赤石山脈

長野県、山梨県、静岡県に跨って連なる山脈
南アルプスから転送)

赤石山脈(あかいしさんみゃく)は、長野県山梨県静岡県に跨って連なる山脈。通称・南アルプスとも呼ばれ、飛驒山脈(北アルプス)、木曽山脈(中央アルプス)と共に日本アルプスと呼ばれることもある。

赤石山脈(南アルプス)
所在地 日本の旗 日本 長野県山梨県静岡県
位置 北緯35度40分30秒 東経138度14分19秒 / 北緯35.67500度 東経138.23861度 / 35.67500; 138.23861
最高峰 北岳(3,193 m
延長 120 km
40 km
赤石山脈の位置(日本内)
赤石山脈
プロジェクト 山
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鋸岳から光岳に及び、この区間の主稜線には登山道が整備され、要所には山小屋キャンプ指定地がある[1]。また、その東の山梨県側は、南アルプス巨摩県立自然公園に指定されている。大井川安倍川の流域は、川沿いまたは尾根が奥大井県立自然公園に指定されている部分もある。また、鋸岳の西に位置する幕岩から下流の戸台川は三峰川水系県立公園に指定されている。

赤石山脈には、日本第2位の高峰である北岳、山脈名の由来である赤石岳を筆頭に9つの山の3,000m峰があり、10の山が日本百名山に選定されている[2]。2008年12月、長野県富士見町から飯田市にかけての地域が日本ジオパーク協議会により南アルプス(中央構造線エリア)ジオパークに認定された[3]。2014年6月、南アルプスユネスコエコパークに認定される[4]

赤石山脈の範囲 編集

 
赤石山脈の白峰三山

赤石山脈とは、最も広義には諏訪湖を頂点とし、東では釜無川富士川、西では天竜川に挟まれた山地をさす。この意味での赤石山脈は、いくつかの山脈の集合体という意味で赤石山系とも呼ばれる[5]。赤石山系は、地形的には南西方向では静岡県と愛知県の県境の弓張山地天竜川の対岸)へと続いている。広義での赤石山脈には、これも含まれることがある。

しかし、赤石山系の西端に南北に走る伊那山地(標高1,600 - 1,800メートル)や、東端にやはり南北に延びる巨摩山地(標高1,600 - 2,000メートル)と身延山地(標高1,000 - 2,000メートル)は、山系の中心をなす山々に比べてかなり低いこともあり、赤石山脈からは除かれることもある[注 1]弓張山地についても同様である。これらの山々を除いた赤石山系の主要部を赤石山脈と呼ぶことも多い。一般に「南アルプス」と呼ばれるのは、この意味での赤石山脈のうち標高の高い部分である。

この南アルプスも、細かく見れば三つの山脈の集合体であり、そのうち仙丈ヶ岳から三峰岳塩見岳荒川岳赤石岳聖岳へとつながっていく山脈を赤石山脈と呼ぶ場合もある。その場合、狭義の赤石山脈と、白峰山脈、そして甲斐駒山脈(下記参照)が南アルプスを構成することになる[5]

名称 編集

赤石山脈の名は、赤色チャートが露出する大井川上流の赤石沢と、その源頭の赤石岳の名に由来する[6]

地形 編集

 
北より見る赤石山脈
中央構造線起因の谷により区切られる

北端には鋸岳 - 甲斐駒ヶ岳 - 早川尾根 - 鳳凰三山と連なる連峰が北西から南東につらなり(甲斐駒山脈)、この連山から野呂川北沢峠を隔てた南側では、主に南北に連なる二列の山脈となる。東側の連山(白峰山脈)は白峰三山(北岳間ノ岳農鳥岳)と白峰南嶺広河内岳黒河内岳笊ヶ岳など)と呼ばれ、西側の連山(狭義の赤石山脈)は仙丈ヶ岳を北端とし、塩見岳(両者の連なる長大な尾根を仙塩尾根と称する)・荒川三山赤石岳聖岳上河内岳茶臼岳から南アルプス最南端の光岳に至る。光岳より南にもさらに山が連なり、光岳以南は深南部と呼ばれる(大無間山黒法師岳など)。

飛驒山脈が、急峻な山容の山が多いのに対して、赤石山脈は北部の甲斐駒ヶ岳 - 鋸岳一帯と北岳の一部を除き、比較的なだらかな山容の山が多い。これは、赤石山脈が飛騨山脈より新しく隆起した山々であるため、比較的侵食が進んでいないためだと考えられている。大部分の山々は中生代白亜紀砂岩頁岩粘板岩などの地層からできていて、山肌は黒っぽい。ただし北端の甲斐駒ヶ岳 - 鳳凰三山の連峰だけは花崗岩よりなり、山肌が真っ白で赤石山脈の中では異彩を放っている。また、最終氷期の氷河の痕跡である圏谷が、仙丈ヶ岳・間ノ岳・荒川岳などに見られる。

