公衆便所 (隠語)

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隠語公衆便所(こうしゅうべんじょ)とは、不特定多数の男性性行為の関係を持つ女性のことを侮蔑したり揶揄するための言葉である。単に便所、または公衆便所女(こうしゅうべんじょおんな)や公衆便女(こうしゅうべんじょ)などとも表記され、男尊女卑の意味合いも含めて差別的なスラング卑語)として使用される。

概説

公共施設公衆便所は、不特定多数の人間が共同で使用し、無責任な使用方法やマナーの低下などで衛生状態が悪化しやすく、不潔になったり汚損してしまいやすい。これが、不特定多数の男性性行為の関係を持つ女性貞操観念の低い女性のマイナスイメージと合致して、いつからともなく隠語の公衆便所が使用されるようになった。

主に男性が女性を侮蔑したり揶揄するために使用し、日常生活や普段の会話の中ではまず使用されない。また、男尊女卑の意味合いを含む言葉としては最も差別的で、誹謗中傷としても酷い隠語のひとつとなるため、使用する際には注意を要する。

ただし、成人向けのエロ本アダルトビデオなどの世界では、主な顧客である男性に対して刺激的な印象を与える隠語として根強く使用されている。

経緯と現状

そもそもが隠語であるため、隠語としての公衆便所がいつ頃から使用されるようになったのか定かな文献は確認されていない。従って、公共施設の公衆便所が普及するのに合わせて自然発生的に誕生し、次第に社会に認知されて隠語になったと思われる。

マイナスイメージの起源と合致

公共施設の公衆便所は、不特定多数の人間が共同で使用する建築物であり、排泄物を受け止める便器が設置されている。なお、使用者が尿排泄するためには性器部分を露出する必要があるため、公共施設であっても個人のプライバシーがある程度確保された構造となるのが一般的である。しかし逆に、個々人がどのように使用しているかが他者には解りにくく、無責任な使い方やマナーの悪い扱い方の使用者を特定しにくいという面もあり、乱雑なまま放置されやすい構造とも言える。このことから、一般に公衆便所は衛生状態が悪化しやすく、汚損している便器が多いといった、不潔なマイナスイメージを与えやすい。

一方で、過去に武士道の「貞女二夫にまみえず(貞淑な妻であれば夫の死後に再婚したりしない)」といった倫理観や、明治以降の処女崇拝などが社会に浸透していた。このため、実際の男女関係は別として、女性にとっての性行為とは最初に結婚した男性との間にだけ許されるとする性道徳常識があった。このことから、複数の男性と性行為の関係を持った女性は、貞操観念が低い女性やふしだらな女性といった、偏見のマイナスイメージを与えやすい。

次第に、公衆便所が与えるマイナスイメージと、貞操観念の低い女性のマイナスイメージが合致するようになり、公衆便所という言葉が女性を侮蔑したり揶揄するための隠語として使用されるようになった。また、その後には類似する意味合いの肉便器という隠語を派生させることになった。

差別的なニュアンス

公共施設の公衆便所が普及すると共に、誰もが何時でも使用できるという特徴が認知されていくことになった。これが、どんな男性から性行為を求められても断らない女性、あるいは断れない女性といった特徴と合致することで、隠語の公衆便所に男尊女卑職業差別といったニュアンスが含まれることとなった。

古くは、戦争や地域紛争で被害者となった女性が性的奴隷慰安婦を強要されたり、経済的に困窮した女性がセックスワーカーに従事せざるをえず、娼婦売春婦となった女性を侮蔑する隠語として使用されている。

1960年代にアメリカで誕生したウーマン・リブ女性解放運動)の世界的な波及により、日本で代表的な指導者となっていた田中美津は、1970年アジビラ(政治的または思想的な文面を書いた宣伝チラシ)の中で「便所からの解放(Liberation from the toilet)」というタイトルの論説を発表している。この論説で田中は「男性にとっての女性とは、優しさとしての母親役か、性欲処理機械としての便所か」の2種類しかない状況であると憂い、女性はその何れからも脱却しなければならないと説いた。このことから、論旨は別として少なくとも1960年代頃から1970年頃には女性を侮蔑する差別的なニュアンスを含んだ隠語として、社会で認知され通用していたことが伺える。

