ルーグネッド・オドーア

ベネズエラのプロ野球選手 (1994-)

ルーグネッド・ロベルト・オドーアRougned Roberto Odorスペイン語発音: [ˈruɣneð oˈðoɾ]1994年2月3日 - )は、ベネズエラスリア州マラカイボ出身のプロ野球選手内野手[注 1])。右投左打。MLBニューヨーク・ヤンキース傘下所属。

ルーグネッド・オドーア
Rougned Odor
ニューヨーク・ヤンキース(マイナー)
読売ジャイアンツ時代
(2024年3月9日、京セラドーム大阪にて)
基本情報
国籍 ベネズエラの旗 ベネズエラ
出身地 スリア州マラカイボ
生年月日 (1994-02-03) 1994年2月3日(30歳)
身長
体重
5' 11" =約180.3 cm
195 lb =約88.5 kg
選手情報
投球・打席 右投左打
ポジション 二塁手
プロ入り 2011年 アマチュアFA
初出場 2014年5月8日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム ベネズエラの旗 ベネズエラ
WBC 2017年

愛称エル・ティポEl Tipo[1]ルーギーRougie[2]

経歴 編集

プロ入りとレンジャーズ時代 編集

 
テキサス・レンジャーズ時代
(2019年6月18日)

2011年にアマチュア・フリーエージェントでテキサス・レンジャーズと契約してプロ入り。契約後、A-級スポケーン・インディアンス英語版でプロデビュー。58試合に出場して打率.262、2本塁打、29打点、10盗塁を記録した。

2012年はA級ヒッコリー・クロウダッズでプレーし、109試合に出場して打率.259、10本塁打、47打点、19盗塁を記録した。

2013年はA+級マートルビーチ・ペリカンズでプレーし、100試合に出場して打率.305、5本塁打、59打点、27盗塁を記録した。8月1日にAA級フリスコ・ラフライダーズへ昇格。30試合に出場して打率.306、6本塁打、19打点、5盗塁を記録した。

2014年はAA級フリスコで開幕を迎え、32試合に出場して打率.279、6本塁打、17打点、6盗塁を記録した。5月8日にレンジャーズとメジャー契約を結んでアクティブ・ロースター入りし[3]、同日のコロラド・ロッキーズ戦で20歳でMLBにデビューした。「8番・二塁手」で先発起用され、4打数無安打だった[4]。5月9日のボストン・レッドソックス戦でクレイ・バックホルツから初安打を、12日のヒューストン・アストロズ戦でブラッド・ピーコックから初本塁打を記録した。メジャー昇格後、有望株のジュリクソン・プロファーが故障離脱、後釜候補の別の選手も脱落したため、二塁のレギュラーに定着[5]。最終的メジャーでは114試合に出場して打率.259、9本塁打、48打点、4盗塁(7盗塁死)を記録した。

2015年10月3日のロサンゼルス・エンゼルス戦で二塁ベースから離れたジョニー・ジアボテラの左脛を目掛けてスライディングした結果、ジアボテラが痛がって内野手が集まり試合が中断したが、幸い大事には至らなかった[6]。この年も二塁のレギュラーを務めた。120試合に出場して打率.261、16本塁打、61打点、6盗塁を記録した。

2016年5月15日のトロント・ブルージェイズ戦で、二塁ベース上で一塁走者ホセ・バティスタスライディングによる守備妨害を受けたが、この際にバティスタを突き飛ばした後に殴打し、両チーム入り乱れた乱闘となり、退場処分を受けた[7][8][注 2]。17日にMLB機構から8試合の出場停止処分が科せられたが、異議申し立てを行った[10]結果、7試合に軽減され確定し、5月27日から適用された[11]。シーズンでは二塁のレギュラーに定着し、150試合に出場し、初めて規定打席に到達した。打率.271、チーム1位[12]の33本塁打、88打点、14盗塁を記録した。

2017年開幕前の2月8日に同年開催されるWBCベネズエラ代表に選出された[13]。3月30日には6年総額4950万ドルで契約延長[14]。この年のシーズンは規定打席に到達にして30本塁打を記録したがOPS.649と振るわず、セイバーメトリクスが導入された1995年以降のMLBにおいて唯一となる「規定打席に到達して30本塁打以上を記録しながらOPSが.700未満」の選手となっている。

