赤毛のアン』(あかげのアン、原題: Anne of Green Gables)は、カナダ作家L・M・モンゴメリ1908年に発表した長編小説。特に児童を対象に書かれた作品ではないが、この数十年は児童文学とみなされている。原題のグリーンゲイブルズ (Green Gables) はアンが住むことになるカスバート家の屋号であり、直訳すると、「緑の切妻屋根[4]という意味になる。

赤毛のアン
Montgomery Anne of Green Gables.jpg
Anne of Green Gables 初版本の表紙
著者ルーシー・モード・モンゴメリ
M. A. and W. A. J. Claus
カナダで執筆され、舞台とした。アメリカ合衆国で出版[1][2]
言語(英語)
シリーズアン・ブックス
ジャンル小説
出版日1908年6月 (L.C. Page & Co.)[3]
次作アンの青春
文章赤毛のアン - Wikisource

概説編集

 
モンゴメリーがアンの容貌のモデルとしたイヴリン・ネスビット[5]。当時アメリカで人気だったコーラスガールで絵のモデル。

モンゴメリは新聞記事で読んだ、「男の子と間違えて女の子を引き取った夫婦の話」に着想を得て、この作品を書いた。彼女はプリンス・エドワード島田舎で育った自身の少女時代も作品に投影した。孤児院暮らしだったアン・シャーリー英語版が、11歳でアヴォンリーのカスバート家に引き取られてからクィーン学院を卒業するまでの少女時代5年間を描いた『赤毛のアン』は人気作となり、モンゴメリーはアンを主人公とする続編や周辺人物にまつわる作品を多数著している。モンゴメリーはイヴリン・ネスビットの写真を雑誌から切り取り、書き物机の上に貼り、主人公アン・シャーリーのモデルにした。また、モンゴメリー自身、早くに両親と離れて祖父母に育てられたため、アン同様、孤独で理解されない子供として育った経験を持つ[6]

第1作『赤毛のアン』ほか、シリーズ全作には、ウィリアム・シェイクスピアやイギリス、アメリカの、『聖書』の句が多数引用されている。『赤毛のアン』を読んだマーク・トウェインはモンゴメリに、1908年10月3日付けで「the dearest and most moving and most delightful child since the immortal Alice」(直訳すると「かの不滅のアリス以来最も可愛らしく、最も感動的で最もゆかいな子」)と絶賛の手紙を送った。これはその後のアンの宣伝コピーとして使われることになった。

なお、『赤毛のアン』は最初にモンゴメリーが複数の出版社に原稿を持ち込んだときは、すべての出版社で出版を断られたので、自宅の屋根裏部屋に“お蔵入り”していた時期が数年ある。年月を経て、モンゴメリーが本作を読み返し、面白いのでやはり出版すべきであると思い直し、出版社に再度交渉すると、今度はトントン拍子に進展したという。

あらすじ編集

プリンス・エドワード島の村、アボンリー。独身のマリラとその兄マシューは、孤児院から男の子を養子に迎えることに決める。だが約束の日、駅に降りたのは、アン・シャーリーという11歳の赤毛の女の子だった。マリラはアンを送り返そうとするが、明るくおしゃべりなアンに心を動かされ彼女を引き取る。

アンは、同い年のダイアナと親友になり、地元の学校に編入。そこでギルバートに髪の色をからかわれ、石盤を彼の頭に打ちおろすという騒動をおこす。アンは学校をやめ、留守番をしている間にダイアナをお茶会に招待するが、ラズベリー水[注釈 1]と間違えてスグリ酒[注釈 2]を飲ませてしまう。ダイアナの母親は激怒してアンと娘を絶交させる。失意のアンは登校を再開し、勉強にうちこむ。冬のある夜、アンの家にダイアナが飛び込んでくる。両親の留守にダイアナの妹が熱を出したと聞いたアンは、ダイアナの家で一晩中看病する。ダイアナの母親はアンに謝罪。アンはダイアナとの交遊を許される。想像力豊かなアンはその後もなにかと騒動をおこすが、周囲からは慕われ、頑固なマリラも心を許すようになる。

