アイバニーズ
アイバニーズ(Ibanez)は、日本の楽器メーカー・星野楽器が所有するギター、ベースのブランド[1]。
市場情報 | 全世界 |
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設立 | 1957年 |
業種 | 楽器製造 |
事業内容 | エレクトリックギター、アコースティックギター、クラシックギター、エレクトリックベース、アンプ、エフェクター |
主要株主 | 星野楽器 |
主要部門 | 日本・名古屋市 |
外部リンク | Ibanez guitars |
概要
編集1970年代後半から1980年代にかけアメリカとヨーロッパの輸入ギター市場で重要な地位を確立した最初の日本発のブランドであり、初めて7弦ギターと8弦ギターを量産市販化したブランドとしても知られる。日本、韓国、中国、インドネシアの協力会社やアメリカ(ロサンゼルス)のカスタムショップで製造されるギター・ベース以外にも、エフェクター、アクセサリー、アンプなどの周辺機器もブランド展開されている。2017年時点で、約165種類のベースギター、130種類以上のアコースティックギター、300種類以上のエレクトリックギターを販売しており、ギブソンやフェンダーに次ぐ、第三の巨大なギターブランドと見なされている[2]。
歴史
編集創業からブランド誕生まで
編集1908年に星野書店の楽器部として創設された部署が1929年に合資会社星野楽器店として独立、当初は海外からの輸入楽器を取り扱っていたが、1935年に自社でも楽器を生産すべきだという機運が高まりスパニッシュ・ギターの製造に着手[3][4]、スペインから輸入していたギターのルシアー(ギター製作者)サルバドール・イバニェスに敬意を表し「Ibanez Salvador(イバニェス サルバドール)」というブランド名を初めは使用するが、後に単に「Ibanez」に変更され、スペイン語の発音を反映し日本語表記は「イバニェス」とされた。
戦災からの復興と楽器製造の再開
編集1939年、ギターの製造が軌道に乗りかけた矢先に第二次世界大戦が勃発、1944年の名古屋大空襲で社屋、工場ともに全焼で失う[3]。1948年、創業家の星野4兄弟は店舗での営業を再開するが、国内の楽器業界は競争が激しく商品も不足しており、困難な状況に直面する[3]。その中で、二男純平が外国語大卒で英語ができることから海外進出に活路を見出そうとしていたところ、四男義裕が通産省管轄の興業品貿易公団に「べっ甲」の在庫がある情報を入手する。かんざし職人に試作させた「べっ甲」製のギターピックが戦前に取引のあったアメリカの顧客から大量の注文が入ったことをきっかけに、アメリカや香港向けに楽器の製造・輸出を拡大していく[3]。
海外市場への進出とファブレス企業へのあゆみ
編集1955年、戦後数年間の再建努力の結果、評価をある程度まで回復することができた星野楽器は本社を現在の名古屋市東区橦木町に移転、海外市場への特化を決断する[3]。1950年代後半から1960年代にかけてグヤトーン、および1962年に設立した子会社の多満工場で製造されたギターをアイバニーズブランドで輸出販売する。1966年、多満工場でのギター製造の停止後は、テスコの子会社・テスコ弦楽器にアイバニーズブランドのギター製造を委託する[5]。
1960年代、日本のギターメーカーは主にアメリカのギターデザインを模倣し、アイバニーズブランドでもギブソン、フェンダー、リッケンバッカーのコピーモデルが登場する。しかし、このコピーモデルが後述の訴訟問題を引き起こすことになる[6]。
1970年にテスコの製造工場が閉鎖されると、星野楽器は富士弦楽器(現:フジゲン)にアイバニーズブランドのギター製造を委託する[5]。
オリジナルモデルの開発・展開
編集1972年9月、星野楽器はペンシルベニア州ベンサレムの楽器販売会社「ELGER CO.」を買収、北米での独占輸入業者として日本からアイバニーズブランドのギターを輸入する取り決めを交わす[3]。(9年後の1981年9月、ELGERは「HOSHINO INC.」と改名される[3]。)
1977年6月28日、フィラデルフィアの連邦地方裁判所で、ギブソンの親会社であるノーリン・コーポレーションが、ELGERがギブソンのヘッドストックデザインとロゴを使用していることに対する訴訟を起こす。星野楽器は1978年初頭に和解し、この訴訟は1978年2月2日に正式に終結する[6]。
和解後、星野楽器はコピーモデルの販売を放棄、1974年からオリジナルデザインを導入していたAR(Artist)シリーズや、過激な形状のIceman、RS(Roadstar)シリーズなどのアイバニーズ独自のギターモデルを開発・展開する販売戦略に舵を切り、より現代的なデザインを採用、細いネック、24フレットの指板、細い先端の尖ったヘッドストック、ハムバッカー/シングルコイル/ハムバッカー(H/S/H)のピックアップ配列、ロッキングトレモロブリッジなどのスペックを取り入れ始める。
ARシリーズは1970年代後半から1980年代にかけて一斉を風靡したニューミュージックバンド、オフコースのギタリスト、鈴木康博に提供され、国内での広告塔とされた[注 1]。