2018年4月9日のロサンゼルス・エンゼルス戦で走塁の際に左ハムストリングを痛めて[15]、その後28試合を欠場した。6月1日のロサンゼルス・エンゼルス戦で二塁ベースから離れたアンドレルトン・シモンズの左足を目掛けてスライディングして小競り合いが起きた[16][17]

2019年6月9日のオークランド・アスレチックス戦でライアン・バクターの投球前にホームスティールを成功させた[18][19]

2021年4月1日にチャーリー・カルバーソンのメジャー契約に伴いDFAとなった[20]

ヤンキース時代 編集

2021年4月6日にジョシュ・ストワーズ英語版アントニオ・カブレロとのトレードで、金銭と共にニューヨーク・ヤンキースへ移籍した。2年2400万ドル余りの契約が残っているが、ヤンキースとオドーアの契約は最低保証年俸の約57万ドルであり、2300万ドル余りをレンジャーズが負担する形での放出となった[21][22]。5月4日のヒューストン・アストロズ戦でホームプレートを踏む際にマーティン・マルドナードと接触して左膝を痛め[23]、その後11試合を欠場した。オフの11月19日にDFAとなり、11月23日に自由契約となった[24][25]

オリオールズ時代 編集

2021年11月30日にボルチモア・オリオールズと単年のメジャー契約を結んだ[26]

2022年は135試合に出場し、打率.207、13本塁打、53打点だった。オフの11月6日にFAとなった[27]

パドレス時代 編集

2023年3月1日にサンディエゴ・パドレスとマイナー契約を結び[28]、3月30日にメジャー契約を結んだ[29]。同年は59試合の出場で、打率.203、4本塁打、18打点の成績で、7月18日にDFAとなった[30][31]

巨人時代 編集

2024年1月22日に読売ジャイアンツと契約したことが発表された[31][32]。単年契約で推定年俸は2億円[33]。背番号は23[32]。外野手での登録となり、右翼手としての起用が見込まれていた[34]

2月に来日し、練習試合やオープン戦にも出場していたが、オープン戦の成績は12試合の出場で打率.176(34打数6安打)、0本塁打、0打点に終わり[35]、さらに牽制死が2度あった[36]。3月下旬に開幕一軍メンバーから漏れ、ファーム調整を告げられたが、オドーアはこれを拒否し、退団・帰国を希望。球団もこれを認めたことで、開幕3日前の3月26日に退団が発表された[37][38][39]。4月4日に自由契約公示された[40][注 3]

選手としての特徴 編集

MLBトレード・ルーマーズは、オドーアの長所は長打力と評する一方、四球が少なく、三振は多く、打席では不安定であると指摘する。MLBでは2016年以降、打撃指標のwRC+(打者が打席あたりに産み出した得点の傑出度)が平均的な数値である100を下回っている[44]Sportivaの三尾圭は、低打率であり、選球眼も悪く、三振も多い点を同様に指摘しているほか、変化球に対する空振り率が高く、特に落ちる球を苦手にしていると指摘する。また、長所とされる長打力についても、2023年は本塁打率がMLB平均を下回っている点を指摘している[45]。ただし、2021年からの3年間では四球率やボールゾーンスイング率に関しては改善傾向にある[46]

MLB時代の2019年から2023年の5年間で、選手の貢献度を示すWARは4度マイナスになっており、3Aレベルの選手よりも勝利への貢献度は低い。162試合全てに出場して30本塁打、75打点を記録した2017年も、その本塁打数ながら長打率が4割に満たず、WARはマイナスになっている[47]

野球評論家清水隆行は、オドーアの打撃フォームについて、MLBで残した成績からのイメージよりかはコンパクトで丁寧と評していた[48]アレックス・ラミレスは個人的にオドーアのフォームを気に入っていると言い、日本でも本塁打30本以上は可能と太鼓判を押している[49]。メジャー研究家の友成那智は、フリースインガーであるオドーアについて「日本の投手は制球力があり、緩急を交えるのも得意ですから、翻弄されてしまうかもしれません」とし、「日本野球とは最も合わないタイプの選手」と評価した[50]

