襲。ボディカラーはアンバーの「オランジュブレイズ」のみ。
  • 2018年2月1日 - 「GT」を限定モデルの内容ほぼそのままに通常グレードに昇格。5MTに加え、6速EDCも設定された。ボディカラーは「オランジュブレイズ」に加え、グレー系の「グリリュネール」も設定され、計2色となった。限定モデル用のデカールは貼り付けされない。尚、5MTは限定モデルから5万円値上げされ、229万円になった。

車名の由来編集

3種類のダンススタイル、ツイストTwist)、スウィング(Swing)、タンゴ(Tango)を組み合わせた造語[8]

その他編集

フィアット社がパンダの後継車として「ジンゴ (GINGO)」を発表したが、発音が「トゥインゴ」に似ていると指摘を受け、結局「パンダ」と名乗ることとなった。

  • 2010年
    • 2月11日 - フィナンシャルタイムズ・ドイツ版が、ダイムラーと協業「スマート」と「トゥインゴ」のプラットホーム共有化を報道。
    • 4月7日 - ルノーとダイムラーAG提携合意で「スマート」と「トゥインゴ」小型車戦略強化を発表。スマートの後継モデルと次世代トゥインゴは、異なるデザインで共同開発できる設計思想に基づく車体構造を採用。3代目トゥインゴは、スマートの後輪駆動方式をベースとし、2013年以降に市場投入される。なお、EV(電気自動車)モデルも当初から開発、ラインナップされる。

脚注編集

  1. ^ a b 小泉 建治 (2018年8月13日). “ルノー・トゥインゴは実はミッドシップだった!? もはやスポーツカーじゃないか!”. MotorFan. 2021年9月19日閲覧。
  2. ^ 三菱製に非ず、ルノー・トゥインゴに搭載される3気筒RR用エンジン──H4D”. Motor Fan illustrated編集部. 2019年6月19日閲覧。
  3. ^ “RRとなった3代目ルノー トゥインゴ発表”. OPENERS. (2014年3月5日). http://openers.jp/car/car_news/news_renault_twingo_debut_geneva_43741.html 2014年7月22日閲覧。 
  4. ^ “ルノー トゥインゴ”. tvk「クルマでいこう!」. (2016年10月30日). https://www.youtube.com/watch?v=KfO2FYe4NA0 
  5. ^ スロベニア
  6. ^ “ルノーの末娘「トゥインゴ」発売、同時に2台の魅力的な限定車、予約開始”. Response.. (2016年7月14日). http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160714-00000022-economic-ind 
  7. ^ “パリの夕暮れをイメージした100台の限定車…ルノートゥインゴノクターン”. 価格.com. (2017年6月30日). http://news.kakaku.com/prdnews/cd=kuruma/ctcd=7010/id=65671/ 
  8. ^ La Renault Twingo fête ses 25 ans !

関連項目編集

外部リンク編集

ルノー ロードカータイムライン 1980年代-   
タイプ 1980年代 1990年代 2000年代 2010年代 2020年代
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コンパクト トゥインゴ トゥインゴII トゥインゴIII
5/7 シュペール5 クリオI クリオII クリオIII クリオIV クリオV
シンボルI シンボルII
モデュス
カングー カングーII カングーIII
14 9/11 19 メガーヌI メガーヌII メガーヌIII メガーヌIV
フルエンス メガーヌIVセダン
パルス
スカラI スカラII
ミドル 18 21 ラグナI ラグナII ラグナIII
20/30 25 サフラン ヴェルサティス ラティテュード/サフラン
アッパー タリスマン(中国向け)
タリスマン
ミニバン セニックI セニックII セニックIII セニックIV
エスパスI エスパスII エスパスIII エスパスIV エスパスV
クーペ フエゴ アヴァンタイム ラグナクーペ
オープン ウインド
SUV キャプチャー キャプチャーII
カジャー
コレオス コレオスII
ルノー・アルカナ
ピックアップトラック アラスカン
アルピーヌ/ルノースポール A310 V6 A610 スパイダー A110(2017)