小林靖子

日本の女性脚本家

小林 靖子(こばやし やすこ、1965年4月7日[1] - )は、日本脚本家漫画原作者東京都江東区出身[2]特撮テレビドラマ作品やアニメ作品を主に手がける。愛称は「靖子にゃん[注釈 1]

こばやし やすこ
小林 靖子
プロフィール
誕生日 (1965-04-07) 1965年4月7日(58歳)
出身地 日本の旗 日本東京都江東区
出身校 神戸山手短期大学
シナリオ・センター
活動期間 1993年 -
主な作品
映画劇場版 仮面ライダー電王 俺、誕生!
アニメあぃまぃみぃ!ストロベリー・エッグ
灼眼のシャナ』シリーズ
ウィッチブレイド
CLAYMORE
ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ
賭ケグルイ
進撃の巨人
特撮星獣戦隊ギンガマン
未来戦隊タイムレンジャー
仮面ライダー龍騎
美少女戦士セーラームーン
仮面ライダー電王
侍戦隊シンケンジャー
仮面ライダーオーズ/OOO
特命戦隊ゴーバスターズ
烈車戦隊トッキュウジャー
仮面ライダーアマゾンズ
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略歴 編集

高校時代にシナリオ・センター[注釈 2]の通信講座を1年間受講する。神戸山手短期大学卒業後[4][5]、コンピューター・ソフトウェアの会社でプログラマーとして働いていたが、ある日偶然見た『特警ウインスペクター[注釈 3]の影響で特撮に興味を持つ[6][7]。その後『特捜エクシードラフト』のシナリオを書いてテレビ朝日の「ご意見・ご感想」コーナーに送付する[1][7]。普通なら単なるファンレター的産物として相手にされないところ、同作のメインライターである宮下隼一や、制作会社の東映で同作を受け持っていたプロデューサーの堀長文の目に留まり[1]、それから毎週『特捜エクシードラフト』の台本が送られて来るようになった[7]。その後、本格的に脚本家になることを意識し、再びシナリオ・センターで学ぶ[7]

1993年、『特捜ロボ ジャンパーソン』第40話「基地爆破5秒前」でデビュー[8][7]。当初は会社に勤めながらの兼業作家として数話を担当するぐらいであったが、1997年の『電磁戦隊メガレンジャー』からは専業作家となり新戦士登場篇・新ロボ登場篇・最終三部作第1話などを担当し、翌年の『星獣戦隊ギンガマン』で初のメインライターを務める[7]

デビューから数年間は仕事は東映の特撮ドラマに限定されていたが、1997年の『地獄先生ぬ〜べ〜』第41話「トモダチニナリタイ…謎の同級生、戦慄の正体!!」以降はアニメにも関わるようになり、『ギャラクシーエンジェル』などではギャグやパロディを手がけるようにもなる。

2017年、モーニングの25号 - 27号に掲載された「アンロック」で漫画原作者としてデビュー。

作風 編集

  • 時代劇や刑事ドラマに影響を受けて育った世代を自認し、特に時代劇は『遠山の金さん』『水戸黄門』『必殺仕事人』などを小学生の頃からよく見ていた[2]。いわゆる「月9」に代表される恋愛ドラマを書きたいとは思わなかったという。恋愛ドラマが「嫌いというわけではない」としつつも「恋愛一辺倒ではなく(中略)命のやり取りをしているという緊張感がありながら、恋愛など人間らしい感情や生活を持っている人物を描きたい」と話している[1]
  • 平成仮面ライダーシリーズでパイロット版を手がけた作品では、主人公が仮面ライダーになるところから描写している[9]。初変身後には両手の平を見る仕草が毎回描写されており、パイロット版の監督を担当することが多い田﨑竜太や主役仮面ライダーのスーツアクターを務める高岩成二はリアクションが同じにならざるを得ないと述べている[9]
  • ヒーロー作品では怪人側のドラマを描写することも多いが、キャラクターを発想する段階から考えているのではなく、ドラマの中でそのキャラクターが登場することにより話がどう面白くなるかということを検討してのことであるという[10]
  • ゲストキャラクターを登場させることは少なく、特にスーパー戦隊シリーズではメンバーの関係性を掘り下げることを重視している[7]。『ギンガマン』では、少年レギュラーである青山勇太を足手まといにさせないと考えていたため、子供が足手まといになる展開では別の少年をゲストに登場させていた[8]
  • 「-だわ」などの女性的な言葉遣いを好んでおらず、『ギンガマン』のサヤは紅一点でありながら男勝りな性格と設定した[8]