アンはギルバートたちとクイーン学院に進学し教員資格取得を目指す。アンは成績トップで奨学金を獲得。クイーン学院卒業後はレッドモンド大学に進学を決める。だが、マシューが銀行倒産の新聞記事を見て、ショックで倒れて急死。目が悪くなったマリラはグリーンゲイブルズの家を売りに出し、知り合いの家に身を寄せることを考える。アンは大学進学を取りやめ、隣町のカーモディの教員になることを決意。アボンリーの教員に決まっていたギルバートは学校理事会にかけあい、アンにアボンリーの仕事を譲る。アンはようやくギルバートと和解し、グリーンゲイブルズで満ち足りた夜を迎える。

登場人物編集

アン・シャーリー (Anne Shirley)
本作の主人公。髪は赤毛で、目は緑がかった灰色。とても痩せていて、青白く、そばかすだらけの顔で、自分の赤毛に劣等感を抱いている。そのため、自分のことを、カラスの羽のように見事に真っ黒な髪に、すみれ色の瞳、顔色は薔薇の花びらのようで肌は透き通るような象牙色、目は星のように輝いており、名前はレディー・コーデリア・フィッツジェラルド(自身のアンという名前がロマンチックではないとマリラに言う)だと思うようにしている。
誕生月は3月。
想像力豊かでお喋り好きな女の子。美しくてロマンチックなものが好きで、美しいものには名前をつけたがる。しかしどこか悲観主義者であり、自分がとても不幸に感じたり、それを演じたりするが、大概マリラに咎められる。正義感が強く、突拍子のない答えを出す。「何故人をいじめるの?」「変わっていることがいけないの?」と発言し、周りを驚かせる。
ノバスコシア、ボリングブロークの小さな黄色い家で生まれた。父はウォルター・シャーリーでボリングブロークの高校教師、母はバーサ・シャーリー(旧姓:ウィリス。母も高校教師をしていたが結婚時に辞めた)。アンは両親について、名前が素敵でよかった、父がジェデダイアみたいな変な名前だったらすごく恥ずかしいと物語の中で語る。
両親とも世間知らずで教会に住んでいるネズミのように貧乏だった。
やせっぽっちで小さく、目ばかり大きい見たこともないほど醜く生まれたアンを母は、こんな美しい子は見たこともないと言い可愛がったが、アンが生後3か月の時に熱病で死亡する。父も4日後、同じ病気で亡くなる。
両親の死後、残された孤児のアンを誰も引き取りたがらなかった。両親共に出身地が遠く親戚も独りもいなかったため、シャーリー家の手伝いに来ていたトーマスのおばさん(アンは自身の身の上を彼女に聞いた)が仕方なく引き取るが、トーマスおばさんの所もとても貧乏で、アンより年下の子供が4人もいたため、アンは子供の世話をさせられた。その後ボリングブロークからメアリーズビルに引越し、そこで暮らしていたが、8歳の時トーマスのおじさんが汽車に轢かれて死に、おじさんの母がおばさんと子供達を引き取ることになったが、アンの引き取りは拒否された。
アンが子供の世話ができるとわかると、川上の方に住んでいるハモンドのおかみさんがアンを引き取ってくれた。ハモンドのおじさんは川の上流の森を切り開いた所で小さな製材所を営んでおり、アンは切り株に囲まれて過ごすことになった。続けて双子が3回も生まれ、子供が8人いた。そこで2年と少し暮らしたがハモンドのおじさんが死んだため、おばさんは親戚に子供をばらまいてアメリカに行った。
アンはホープタウンの孤児院に行った。超満員の孤児院はアンを引き取りたがらなかったが、引き取らないわけにいかず、マリラとマシューが孤児院から男の子を引き取ろうと決心するまで、そこで4か月暮らす。
15歳のとき、クィーン学院にギルバートと同率1位の成績で入学し、翌年大学への奨学金を取って卒業。しかし、大学には行かず、マシューを亡くしたマリラとグリーンゲイブルズで暮らす道を選ぶ。
続編では、2年間アボンリーの学校で教え、レドモンド大学に入学。4年後、22歳で卒業。その後、3年間サマーサイド高等学校の校長を務める。
25歳で、ギルバート・ブライスと結婚して、7人の子供(小さなジョイス、ジェイムズ・マシュー〈ジェム〉、ウォルター、ダイアナ〈ダイ〉、アン〈ナン〉、シャーリー、バーサ・マリラ〈リラ〉)ができる(初めて生まれた子供〈小さなジョイス〉は生後1日で死ぬので、実際に育て上げるのは6人)。
マリラ・カスバート (Marilla Cuthbert)
アンの養母。カスバート家の長女。マシューの妹。
背が高く痩せており、ふくよかさがない。白髪が見え始めた黒い髪を後ろで小さなまげにまとめ、針金のヘアピンを2本さしている。
