円周率

円の周長の直径に対する比率として定義される数学定数

円周率(えんしゅうりつ)とは、円周の長さの、円の直径に対する比率のこと[1]で、数学定数である。通常、ギリシア文字 π[注 1]で表される。円の直径が分かっているときに円周の長さを計算するときに用いたり、円の面積を計算するときに用いられる[1]。また、数学をはじめ、物理学工学といった様々な科学分野の理論的な計算式にも出現し、最も重要な数学定数とも言われる。

円周率は無理数であり、その小数展開は循環しない。円周率は、無理数であるのみならず、超越数でもある。

円周率の計算において功績のあったルドルフ・ファン・コーレンに因み、ルドルフ数とも呼ばれる。ルドルフは、小数点以下35桁までを計算した[4]。小数点以下35桁までの値は次の通りである。

π = 3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 …

基礎編集

表記と呼び方編集

円周率を表すギリシア文字 π は、ギリシア語 περίμετρος[5][6][7](ペリメトロス)あるいは περιφέρεια[8](ペリペレイア)の頭文字から取られた[注 2]。いずれも周辺・円周・周などを意味する。文字 πウィリアム・オートレッド1631年に著した著書において半円の円弧部分の長さを表す文字として用い、アイザック・バローは論文において半径 R の円周の長さとして用いた[9]ウィリアム・ジョーンズ (1706) やレオンハルト・オイラーらにより(現代と同じく)円周の直径に対する比率を表す記号として用いられ、それが広まった[5][6][9]日本では「パイ」と発音する。

π を指す言葉には、日本・中国・韓国における「円周率(圓周率)」、ドイツの「Kreiszahl」(Kreis は円(周)、Zahl は数の意)の他、それを計算した人物の名前を取った「アルキメデス数」(: Archimedes' constant)、「ルドルフ数」(: Ludolph's constant: Ludolphsche Zahl)などがある。一般にドイツ語を除いたヨーロッパの諸言語には「円周率」に対応する単語はない[7][10]

なお、「π」の字体は、表示環境によってはキリル文字п に近い π などと表示されることがある。

また、文字「π」は、数学では他に素数計数関数基本群ホモトピー群にも用いられる。またある種の写像を表すときにも慣習的に用いられる。

定義編集

 
直径 1 の円の周長は π

平面幾何学において、円周率 π は、周長の直径に対する比率として定義される。すなわち、円の周長を C, 直径を d としたとき、

π = C/d

である。全ての円は互いに相似なので、この比率は円の大きさに依らず一定である。

ところが、この定義は円の周長を用いているため、曲線の長さを最初に定義していない解析学などの分野では、π が現れる際に問題となることがある。この場合、円の周長に言及せず、解析学などにおける性質の一つを π の定義とすることが多い[11]。この際の π の定義の一般なものとして、三角関数 cos x0 を取るような x > 0 の最小値の2倍とするもの、級数による定義、定積分による定義などがある。後述の#円周率に関する式も参照。

歴史編集

円に内接する正多角形による π の近似
円に内接・外接する正多角形による π の近似。アルキメデスによる計算。

古代編集

円周の直径に対する比率が円の大きさに依らず一定であり、それが 3 より少し大きい程度だということは古代エジプトバビロニアインドギリシア幾何学者たちにはすでに知られていた。また、古代インドやギリシアの数学者たちの間では半径 r の円板の面積が πr2 であることも知られていた。さらに、アルキメデスは正96角形を用いて半径 rの体積が 4/3πr3 であることや、この球の表面積r2(その球の大円による切り口の面積の4倍)であることを導き出し、約1000年後、祖沖之(五世紀、中国)が小数点以下第6位まで弾き出した。

2千年紀編集

14世紀インド数学者天文学者であるサンガマグラーマのマーダヴァは次のような π級数表示を見いだしている(ライプニッツの公式):

 

これは逆正接関数 Arctan xテイラー展開x = 1 での実現になっている。マーダヴァはまた、

 

