広尾沖地震
広尾沖地震(ひろおおきじしん)とは、1962年(昭和37年)4月23日に北海道広尾町北東沖約40km(北緯42度27.7分、東経143度46.0分)を震源として発生した地震である[1]。
広尾沖地震 | |
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地震の震央の位置を示した地図 | |
本震 | |
発生日 | 1962年(昭和37年)4月23日 |
発生時刻 | 14時58分13.9秒(JST) |
震央 |
日本 北海道広尾町北東沖約40km 北緯42度27.7分 東経143度46.0分(北緯42度27.7分 東経143度46.0分 / 北緯42.4617度 東経143.7667度) |
震源の深さ | 69 km |
規模 | マグニチュード(M)7.1 |
最大震度 | 震度5:北海道帯広市 広尾町 |
出典:特に注記がない場合は気象庁による。 | |
プロジェクト:地球科学 プロジェクト:災害 |
概要
編集広尾町北東沖約40kmの北緯42度27.7分、東経143度46.0分、深さ69kmを震源として発生した。釧路で当時最大であった390ガルの加速度を観測した[2]。地震による被害は十勝川流域の軟弱地盤地帯のほかに道路や上下水道、鉄道、電線に多かったが一般住宅の被害は少ない[1][注 1]。最大加速度と被害が乖離する現象は宮城県北部地震でも起きており、原因として地震計の精度の向上や観測地点の増加などが挙げられ、地震動そのものが強くなっているわけではないと考えられる[2]。また、この地震によって十勝岳の噴火が誘発されたとみられる[3]。(後述)
震度
編集震度3以上を観測した地点は次の通り[4]:
震度 | 都道府県 | 観測所 |
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5 | 北海道 | 帯広・広尾 |
4 | 北海道 | 苫小牧・浦河・釧路 |
青森県 | 青森 | |
3 | 北海道 | 札幌・函館・森・江差・小樽・倶知安・岩見沢・旭川・羽幌・網走・紋別・室蘭・根室 |
青森県 | 深浦・八戸・田名部 | |
岩手県 | 宮古・盛岡・水沢観測所(現:奥州市) | |
宮城県 | 仙台・石巻 | |
山形県 | 酒田 | |
福島県 | 福島 | |
茨城県 | 柿岡 |
震度5の強震域は十勝地方に限られているが有感域は約880km先の静岡県にまでわたっており、これは1952年の十勝沖地震(M8.2)に匹敵する。相対的に規模が小さい割に有感域が広いのは震源の位置が深かったからだとされる[1]。
被害
編集震源の位置が深かったために津波は発生せず、津波による被害はなかった。地震動による被害は池田町と豊頃村にかけて顕著で、池田・利別間の道路では幅10〜220cmの亀裂が30mにわたって発生し、顕著な崩落が2か所あった。池田町の下川合では畑地で幅10cm、深さ56cm、長さ33cmにわたる地割れと湧水や砂の流出による直径5m、深さ40cmの地盤沈下が発生した。豊頃村幌岡では十勝川の築堤が長さ10kmにわたり地割れが発生し、幅90cmに達するところもあった。これにより付近一帯では泥地状態となった[1]。
帯広市周辺や幕別町、忠類村などではモルタル造の建物の被害が多く、サイロや煙突の壁に亀裂が生じたり、地震時に時計の振り子が外れて落ちることもあった。大樹町では地盤の比較的丈夫なところでの被害が多かった[1]。
十勝岳の噴火
編集十勝岳の火山活動は1952年頃から始まっていたが[3][注 2]、広尾沖地震の後その活動は特に活発になった。
有感地震の増加
編集1952年に始まった火山活動は主に噴気孔の形成や硫黄の生産量の増加、微小地震の発生であったが、広尾沖地震の発生後には大正火口における落石、噴気温度の上昇、有感地震の発生などがみられるようになった。1か月後の5月31日には有感地震を5回観測し[5]、5月末から6月末までの約1カ月の間に火山性の有感地震を10回観測した。これは2006年までの約60年間の十勝岳の観測記録の中では最多である[3]。旭川地方気象台により発表された有感地震は次の通り[6]:
日付 | 時刻 | 規模 | 震度 | 備考 |
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1962年 | 4月23日14時58分 | M 7.1 | 広尾沖地震 | |
1962年 | 5月31日2時23分 | M 3.3 | 震度2 | |
1962年 | 5月31日2時29分 | 震度1 | ||
1962年 | 5月31日2時32分 | 震度1 | ||
1962年 | 5月31日4時30分 | M 3.6 | 震度2 | |
1962年 | 6月 4日4時20分 | 震度1 | ||
1962年 | 6月 9日4時20分 | 震度1 | ||
1962年 | 6月 9日19時00分ごろ | 不明 | 火口付近のみ | |
1962年 | 6月28日14時23分 | 震度2 |
脚注
編集注釈
編集- ^ 地震による被害の指標としてはガルのほかにカインがあり、こちらの方が実際の建物の損傷と比例するとされる。最大速度(カイン)の大きさの方が建物の被害状況とよく一致する 一般社団法人日本建築構造技術者協会
- ^ 1952年の十勝沖地震に誘発されたとみられる。
出典
編集- ^ a b c d e 広尾沖地震調査報告 (PDF) 札幌管区気象台・帯広測候所 験震時報第27巻 pp.69-77
- ^ a b 佐野元彦、「最近の地震被害の特徴」 『地学雑誌』 2006年 115巻 4号 p.466-469, doi:10.5026/jgeography.115.4_466
- ^ a b c 1926 十勝岳噴火 中央防災会議:1926 十勝岳噴火 第4章 1962年、1988-89年の噴火
- ^ “震度データベース検索”. 気象庁. 2012年12月9日閲覧。
- ^ 横山泉、「大地震によって誘発された噴火 北海道大学地球物理学研究報告 1971年 3月25日 25巻 p.129-139 doi:10.14943/gbhu.25.129, hdl:2115/13994
- ^ 磯部清、「昭和37年6月29日の十勝岳噴火について」 地学雑誌 1963年 72巻 5号 p.244-256, doi:10.5026/jgeography.72.244