また、現代になると風俗店で性行為を提供する風俗嬢援助交際と呼ばれる売春ブルセラなどで使用済み下着を取引する一般の女性、アダルトビデオなどで性行為を演じるAV女優などを侮蔑する隠語として使用するようにもなった。これには、職業選択の自由があったとしても、俗に言う射精産業に従事する女性は貞操観念の低い女性という偏見(性風俗産業に対する差別)が根強く残っていることに起因している。

一方で、安直に性風俗を選んでいる女性や、一般の未成年の女性までがアルバイトや小遣い稼ぎといった感覚で援助交際に関わるようなこともあり、望まない妊娠性病といったトラブルに巻き込まれやすい傾向があるため、これらが貞操観念の低い女性という偏見を助長していることは否めない。特に1997年東電OL殺人事件は、一般の女性の貞操観念や性道徳が低下した象徴として社会に大きな衝撃を与えた。

現状

近代になってフリーセックスやセックスフレンドという概念が登場、現代では男女の婚前交渉が一般化している。かつては処女性が強く求められるはずであった女性アイドルが自身のブログでできちゃった結婚を報告するような社会情勢もあり、どこまでが不特定多数の男性と性行為を持つ女性なのか、どのような女性であれば貞操観念が低いのかは非常に定義しにくくなっているのも事実である。

従って、ある男性がある女性のことを公衆便所と侮蔑しても、その女性は自分自身のことを公衆便所とは考えていない、といった自己認識上の誤差も生じるようになった。

また、マスメディアインターネットの普及に伴い、セックスシンボルとなる女性タレントや女性アイドル、セールスポイントとして性的魅力を視覚的に強調するような女性グラビアアイドルなども含め、誹謗中傷の際に使用する隠語となっている。

バスルームマニア!社の「キス!」について

2006年、デザインを重視した浴室用品を製造販売するオランダのバスルームマニア!(Bathroom Mania!)社の男性用小便器キス!(Kisses!)が問題となった。

このキス!はオランダ人の女性プロダクトデザイナー、メイケ・ファン・スハインデル(Meike Van Schijndel)が手掛けており、女性が口唇を開けた様子が非常にリアルに造形されている。本来は男性用小便器にすぎないが、これを使用する姿は、男性が女性の口唇で強制的にオーラルセックスするイラマチオフェラチオのイメージを容易に連想させやすい。 キス!はオランダのマクドナルドやドイツの公衆便所などで実際に設置され、不快に感じた使用者からの相次ぐクレームで撤去される騒ぎとなり、世界中に報道された。これにより、ヴァージン・アトランティック航空 はジョン・F・ケネディ空港の自社ラウンジに設置する予定だった計画を撤回している。 なお、バスルームマニア!社のホームページでは「セクシーな男性用小便器(het sexy urinoir)」と紹介しているが、メイケは「私自身はこれをイラストレーティブ・デザインと呼んでいる。ギャグ漫画のような口を模しただけで、特に女性の口を意識していない。下品な意図もない」といった主旨の発言をしている。

キス!は、大人のおもちゃやジョークグッズのような性具ではなく、一般の商品でありながら公衆便所の与えるマイナスイメージと合致することで問題視された、非常に珍しい事例である。

誹謗中傷や噂

隠語の公衆便所は、日常生活や普段の会話の中で使用されることはまず皆無と思ってよい。また、男尊女卑の意味合いを含む言葉としては最も差別的で、誹謗中傷としても酷い隠語のひとつとなるため、使用する際には注意を要する。従って、よほどの理由がない限り、実際に言葉として口から発することも稀である。 しかし、相手を貶めるような無記名の怪文書や、インターネットによる匿名性が確保されたコミュニケーションの中では、現在も根強く使用されている。 また、複数の人間の間で誹謗中傷や噂が応酬されるようになると、相手を辱めるためのより効果的な罵詈雑言を求める傾向があるため、このような場合は男性から女性に対してだけでなく、女性から女性に対しても使用されることがある。