世間知らずの頑固者で、あまり笑わない。非常に厳格で働き者(台所は片付きすぎているくらい綺麗で、庭には棒切れや石ころ1つおちていない)。
現実主義者でアンの夢物語に呆れたり、しっかりとした女性に育てようとする。「男の子が欲しかった」などアンに冷たい人物に見られがちだが、アンが無実の罪で周りに責められ、「孤児院だから」と言われた際に誰よりも激怒しアンの純粋さを主張する。
ひごろ寡黙なマシューが珍しく自己主張をした時は最大限したがわなければならないと心得ている。
ひとに教訓を与えるのが好きで、子供を育てるからには口を開くごとに教訓を垂れなければならないと信じている。
スグリ酒を作る腕は、プリンスエドワード島一と定評がある。
昔、ギルバートの父ジョン・ブライスと恋仲だったが、喧嘩をし、ジョンが仲直りしようと訪ねてきてもアンがギルバートを当初は許そうとしなかったのと同じように拒否したため、自尊心の強いジョンと決別することになる。
マシュー・カスバート (Matthew Cuthbert)
アンの養父。カスバート家の長男。
アンを引き取ったときは60歳。心臓が悪い。体つきが不恰好で、白髪交じりの黒い髪を猫背の肩にかかるほど伸ばしている。
レイチェル・リンドと妹のマリラ以外の女性を恐れており、女性という不可解な生き物に笑いものにされている気がしておちつかないという、非常に内気な性格をしている。
父親も同じく内気な男性で、森の奥に引っ込みたかったがそうもいかないので村から離れた場所を選んで家をたてた。そのため、グリーン・ゲイブルズは他の家がなかよく建ち並んでいる街道からはほとんど見えない。
普段はマリラが不潔だと嫌がるので控えているが、精神が不安定なときに煙草をすう。その時はマリラも見てみぬふりをする。
アン16歳の年の夏、自分が全財産を預けていた銀行が倒産したという記事を読んで、ショック死する。65歳没。
レイチェル・リンド (Rachel Lynde)
アボンリーの村を通る街道が丘を下っていったところにある、小さなくぼ地に住んでいる。
主婦としての素晴らしさは折り紙つきで、日常の家事をこなすどころか人並み以上にやってのける。村の裁縫の集いを切り盛りし、日曜学校の運営に手を貸したうえ、教会婦人会や国外伝道後援会の幹部でもある。10人の子供を育てあげた。自宅の窓辺に座り、外を通るもの全てに目を光らせ、おかしなものや場違いのものが目に入ったが最後、それが何故なのかをハッキリさせるまでは気がすまないという詮索好き。自分がひとに正直であることを自慢に思っている。
続編では、夫のトマスが死んでから、マリラといっしょにグリーンゲイブルズに住む。
ダイアナ・バリー (Diana Barry)
髪も目も黒色。
ふっくらとした体型で薔薇色の頬をしている綺麗な子。明るく楽しそうな表情は父親似、目と髪の色は母親似である。アンと出会ったときは、アンより1インチ背が低い。誕生月は2月。アンと同い年。沼の近くの斜面にあるリンゴ園の奥の小さな灰色の家に住んでいる。
アンと出会ってまもなく親友となる。
ダイアナという名前について、アンは文句なしに素晴らしいと言ったが、マシューはあまりキリスト教徒らしくない名前だと苦言を示す(ジェーンやメアリーというまともな名前の方が性に合っているという)[注釈 3]。この名前は、ダイアナが生まれる時に部屋を貸していた学校の教師につけてもらったものである。
口を開く前に必ず笑う子で、本を読むのが大好き。
続編では、フレッド・ライトと結婚する。
バリーの奥さん (Mrs. Barry)
ダイアナの母親。子供の育て方が厳しいと評判。髪も目も黒色。背が高く、意志の強そうな口元をしている。
ギルバート・ブライス (Gilbert Blythe)
アンより3歳年上。背が高く、茶色の巻き毛にはしばみ色の瞳。4年前、父親の病気のためアボンリーを離れ、その間学校に行けなかったため、アンと同じクラスになる。学校に復学して早々に、アンの赤毛をからかってニンジンと言ったため、アンに石板で頭をたたかれ、その後数年間口をきかれなくなる。その後アンとは成績トップを争う仲になる。
18歳の年にクィーン学院にアンと同率1位の成績で入学、翌年に金メダルを取って卒業。アボンリーの教員に内定していたが、アンに仕事を譲り、和解する。
続編では、2年間ホワイトサンズの学校で教えて、20歳でレドモンド大学に入学。4年後レドモンド大学卒業。医学生になり、3年後に27歳で卒業。
25歳でアンと婚約、28歳でアンと結婚。