を用いて π の値を小数点以下11桁まで求めている。

17世紀、ドイツのルドルフ・ファン・コーレン325億角形を使い、小数点以下第35位まで計算。1699年(または1706年)にエイブラハム・シャープが小数点以下第72~127位まで求めた。

18世紀フランスの数学者アブラーム・ド・モアブルは、コインを 2n 回投げたときに表が x 回出る確率は、n が十分大きいとき、ある定数 C を取ると、

 

で近似できることを、n = 900 における数値計算により見いだした。この正規分布の概念は1738年に出版されたド・モアブルの『巡り合わせの理論』に現れている。ド・モアブルの友人のジェイムズ・スターリングは後に、C = 1/2π であることを示した。

1751年ヨハン・ハインリヒ・ランベルトは、x0 でない有理数ならば正接関数 tan x の値は無理数であることを示し、その系として π無理数であることを導いた。さらに1882年フェルディナント・フォン・リンデマンπ超越数であることを示し、円積問題(与えられた長さを半径とする円と等積の正方形作図する問題)は解くことができないことを導いた。

1873年、ウィリアム・シャンクスが小数点以下第707位まで計算(ただし途中で計算ミス)。

和算における円周率の取り扱い編集

江戸時代の初期の和算家の3.16編集

江戸時代初期の数学書である毛利重忠の『割算書』では円周率を3.16としている。その弟子の吉田光由の『塵劫記』でも3.16となっている[12]。しかし、当時の先進国中国では3.16が見られないので、中国の数値を引き写したとは考えにくいという[12]。そこで、なぜ初期の和算家が円周率を3.16としたかの理由はよく分かっていない[12]。おそらく、毛利重忠とその弟子の吉田光由などの先駆者らは、円周率を実際に測定して3.14ないし3.16ほどの値を得たが、その値の最後の数字に確信が持てなかったため、「円のような美しい形を求める数値は、もっと美しい数値になっていいはずだ」と考え、「美しい理論」を求めた。その結果 10 = 3.16 が美しい数値として採用されたと推測されている[13]。その考えは日本で2番目に3.14の値を計算で求めた野沢定長の『算九回』(延宝五年:1677年)の中にも見られ、その著書の中で「忽然として円算の妙を悟った」として「円周率の値は形=経験によって求めれば3.14であるが、理=思弁によって求めれば3.16である」として「両方とも捨てるべきでない」とした[13]

和算家が計算した3.14編集

江戸初期、1600年代前半頃から、円を対象とした和算的研究である「円理」が始まる。その最初のテーマの一つが円周率を数学的に計算する努力であり[14]、1663年に日本で初めて村松茂清が『算爼(さんそ)』において「円の内接多角形の周の長さを計算する方法」で3.14…という値を算出した[14]。『算爼』では円に内接する正8角形から角数を順次2倍していき、内接215 = 32768角形の周の長さで、

3.1415 9264 8777 6988 6924 8

と小数点以下21桁まで算出している。 これは現代の値と小数第7位まで同じである[14]。その後1680年代に入ると、円周率の値を3.16とする数学書はなくなり、3.14に統一された[14]。1712年には関孝和が『括要算法』で内接217角形の計算を工夫し、小数第16位まで現代の値と同じ数値を算出している[14]

日本の和算家に特徴的なのは、1663年に3.14が初めて導き出されても、その後1673年までの10年間に円周率の値を3.14とした算数書のいずれもが、先行者の円周率をそのまま引き継ぐことをせず、それぞれ独自の値を提出していたことである[15]。この背景には当時の遺題継承[注 3]運動に「他人の算法をうけつぐ」と共に「自己の算法を誇る」という性格があったためだという[15]。そのため古い3.16の値が疑われてから、遺題継承の際に必ずといってよいほど円周率の値が変えられている[15]。しかしながら江戸時代の3大和算書『塵劫記』『改算記』『算法闕疑抄』の増補改訂版では1680年代には3.14に統一された[17]