守備は二塁が本職であるが、MLBでは6度もリーグ最多失策を記録している[45]。日本のメディアでは外野手としての経験もあると報じられており、巨人では外野手登録となったが、実際のMLBでの外野経験は2023年に僅か9試合右翼を守ったのみで、マイナーリーグでも経験がない[45]。巨人監督の阿部慎之助はオドーア獲得の理由の一つとして、右翼線の打球を必死に追いかけていた様を挙げている[51]。巨人で外野守備兼走塁コーチを務める亀井善行は、二塁経験から打球に対する判断力が優れており[52]、打球の追い方もセンスがあると評しており、二塁と右翼で守備位置からの景色は変わらないため、飛球の距離感さえ掴めばすぐに外野守備にも慣れると考えられていた[53]。このような亀井の評価の一方で、実戦でのオドーアの右翼守備を見た野球評論家の高橋由伸は、飛球の追い方にぎこちなさを感じたと述べた[54]

人物 編集

クリオロ夫人との間に2人の娘がいる[55]。同名の弟はマイナーリーグのA+級に所属したことがある[56]。叔父のルーグラスは同AA級でプレーした経験があり[57]、2024年現在、クリーブランド・ガーディアンズの内野守備兼三塁ベースコーチをしている[58]

2017年にレンジャーズと契約延長した際、その一環として2頭が付いていた。これらは球団共同オーナーのレイ・デイヴィスが所有するクォーターホースだった[59]。当時オドーアはベネズエラにある母方の牧場で馬を4頭飼育しており[60]、将来家族が移住できるようにテキサス州ダラス近郊に牧場を建てる計画がある[61]

Sportivaの三尾圭は上述の2016年の乱闘騒動や2018年の小競り合いを例に挙げ、オドーアの性格について「短気で、けんかっ早い」「『トラブルメーカー』としても有名だ」と断言している[45]。その性格から「狂犬」の異名を付けられている[38]。三尾は前述のプレースタイルやデータを含め、「すべてが日本球界に不向きなタイプ」との評価を下している[47]。アレックス・ラミレスは日本球界でのプレーにおいて、メジャーリーグで活躍してきたプライドがどうなるかを懸念していた[49]

口周りから顎下まで伸びる長いがトレードマーク。しかし、所属する球団によっては自らの意思で全て剃り落とすこともあり、ヤンキースや巨人への入団時には全て剃り落としている[62][63]

詳細情報 編集

年度別打撃成績 編集

















































O
P
S
2014 TEX 114 417 386 39 100 14 7 9 155 48 4 7 6 3 17 1 5 71 7 .259 .297 .402 .698
2015 120 470 426 54 111 21 9 16 198 61 6 7 2 5 23 2 14 79 3 .261 .316 .465 .781
2016 150 632 605 89 164 33 4 33 304 88 14 7 0 4 19 0 4 135 6 .271 .296 .502 .798
2017 162 651 607 79 124 21 3 30 241 75 15 6 0 4 32 5 8 162 13 .204 .252 .397 .649
2018 129 535 474 76 120 23 2 18 201 63 12 12 2 5 43 2 11 127 5 .253 .326 .424 .751
2019 145 581 522 77 107 30 1 30 229 93 11 9 1 1 52 2 5 178 4 .205 .283 .439 .721
2020 38 148 138 15 23 4 0 10 57 30 0 1 0 2 7 0 1 47 2 .167 .209 .413 .623
2021 NYY 102 361 322 42 65 12 0 15 122 39 0 1 1 0 27 2 11 100 3 .202 .286 .379 .665
2022 BAL 135 472 426 49 88 19 3 13 152 53 6 1 0 4 32 1 10 109 9 .207 .275 .357 .632
2023 SD 59 157 138 21 28 9 0 4 49 18 2 1 0 0 17 0 2 37 2 .203 .299 .355 .654
MLB:10年 1154 4424 4044 541 930 186 29 178 1708 568 70 52 12 28 269 15 71 1045 54 .230 .288 .422 .710
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

WBCでの打撃成績 編集















































2017[64] ベネズエラ 6 19 19 5 5 1 0 2 12 4 0 0 0 0 0 0 3 1 .263 .263 .632

年度別守備成績 編集

内野守備


一塁(1B) 二塁(2B) 三塁(3B)




