誹謗中傷

誹謗中傷として、女性を侮蔑するために使用される。実際にその女性が公衆便所なのかどうかという真偽は問題にならないことが多く、男性が別れた女性を見下すために使用したり、女性が恋敵の女性を貶めようとして使用したりする。

として、女性を侮蔑するために使用される。誹謗中傷と同様、実際にその女性が公衆便所なのかどうかという点は問題にならないことが多い。男性が性的魅力のある女性を卑下するために使用したり、女性が自分よりも男性経験の多い他の女性を辱めようとして使用したりする。

マスメディア

マスメディアには放送問題用語放送禁止用語)が存在するが、公共施設の公衆便所と隠語の公衆便所が同じ漢字と発音であるため、特にこれといった指定はされていない。しかし、一般的なマスメディアにおいて隠語としての公衆便所を意味するような使用は皆無と思ってよく、あからさまに公衆便女などと表記して使用するようなことも皆無と思ってよい。

2006年、某スポーツ新聞モバイル版にて「六本木の公衆便所と呼ばれた過去」とのタイトルで、某女性グラビアアイドルの記事が掲載された。また2009年には、某出版社ゴシップ雑誌にて「トップアイドル10人の黒歴史『公衆便所』と呼ばれたアイドルの秘密暴露!」とのタイトルで使用されたが、いずれも隠語の公衆便所がマスメディア側から使用された稀な例である。

なお同年、新しい歴史教科書をつくる会理事だった某大学法学部の某男性教授が、慰安婦問題の掲載について「教科書に公衆便所の歴史を載せる必要があるのか」といった主旨の問題発言をしたと報じられたものの、これは取材対象となった某男性教授の発言内容を伝えているに過ぎず、マスメディア側からの使用ではない。

派生語や類義語

そもそもが隠語であるため、隠語の公衆便所について厳密な区分や定義はしにくい。また、様々なバリエーション派生語や、類義語が存在する。

公衆便所の派生語

公衆便所に女を付け加えて公衆便所女(こうしゅうべんじょおんな)と表記することがある。 また、公衆便所の「所」と、女性の「女」の音読みは同じ「じょ」であることから公衆便女(こうしゅうべんじょ)と表記することもある。 単に便所(べんじょ)、あるいは便所女(べんじょおんな)や便女(べんじょ)と表記することも多い。

なお、貞操観念の低い女性や性的奴隷であることを強調するため、精液公衆便所(せいえきこうしゅうべんじょ)や、肉便所(にくべんじょ)、ザーメン便女など、前後や間に様々な言葉を付け加えた様々なバリエーションがある。

肉便器との類似点と相違点

官能小説エロ本などで使用されて普及した肉便器(にくべんき)という隠語は、女性を侮蔑する点では公衆便所とほぼ同様の意味を持ち、明確な違いはない。しかし、隠語の公衆便所は女性の置かれている環境や状態なども含めて意味するに対し、肉便器は女性や女性器そのものを意味しているという点で微妙に相違点がある。 なお、実際には非常に混同した意味合いで使用されていることが多い。

公衆便所
公衆便所は不特定多数の男性と性交渉を持つことが前提。不特定多数の男性の人数が大勢であればあるほど、その女性は公衆便所として該当しやすくなる。
肉便器
肉便器は不特定多数の男性と性交渉を持つとは限らない。男性と女性が1対1で、その男性に性的奴隷として専属しているなら、その女性は肉便器ではあっても、公衆便所としては該当しにくい。

サセ子やヤリマンとの類似点と相違点

サセ子ヤリマン淫蕩(いんとう)や痴女(ちじょ)、ニンフォマニア(女性の色情狂)といった隠語は、女性を侮蔑する点では公衆便所とほぼ同様の意味を持ち、明確な違いはない。しかし、公衆便所である女性は男性を選ばない、または選べないといった意味が含まれるのに対し、サセ子やヤリマンは女性が男性を選ぶ場合もあるという点で微妙に相違点がある。 なお、実際には非常に混同した意味合いで使用されていることが多い。

