レジ袋
レジ袋(レジぶくろ)とは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの小売店において、購入した持ち帰り商品を入れるためにレジで渡されるポリオレフィンなどの材質で作られた袋を指す通称(正式名称ではない)。買物袋の一種。
概要
編集一般的に会計の後、レジ係から渡される場合が多い。店が混雑していない、もしくは購入点数が少ない場合は、レジ係が会計と同時に袋に商品を入れるケースもある。
歴史
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広島県大竹市の袋メーカー中川製袋化工が1960年代に当時流行したストッキングの伝線防止のため、竹籠に代わる梨狩り用のポリ袋を開発したのがルーツ[1][2]。
1970年頃から、丈夫で水濡れにも強いことを受け、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店で紙袋に代わり、ポリ袋やビニール袋などが大量に使われ始めた。
レジ袋の材質は、ポリオレフィン製である。
特徴
編集- 材質
- 性質・形状
- 商品が入りやすく、またいろんな環境に対応しうるよう、やわらかく、耐久性もあって20数年が経過しても経年劣化が生じないほど丈夫にできているものも存在した。現在は、過剰なほど薄くなってしまい、時間が経過しなくても劣化が生じたり、破れやすくなるなど、質が低下し、脆い粗悪品が増えている。
- ポリ袋やビニール袋においては特に、手下げて帰れるような取っ手、中身が出ないように袋口を結べるように施すなどの形状を取り入れている。
- ロゴ
主な活用法
編集本来の趣旨としては買物商品を持ち帰るための袋ではあるが、その形状から他の用途にも汎用的に使われるケースがある。以下、主な利用方法を列記。
- ゴミ袋(ゴミを捨て、そのままゴミ焼却施設に丸ごと持っていってもらう手段としての利用。近年では、徐々に市販ゴミ袋と同様に黒や青などの色付きで不透明なものが使えなくなり、透明(半透明も)のものしか収集しなくなったり、あるいはゴミ有料化により指定ゴミ袋を用意する自治体が増えてきた(京都市など)ものの、ゴミを捨ててまとめる手段として、プラスチックゴミとしてそのままゴミ集積所に出すなどの利用では、未だに健在といえる。自治体によってはレジ袋も「指定ゴミ袋」として指定するところや、逆に浜松市などのようにレジ袋のゴミ袋代わりでの使用を禁止するところもある)
- カバー
- 運搬用の袋(買物用途だけでなく、物資の持ち運びに重宝)
袋を巡る出来事
編集有害物質の混入問題
編集2007年(平成19年)、京都市や京都大学環境保全センターなどの分析で、全国展開している百貨店などの色付き袋の一部から、有害な重金属である鉛が検出され、京都市役所は、業者に対して、使用の自粛を求めている[3]。
削減・禁止の動き
編集近年の日本では、自然環境保護の観点から、ポリエチレン製レジ袋を削減しようとする動きがある。販売店によっては袋を有料化したり、トートバッグを持っての買物を推進する運動(マイバッグ運動)が行われたりしている。
環境問題に関しては漂流・漂着ごみに占める割合が低い、輸送コストが紙袋より少ない、サーマルリサイクルにより無駄が少ないなど、レジ袋は象徴的に非難されているが実際には環境負荷が低いという意見もある[4]。
環境の観点とは別に、販売店にとっては経済的な理由(無料のレジ袋の利用頻度が減るうえ、それに合わせてレジ袋辞退時の特典も廃止できることから、備品コストが削減できる[5]ほか、専用ゴミ袋やエコバッグ販売により収益が上がる)での利点もある。一方、亀岡市では2018年12月13日にプラスチック製レジ袋の使用を禁じる条例の制定を目指す方針を明らかにした[6]。環境省によると、条例によるレジ袋の禁止は全国初としている[6]。
特に原油高の影響でレジ袋のコストが増大したため、エコバッグ推奨およびレジ袋有料化の流れは加速したが、コンビニエンスストアなどでは未だ無料であることから、レジ袋は無料という意識は依然として残り、多くの店舗は1枚あたり数円の負担をしているのが現状である。また、レジ袋代金を要求する店舗と無料で提供されるべきと思う客との間にトラブルが生じるケースもある。
ポリエチレンの原料であるエチレンは、日本で製造されるもののほとんどが石油精製によってできるナフサである。2007年実績で日本のエチレンの生産は773.9万トンであるのに対し、内需574.1万トン、輸出199.6万トン(ネット輸出:実輸出-実輸入)であり、日本はエチレンの輸出国である[7]。
レジ袋を廃止したことにより、万引き(窃盗)被害が増加する[8][9]負の側面も指摘されている。マイバッグを悪用して万引きを隠す手口として広まる懸念から防犯対策にも力を入れ始め、「行政がマイバッグに関するルールを策定しPRポスターで啓蒙」「他店購入品は専用袋に入れる」などマイバッグ制度を維持したまま行われているケース[8]が広まっているが、逆に「買い物かごなどのバッグの持ち込みを禁止し、従来通りのレジ袋配布を再開」など、マイバッグ制度を廃止するケースもある[10]。
レジ袋有料化(日本)