1977年、RS(Roadstar)シリーズを発表。後にRoadstar II 、PRO LINEシリーズなどの派生シリーズが展開され、80年代にはスティーヴ・ルカサーモデルのRS1010SL、アラン・ホールズワースモデルのAH-10などのアーティストモデルが誕生、ゲイリー・ムーアがRS1000を使用するなど、トップギタリストから高評価を得る。
1978年にはKISSのポール・スタンレーのシグネチャーモデルPS10が発表され、当時アイバニーズを日本発のブランドと認識する人は少なかったが、KISSの絶頂期に使用されたことから、アイバニーズの知名度は瞬く間に世界中に広まった[4]。
1986年、当時はIbanezの日本語表記を「イバニーズ」としていたが、海外のギタリストが発音する英語読みをカタカナ化した「アイバニーズ」を正式な呼称に改めた[注 2]。
1980年代のヘヴィメタルブームのただ中、1987年にスティーヴ・ヴァイのシグネチュアーモデルJEMを発表、同時に同様のデザインのRGを誕生させ、これが以後同ブランドの看板モデルとなった[4]。またその後も、ジョー・サトリアーニやポール・ギルバートらと積極的にエンドースメント契約を結んで人気が高まり、オフスプリング、ペニーワイズなどのメロコア勢にも多数使用されていた。
前出の他、パット・メセニー、ジョージ・ベンソン、フランク・ギャンバレ、ジョン・スコフィールドらジャズ・フュージョン系のアーティストにもギターを提供し、シグネイチャーモデルを生産した。
多弦モデルの量産市販化
編集1989年、スティーヴ・ヴァイとの共同開発による、事実上世界初となる量産市販品の7弦ギターUniverseを発表[7]。当初、ジョン・ペトルーシなどのテクニカルなギタリストが7弦ギターを使用していたが、1990年代中盤以降、ヘヴィロック(ニュー・メタル)系のヘッドとマンキーがヘビーなリフを響かせたことで7弦ギターは再評価され、初めてメインストリームに進出する[7]。
2001年、ヘッドとマンキーの7弦仕様のシグネチャーモデルK7が発表される[7]。
2000年代以降、ギターやベースで更なる多弦化が進み、2008年には8弦エクストラロングスケールギター[注 3]、2009年には7弦ベース[注 4]、2014年には9弦28インチスケールギターなどが量産市販化されており、トシン・アバシやマーテン・ハグストロム、ティム・ヘンソンなど、多くのギタリストがアイバニーズブランドの8弦ギターを使用している[7]。
主な製品
編集ギター
編集- アイバニーズ・RG
- アイバニーズ・S
- アイバニーズ・アーティスト
- アイバニーズ・アイスマン
- アイバニーズ・AZ
-
JEM7VWH
-
RG550
-
Sシリーズ
-
RG7321
ベース
編集- アイバニーズ・SR
- アイバニーズ・BTB
- アイバニーズ・エルゴダイン
エフェクター
編集「チューブ・スクリーマー」はゲイリー・ムーア、スティーヴィー・レイ・ヴォーンらも愛用する、この分野の定番商品である[4]。
- アイバニーズ TS-808
- アイバニーズ・TS-9
- アイバニーズ・WH10 (ワウペダル)
-
チューブ・スクリーマーTS-9
主な使用アーティスト
編集日本国外 ※[]内はシグネチャー・モデル
- ポール・スタンレー シグネチャー・モデル PS1CM、PS10 BK、PS120 BK
- ゲイリー・ウィルス[GWB]
- スティーヴ・ヴァイ [JEMシリーズ/UVシリーズ]
- スティーヴ・ルカサー [ROCKET ROLL Ⅱ SPECIAL MODEL 400SL ]
- ジョー・サトリアーニ [JSシリーズ]
- フィル・コリン(デフ・レパード) [DestroyerⅡ DT-555]
- ニック・ヒパ(アズ・アイ・レイ・ダイング)
- ジョシュ・ギルバート(〃)
- クリント・ノリス(-ex アズ・アイ・レイ・ダイング)
- デクスター・ホーランド(オフスプリング)
- ヌードルズ[要曖昧さ回避](〃) [NDMシリーズ]
- ポール・ギルバート(レーサーX、MR. BIG) [PGMシリーズ/FRMシリーズ] オールドアイバニーズコレクターとして知られ、60〜70年代以降のモデルを多数所有し、実際にレコーディングにも使用している。
- マーティ・フリードマン(-ex メガデス)[MFMシリーズ]
- クリス・ブロデリック(〃)
- マンキー(KORN) [APEXシリーズ]
- フィールディ(〃)[K5]
- ヘッド(〃)[KOMRAD]
- フランク リデル [UV777BK]
- ディーノ・カザレス(フィア・ファクトリー)[DCM]
- シャーリー・ダンジェロ(アーチ・エネミー、スピリチュアル・ベガーズ)
- ジョージ・ベンソン [GBシリーズ]
- アンディ・ティモンズ [ATシリーズ]
- パット・メセニー [PMシリーズ]
- ジョン・スコフィールド [JSM100]
- ヤニ・リーマタイネン(-ex ソナタ・アークティカ)
- ピーター・イワース (イン・フレイムス)[PIB]
- フランク・ギャンバレ [FGMシリーズ]
- ミック・トムソン(スリップノット) [MTM1]
- ポール・グレイ(〃)
- マイク・ダントニオ(キルスウィッチ・エンゲイジ)
- サム・トットマン(ドラゴンフォース)[STM1]
- ハーマン・リ(〃)[EGEN18]
- イーサーン(エンペラー)
- ポール・ロマンコ(シャドウズ・フォール)[PRB1]
- マシュー・バックハンド(〃)[MBM1]