公衆便所
公衆便所はどんな男性から性行為を求められても断れず、拒否権を持てないという状況の場合がある。どんな男性との性行為でも受動的に受け入れている、あるいは強制的に受け入れさせられているというのであれば、その女性は公衆便所として該当しやすくなる。
サセ子やヤリマンなど
サセ子ヤリマンは女性自身が気に入った男性を見つけた場合、自らが能動的または積極的にその男性に性行為を迫るような場合がある。このような女性は公衆便所としては該当しにくくなる。

アダルト作品でのイメージ表現

隠語の公衆便所は、成人が対象となる官能小説エロ本成人向け漫画アダルトビデオアダルトアニメアダルトゲームといった世界で、主な顧客である男性に対してより刺激的な印象を与えるイメージの表現として根強く使用されている。

このイメージは、男性器陰茎内の尿道を通じて排尿射精も行うため、男性が排尿行為と射精行為を同じ排泄とみなし、女性女性器を公衆便所や便器とみなすような差別的な表現となることが多い。

従って、公衆便所とみなされた女性や女性器は、男性の性欲を満たすためだけに存在する人形ダッチワイフのようにぞんざいに扱われたり、物体道具のようにデフォルメして表現されることが多い。また、女性の人格を尊重することで成り立つ愛情表現生殖行為ではなくなり、女性の心身を満足させるための性行為でもなくなる、という傾向がある。

いずれにせよ、アダルト作品ではフィクション性的空想として、また顧客の妄想も汲んだ演出として、現実よりも過剰な性行為で表現されていることが多い。

公衆便所を連想させる性行為のイメージ

公衆便所とみなされた女性の貞操観念の低さを強調するため、1人の女性が複数の男性と同時に性行為の関係を持つ輪姦グループセックスが好まれる傾向にある。また、公衆便所としての不潔さを強調するため、1人の女性に複数の男性が連続して口内射精顔射をしたり、次々と膣内射精をしたりするような表現も多い。 なお、これらの性行為は、差別的で陰湿な強姦まで含む演出とすることもあれば、フリーセックスとして性に開放的な演出とすることもあり、物語や内容も含めた表現となると多種多様なアダルト作品が存在している。

公衆便所のイメージ

公共施設の公衆便所には、複数の便器が設置されていることが多い。これを真似て、複数の女性が一列に並べられ、それ以上の大勢の男性が次々に性行為に及ぶといった表現である。なお、便器が1つしか設置されていない公衆便所を真似て、1人の女性と複数の男性の性行為で表現されることもある。また、実際に公共施設の公衆便所を使用し、物語の舞台とすることがある。

便器のイメージ

男性は排尿の際、陰茎を便器の排水口へしっかりと向け、尿が周りに飛び散ったり溢れないようにする必要がある。これを真似て、しっかりと拘束して身動きがとれないようにした女性に対して、大勢の男性が性行為に及ぶといった表現である。

また、女性の穴(肛門)を便器の穴(排水口)とみなし、現実の便器のような形状にデフォルメして表現することもある。この、女性の穴と便器の穴を同一化してしまう差別的な捉え方は肉便器という隠語と深い繋がりを持ち、公衆便所という隠語と類似点が多い。

落書きや標語のイメージ

公共施設の公衆便所や便器は、落書きで汚損していることが多い。これを真似て、女性の身体に下品な言葉や猥褻な図形を落書きした上で、男性が性行為に及ぶような表現である。一方、マナー標語や使い方の指示書を女性の身体に貼り付けたりした上で、男性が性行為に及ぶといった表現もある。

レッテルのイメージ

落書きや標語のイメージと同様の意味合いを持つが、レッテルや烙印によって公衆便所であることを他者に晒して辱めるような表現がある。公衆便所と書かれた札や看板などを女性の首からぶら下げさせたり、手に持たせたりして表現する。