編集2019年(令和元年)9月26日、国際的な潮流を受け、日本国政府は世耕弘成を中心とした有識者会議で、プラスチックごみの削減に向け、レジ袋の有料化を義務付ける制度案を示した。原田義昭ら環境省は法案をまとめ、早ければ2020年4月に実施する予定となった[11]。
これは日本学術会議の提唱がきっかけであるとの報道もあるが[12]、有料化政策と学術会議の直接の関与はない[13]。
同年12月25日、環境省・経済産業省はレジ袋の有料化を義務付ける制度の運用指針を発表。スーパーやコンビニエンスストアなどすべての小売店を対象に、東京五輪・パラリンピックの開催直前となる2020年7月から始めることを示した[14]。容器包装リサイクル法の省令改正に伴いすべての小売店でプラスチック製レジ袋の有料化が義務付けられたが、レジ袋をつくる業界からは、「政府がやるべきことは、こんなちまちましたレジ袋の有料化ではない」と批判の声が上がった[15]。
2020年7月1日からレジ袋有料化の対象となった買い物袋は[16]:
- 素材 - 紙や布ではなく、プラスチックである
- 形状 - 持ち手がある
- 用途 - 袋の中身が景品や試供品ではなく、商品である
- 辞退可能性 - 袋が商品の一部であったり、免税の袋など、他の法令で決められたものでなく、消費者が辞退できる袋である
対象外となった買物袋は下記のもので[17]、環境性能が認められ、その旨の表示があることが必要となる[16]:
- フィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの
- 繰り返し使用が可能であり、プラスチック製買物袋の過剰な使用抑制に寄与するため
- 海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの
- 微生物によって海洋で分解されるプラスチック製買物袋は、海洋プラスチックごみ問題に寄与するため
- バイオマス素材の配合率が25%以上のもの
- 植物由来がCO2総量を変えない素材であり、地球温暖化対策に寄与するため
レジ袋有料化後、店頭では、商品を持ち運びやすく工夫、無料の紙袋を例示、販売している袋を掲示するようになった[18]。ただし、有料化対象外の袋が必ず無償というわけではない。
レジ袋有料化に対する日本国民の賛否は、一部自治体における先行実施前となる2014年の内閣府の世論調査では6割以上の国民が賛成しており[19]、全国での全面実施直後となる2020年のマスコミ各社の世論調査においても7割近い国民が賛成している[20][21]。一方で、2割の国民が反対している。
諸外国の動き
編集ヨーロッパ各国では環境に対する意識の高さから、2000年代前半に大部分の国家で有料化されている[22]ほか、ずば抜けて使用量の多かったイタリアでは、2011年1月から生分解性プラスチックのものを除き、その使用が全国で全面的に禁止された[23]。
アジアでは、韓国と台湾が法律で有料化としている[22]。中国では2008年6月1日より有料化され[24]、2009年6月1日に発表された調査結果では、レジ袋消費量が平均で66%減少、実数でレジ袋400億枚近くを節約との効果が挙げられている[25]。香港では2009年7月7日より有料化された[26]。また、バングラデシュではかつて下水がレジ袋によって詰まり、洪水の原因となり、削減に取り組んだ。
北アメリカでは、アメリカにおいて2000年代中盤より各州にてレジ袋配布禁止の動きが広がっている[27]。カナダでは、2013年1月から大都市では初めて、トロントがレジ袋の利用が禁止する[28]。
2016年7月には、フランスがレジ袋の禁止に踏み切った。この時点で、バングラデシュや南アフリカ共和国、中国にも禁止措置は広がっている[29]。
イタリアでは、2018年5月にレジ袋廃止令が出され、従わない場合は最大500€の罰金が課せられる。[30]
オーストラリアの大部分の州では、2018年7月1日からレジ袋の無償提供が禁止され、有償化された[31]。しかしながらレジ袋禁止に抵抗を示す客も多く、無償提供を継続する大手スーパーマーケットも現れている[32]。
2020年1月には、世界最大のプラスチック消費国である中国が、使い捨てのプラスチック品を全国規模で削減する計画を発表した。[33]
アフリカでは、 2003年以降、エリトリア、ウガンダ、ケニア、ルワンダなどが次々にレジ袋の製造・販売・使用を禁止した。特にルワンダは厳しく、空港の手荷物検査でレジ袋が没収される[34]。
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新型コロナウイルス
編集脚注
編集- ^ チコちゃんに叱られる! 「なぜニワトリは首を振りながら歩く?ほか」gooテレビ番組 2019年2月22日
- ^ 中川製袋化工株式会社 会社案内
- ^ 色付き袋の一部に鉛、京都市が使用自粛を求める 読売新聞 2007年5月26日
色付きの袋から鉛検出 大手百貨店など-京大調査- 毎日新聞 2007年5月27日 - ^ 脱プラ、脱ポリ、紙袋へ切り替えをご検討のお客様へ - 清水化学工業
- ^ 愛媛県新居浜市の場合だと主要スーパー(イオン系〈イオン、マックスバリュ、ザ・ビッグ〉、フジ、コープ。後にマルヨシセンター、ハローズ、ママイ、マルナカも加わる。)が一斉に無料配布を中止したが、これに伴ってイオン系、フジ、ハローズなど複数店舗で行われていたレジ袋辞退時の特典が廃止されている。