3.14から3.16への逆行編集

しかし、遺題継承運動は1641年に始まって1699年頃には終わってしまい[18]、いったん3.14に統一された円周率の値は江戸時代後半になると揺らぎ始め、古い3.16に逆行するという現象が生じた[19]文政年間(1818~30年)に出版された算数書とソロバン書を悉皆調査した結果では、円周率の値を3.14とするものと、3.16とするものの2系統があることが明らかにされた[20]。いくらか専門的な数学書では3.14とされているのに、大衆向けの小冊子の中では3.16の方が普通に用いられていた[21]

当時の識者である橘南谿(1754-1806年)は「いまに至り3.16あるいは3.14色々に論ずれども、なおきわめがたきところあり」と述べ、3.14はまだ確定していないとしている[22]儒学者の荻生徂徠も和算家の算出した3.14の根拠に納得しなかった[23]。当時の和算家のほとんどは、円に内接する多角形の周を計算することで円周率を計算した。内接多角形の角数を増やすほど求まる円周率の桁は増えていくので、素人目にはその値が増大する一方に見える。「それがいくら増えても3.1416を超えない」ということを和算家たちはついに納得させることができなかったのである[23]

そのような和算家以外の素人たちを納得させるには、どうしても万人に納得させる「理」に基づいて計算してみせる他はない[23]。それを行うには西洋で行われたように、「円を内接多角形と外接多角形ではさんで、円周率の上限と下限を示すこと」が必要であったが、(次の鎌田による成果を例外として)和算家はついにその方法を取ることがなかった[23]

宅間流和算の円周率編集

日本で唯一「円周を内接・外接多角形で挟み込んで円周率の上限と下限を示す」ことに成功したのは鎌田俊清(1678-1747年)が享保七年(1722年)に著した『宅間流[注 4]円理』である。その値は以下の通りである[25]

内周:3.1415 9265 3589 7932 3846 2643 3665 8
外周:3.1415 9265 3589 7932 3846 2643 4166 7

鎌田は円周率の小数点以下24桁まで正しいと確信しうる円周率の値を算出することに成功していた[26]。しかし、鎌田の方法は後継者を持たず、当時の識者に知られることがなかった[26]

和算の限界編集

日本の和算の弱点は単に理論面の弱さにとどまらず、万人が納得できる正しい円周率の教育・啓蒙への関心も失ったことであった[27]。そのため和算家たちがいくら円周率は3.14…と書いたところで、『塵劫記』の古い円周率3.16の値がそのまま残存する結果となった[26]。『塵劫記』の重版(1694年)などは古い円周率3.16のまま出版され続け、18世紀に大衆的な通俗算数書が大量に出版される際に、かならずというほど3.16という値を引き継ぐようになってしまった[28]

18世紀半ば以降の和算は数学的証明の概念の追求は無視され、せっかく宅間流の鎌田俊清がその独創的方法で正しい円周率を算出しても、全く継承されなかった[27]。江戸時代後半の和算家は家元制度的な秘密主義と保守主義と、権威主義が在野の独創性を無視し、結果として学問の進歩を妨げることとなった[27]

コンピュータによる計算の時代編集

20世紀以降、計算機の発達により、計算された円周率の桁数は飛躍的に増大した。1949年に、電子計算機ENIACを使い72時間かけて、円周率は2037桁まで計算された[29]。その後の数十年間、様々な計算機科学者や計算科学者など、あるいはコンピュータ趣味者によって計算は進められ、1973年には100万桁を超えた。この進歩は、スーパーコンピュータの開発だけによるものではなく、効率のよいアルゴリズムが考案されたためである。そのうちの最も重要な発見の一つとして、1960年代高速フーリエ変換がある。これにより、多倍長の演算が高速に実行できるようになった。

2020年の時点では、円周率は小数点以下50桁まで計算されている[30]