素人写真投稿誌を出版しているコアマガジンのニャン2倶楽部Z(2007年8月号)では「公衆便所バッジ企画」とのタイトルで、誰にでもセックスさせる女性やサセ子の証として公衆便所バッジなるものを配布しており、レッテルの意味合いを表現している。

貞操観念の低さを象徴するイメージ

女性に自ら過去の男性経験を告白させたり、それを強調することで「複数の男性と性行為の関係を持った貞操観念の低い女性」として表現する。

また、公衆便所という隠語の意味合いには該当しないこともあるが、公共施設の公衆便所を舞台として、その個室で性行為の関係を持つような表現がある。これは、一般的には自宅やラブホテルなどでプライベートな環境を確保し、更に入浴などによって衛生状態も確保してから性行為に及ぶことが大多数という常識から逸脱した女性として表現される。従って、どんな場所でも、入浴などの手間隙を省いて簡単に性行為の関係が持てるという、その女性の貞操観念の低さを表現したものである。

SMのイメージ

サディズム(加虐性欲)を持つ男性が、マゾヒズム(被虐性欲)を持つ女性に対して、SMプレイの中で様々に使用する。男性に従属する奴隷となった女性が大勢の男性から性的奴隷の扱いを受け、その状況を主人である男性から侮蔑されるような表現もある。 また、女性の身体に公衆便所という文字を落書きして辱めることもあるが、これは女性の羞恥心を責めているに過ぎず、実際には公衆便所に該当するような性行為に及ばないことも多い。なお、顔面騎乗や糞尿も含めたハードなSMプレイとしては人間便器がある。

スカトロジーのイメージ

公衆便所という言葉そのものが、どうしても人間の排泄物をイメージさせる為、スカトロジーの性癖と混同される傾向がある。少数ではあるものの、男性が射精行為だけでは満足しない場合やより過剰な表現とするため、女性の膣内に男性が勃起した陰茎を挿入したまま排尿して辱めるようなこともある(膣内放尿)。 ただし、スカトロジーと混同するような表現を嫌悪する男性も多いため、実際に糞尿が登場するようなアダルト作品はスカトロ物として明確に区別される傾向にある。また、スカトロジーは性行為の一部として飲尿食糞があり、男性の糞尿を女性が口で受け止めることもあれば、女性の糞尿を男性の口で受け止めることもある。これはSMプレイの人間便器と意味合いも含めて混同していることが多い。

アダルトビデオでの公衆便所

1980年代から、ビデオデッキの普及と共に発展したアダルトビデオは、主な顧客である男性を通じて社会に様々な影響を与えた。また、競争が激化して市場が成熟すると共に顧客の性癖や嗜好に合わせたジャンルが細分化する。同時に、顧客の要望に合わせ、AV女優の演じる性行為の表現も多様化および複雑化している。

このような背景で、1人のAV女優が一度に大勢のAV男優と性行為の関係を持つことを好む顧客が表れ、輪姦物や大人数物と呼ばれるようになった。また、そのようなジャンルのアダルトビデオがAV雑誌などに掲載され、風俗ライターなどから「まるで男達から公衆便所のように扱われる」や「ザーメンの肉便器となってしまう」といった文言で紹介されるようになった。

AV女優の認知と普及による影響

アダルトビデオの普及と共に、出演するAV女優も注目されるようになる。次第に、単にAV女優というだけではセールスポイントがなくなり、容姿容貌の底上げはもちろんのこと、性行為の内容をより過剰にすることで差別化を図るようになった。

また、AV女優の需要増加は、同時に採用枠の人数も押し広げ、一般の女性たちが志望するようになったり、それまでは別ルートとされていた芸能界のアイドルタレントを志望する女性たちまで含むようになっていった。

現在、清楚な雰囲気で処女のようなAV女優を好む顧客も多いので一概には言い切れないが、経口避妊薬の普及と併せ、デビュー作品でいきなり輪姦中出しのような性行為を演じるAV女優も増加している。そのため、新人でありながら公衆便所や肉便器といった文言で紹介されるAV女優も多く登場するようになった。

