熱い空気

松本清張の小説
黒い画集 > 熱い空気

熱い空気」(あついくうき)は、松本清張小説。『別冊黒い画集』第2話として『週刊文春』に連載され(1963年4月22日号 - 7月8日号)、1963年9月に短編集『事故-別冊黒い画集1』収録の一作として、文藝春秋新社(ポケット文春)より刊行された。

熱い空気
作者 松本清張
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 小説
推理小説
シリーズ 別冊黒い画集
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出週刊文春
1963年4月22日号 - 1963年7月8日号
出版元 文藝春秋新社
刊本情報
収録 『事故 別冊黒い画集
出版元 文藝春秋新社 ポケット文春
出版年月日 1963年9月
シリーズ情報
前作 事故
次作 獄衣のない女囚
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
テンプレートを表示

4回テレビドラマ化されている。

あらすじ 編集

東京・渋谷の「協栄家政婦会」に所属する家政婦・河野信子は、他人の家庭を次々と見て回り、その家の不幸を発見するのを愉しみとしていた。外見から見てこの上ない幸せな家庭だと思っても、必ず不幸は存在している…。信子は青山に住む大学教授・稲村達也の家に派遣されたが、体裁屋で二重性格の妻・春子、出来損ない揃いの三人の子供を始めとして、その内実、家族がばらばらであることを見抜く。表面上の優しさと裏腹に陰で信子を罵倒する春子や、面と向かって信子の容貌を嘲弄する子供を前にして、信子は、稲村家を出る前に、何らかの形で仕返しをしなければならないという決心になった。アメリカ製のマッチで新聞を燃やし興じる末っ子を目にした信子の頭に、或る考えがひらめいた。信子の行動とともに稲村家の騒動がはじまり、堅固な大学教授の家庭が揺れる。

エピソード 編集

  • 北九州市立松本清張記念館学芸員の栁原暁子は「日本の近代文学のなかには女中小説の系譜が確かに見られる」が、本作には「そもそも女中小説で描かれている物語は美談に過ぎないことを示す記述」もあり、「それまでの女中小説ではほとんど描かれることのなかった、「仕える側の視点」を読者に意識させた。それは、仕える者の尊厳を強烈に主張するものであると同時に、家政婦という存在が生む劇場空間についての発見でもあった」と述べている[1]
  • エッセイストの酒井順子は「日本のホワイトカラー家庭では、明治期より住み込みの「女中」を雇うことが、一般的だった。(中略)戦後になると、住み込みの女中を置く家は減り、通いの「お手伝いさん」が増えてくる。電化製品の普及による家事労働は減少し、また住み込みの女中を置くことができるような住宅も減少した」「『熱い空気』は、そんな時代に書かれた小説である。お手伝いさんを雇うことができるのは、裕福な家に限られるようになった」と述べた上で、戦前の女中をテーマとする清張の作品として『統監』『鷗外の婢』『老公』を挙げている[2]

書誌情報 編集

テレビドラマ 編集

1966年版 編集

関西テレビが制作し、フジテレビ系の「松本清張シリーズ」(毎週火曜21:00 - 21:30)で1966年3月8日に放送された。

キャスト
スタッフ
関西テレビ制作・フジテレビ 松本清張シリーズ
前番組 番組名 次番組
張込み
(1966.2.22)
熱い空気
(1966.3.8)
万葉翡翠
(1966.3.15)

1979年版 編集

松本清張おんなシリーズ
熱い空気
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『熱い空気』
脚本 服部佳
演出 鴨下信一
出演者 森光子
製作
プロデューサー 石井ふく子
制作 TBS
放送
放送国・地域  日本
放送期間1979年2月4日
放送時間日曜 21:00 - 21:55
放送枠東芝日曜劇場
放送分55分
回数1
テンプレートを表示

松本清張おんなシリーズ・熱い空気』は、TBS系の「東芝日曜劇場」(毎週日曜21:00 - 21:55)で1979年2月4日に放送された。

キャスト
スタッフ
TBS 東芝日曜劇場
前番組 番組名 次番組
松本清張おんなシリーズ6
熱い空気
(1979.2.4)

1983年版 編集

松本清張の熱い空気
家政婦は見た!
夫婦の秘密「焦げた」
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『熱い空気』
脚本 柴英三郎
監督 富本壮吉
出演者 市原悦子
製作
プロデューサー 柳田博美(大映テレビ)
塙淳一(テレビ朝日)
制作 テレビ朝日
放送
放送国・地域  日本
放送期間1983年7月2日
放送時間土曜 21:00 - 22:51
放送枠土曜ワイド劇場
放送分111分
回数1
テンプレートを表示

松本清張の熱い空気 家政婦は見た! 夫婦の秘密「焦げた」』は、テレビ朝日系の2時間ドラマ土曜ワイド劇場」(毎週土曜21:00 - 22:51)で1983年7月2日に放送された。視聴率は27.7%(関東地区ビデオリサーチ社調べ)。