主な日本語訳一覧編集

 
アンの家のモデルになったモンゴメリーのいとこの家(プリンスエドワード島
 
アンの家のモデルになったモンゴメリーのいとこの家の中(プリンスエドワード島

邦題編集

邦題の『赤毛のアン』は、村岡花子が初邦訳を手掛けた時に付けられたものである。村岡は教文館の同僚、カナダ人宣教師ミス・ショーが戦局から1939年にカナダに帰る際に原書を渡された(ショーは出版の翌年に亡くなり、再会することはなかった)。当初、村岡は『窓辺に倚る少女』という題を考えていた[8]が、刊行する三笠書房の編集者・小池喜孝が『赤毛のアン』という題を提案し[9]、当時の社長の竹内道之助が村岡にこれを伝えた。

村岡はこれを一旦断るが、これを聞いた村岡の娘のみどり(当時20歳)が『赤毛のアン』という題に賛同し、これを強く推した。このため村岡は、娘のみどりのような若い読者の感覚に任せることにし、『赤毛のアン』という邦題を決定した[10]。しかし、こうして刊行された『赤毛のアン』の表紙に描かれていたのは、どう見ても金髪の少女[11]であった[12]

なお、イタリア語訳の題名も「赤毛のアン」を意味する Anna dai capelli rossi となっているが、これは、翻訳書の刊行よりも先に、日本のアニメ作品が、この題名でイタリアで放送されたことが影響していると考えられている[13]