- ^ a b “コンビニやスーパーのレジ袋禁止へ 京都・亀岡市、全国初条例化”. 京都新聞. (2018年12月13日)
- ^ 生産・需要の動向 - 石油化学協会。「生産」は経済産業省化学工業統計より、「内需」は 生産+輸入-輸出±在庫増減、輸入と輸出は財務省貿易統計より、在庫は経済産業省化学工業統計より。「ネット輸出」は 輸出-輸入。
- ^ a b マイバッグ:万引き隠す手段に かごに豆腐、バッグに肉 毎日新聞 2009年7月15日
- ^ スーパー「買い物カゴ」持ち去りの頻発 J-CASTニュース 2008年9月22日
- ^ 「レジ袋使って下さい」…マイバッグで万引き急増、持ち込み禁止スーパーも 読売新聞 2009年6月3日
- ^ “レジ袋有料化、手提げ型が対象 有識者会議で政府案”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2019年9月27日)
- ^ ◆レジ袋有料化も学術会議の提唱がきっかけ東京新聞
- ^ 籏智, 広太 (2020年10月13日). “学術会議が「レジ袋有料化を提言」は誤り。ネット上で拡散、実際の内容は?”. BuzzFeed Japan 2022年9月14日閲覧。
- ^ “レジ袋有料化、20年7月から 全小売り店に義務付け”. 日本経済新聞 電子版. 2020年1月14日閲覧。
- ^ “有料化「弱小企業をターゲットに」 憤るレジ袋メーカー”. 朝日新聞デジタル. 2020年7月15日閲覧。
- ^ a b レジ袋Q&Aガイド (PDF) 財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省
- ^ プラスチック製買物袋有料化 2020年7月1日スタート - (METI/経済産業省)
- ^ “薬局のレジ袋有料化が義務に 2020年7月、薬局含む全ての小売店が対象”. DIオンライン(日経BP) (2020年6月16日). 2020年7月15日閲覧。
- ^ “広がるレジ袋削減の取組”. 環境省 (2014年6月). 2021年3月10日閲覧。
- ^ “マイバッグ持参「多くなった」63% レジ袋の有料化で”. 朝日新聞 (2020-07 -20). 2021年3月10日閲覧。
- ^ “毎日新聞世論調査:レジ袋有料賛成70% 「丸山氏辞職を」77%”. 毎日新聞 (2020年6月17日). 2021年3月10日閲覧。
- ^ a b くらしの窓 すぎなみ2005年12月号(№229 平成17年12月9日発行) (PDF)
- ^ イタリア、全土でレジ袋が配布禁止に AFP BB News 2011年01月03日 10:01 発信地:ローマ/イタリア
- ^ レジ袋有料化に踏み切った中国 日経ビジネスオンライン 2008年3月14日
“中国国務院、スーパーのレジ袋を有料化へ”. AFP. (2008年1月10日) 2011年2月8日閲覧。 - ^ “レジ袋の有料化から1年、消費量が大幅減少 - 中国”. サーチナ. (2009年6月3日) 2011年2月8日閲覧。
- ^ “香港:7月7日からレジ袋有料化 1枚6円に”. サーチナ. (2009年5月31日) 2011年2月8日閲覧。
- ^ 米自治体「レジ袋追放」・まず11月からサンフランシスコ 日経エコロミー 2007年8月27日
- ^ “カナダ・トロントでレジ袋禁止条例可決か、業界団体が抗議の提訴”. AFPBB News (MSN). (2012年11月21日) 2012年11月21日閲覧。
- ^ “フランス、プラスチック製の使い捨て食器を禁止へ 世界初 ”. CNN (CNN). (2016年9月20日) 2016年9月20日閲覧。
- ^ Environment, U. N. (2018年5月31日). “As the EU weighs a ban on single-use plastics, these European countries are moving ahead” (英語). UN Environment. 2020年2月13日閲覧。
- ^ “豪でプラスチックのレジ袋が禁止に 店員に暴力振るう客も”. BBC (2018年7月2日). 2018年8月6日閲覧。
- ^ “豪大手スーパー、レジ袋の有料化見送り 買い物客馴染めず”. CNN (2018年8月2日). 2018年8月6日閲覧。
- ^ 「中国、使い捨てプラスチック袋を2022年までに禁止」『BBCニュース』2020年1月20日。2020年2月10日閲覧。
- ^ “病気の温床、洪水の原因? 発展途上国で進むレジ袋禁止:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2019年6月22日). 2022年8月19日閲覧。
- ^ 小林 雅一 (2020年5月27日). “コロナ危機で地球上に「プラスチック製品」が溢れる不思議”. 週刊現代 (講談社) 2020年6月30日閲覧。
- ^ 高橋寛次; 佐久間修志 (2020年6月21日). “「無料で当然」の意識変化促す レジ袋有料化 新型コロナで逆風も”. 産経新聞 2022年9月14日閲覧。