赤石山脈は年間4ミリメートルほどの隆起が続いており、この隆起速度は世界でも有数である。よって、この成長が持続的に続くと仮定すると、現代から数百年後には間ノ岳が単独で日本第3位の標高となり、遠い将来には甲斐駒ヶ岳3000メートルを超える標高になると予想されている。

狭義の赤石山脈の西側には、伊那山地が平行して南北に延びており、その間の谷(国道152号が通っている)は、中央構造線によって作られたものである。

植生 編集

前述のとおり飛驒山脈と比べて浸食が進んでいないため、土壌がよく発達しており、森林高山植物も全般的には飛騨山脈より豊富である。また飛騨山脈より南側(太平洋側)に位置しているため、冬季の降雪量は飛騨山脈より少ない。そのため、植生は全般に飛騨山脈よりも200 - 300メートル上方側にずれており、森林限界もその分だけ高めである。特に、大量の積雪に弱い亜高山帯針葉樹林の発達がよい。ただし、残雪に依存する湿性の高山植物はそれほど多くない。一般的には海抜1,700 - 1,800メートルあたりまでが落葉広葉樹林、海抜2,600 - 2,700メートルあたりまでが亜高山帯針葉樹林、それ以上が高山帯となっている。亜高山帯にはカラマツスギヒノキアカマツ人工林があり、高山帯にはハイマツの群落やムカゴユキノシタ英語版トヨグチウラボシスウェーデン語版が見られる[7]

北岳(草すべりと山頂南側の稜線)・仙丈ヶ岳北荒川岳三伏峠中岳荒川中岳)などに、非常に大規模な高山植物のお花畑があることが知られている。北岳の山頂直下では、その固有種キタダケソウが自生する[7]

また、動物としてライチョウイヌワシニホンカモシカヤマネニホンツキノワグマなどが生息しており、高山帯にはタカネヨトウ英語版が生息している[7]

仙丈ヶ岳登山道(北沢峠付近)
標高約2000m地点の亜高山帯林
塩見岳西側の本谷山(標高2658m)
山頂まで亜高山帯針葉樹林に覆われている
北岳・草すべりのお花畑
北岳固有種のキタダケソウ

赤石山脈に連なる主な山 編集

赤石山脈の地形図
※表示環境によっては文字がずれることがあります。

北部(北沢峠・野呂川以北、甲斐駒山脈) 編集

東側稜線(大井川以東、白根山脈) 編集

西側稜線(大井川以西、狭義の赤石山脈) 編集

源流の河川 編集

以下が主な源流の河川太平洋へ流れる[8][9]

主な峠 編集

 
夜叉神峠から白峰三山の眺望

以下が赤石山脈にある主な[8][9]

赤石山脈の風景 編集

木曽山脈空木岳より見た八ヶ岳連峰と赤石山脈

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 身延山地には、巨摩山地(櫛形山地)を含めることもある。

出典 編集

  1. ^ 『アルペンガイド南アルプス』山と渓谷社、2009年、ISBN 978-4-635-01358-1
  2. ^ 『日本百名山』深田久弥(著)、朝日新聞社、1982年、ISBN 4-02-260871-4、P286-P321
  3. ^ 第4回日本ジオパーク委員会議事録(PDF)
  4. ^ 2014年6月12日環境省の発表
  5. ^ a b 白簱史朗、『アルパインガイド 30 南アルプス』昭和51年版。[要文献特定詳細情報]
  6. ^ 『南アルプス概論 長野県版』、南アルプス世界遺産登録長野県連絡協議会2012年、P29
  7. ^ a b c Minami-Alps Biosphere Reserve, Japan” (英語). UNESCO (2020年4月). 2023年2月6日閲覧。
  8. ^ a b 『北岳・甲斐駒(山と高原地図41)』昭文社、2010年、ISBN 978-4-398-75721-0
  9. ^ a b 『塩見・赤石・聖岳(山と高原地図42)』昭文社、2010年、ISBN 978-4-398-75722-7
  10. ^ マイカー規制、登山バス・乗合タクシー時刻表伊那市、2010年12月14日閲覧。(アーカイブ版)
  11. ^ 南アルプス観光情報南アルプス市、2010年12月14日閲覧。(アーカイブ版)

関連項目 編集

外部リンク 編集