主な訳例編集

  • Well now - マシューの口癖。村岡花子訳、松本侑子訳では「そうさな」、きったかゆみえ訳では「そうだな」、神山妙子訳、アニメ版では「そうさのう」。
  • bosom friend - アンとダイアナの間柄を評した言葉。村岡花子訳、松本侑子訳では「腹心の友」[注釈 4]、神山妙子訳、アニメ版では「心の友」。
  • may flower - その名の通り5月頃にプリンスエドワード島内で咲くツツジ科イワナシ属の花であり、この花のない国に住んでいる人がかわいそうとアンに言わせている。村岡花子訳、神山妙子訳、きったかゆみえ訳では「さんざしサンザシ)」としているが実際には別の花である(さんざしはバラ科サンザシ属)。松本侑子訳、アニメ版では「メイフラワー」。
  • Lake of Shining Waters - プリンスエドワード島に実在する湖。作中では、元々地元で Barry's pond (バリーの池)と呼ばれていたものをアンがこう命名したことになっている。村岡花子訳、神山妙子訳、松本侑子訳では「輝く湖水」、アニメ版では「きらめきの湖」。
  • scope for imagination - アンの言動に頻出する言葉。村岡花子訳、松本侑子訳では「想像の余地」、神山妙子訳では「想像/空想の余地」、きったかゆみえ訳では「空想する楽しみ」。
  • raspberry cordial - 村岡花子訳、神山妙子訳、きったかゆみえ訳共に「いちご水(イチゴ水)」、松本侑子訳では「木苺水」。アンがこれと間違えてワインをダイアナに飲ませてしまう。
  • patchwork - きったかゆみえ訳、松本侑子訳では「パッチワーク」、神山妙子訳では「つぎはぎ細工」、村岡花子訳では「つぎもの」[14]
  • quilt - 松本侑子訳では「キルト」、きったかゆみえ訳では「キルティング」、村岡花子訳、神山妙子訳では「さしこ」[14]

アン・シリーズ一覧編集

各タイトルは村岡花子訳に準拠する(『アンの想い出の日々』のみ、その孫である村岡美枝[注釈 5]訳に準拠する)。一般に、『赤毛のアン』から『アンの想い出の日々』までの9冊の本を、アン・ブックスと呼ぶ。アン・ブックスをより狭い範囲に呼ぶ場合もあるが、9冊の本はアンを主人公とするか準主人公とする「アンの物語」である。これに対し、追加の2冊は短編集で、アヴォンリーの村を舞台とし「アンの物語」と同じ背景設定であるが、大部分の作品はアンとは直接に関係していない。総じて題名が示す通り「アンの周囲の人々の物語」である。 なお、4冊目「アンの幸福」の原題はイギリス版とアメリカ版で異なり、イギリス版はAnne of Windy Willows、アメリカ版はAnne of Windy Poplarsで、内容も少し異なる。

 
アンの作者ルーシー・M・モンゴメリーの墓(プリンスエドワード島
書名 原題 出版年 アンの年齢 物語の年代
赤毛のアン Anne of Green Gables 1908 11 - 16 1877-1882
アンの青春 Anne of Avonlea 1909 16 - 18 1882-1884
アンの愛情 Anne of the Island 1915 18 - 22 1884-1888
アンの幸福 Anne of Windy Willows 1936 22 - 25 (1888-1891)
アンの夢の家 Anne's House of Dreams 1917 25 - 27 1891-1893
炉辺荘のアン Anne of Ingleside 1939 33 - 39 1899-1905
虹の谷のアン Rainbow Valley 1919 40 - 41 1906-1907
アンの娘リラ Rilla of Ingleside 1921 48 - 53 1914-1919
アンの想い出の日々 The Blythes Are Quoted 2009 40 - 75 1906-1941
以下はアンとの関連が薄い短編集
アンの友達 Chronicles of Avonlea 1912
アンをめぐる人々 Further Chronicles of Avonlea 1920

派生作品編集

小説作品編集

  • 『こんにちは アン』Before Green Gables (2008年)
    • 「赤毛のアン」100周年を記念して、モンゴメリ財団から依頼された児童文学作家バッジ・ウィルソンが執筆した作品。
    • アン・シャーリーが両親を失い、マシュウとマリラの兄妹に引き取られるまでの11年間を物語る。この原作を元にしたアニメ作品が『こんにちは アン 〜Before Green Gables』として日本でテレビアニメ化されている。

