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衝撃降下90度』(しょうげきこうか90ど)は、松本零士による漫画作品。

衝撃降下90度
ジャンル 戦争漫画
漫画
作者 松本零士
出版社 小学館
掲載誌 ビッグコミックオリジナル
レーベル 少年サンデーコミックス
発表期間 1975年11月20日号 - 同上
巻数 戦場まんがシリーズ」第5巻収録
テンプレート - ノート

第二次世界大戦末期、試作戦闘機での音速突破に挑戦するパイロット技術者の奮闘を描く。いわゆる「戦場まんがシリーズ」の中でも代表作の一つ。シリーズ単行本第5巻の表題作である。

ビッグコミックオリジナル小学館1975年(昭和50年)11月20日号に掲載された。

あらすじ編集

本土空襲が始まり日本の敗色が濃い1945年(昭和20年)夏。日本本土を襲うB-29戦略爆撃機護衛戦闘機P-51ムスタングに対抗できる迎撃機は日本には存在せず、それらに勝つためには音速を突破できるような高性能戦闘機が必要とされていた。

しかし最早、日本ではジェット戦闘機ロケット戦闘機も開発する余力などない。使い慣れたレシプロエンジンプロペラ戦闘機で限界までの性能を追求するべきではないのか?操縦士である台場は親友である技術者の山越が開発した試製高高度戦闘機「キ-99」にて垂直急降下による限界速度性能試験を行う。

しかし、技術や材質の限界で事故が続出、台場は重傷を負う。もはや音速を超えることなど不可能だと絶望する山越、「お前の嘘のせいで俺は手足を失ったのか」と詰問する台場。

もはや日本軍には資材も燃料も無い。撃墜されたB-29から回収した資材まで利用して最後に作製された試作3号機でテストに発進する台場。八丈島上空で彼は偶然、アメリカ陸軍P-47の編隊に遭遇し追跡を受ける。

当時米軍一の急降下性能をもったP-47の追跡をうけながら最後の降下テストに挑む台場。そして彼が見たものは……。

登場人物編集

主要キャラクター編集

声優はラジオドラマ版(後述)のもの。

台場(声:神谷明
操縦士。キ-99による垂直急降下試験に挑戦し音速突破を目指す。音速の壁に打ちのめされるうち、いつしか彼の敵はアメリカ軍ではなく音の壁そのものに変わっていく。作中では軍籍にあるのかメーカーのテストパイロットなのか、階級なども含めて描写されていない。次第に体に欠損が増えていき、最後は片目と片足、片腕を失いながらも、三度目の実験において、追跡してくるP-47を振り切り、音速を突破して1,225 km/hに達したところで、空中分解した機体に巻き込まれて死亡した。
山越(声:富山敬
技術者。キ-99の設計者でもある。作中ではメーカーの開発者なのか軍の技術者なのかは語られてはいない。台場とは飛行機を作り始めたころからの親友である。ラストシーンで航空機が音速を超えた時に発生するソニックブームを聞き、台場の死を悟った。

登場する兵器編集

試製高高度戦闘機「キ-99」
本品に登場する架空の試作戦闘機。パワーダイブ(全速降下)にて音速突破可能なことを念頭に開発された高高度戦闘機で、少しずつ仕様の違う3機が製作された。名称にキ番号が付与されていることから陸軍機と思われる。高度10,000 mで880 km/hの速度を発揮可能なように設計されており、滞空時間は12時間を越える[1]
機体は低翼で、発動機は型式不明の18気筒2列空冷星型エンジンをタンデム2基搭載。装備している2基の排気タービンキ87のものと同型[2])には、墜落したB-29から回収したマグネシウム合金が用いられている。4翅の二重反転プロペラを有しており、冷却用空気取り入れ口は二重反転プロペラのスピナーの内部にある。その形状のため、空冷エンジン機ではあるが、劇中でキ-99を目撃したB-29の搭乗員がエンジンが液冷か空冷かを判別しかねている。また、胴体下部にはジェット効果の発生をもくろんで、単排気管(一号機は5本、二・三号機は4本)を纏めたものが後方に向かって突き出している[1]
乗員は1名で、操縦席は与圧気密室となっており、パイロットは酸素マスクと電熱服を着用。武装の詳細は不明だが、両主翼に機関砲を計2門装備しているのが確認できる。また、胴体もしくは両主翼の下部に増槽を懸架できる。
なお、戦場まんがシリーズの後身「ザ・コクピット」内の作品『ガンサイト4』には、「キ-99試作高速戦闘機I型」という機体が登場している。『ガンサイト4』でのキ-99は陸海軍の共同開発機であり、制式名は「六式戦闘機一型」とされている。エンジンはタンデム配置された四四型(2,600 hp)2基となり、二重反転プロペラや排気タービンは装備されていない。最大速度は820 km/hで、加速性能や機動性でもP-51を上回る。主翼の20mm機関砲ホ-7(架空)6門と自動空戦フラップのほか、四式小型射撃照準器を装備している。生産機数は1機で、飛行第244戦隊に配備された[3]
元は松本が幼少期から空想していた夢の戦闘機で[1]、あくまで架空機ではあるがその人気は高く、松本自身を含むさまざまな作家の作品でオマージュがささげられている。1/72スケールのプラモデルが発売されていたこともある。なお、「キ-99」という名称は作品発表後に設定されたものであり、作中では特に固有名詞では呼ばれていない(一号機、二号機、三号機と個々の機体が呼ばれているのみである)。
なお、史実における「キ99」は、陸海軍共用機として陸軍から三菱重工業に開発が指示された局地戦闘機だが、計画のみに終わっている。
B-29 スーパーフォートレス
P-51 ムスタング
P-47 サンダーボルト
打倒すべきアメリカ軍の高性能機の象徴として登場。作中キ-99はP-47の追跡を受ける。なお、P-47には急降下で音速を突破したという証言が現実に存在する(P-47 (航空機)#実戦配備も参照)。
Me163 コメート
B-17フライングフォートレスに対するドイツ空軍の対抗策として例示される。
橘花
秋水
日本軍が開発中のジェット戦闘機・ロケット戦闘機の試作機として例示される。しかし、もはや大戦中の実用化には間に合わないと判断され、キ-99の実験が行われたという設定である。なお、橘花はキ201 火龍である可能性もある。

ラジオドラマ編集

この作品はラジオドラマ化され、後にLPレコードも発売された。

既刊編集

全て小学館刊。
  • 戦場コミックシリーズ、2005年9月。ISBN 978-4091084194
  • 少年サンデーコミックス

出典編集

  1. ^ a b c 松本零士 『零士のメカゾーン〈2〉』 毎日新聞社、1979年、61頁。全国書誌番号:79026367
  2. ^ 月刊ホビージャパン』1977年9月号「松本零士氏をたずねて」(ホビージャパン、1977年)
  3. ^ 松本零士『ザ・コクピット 10』小学館、2005年、233 - 256頁。ISBN 978-4-09-192260-1

関連項目編集