性質編集

無理性編集

π無理数である。つまり、2つの整数の商で表すことはできず、小数展開は循環しない。このことは1761年ヨハン・ハインリヒ・ランベルトが証明したが、厳密性に欠けた部分があった。その部分は1806年ルジャンドルによって補われた。

したがって、円周率のコンピュータによる計算や暗唱十進法表示での小数部分の各数字 (0, 1, …, 9) の出現頻度は、興味の対象となる。

超越性編集

さらに、π超越数である。つまり、有理数係数の代数方程式の根とはならない。これは1882年フェルディナント・フォン・リンデマンによって証明された(リンデマンの定理)。特に、整数から四則演算冪根をとる操作だけを有限回組み合わせて π の正確な値を求めることはできないことが分かる。

π超越数であることより、古代ギリシアの三大作図問題の内の一つ「円積問題」(与えられた長さを半径とする円と等積の正方形を作図すること)が不可能であることが従う。

ランダム性編集

π は現在小数点以下31.4兆桁を超える桁まで計算されている[31]。そして、分かっている限りでは 0 から 9 までの数字がランダムに現れているようには見えるが、はっきりと乱数列であるか否かは実は分かっていない。たとえば π正規数であるかどうかも分かっていない。正規数であれば π10進表示において、各桁を順に取り出して得られる数列

3, 1, 4, 1, 5, 9, 2, 6, 5, 3, 5, …(オンライン整数列大辞典の数列 A796

には、0 から 9 が均等に現れるはずだが分かっておらず、それどころか、0 から 9 がそれぞれ無数に現れるのかどうかすら分かっていない。もし仮に正規数でないとすれば、乱数列でもないということになる。

5兆桁までの数字の出現回数は以下の通りである。全てほぼ等しく(約0.0005%の違いに収まる)、最も多いのは 8 で、最も少ないのは 6 である。

0:4999億9897万6328回
1:4999億9996万6055回
2:5000億0070万5108回
3:5000億0015万1332回
4:5000億0026万8680回
5:4999億9949万4448回
6:4999億9893万6471回
7:5000億0000万4756回
8:5000億0121万8003回
9:5000億0027万8819回

未解決問題編集

 

円周率に関する式編集

π についての式は非常に多い。ここではその一部を紹介する。数式によってはそれ自体が π の定義になり得るし、π近似値の計算などにも使われてきた。

幾何編集

解析編集

  •  ライプニッツの公式#2千年紀も参照)
  •  #2千年紀も参照)
  •  ウォリス
  •  1735年オイラーバーゼル問題ゼータ関数
  •  
  •  オイラー
  •  Bnベルヌーイ数
  •  ガウス積分
  •  ガンマ関数
  •   [32]
  •  
  •  
  •  
  • 逆三角関数主値を取るものとすると
 
 
 
初期値の設定:
 
反復式:an, bn が希望する桁数になるまで以下の計算を繰り返す。小数第 n 位まで求めるとき log2 n 回程度の反復でよい。
 
π の算出:円周率 π は、an, bn, tn を用いて以下のように近似される。
 
非常に収束が早く[注 5]金田康正が1995年に42億桁、2002年に1.24兆桁を計算したスーパー π に使われていた。
  •  スターリングの近似f(n) ∼ g(n)  を表す)
  •  φ(k)オイラーのφ関数
  • eπi + 1 = 0オイラーの等式
  (オイラーの等式の一般式)
後者は 2 以上の任意の整数 n に対して成り立ち、1n 乗根全ての和は 0 であることを意味している。n = 2 とするとオイラーの等式を得る。
  •  ラマヌジャン
  •  ラマヌジャン
  •  ビエト
  •  マチン、1709年)
ただし arctan x主値
 
を取るものとする。
 
と書かれることもある。41/4二進法と相性がよく、収束も早いため、コンピュータでの円周率計算によく使われる公式の一つである。
 
  •  チュドノフスキー
(各項の素因数分解:
13591409 = 13 × 1045493,
545140134 = 2 × 32 × 7 × 11 × 19 × 127 × 163,
640320 = 26 × 3 × 5 × 23 × 29.
  •  チュドノフスキー
  •   (David Bailey, Peter Borwein and Simon Plouffe、俗称“BBP”)
  •   (Adamchik and Wagon)
  •   (Fabrice Bellard)[33][34]