本ドラマが好評を博した結果、設定とサブタイトルを引き継ぐ形でドラマシリーズ『家政婦は見た!』が制作されていくことになった[注 1][4]

2009年にDVD化されている。

キャスト(1983年版) 編集

協栄家政婦会
稲村家
川原家
その他

スタッフ(1983年版) 編集

テレビ朝日 土曜ワイド劇場
前番組 番組名 次番組
西村京太郎トラベルミステリー
「あずさ3号殺人事件」
松本清張の熱い空気
家政婦は見た! 夫婦の秘密「焦げた」
(1983.7.2)

2012年版 編集

松本清張没後20年 ドラマスペシャル
熱い空気
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『熱い空気』
脚本 竹山洋
監督 松田秀知
出演者 米倉涼子
製作
プロデューサー 五十嵐文郎(テレビ朝日)
制作 テレビ朝日
放送
音声形式ステレオ放送
放送国・地域  日本
放送期間2012年12月22日
放送時間土曜 21:00 - 23:11
放送分131分
回数1

特記事項:
テレビ朝日開局55周年記念
テンプレートを表示

松本清張没後20年・ドラマスペシャル 熱い空気』は、テレビ朝日系で2012年12月22日土曜21:00 - 23:11[注 2]に放送された。視聴率は18.6%(関東地区ビデオリサーチ社調べ)。

テレビ朝日開局55周年記念番組第一弾「松本清張没後20年 2週連続ドラマスペシャル」の第二夜として放送された。

当初、同年12月16日日曜21:00より放送予定であったが、11月16日衆議院が解散したことに伴う第46回衆議院議員総選挙の投開票日の当日となり、当該時間帯に『選挙STATION2012』を放送することに伴う放送日時変更の措置がとられた[5][6]

監督は永らく主演の米倉とタッグを組んで映画やドラマを作っている松田秀知が起用されている。信子と稲村家の結末は、原作と異なる本ドラマオリジナルの展開となっている。

2014年3月2日に、本ドラマの設定を引き継ぐ形で『ドラマスペシャル 家政婦は見た!』が放送された。

キャスト(2012年版) 編集

協栄家政婦会
  • 河野信子〈32〉(協栄家政婦会所属の派遣家政婦) - 米倉涼子
  • 平田牧子(協栄家政婦会の会長・元家政婦) - 東ちづる
  • 加藤シズ(信子の家政婦仲間) - 岩本多代
  • 小林ヒロミ(信子の家政婦仲間) - 伊藤麻実子
稲村家
  • 稲村春子〈45〉(田園調布に居を構える稲村家の妻) - 余貴美子
  • 稲村達也〈48〉(春子の夫。東都大学病院の内科部長) - 段田安則
  • 稲村繁子〈70〉(達也の母) - 野際陽子
  • 稲村正一(稲村家の長男) - 藤井太樹
  • 稲村明次(稲村家の次男) - 大八木凱斗
  • 稲村健三郎(稲村家の三男) - 竹邉彰泰
細川家
その他
  • 本田純夫(医学雑誌の編集者) - 東幹久
  • 渡辺真佐子(医学雑誌の編集スタッフ) - 原幹恵
  • 畑中(熱海中央署の刑事) - 中西良太
  • 山下(熱海中央署の刑事) - 浜田学
  • 山田クリーニングの御用聞き - ノッチ
  • 一条藤磨(小説家) - 笹野高史
  • 看護師 - 土谷春陽
  • 医学生 - 石田直也
  • 井上久男、中山京子、幹戸ソビア、園英子、松島紫代、川鶴晃裕、土谷春陽、鎌森良平、石田直也、吉村拓真、友田安伊子、大石彩未、田村将之、林聖也

スタッフ(2012年版) 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ まず大映テレビサイドがドラマ『熱い空気』のシリーズ化を清張サイドに持ちかけ、次いでテレビ朝日サイドが、脚本家やプロデューサーが実際のストーリーを考え、清張は内容監修に関わる、という形で再提案したが、清張は「好評だからといって柳の下の二匹目のドジョウを狙うつもりはない」として、以降の関与を断っている[3]
  2. ^ テレビ宮崎は12月24日月曜21:03

出典 編集

  1. ^ 栁原暁子「松本清張と女中もの文学 - あるいはお手伝いさん、家政婦の視点」(『松本清張研究』第22号(2021年、北九州市立松本清張記念館)収録)
  2. ^ 酒井順子「松本清張の女たち」第12回「覗き見る女、盗み聴く女」(『小説新潮』2023年7月号掲載)
  3. ^ 林悦子『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』(2001年、ワイズ出版)43-44頁。
  4. ^ 「家政婦」の歴史 - 2008年7月11日時点のアーカイブ
  5. ^ テレビ朝日:選挙特番で米倉主演の特別ドラマ放送日変更 まんたんウェブ 2012年11月27日更新
  6. ^ 選挙STATION 番組公式 Webページ 2012年11月27日更新

外部リンク 編集