- オマー・ロドリゲス・ロペス [ORM1]
- キコ・ルーレイロ(アングラ、メガデス)[KIKO100]
- カン・ピョンヒ(牡丹峰楽団)
- ジェラルド・ビーズリー[GVB]
- トニー・マカパイン
- パーシー・ジョーンズ
- フレドリック・トーデンダル(メシュガー)[M8M]
- マルテン・ハグストローム(〃)[M8M]
- ニタ・ストラウス (アリス・クーパー)[JIVA10]
- サンダーキャット [TCB1006]
- ティモシー・ヘンソン(ポリフィア)[TOD10]
日本国内
- 手島いさむ(UNICORN)
- 鈴木康博(オフコース)
- 安部俊幸(チューリップ、オールウェイズ)
- 姫野達也(〃)
- 宮城伸一郎(ARB、チューリップ)
- 津本幸司
- 寺尾聰
- 飯塚昌明
- 阿部真央
- 桑田佳祐 (サザンオールスターズ)
- 斎藤誠
- SCHON(-exMR.ORANGE、CRAVE)
- 狩姦(陰陽座)
- HIRO(HEAD PHONES PRESIDENT)
- MAR(〃)
- NARUMI(〃)
- 鈴木修
- ルイ(SCREW)[SRT]
- 零乃(ViViD)[j.custom]
- 渡辺祐 [AT100,j.custom]
- 虎(Alice Nine)
- 比嘉清正 (紫)
- 早川岳晴
- 松本孝弘 (B'z)
- Tack朗 (ヒステリックパニック) [j.custom(7弦),ARZ6UCS]
- 丸山漠 (a crowd of rebellion) [j.custom]
- Ichika Nito [ICHI10]
- Li-sa-X(Li-sa-X BAND)
- 葉月(Li-sa-X BAND、NEMOPHILA)
- 萩原健也
- 村上啓介 (THE ALPHA、MULTI MAX)※アマチュア時代に使用
- ヘッツ(花冷え。)
シリアルナンバー
編集Serial numbers |
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国産Ibanezのシリアルナンバー (アコースティック以外) Japanese Ibanez Serial Numbers 1997年以降 (CEマーク)
1987-1997
1975-1986
ほとんどの国産Ibanezはフジゲンによって製造されているが、Blazerモデルはダイナ楽器 、Axstar by Ibanez(AX40, AX45, AX48, AXB50, AXB60, AXB65, AX70, AX75)は中信楽器によって製造されている。Axstar AXB1000はフジゲン製である。 韓国製のIbanezシリアルナンバー C = Cort製, S = Samick製(1990–1995), S/SQ = Vester Guitars(Saehan)製, P = Peerless(飯田楽器)製, Y = Yoojin製, A = Sae-In製.
E = Crafter(Sung-Eum)製
W = World Musical Instruments製
インドネシア製のIbanezシリアルナンバー I = Cortのインドネシア工場製, K = KWO Hsiao製
中国製のIbanezシリアルナンバー Z = Yeou Chern製, J=Sejung製
その他のIbanezシリアルナンバー
過去のアコースティック
Silver Cadet model
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関連項目
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ “「星野楽器ってどんな会社? 」そんな疑問を解決!”. 星野楽器. 2024年2月23日閲覧。
- ^ “Ibanez at AMS” (英語). American Musical Supply 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g “HISTORY”. 星野楽器. 2024年2月23日閲覧。
- ^ a b c d “海外展開先行で世界的ブランド確立「星野楽器株式会社」”. J-net21. 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b “富士弦楽器とIbanez” [FujiGen and Ibanez]. Matsumoto GUITARS [Guitar manufacturers in Matsumoto City]. Matsumoto: Junk Guitar Museum. 2013年10月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月16日閲覧。
- ^ a b “A Brief History of Ibanez Guitars: From Importer to Industry Leader” (英語). reverb.com (2015年11月3日). 2024年2月27日閲覧。
- ^ a b c d “A Brief History of Ibanez guitars” (英語). guitar.com (2022年11月5日). 2024年2月27日閲覧。