数論編集

力学系・エルゴード理論編集

ロジスティック写像 xi+1 = 4xi(1 − xi) により帰納的に定まる数列 {xi} を考える。初期値 x00 以上 1 以下に取るとき、そのほとんど全てで、次が成り立つ。

  •  

統計編集

  •  正規分布確率密度関数
  • 1 の無数の平行線の上から長さ 1/2 の針を落とすとき、その針が直線と共有点を持つ確率は 1/π である(ビュフォンの針)。

その他編集

  • 河川の長さの水源河口間の直線距離に対する比率は、平均すると円周率に近い[35]

暗唱編集

語呂合わせ編集

π の桁を記憶術に頼らずに暗記する方法が各種存在している。

日本語では、語呂合わせにより、長い桁を暗記するのも比較的簡単である。有名なものとして、以下がある。

産医師異国ニ向コー、産後厄無ク産婦御社ニ虫サンザン闇ニ鳴ク
マーティン・ガードナー著、金沢養訳、『現代の娯楽数学 新しいパズル・マジック・ゲーム』(白揚社、1960年)144頁
かう さん ざん
3. 1 4 1 59 2 6 5 3 5 89 7 9 3 2 3 8 4 6 2 64 3 3 83 2 7 9 (30桁))

英語圏では語呂合わせがうまくいかないため、単語の文字数で覚える方法がある。

Yes, I have a number.
3. 1 4 1 6 (小数点以下4桁までで四捨五入)
Can I find a trick recalling Pi easily?
3. 1 4 1 5 9 2 6 (7桁、また「π を簡単に思い出せるトリックってある?」という文章自体がその質問の答えにもなっている)
How I want a drink, alcoholic of course, after the heavy lectures involving quantum mechanics!
3. 1 4 1 5 9 2 6 5 3 5 8 9 7 9 (14桁)
And if the lectures were boring or tiring, then any odd thinking was on quartic equations again.
3 2 3 8 4 6 2 6 4 3 3 8 3 2 7 9 5 (上に続けて、31桁)S. ボトムリー

これらのような覚え方は多くあり、日本語では上記のものの改編で90桁までのものや、歌に合わせたもの、数値を文字に置き換えて1,000桁近く覚える方法などがある。

暗唱記録編集

2004年9月25日原口證が8時間45分かけて円周率5万4000桁の暗唱に成功し、従来の世界記録を更新した。しかしながら、実際はより多くの桁を覚えていたため、2005年7月1日 - 7月2日に再挑戦し、8万3431桁までの暗唱に成功した。2006年10月3日午前9時 - 10月4日午前1時30分(16時間30分)の挑戦で円周率10万桁の暗唱に成功した。原口はこれをギネス世界記録に申請したが、2017年現在に至るまで認定されていない。

ギネス世界記録』によれば、円周率暗唱の世界記録は2015年10月21日に7万30桁を暗唱したインド人、スレシュ・クマール・シャルマ (Suresh Kumar Sharma) が記録したものである[36]

文化的影響編集

 
ベルリン工科大学数学科の近くにあるタイル

という日常でもよく知られた図形についての単純な定義でありながら、小数部分が無限に続くという不思議さから、数学における概念の中で最もよく知られたものの一つである。

  • 3月14日円周率の日および数学の日である。小数点以下が「永遠に続く」という意味にあやかり、3月14日に結婚するカップルもいる[37]。また、π (pi) とパイ (pie)は同音異義語であること[38]パイが円形であることから、アメリカ合衆国など複数の国で「パイの日」として祝われ[39]、パイ焼きやパイ食のほか、数学に関係した活動が行われる[40]
  • 7月22日は円周率近似値の日とされている(22/7 は円周率の近似値)。
  • 2012年8月14日、米国勢調査局が、米国の人口が円周率と同じ並びの3億1415万9265人に達したと発表した。アメリカには円周率の曲を作る人もいる[41]
  • 組版処理ソフトウェア TeX のバージョン番号は、3.14, 3.141, 3.1415, … というように、更新のたびに円周率に近づいていくように一桁ずつ増やされる。
  • 1999年、日本小学校で「円周率は3で計算することになる」との噂が世間に広がった[42]が、実際には必要に応じて3で計算することも可能にするための措置であった[43]