エピソード 編集

  • 弟がいたことから、幼少期は男児向け・女児向けの区別なく子供番組を視聴しており、特にテレビアニメ『科学忍者隊ガッチャマン』の白鳥のジュンになりたいと考えていた[7]
  • 以前は脚本家の名前など特に意識していなかったが、影響を受けた作品としてドラマ『Gメン'75』やアニメ『キューティーハニー』『あしたのジョー』『ルパン三世』などを挙げている。「キャラに魅力がある」作品が好きなのだという[11]
  • シナリオ・センターに通っていた頃、会社員をしながら週1回出される課題を提出するのが大変だったという。「後にも先にも、こんなに一生懸命になったのはこのときだけです(笑)」と回想する[12]
  • シナリオライターとしてデビューした後も、数年は会社員をしながらシナリオを執筆していた。自宅にFAXがなかった時期には、「勤め先に武器のデザイン画が送られてきた」こともあったという[6]
  • 重甲ビーファイター』の頃、「東映は新人養成学校じゃない」との上層部の意見で、それまでの作品に参加していた新人ライターの多くが一掃された。その際、当時新人の兼業作家だった小林に対しても風当たりが強かったが、同作品に参加していた宮下隼一扇澤延男が庇ってくれたという。また、同じく同作品に参加していた先輩脚本家の鷺山京子の名義を借りて作品を発表したこともあった[12](第11話「怒りロボ大暴走」[13])。近年は自身が、脚本家の下山健人毛利亘宏を東映に紹介している[14]
  • 東映アニメーション版『遊☆戯☆王』で知り合った井上敏樹と公私ともに仲が良く、しばしば一緒に仕事をしたり、井上の自宅のパーティに参加したりしている。
  • 『ギンガマン』に出演した小川輝晃は、自身が起用された理由について小林が小川の出演していた『忍者戦隊カクレンジャー』のファンであったことを挙げている[15]
  • 仮面ライダー龍騎』『美少女戦士セーラームーン』『仮面ライダー電王』など多数の作品で組んでいる東映プロデューサーの白倉伸一郎は、一般の脚本家がキャラクターをストーリーのための駒として扱うのに対して「小林靖子という人物は、ストーリーがキャラクターの従属物だと思っている」と評する[16]。これはキャラクターについて深く考え掘り下げるあまりストーリーを変更することがしばしばあり、普通の作家ならばそんな時はストーリー面からキャラクターの行動に制限をかけるが小林の場合はキャラクターを優先させることによる。
  • 『電王』『仮面ライダーオーズ/OOO』などを手がけている東映プロデューサーの武部直美は、小林は「いい意味で頑固」で、「納得しないと1行も進まないような」面があると話している[17]
  • 侍戦隊シンケンジャー』や『烈車戦隊トッキュウジャー』に参加した監督の中澤祥次郎は、「必ずいいものを書いてくれる」と信頼していることを述べている[18]
  • 2009年には、『シンケンジャー』でメインライターを務め、同時期に放送された『仮面ライダーディケイド』にもサブライターで参加している(自身がメインライターを務める『電王』と『シンケンジャー』が『ディケイド』にそのままの設定で関わってくるため)。また、同作品の第34話「親心娘心」・第35話「十一折神全合体」の監督はスーパー戦隊シリーズに10年ぶりに復帰した長石多可男だが、この回のシナリオ打ち合わせに臨む際、小林はプロデューサーの宇都宮孝明に「今年一番緊張する本打ち(本の打ち合わせ)です」と呟いたという[19]

作品 編集

特撮テレビドラマ 編集

メインライター 編集

その他(特撮テレビドラマ) 編集

一般テレビドラマ 編集

テレビアニメ 編集

シリーズ構成・メインライター 編集

その他 編集

映画 編集

アニメ 編集

実写 編集

オリジナルビデオ 編集

OVA 編集

  • 地獄先生ぬ〜べ〜 決戦!陽神の術vs壁男(1998年)
  • COLLECTION DVD イマジンあにめ2(2008年)

実写 編集

インターネット配信 編集

漫画 編集

舞台 編集

脚本以外の活動 編集

監修・協力 編集

作詞 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 名付け親は東映プロデューサーの武部直美[3]
  2. ^ 東宝の「おトラさん」シリーズや「お父さん」シリーズ、「落語野郎」シリーズなどを執筆した脚本家・新井一が1970年に設立。
  3. ^ 扇澤延男脚本の第25話「雨に泣くロボット」。
  4. ^ うち1本は鷺山京子名義。
  5. ^ シリーズ構成は虚淵玄が務めた。

