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本来の表記は「飛驒山脈」です。この記事に付けられた題名は技術的な制限または記事名の制約により不正確なものとなっています。

飛驒山脈(ひださんみゃく)は、富山県新潟県岐阜県長野県に跨って連なる山脈である。通称北アルプスとも呼ばれ、木曽山脈(中央アルプス)、赤石山脈(南アルプス)と共に日本アルプスと呼ばれることもある。

飛驒山脈(北アルプス)
Eboshidake from Niseeboshidake1997-8-14.jpg
ニセ烏帽子岳から望む烏帽子岳
所在地 富山県岐阜県長野県新潟県
位置
最高峰 奥穂高岳 (3,190m)
延長 105km
25km
Project.svg プロジェクト 山
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飛驒山脈南部鳥瞰写真。常念岳大天井岳などの常念山脈があるため、上高地の奥側にある飛騨山脈主稜線上の穂高岳などは松本盆地からはほとんど見えない。

山脈の主要部分は、中部山岳国立公園に指定されている[注釈 1]。山脈の最高峰は、標高3,190m奥穂高岳で、富士山北岳に次いで日本で3番目に高い山である。

地質学的見地編集

木曽山脈赤石山脈断層運動で形成された山脈であるのに対し、飛騨山脈は火山活動と断層運動の複合的な要因によって形成された山脈で、約270万年前から隆起を開始した。その過程は大きく二段階に分割でき、約270万年前~約150万年前の大規模珪長質マグマ形成期と、東西圧縮により急激に隆起し3000m級の山脈が形成された130万年前~現在である[2]

鮮新世における現在の飛騨山脈は日本海に突き出た本州半島で、標高はそれほど高くなかった。この半島はジュラ紀付加体花崗岩などから構成される。

第一段階の270万年前~150万年前にかけて、当時伸長~中間応力場であった現在の飛騨山脈付近の地下に大規模な珪長質マグマ溜まりが形成された[3]。このマグマ溜まりの浮力によりアイソスタティックに隆起し、標高1000m程度の高地を形成した。また、この火成活動に関連してカルデラ形成を伴う火砕流堆積物及び広域テフラが形成されており、総量にして約1300 km3 DREのマグマが火山噴火として噴出した。代表的なイベントとして約225万年前の谷口火砕流、約175万年前の丹生川火砕流,恵比寿峠火砕流、約165万年前の大峰火砕流などがある[4]

第一段階終了後、地殻変動の穏やかな期間を挟んで、約130万年前から第二段階の急激な隆起が開始した[2]。この隆起は、マグマの熱によって地殻が脆性になったところに東西の水平圧縮応力が加わり、そこを力学的弱点として座屈変形した結果されている。水平圧縮応力の起源は日本海東縁変動帯(300万年前~)や、伊豆地塊の本州への衝突(約100万年前~)に関連する可能性がある[3]。この第二段階では100万年前ごろをピークに急激な隆起が生じ、3000m級の山々が形成された[5]。この第二段階の急激な隆起により、地下で固結した珪長質マグマの一部である約120万年前の滝谷花崗閃緑岩、約80万年前の黒部川花崗岩などが地表に露出している。これらの花崗岩の年代は世界で最も新しい[6]。また、第一段階で形成されたカルデラが座屈変形により東側に傾動し、カルデラ西側の構造が浸食により失われている[2]。第二段階でも約60万年前に上宝火砕流、約35万年前に奥飛騨火砕流などの大規模火砕流や、焼岳立山などの火山活動が現在完了進行形で存在しているが、噴出したマグマの総量は300 km3 DRE程度で、第一段階ほどの量ではない。これは水平圧縮応力によってマグマの地殻内上昇が妨げられていることが原因とされる[7]

飛驒山脈には火山が多く、かつては乗鞍火山帯に区分された[注釈 2]

飛騨山脈は南北方向の開析や、崩壊地形が発達している。これは、隆起速度が速いため浸食されやすいこと、花崗岩が断層運動により破砕真砂化して崩れやすくなっていること、60万年前以降の氷期氷食作用を反復して受けたなどが原因とされている[8]

地形編集

 
薄い赤がフォッサマグナの範囲、赤線は中央構造線

飛騨山脈の形状は巨大なY字型である。Yの字の中心を流れるのは、日本のV字谷中でもその急峻さと、巨大なアーチ式ダムである黒部ダムで著名な黒部峡谷である。 その西側は剱岳立山などの立山連峰、東側が白馬岳鹿島槍ヶ岳などの後立山連峰である。後立山連峰の東側に糸魚川静岡構造線が通る。

この二つの峰は、南側、すなわち黒部川の源頭部で一体となるが、その接点に位置するのが三俣蓮華岳である。さらに、稜線は東南方へと延び、西鎌尾根を経て穂高連峰へと連なっている。穂高岳からは、西穂高岳の稜線を経て、焼岳、さらに最南端に位置する乗鞍岳へと続く。一方、北方の稜線は、その東側において、白馬岳から朝日岳を経て、最後は交通の難所として知られる親不知から日本海へと落ち込んでいる。