インディーズの登場と普及による影響

アダルトビデオの普及と共に、通常の内容では飽き足らず、ある特定の性行為にこだわったり、より過剰な性行為を好む顧客が表れる。これを受けて日本ビデオ倫理協会などから独立し、法令を遵守しつつジャンルを細分化したり特化させたレーベルを持つインディーズ系やセル(直販)系とよばれるアダルトビデオメーカーが登場するようになった。

1995年頃には、海外のビザール物(bizarre、本来はBDSMを多く含むが、日本ではマニア物やフェチ物に相当するようになった)やギャンバン物(gangbang、輪姦物やグループセックス物に相当する)を積極的に紹介したAV監督のラッシャーみよし、後にエムズ・ビデオ・グループを立ち上げるAV監督の松本和彦らによって、「ザーメン物」や「ネバスペ物」と呼ばれるジャンルが定着していった。また、シャトルジャパン顔射をメインとした「ぶっかけ物」を定着させ、AV男優の分野に新しく汁男優と呼ばれるジャンルまで開拓するに至った。

これらは自主規制モザイク処理がある中で、いかに男性の精液によって女性を穢すか、いかに大量の精液によって女性を辱めるかといった表現に工夫や重点が置かれており、いずれも様々なAV雑誌で公衆便所や肉便器という隠語を使用した文言で紹介されることとなった。

ちなみに、同時期のアダルトビデオは様々なジャンルが次々と登場し、いわゆる淫乱物や痴女物も一般に定着するようになる。また、現実の社会では援助交際ブルセラなどで女性の貞操観念の低下が話題となっていたが、AV女優の需要として清楚な雰囲気や処女性ばかりが求めるのではなく、セックスフレンドがいることを公言するような貞操観念の低い女性まで求められるようになり、それらが顧客である男性たちに受け入れられるようになった時期でもあった。

インターネットの登場と普及による影響

2000年頃、パソコンインターネットの環境が一般にも認知され、急速に普及した。当初は扱えるデータ量が少なかったため、文字によるコミュニケーションが主体であったものの、匿名性が確保された環境で様々な情報と共にアダルトビデオに関する情報も盛んに交換されるようになった。また、パソコンと同時にDVDプレーヤーも普及し、アダルトビデオが低価格で大量に供給されるようにもなった。

同時に、1999年頃に登場して普及した2ちゃんねるなどの電子掲示板で、男尊女卑職業差別の隠語として公衆便所や肉便器といった隠語が活発に書き込まれるようになり、一般の話題でも侮蔑や揶揄の際に使用するようになった。また、チャットHやイメージチャットと呼ばれる性的な話題が中心のチャットでも、刺激的な隠語として多く使用されるようになった。

ジャポルノの登場と普及による影響

2000年代の前半、インターネットでアダルトビデオを取り扱うジャポルノ海外配信物と呼ばれるアダルトビデオが登場、性器を映像で直接鑑賞できることが一般にも認知されるようになる。以前からあった裏ビデオと違って画質が良く、洋物のハードコア (ポルノ)と違って出演者が全員日本人であり、同時にAV女優のレベルも高いことなどが特徴である。

これにより、日本国内で製造販売されてきたアダルトビデオがわいせつ物頒布罪に抵触しないことを遵守するために顧客に与えてしまう「性器そのものを見ることができない」という不満点と、「本当の性行為なのかどうか(本番か疑似か)」や「過激な性行為ほど信憑性が薄れる(本当の膣内射精か)」といった疑問点が一度に解決し、多くの男性から支持を得るようになっていった。

従って、現在の日本国内で製造販売されるアダルトビデオと比べて、ジャポルノや海外配信物のアダルトビデオでは「顧客が見て確認できる」という点をセールスポイントに置き、隠語の公衆便所がそのままタイトルやキャッチコピーで使用されたり、隠語の公衆便所をそのままイメージさせるような過剰な性行為で表現された作品が多いという傾向になっている。