出典 編集

  1. ^ a b c d 「仮面の世界Vol.1 第一回ゲスト 小林 靖子」『東映ヒーローMAX』Vol.2、辰巳出版、2002年、60-63頁、ISBN 978-4886417602 
  2. ^ a b 宇宙船 2009, pp. 112, 「ごっつい あの人に会いたい [インタビュー]小林靖子」
  3. ^ @cron204の2020年3月24日のツイート2022年5月7日閲覧。
  4. ^ 諏訪山祭|神戸山手大学
  5. ^ kobe_yamateのツイート(1195254421870927877)
  6. ^ a b 宇宙船 2009, pp. 113, 「ごっつい あの人に会いたい [インタビュー]小林靖子」
  7. ^ a b c d e f g h 「[対談]小林靖子×野中剛」『宇宙船』vol.154(AUTUMN 2016.秋)、ホビージャパン、2016年10月1日、124-125頁、ISBN 978-4-7986-1312-3 
  8. ^ a b c SPECIALPHOTOBOOK 1999, p. 82, 「Special Interview MainStaff & SuitsActor 小林靖子」
  9. ^ a b 「天下分け目のベテラン対談 田﨑竜太(監督)×高岩成二(鎧武スーツアクター)」『仮面ライダー鎧武/ガイム COMPLETE TRACKS』徳間書店〈HYPER MOOK〉、2014年11月15日、46頁。ISBN 978-4-19-730133-1 
  10. ^ トッキュウジャー公式完全読本 2015, pp. 8–11, 取材・構成 大黒秀一「TOQGER Cross Talk 宇都宮孝明×小林靖子」.
  11. ^ マガジンSp10 2010, p. 62, 「超・電王トリロジー スペシャルインタビュー 脚本家 小林靖子」
  12. ^ a b 宇宙船 2009, pp. 115, 「ごっつい あの人に会いたい [インタビュー]小林靖子」
  13. ^ 宮島和弘 編「INTERVIEW扇澤延男(後編)」『東映ヒーローMAX』 vol.34、(2010 SUMMER)、辰巳出版〈タツミムック〉、2010年9月10日、62頁。ISBN 978-4-7778-0808-3 
  14. ^ 仮面ライダーオーズ/OOO 第21話「バッタと親子と正義の味方」|東映[テレビ]
  15. ^ SPECIALPHOTOBOOK 1999, p. 37, 「ヒュウガ」
  16. ^ マガジンSp10 2010, p. 67
  17. ^ 『超・電王トリロジー COMPLETE BOOK』(2010年、辰巳出版)[要ページ番号]
  18. ^ トッキュウジャー公式完全読本 2015, p. 66, 取材・構成 大黒秀一「TOQGER MAIN STAFF INTERVIEW_01 中澤祥次郎」.
  19. ^ 東映「侍戦隊シンケンジャー 第三十四幕 親心娘心」
  20. ^ 原作:荒木飛呂彦×主演:高橋一生「岸辺露伴は動かない」12/28から3夜連続放送!”. NHK (2020年10月14日). 2020年10月14日閲覧。
  21. ^ ドラマ「岸辺露伴は動かない」新作、12月放送決定!”. NHK (2021年8月15日). 2021年12月27日閲覧。
  22. ^ “NHK版「犬神家の一族」前後編3時間大作のワケ 脚本は「岸辺露伴」小林靖子氏 偶然の横溝正史ファン”. スポーツニッポン (スポーツニッポン新聞社). (2023年4月22日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2023/04/22/kiji/20230421s00041000693000c.html 2023年4月29日閲覧。 
  23. ^ あぃまぃみぃ!ストロベリー・エッグ :作品情報”. アニメハック. 2020年5月29日閲覧。
  24. ^ 灼眼のシャナ :作品情報”. アニメハック. 2020年7月22日閲覧。
  25. ^ “劇場版 仮面ライダーアマゾンズ Season1 覚醒 : 作品情報 - 映画.com” (日本語). 映画.com. https://eiga.com/movie/88937/ 2018年5月31日閲覧。 
  26. ^ “劇場版 仮面ライダーアマゾンズ Season2 輪廻 : 作品情報 - 映画.com” (日本語). 映画.com. https://eiga.com/movie/88938/ 2018年5月31日閲覧。 
  27. ^ Inc, Natasha. “「平ジェネFOREVER」が“電王映画”になった経緯とは?佐藤健の思いが明らかに(写真18枚)”. 映画ナタリー. 2019年9月25日閲覧。

参考文献 編集