特殊部隊(とくしゅぶたい、: Special Forces)とは、警察の一般部隊とは遂行すべき任務と部隊の編制が異なる部隊の事である[1]

目次

概要

特殊部隊の編制は、所属組織やその任務によって様々だが、原則的には少数精鋭で、優れた人材を選抜したものが多い。その性質上、部隊の規模が小さくなるため独立の軍種兵科として編成されることはほとんどなく、主に一個の部隊として編成される。

アメリカ軍統合軍の一つとして編成されている「アメリカ特殊作戦軍」また、「アメリカ特殊部隊連合軍」(United States Special Operations COMmand, USSOCOM)は、総数4万5千名前後と見られており、米軍の全兵力である約141万名のごく一部となっている。

ソ連スペツナズや旧東側国家の特殊部隊の場合はパルチザン部隊が起源であるので、旧西側に比して隊員の数が多く、選抜の基準が異なっていると考えられている。韓国国防白書2008年度版によると、北朝鮮軍は過去2年間で6万人の増員をし、約18万人の特殊部隊を保有しているとされている[2][3]

特殊部隊は、その部隊が治安機関に属する部隊か、軍隊に属する部隊かによってその性質が大きく異なり、人質犯人の扱いにも影響する。治安組織(警察)の特殊部隊の場合、人質は無事救出、犯人は逮捕(生かして拘束)するのが原則であり、射殺は最後の手段として存在し、発砲による抵抗抑止はその正当性や適法性が問われる事もある。これに対しの特殊部隊は任務の遂行が最重要事項であり、ある程度の人質の死傷や、殺害を含めた敵の無力化も止むを得ないとしている。

日本における特殊部隊

防衛省・自衛隊

自衛隊では以前より、陸上自衛隊第1空挺団冬季戦技教育隊対馬警備隊のほか、航空自衛隊基地警備隊などが特殊な任務を遂行する部隊としての性格を有していたが、正式な特殊部隊は編成されていなかった。

自衛隊ではまず、能登半島沖不審船事件を受けて2001年海上自衛隊特別警備隊(SBU)を創設した。次いで、島嶼防衛を目的として2002年に陸上自衛隊に西部方面普通科連隊(WAiR)が結成され、2004年に本格的な特殊部隊として特殊作戦群(SFGp)がアメリカ陸軍特殊部隊群(通称グリーンベレー)をモデルとして創設された。自衛隊が現時点で公式に特殊部隊と位置つけているのは、この特殊作戦群のみである。なお、2007年3月には、防衛大臣直轄の機動運用部隊として中央即応集団が創設され、特殊作戦群は第1空挺団や中央特殊武器防護隊、第1ヘリコプター団などと一元的に運用されることが前提となっている。

陸上自衛隊における「特殊作戦隊員」は、「特殊作戦隊員の範囲等に関する訓令」において、以下の4つとされている[4]

  • 空挺基本訓練課程及び別に指定する特殊作戦業務の課程を修了し、かつ、陸上自衛隊の特殊作戦群に所属する陸上自衛官
  • 空挺基本訓練課程を修了し、かつ、陸上自衛隊の特殊作戦群に所属する陸上自衛官のうち別に指定する者(前号に規定する者を除く。)
  • 別に指定する水陸両用の課程及び別に指定するレンジャーの課程を修了し、かつ、陸上自衛隊の西部方面普通科連隊に所属する陸上自衛官(当該訓練課程を修了した隊員のみで編成される小隊の隊員のうち別に指定する者に限る。)
  • 水陸両用課程を修了し、かつ、陸上自衛隊の西部方面普通科連隊に所属する陸上自衛官のうち別に指定する者(前号に規定する者を除く。)

ここで言及されている「当該訓練課程を修了した隊員のみで編成される小隊」は、「特殊作戦隊員の指定等について(通知)」において「西部方面普通科連隊の本部管理中隊の情報小隊又は普通科中隊の小銃小隊(B)」と記載されている[5]

警察

日本の警察に所属する部隊は以下のとおりである。

警備部
ハイジャック事件、重要施設占拠事案などの重大テロ事件、銃器などの武器を使用した事件などに対処する部隊として、特殊部隊(SAT)が編成されている。また、銃器などを使用した事案への対処や、原子力発電所などの警戒警備を主要な任務とする部隊として銃器対策部隊が編成されている。銃器対策部隊は、重大事案発生時には第一次的な対応を実施し、SAT到着後はその支援を行う。
SATと銃器対策部隊は、既存の特殊部隊を強化、再編成する形で1996年に創設された。SATは、8つの都道府県警察本部に設置されており、銃器対策部隊は全国の都道府県警察本部の機動隊に設置されている。また、銃器対策部隊の中には、警視庁銃器対策レンジャー部隊埼玉県警察RATS静岡県警察SRPのように、ロープ降下や突入制圧技術を有する部隊も存在する。
この他に、重要防護施設を警備する部隊が編成されている。皇宮警察では皇居東宮御所の警備を行う特別警備隊が、警視庁では総理大臣官邸警備隊が編成されている。また、原子力発電所を有する府県では原子力関連施設警戒隊が編成されており、福井県警察では常設部隊として編成されている。
刑事部
人質立て篭もり事件や、誘拐事件などの捜査を行う係として、全国の都道府県警察本部の刑事部捜査第一課に特殊犯捜査係が設置されている。特殊犯捜査係は警視庁では「SIT」、大阪府警察では「MAAT」と呼称している。近年では警視庁、大阪府警察以外の警察においても刑事部に突入班が編成されている。名称は警察本部によって異なっており、例として埼玉県警察では「STS」、神奈川県警察では「SIS」、千葉県警察では「ART」と呼ばれている。また、編成方法も警察本部により異なり、捜査第一課と機動捜査隊の混成で突入班を編成している場合もある[6]。例として千葉県警察ART等が挙げられる。また、近年、警視庁では、SATを除隊した一部の隊員が、特殊犯捜査係(警視庁SIT)に人事異動をしている。これは、刑事部がSAT隊員の射撃技術などを即戦力として期待した結果、起用したものである[7]

海上保安庁

海上保安庁では、海上テロ事案などに対処するため、1996年特殊警備隊(SST)が創設されている[8]

脚注

  1. ^ 特殊部隊って何が「特殊」なの?,菊池雅之,図解 特殊部隊の秘密,PHP研究所,2015年,P30,ISBN 978-4-569-82732-2
  2. ^ 北朝鮮軍が特殊部隊6万人拡充、2008国防白書 聯合ニュース 2009/02/23
  3. ^ 北、特殊部隊6万人を拡充し18万人に 中央日報 2009.02.24
  4. ^ 特殊作戦隊員の範囲等に関する訓令 (特殊作戦隊員の範囲等)第1条 2016年11月26日閲覧
  5. ^ 防人給第6481号特殊作戦隊員の指定等について(通知) 2016年11月26日閲覧
  6. ^ 『実録、世界の特殊部隊』(双葉社、2010年)に記載
  7. ^ 『警視庁・特殊部隊の真実』(著者伊藤鋼一大日本絵画、2004年)に記載
  8. ^ 『海上保安庁のすべて』 世界の艦船 編集部、海人社、2009年11月、66頁。ISBN 4910056041192。

関連項目