アダルトビデオでの使用例

隠語の公衆便所などがタイトルキャッチコピーで使用され、国内で製造販売された主なアダルトビデオを挙げる。なお、表記は「作品タイトル(発売年/AV女優/アダルトビデオメーカーやレーベル名)」である。

公衆便女 (1990年/夏樹聖子/ビジュアルインフォメーションプロダクツ
日本ビデオ倫理協会の審査を経たアダルトビデオのタイトルとして、初めて公衆便女が使用された。なお、キャッチコピーで「女、買いませんか?」と娼婦の要素を差別的にアピールしているものの、当時の一般の状況もあって内容はごく普通のアダルトビデオである。
公衆便所女のザーメン中出し (1996年/中井淳子/PINK PANCER
インディーズ系のアダルトビデオとして、タイトルに初めて公衆便所女が使用された。キャッチコピーには「素人6人が合計12発」とあり、タイトルと内容が伴った輪姦中出しとなっている。シリーズに、直美とまほという企画女優の2作品がある。
ヤリマン公衆便女 (2002年/奥菜亜美/SODクリエイト
タイトルに公衆便女とあり、キャッチコピーにも「お前は俺達の公衆便所なんだよ!!」とある。援助交際ヤリマンとなった奥菜亜美を制裁するため、大勢の男達から輪姦および中出しされるという内容。第二章として朝香美穂ミュウが共演した同名作品がある。
公衆便所クライシス (2003年/君嶋もえ/ムーディーズ
タイトルに初めて公衆便所がそのまま使用された。キャッチコピーにも「公衆便所のくせに意思だとか感情だとか持ってんじゃねぇ!」とあり、内容も素人が参加した14人のAV男優による輪姦および中出しとなっている。
行列の出来る公衆便所 (2004年/横井くるみ遠峯あずさ杉本花音/メディアステーション
タイトルやキャッチコピーに公衆便所とあるだけでなく、AV女優たちが実際の小便器に拘束された肉便器となり、性的奴隷となっている様子が初めてパッケージデザインに採用された。以降シリーズ化され、恵千歳森下沙弥佳青山遥望月加奈などが出演した。
ぶっ飛び!公衆便所 (2006年/紅音ほたる/アイエナジー
公衆便所をそのままタイトルに使用していながら、テレビや映画にも出演する人気AV女優が出演した初めての作品。キャッチコピーにも「ほたるの体は田舎の公衆便所として精子の掃き溜めにされてしまう!!」とある。シリーズ4作品中の3作目にあたり、他に水野美香天衣みつ椎名りくが出演した。
F県M郡の炭鉱労働者の村に性欲処理用に女を拘束して便器化している「射精公衆便女」が存在した!!(2009年/宮咲志帆企画女優/SODクリエイト
タイトルに便器化射精公衆便女、キャッチコピーに「小便溜まったら公衆便所、精液溜まったら公衆便女!」とある。パッケージデザインでもAV女優たちが木枠に拘束された肉便器として性的奴隷になっている様子が採用された。同名の続編と共に、この作品のAV監督であるGORIは、自身のブログ「AV監督GORI DigitalGorilla」で「ファンタジーリアルが混在する、ある種シュールな世界観を妄想するのが好きです!」と自己紹介しており、アイデアや関連作品について言及している。また、宮咲志帆は自身のブログ「宮咲志帆☆裏Blog パイパン娘の日々」で自ら「公衆志帆便所(2009年01月23日付)」のタイトルで撮影の様子を写真と共に綴っている。
羞恥!肉便器公衆トイレット ご自由に中出しどうぞ (2009年/早川瀬里奈星嶋千沙/サディスティックヴィレッジ
便所の部分をトイレに置き換え、公衆トイレットとしている。キャッチコピーには強制拘束肉便器公衆トイレとあり、パッケージデザインではAV女優たちが椅子に拘束された肉便器として性的奴隷となっている様子が採用されている。

外部リンク

関連項目