編集

小数点以下1000桁までの値[44]π = 3.
14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 41971 69399 37510 58209 74944 59230 78164 06286 20899 86280 34825 34211 70679 82148 08651 32823 06647 09384 46095 50582 23172 53594 08128 48111 74502 84102 70193 85211 05559 64462 29489 54930 38196 44288 10975 66593 34461 28475 64823 37867 83165 27120 19091 45648 56692 34603 48610 45432 66482 13393 60726 02491 41273 72458 70066 06315 58817 48815 20920 96282 92540 91715 36436 78925 90360 01133 05305 48820 46652 13841 46951 94151 16094 33057 27036 57595 91953 09218 61173 81932 61179 31051 18548 07446 23799 62749 56735 18857 52724 89122 79381 83011 94912 98336 73362 44065 66430 86021 39494 63952 24737 19070 21798 60943 70277 05392 17176 29317 67523 84674 81846 76694 05132 00056 81271 45263 56082 77857 71342 75778 96091 73637 17872 14684 40901 22495 34301 46549 58537 10507 92279 68925 89235 42019 95611 21290 21960 86403 44181 59813 62977 47713 09960 51870 72113 49999 99837 29780 49951 05973 17328 16096 31859 50244 59455 34690 83026 42522 30825 33446 85035 26193 11881 71010 00313 78387 52886 58753 32083 81420 61717 76691 47303 59825 34904 28755 46873 11595 62863 88235 37875 93751 95778 18577 80532 17122 68066 13001 92787 66111 95909 21642 01989 …(オンライン整数列大辞典の数列 A000796

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ 古代ギリシア語読み:πεῖ [pêː, pi]、中世ギリシア語読み:πῖ [piː, pi]、現代ギリシア語読み:πι [pi]。日本語読み:パイ[2]、ピー[3]
    ラテン文字表記:pi, Pi 英語発音: [pai], ドイツ語発音: [piː], フランス語発音: [pi], オランダ語発音: [pi]
  2. ^ ただし、これは明らかな根拠がない話であり、適切に表現すれば定まらないというのが正しい、という主張も見られる[9]
  3. ^ 「遺題」は和算書の著者が「後の人のために残した問題」で、「遺題継承」とは「新しく和算書を著す人は前に出された和算書の遺題を解いた上で新しい問題を遺す」という習わし[16]
  4. ^ 「宅間流」は関西地方の和算の一会派で、鎌田俊清だけは、他の和算家とは違う道を追求していた。宅間流は和算家の中では小会派であったが、一門の中から高橋至時 (1764-1804)、間重富 (1756-1816) などの暦学関係の主要な人物を輩出し、寛政暦の編纂に従事した[24]
  5. ^ 3回の反復で小数18位まで求めることができる

出典編集

  1. ^ a b 板倉聖宣 2009, p. 94.
  2. ^ π』 - コトバンク
  3. ^ Π,π』 - コトバンク
  4. ^ Alfred S.Posamentier英語版、Ingmar Lehmann『不思議な数πの伝記』松浦俊輔訳、日経BP、62-63頁。
  5. ^ a b 日本数学会 2007, pp. 94–95.
  6. ^ a b Boeing, Niels (2016-03-14). “Die Welt ist Pi” (ドイツ語). Zeit Online. http://www.zeit.de/zeit-wissen/2016/02/pi-tag-mathematik-pi-kreiszahl. 
  7. ^ a b 「円周率」 - 世界大百科事典 第2版(コトバンク)
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  44. ^ 牧野貴樹『円周率10000.00桁表』暗黒通信団。ISBN 978-4-87310-037-1

