受容理論(じゅようりろん、英語: reception theory)は、文学作品の受容者である読者役割を積極的に評価しようとする文学理論である。受容美学ともいう。

概要 編集

1960年代末、ドイツコンスタンツ大学にいたW.イーザーH.R.ヤウス英語版現象学ロシア・フォルマリズム解釈学ガダマーの作用史)などの成果を取り入れ、受容理論を提唱した[※ 1]

ヤウスによれば、文学の歴史は美的な受容と生産の過程であり、その過程は文学のテクストを受け入れる読者、批評家作家の三者によって活性化され、遂行される[1]。また、文学作品を読むときは、先行作品の知識などからあらかじめ期待を抱いて読むものであり[※ 2]、読書においてその期待が修正、改変され、または単に再生産される。理想的なケースでは、優れた作品が読者の期待の地平を破壊してゆく[2]

受容理論の一形態は、歴史学の研究にも応用されており、例えばハロルド・マルクーゼ英語版は「歴史的な出来事によって転嫁された解釈の歴史」としている[3]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ コンスタンツ学派と呼ばれる。
  2. ^ 期待の地平線ドイツ語版と呼ばれる。

出典 編集

  1. ^ ヤウス (2001), p. 35.
  2. ^ ヤウス (2001), pp. 39–41.
  3. ^ Reception History:Definition and Quotations”. 2021年8月31日閲覧。

参考文献 編集

  • H.R.ヤウス 著、轡田収 訳『挑発としての文学史』岩波書店岩波現代文庫〉、2001年(原著1976年)。ISBN 4006000669 

関連文献 編集

  • スタンリー・フィッシュ 著、小林昌夫 訳『このクラスにテクストはありますか』みすず書房、1992年。ISBN 4622045524 
  • 川上勉 編『現代文学理論を学ぶ人のために』世界思想社、1994年。ISBN 4790705242 
  • 和田敦彦『読むということ:テクストと読書の理論から』ひつじ書房〈未発選書4〉、1997年。ISBN 4938669897 
  • アルベルト・マングェル 著、原田範行 訳『読書の歴史:あるいは読者の歴史』柏書房、1999年。ISBN 4760118063 
  • ロジェ・シャルティエ、グリエルモ・カヴァッロ編 著、田村毅[ほか]共 訳『読むことの歴史:ヨーロッパ読書史』大修館書店、2000年。ISBN 4469250643 
  • 和田敦彦『メディアの中の読者:読書論の現在』ひつじ書房〈未発選書11〉、2002年。ISBN 4894761572 
  • 鈴木泰恵・高木信・助川幸逸郎・黒木朋興 編『〈国語教育〉とテクスト論』ひつじ書房、2009年。ISBN 9784894764255 
  • 西田谷洋『文学理論』ひつじ書房〈学びのエクササイズ〉、2014年。ISBN 9784894767034 
  • 和田敦彦『読書の歴史を問う:書物と読者の近代』笠間書院、2014年。ISBN 9784305707369 (改訂増補版、2020年、文学通信ISBN 9784909658340
  • 疋田雅昭『文学理論入門:論理と国語と文学と』ひつじ書房、2021年。ISBN 9784823411045 

関連項目 編集

外部リンク 編集