2014 TEX - 110 194 275 9 70 .981 -
2015 - 119 207 350 17 97 .970 -
2016 - 146 283 428 22 129 .970 -
2017 - 158 321 429 19 129 .975 -
2018 - 127 218 336 9 96 .984 -
2019 - 137 246 294 15 85 .973 -
2020 - 37 54 86 4 18 .972 -
2021 NYY - 74 89 140 9 29 .962 33 12 51 4 8 .940
2022 BAL - 129 209 296 16 73 .969 2 3 2 0 0 1.000
2023 SD 1 0 0 0 0 .--- 30 36 46 3 13 .965 9 6 8 1 1 .933
MLB 1 0 0 0 0 .--- 1067 1857 2680 123 739 .974 44 21 61 5 9 .943
外野守備


右翼(RF)












2023 SD 9 6 0 0 0 1.000
MLB 9 6 0 0 0 1.000
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最高

諸記録 編集

  • 単独ホームスティール:1回 (2019年6月9日[18])
  • 二塁手として三重殺参加:2回 (2018年8月16日[65]、2021年5月21日[66])

背番号 編集

  • 73(2014年 - 同年途中)
  • 12(2014年途中 - 2020年、2021年途中 - 2022年)
  • 18(2021年 - 同年途中)
  • 24(2023年 - 同年途中)
  • 23(2024年 - 同年4月3日)

代表歴 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 読売ジャイアンツでは外野手登録だった。
  2. ^ 前年の地区シリーズの同一カードにてバティスタが行ったバットフリップを発端とした因縁が両チーム間に存在しており、そのことも遠因とされている[9]
  3. ^ シーズン開幕前に退団した外国人選手は、過去には2002年オフに千葉ロッテマリーンズと契約しながらキャンプ中に退団・引退したロバート・ローズ、2011年に巨人に入団するも無断で帰国したのち退団・引退したブライアン・バニスターの2例があり、オドーアは3例目となった[41][42]。なお4月4日での退団は、2005年4月19日に解雇となったダン・ミセリ[43]よりも早く、球団史上最速での退団となった。

出典 編集

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  3. ^ Rangers add INF's Luis Sardinas and Rougned Odor, along with RHP Justin Germano, to active roster; INF Donnie Murphy placed on disabled list”. MLB.com Rangers Press Release (2014年5月8日). 2014年5月9日閲覧。
  4. ^ Scores for May 8, 2014”. ESPN MLB (2014年5月8日). 2014年5月9日閲覧。
  5. ^ 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2015』廣済堂出版、2015年、250頁。ISBN 978-4-331-51921-9 
  6. ^ VIDEO: Odor spikes Giavotella with vicious” (英語). Score Media and Gaming Inc. (2015年10月3日). 2021年6月27日閲覧。
  7. ^ Fracas tarnishes Rangers' win over Jays MLB.com (英語) (2016年5月15日) 2016年5月27日閲覧
  8. ^ 頬にぶち込む"超速"ストレート 伝説の大乱闘に再脚光…ファン興奮「歴代最高」」Full-Count、2023年5月16日。2024年1月22日閲覧
  9. ^ 熱狂"バット投げ"が大乱闘の発端に MLB去って早4年…通算344発男が残した爪痕」Full-Count、2023年1月25日。2024年1月22日閲覧
  10. ^ Discipline for Blue Jays-Rangers incidents announced MLB.com Press Release (英語) (2016年5月17日) 2016年5月27日閲覧
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  12. ^ 2016 Texas Rangers Batting Gamelogs - Baseball-Reference.com (英語) . 2016年11月6日閲覧。
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  18. ^ a b Rougned Odor steals home” (英語). MLB.com (2019年6月10日). 2021年6月27日閲覧。
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  20. ^ Rangers To Designate Rougned Odor For Assignment, Select Charlie Culberson” (英語). MLB Trade Rumors. 2021年4月2日閲覧。
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  23. ^ Rougned Odor to injured list with knee sprain” (英語). MLB.com (2021年5月6日). 2021年6月27日閲覧。
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関連項目 編集

外部リンク 編集