参考文献編集

  • 上野健爾『円周率 π をめぐって』日本評論社、1999年。ISBN 4-535-60840-7
  • 黒田成俊、2002、『微分積分』、共立出版〈共立講座21世紀の数学 第1巻〉 ISBN 978-4320015531
  • 『数学辞典』日本数学会岩波書店、2007年、第4版。ISBN 978-4-00-080309-0
  • Berggren, Lennart; Borwein, Jonathan and Borwein, Peter (1991). Pi: A Source Book. Springer-Verlag. ISBN 0-387-94924-0 
  • Walter Rudin (1976) [1953]. Principles of Mathematical Analysis (3e ed.). McGraw-Hill. ISBN 0-07-054235-X 
  • 板倉聖宣、中村邦光「江戸時代の円周率の値」『日本における科学研究の萌芽と挫折』、仮説社、1990年、 188-212頁。(初出1982年)
  • 中村邦光、板倉聖宣「円周率3.14の受け継ぎと定着の過程」『日本における科学研究の萌芽と挫折』、仮説社、1990年、 213-240頁。(初出1983年)
  • 中村邦光、板倉聖宣「円周率3.14の動揺と3.16の復活の謎」『日本における科学研究の萌芽と挫折』、仮説社、1990年、 241-255頁。(初出1984年)
  • 中村邦光「江戸時代の日本における円周率の値の逆行現象」『計量史研究』第38巻第1号、日本計量史学会、2016年、 42-48頁。国立国会図書館
  • 板倉聖宣「円周率の変化に見る日本の数学=和算の発展」『日本史再発見 理系の視点から』、朝日新聞社、1993年、 258-268頁、 ISBN 4-02-259577-9
  • 板倉聖宣「新総合読本 2種類あった江戸時代の円周率-〈3.16〉と〈3.14〉のなぞ」『たのしい授業』第356巻第9号、仮説社、2009年、 92-115頁。

関連する書籍(和書、洋書)編集

  • 堀場芳数:「円周率πの不思議―アルキメデスからコンピュータまで」、講談社(ブルーバックス)、ISBN 978-4061327979(1989年10月17日)。
  • 金田康正:「π(パイ)のはなし」、東京図書、ISBN 978-4489003387(1991年4月1日)。
  • 猪口和則:「πの公式をデザインする」、新風舎、ISBN 4-7974-0493-0(1998年1月9日)。
  • 上野健爾:「円周率πをめぐって」、日本評論社、ISBN 978-4535608405(1999年3月)。
  • ジャン=ポール・ドゥラエ、畑政義(訳):「π‐魅惑の数」、朝倉書店、ISBN 978-4254110869 (2001年10月1日)。
  • ペートル ベックマン、田尾陽一(訳):「πの歴史」、筑摩書房(ちくま学芸文庫)、ISBN 978-4480089854(2006年4月)。
  • 竹之内脩、伊藤隆:「π ― πの計算アルキメデスから現代まで」、共立出版、ISBN 978-4320018341 (2007年3月22日)。
  • 上野健爾:「円周率が歩んだ道」、岩波書店(岩波現代全書)、ISBN 978-4000291040(2013年6月19日)。
  • 中村滋:「円周率 ―歴史と数理―」、共立出版、ISBN 978-4320110625(2013年11月23日)。
  • Lennart Berggren、Jonathan Borwein、Peter Borwein: "Pi: A Source Book"(3rd Ed.)、Springer、ISBN 978-0387205717(2004年8月9日)。
  • David H. Bailey、Jonathan M. Borwein : "Pi: The Next Generation: A Sourcebook on the Recent History of Pi and Its Computation"(1st ed.)、Springer、ISBN 978-3319323756(2016年8月5日)。

関連項目編集

外部リンク編集