主稜線の東側には、常念山脈と呼ばれる前衛の山々が連なり、唐沢岳餓鬼岳から始まり燕岳大天井岳常念岳と続き、霞沢岳と続いている。安曇野を含む松本盆地をはじめ、長野県の平地部分から見える多くの峰々はこの常念山脈の山々である。燕岳から大天井岳を経て槍ヶ岳に至るコースは表銀座縦走コースと呼ばれている。一方、烏帽子岳から鷲羽岳、双六岳を経て槍ヶ岳に至るコースは裏銀座縦走コースと呼ばれている。立山連峰の太郎山 (飛騨山脈)から北ノ俣岳黒部五郎岳・三俣蓮華岳を経て槍ヶ岳に至るコースは西銀座ダイヤモンドコースと呼ばれている。

主稜線の樅沢岳から南西方向に分かれ、槍穂高連峰と蒲田川を隔てて笠ヶ岳錫杖岳が対峙(たいじ)している。

最終氷期には飛騨山脈の各地に氷河が発達し、槍ヶ岳の槍沢、穂高岳の涸沢に見られるような圏谷群を作り出した。現在では氷河の規模は大きく縮小し、立山連峰の立山および剱岳に、全長1km内外の非常に小規模な雪崩涵養型の谷氷河がわずかに残るのみとなっている。

植生編集

 
白馬岳のお花畑

飛驒山脈は、赤石山脈に比べて浸食が進んでおり、急峻(きゅうしゅん)な山容の山が多い。そのことは、逆に言うと岩盤が露出して土壌の発達が悪く、植物相が貧弱であるということも意味する。ただし、白馬岳周辺・三俣蓮華岳・北ノ俣岳・双六岳・蝶ヶ岳など比較的なだらかな山容の山では、非常に規模の大きな高山植物の花畑が見られる。特に、積雪量の違いから、赤石山脈には乏しい湿性の花畑が飛騨山脈では豊富である。

南部と北部では積雪量に相当の差があり、比較的雪の少ない南部では亜高山帯針葉樹林がよく発達しているが、日本海に近い北部の白馬岳付近は大量の降雪のため、亜高山帯針葉樹林は貧弱である。代わりに、低木化したミズナラ(ミヤマナラ)やダケカンバなどの偽高山帯と呼ばれる植生が見られる。森林限界は、南部では2,400-2,500m程度だが、北部では積雪のため森林限界が大幅に下がっている地域もある。その森林限界では、ハイマツが見られる。

       
シナノキンバイ
の群生地(笠ヶ岳
コマクサ燕岳 ハイマツ ミズナラ

主な山岳編集

飛騨山脈の地形図。
※表示環境によっては文字がずれることがあります。

主稜線編集

立山連峰編集

後立山連峰編集

黒部川源流部編集

常念山脈編集

岐阜県側編集

乗鞍岳から南への延長線上にある御嶽山までを含める説もあるが、一般には御嶽山は含めない。 国土地理院の日本の主な山岳標高の一覧では、鎌ヶ峰までが「飛驒山脈南部」とされ、御嶽山は「御嶽山とその周辺」と記されている。(御嶽山系

飛騨山脈の風景編集

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 1934年(昭和9年)12月4日に指定された[1]
  2. ^ 現在の火山学地質学では、海洋プレート太平洋プレートフィリピン海プレート)が大陸プレート(北アメリカプレートユーラシアプレート)に沈み込むことにより火山が生ずるという理論に基づき、沈み込み帯の大陸プレート側に東日本火山帯西日本火山帯火山フロントが帯状に存在すると考える。「乗鞍火山帯」は地理的な観点だけからの区分で、現在は使われない。

出典編集

  1. ^ 中部山岳国立公園区域の概要 環境省、2010年12月28日閲覧。
  2. ^ a b c 原山智, 大藪圭一郎, 深山裕永 ほか「飛騨山脈東半部における前期更新世後半からの傾動・隆起運動」『第四紀研究』第42巻第3号、2003年、 127-140頁、 doi:10.4116/jaqua.42.1272019年11月13日閲覧。
  3. ^ a b 及川 輝樹「飛騨山脈の隆起と火成活動の時空的関連」『第四紀研究』第42巻第3号、2003年、 141-156頁、 doi:10.4116/jaqua.42.1412019年11月13日閲覧。
  4. ^ 田村 糸子、山崎 晴雄「北陸層群のテフロクロノロジー」『地質学雑誌』第110巻第7号、2004年、 417-436頁、 doi:10.5575/geosoc.110.4172019年11月13日閲覧。
  5. ^ 及川 輝樹「飛騨山脈北部における1 Ma頃の急激な隆起—北部フォッサマグナ西縁, 居谷里層の礫組成を指標として—」『地質学雑誌』第110巻第9号、2004年、 528-535頁、 doi:10.5575/geosoc.110.5282019年11月13日閲覧。
  6. ^ 原山智, 高橋正明, 宿輪隆太 ほか「黒部川沿いの高温泉と第四紀黒部川花崗岩」『地質学雑誌』第116巻Supplement、2010年、 63-81頁、 doi:10.5575/geosoc.116.S632019年11月13日閲覧。
  7. ^ 中嶋 健「日本海拡大以来の日本列島の堆積盆テクトニクス」『地質学雑誌』第124巻第9号、2018年、 693-722頁、 doi:10.5575/geosoc.2018.00492019年11月13日閲覧。
  8. ^ 原山ほか (2000年). “立山地域の地質”. 地質調査所. 2019年11月13日閲覧。

関連項目編集

外部リンク編集