映画作品編集

  • 『天涯の孤児』(1919年)
  • 『紅雀』(1934年)
    • RKO製作、ジョージ・ニコラス・ジュニア監督、ドーン・オデイ主演のモノクロ映画。オデイはこの映画以後、芸名を「アン・シャーリー」とした。

上記の2作品は、いずれも原題はAnne of Green Gables。『紅雀』は日本では1935年に公開され、当時、日本では原作が未だ刊行されていないためこのタイトルとなった(『天涯の孤児』も同様)。

テレビ映画編集

ケビン・サリバン脚本作品編集

  • Anne of Green Gables (1985年)
    • CBC製作の、全3時間強のミニシリーズ。ケビン・サリバン監督、ミーガン・フォローズ主演。
    • 日本では1986年に邦題『赤毛のアン』としてダイジェスト版が劇場公開された。BSやCS等では完全版あるいは前後編でも放送。
  • Anne of Avonlea / Anne of Green Gables: The Sequel (1987年)
    • 1985年にCBCで製作された、Anne of Green Gables の続編。4時間弱ある。アメリカでビデオ化の際に改題された。小説の『アンの青春』のみならず、『アンの愛情』、『アンの幸福』の題材も含まれている。ケビン・サリバン監督、ミーガン・フォローズ主演。
    • 日本では1988年に邦題『続・赤毛のアン アンの青春』としてダイジェスト版が劇場公開された。BSやCS等では完全版あるいは前後編でも放送。
  • Anne of Green Gables: The Continuing Story (2000年)
    • 1987年にCBCで製作された、Anne of Avonlea の続編。3時間強あり、ケビン・サリバンによる脚本は、オリジナル色が強い。ステファン・スケイニ監督、ミーガン・フォローズ主演。
    • 日本では2000年に『赤毛のアン アンの結婚』として、ダイジェスト版が劇場公開された。BSやCS等では完全版あるいは前後編でも放送。
  • Anne of Green Gables: A New Beginning (2008年)
    • グリーンゲイブル以前のアンを、The Continuing Story 後のアンが回想するという形で描く。旧作のシーンが折り込まれたり、『アボンリーへの道』を含めて全作品に登場するレイチェル・リンド役のパトリシア・ハミルトンが長命であったという設定でそのまま登場するが、サリバンのオリジナルストーリーで、父親の生存など設定の変更がいくつかある。モンゴメリの原作のフランチャイズ作品。
    • アン役はバーバラ・ハーシーとハンナ・エンディコット=ダグラス(幼少期)。
    • 日本では邦題『赤毛のアン 新たなる旅立ち』として2011年にBSで放送された。2014年にはLaLa TVにおいて邦題『赤毛のアン 新たな始まり』として放送された。

カナダYTV製作作品編集

  • L.M. Montgomery's Anne of Green Gables (2016年)
    • カナダのテレビ局YTVで製作され、イギリスやアメリカ合衆国でもテレビで放送された。オーストラリア、日本などでは劇場公開された(日本では『赤毛のアン』)。ジョン・ケント・ハリソン監督、エラ・バレンタイン主演。
  • Anne of Green Gables: The Good Stars (2017年)
    • 2017年2月に放送された続編
  • Anne of Green Gables: Fire & Dew (2017年)
    • 2017年7月に放送された続編

テレビドラマ編集

  • アンという名の少女(2017年-2019年)[15]
    • NetflixとCBCが共同でドラマ化した。モイラ・ウォリー=ベケットが制作し、シーズン1では全7話の脚本を担当し、監督はニキ・カーロほかが務める。
    • カナダCBCでは当初"Anne"として、のちに"Anne with an E"として放送され、カナダ国外ではNetflixが配信し、日本語題名は『アンという名の少女』とされた。
    • 2019年放送、2020年配信のシーズン3をもって終了した。

舞台作品編集

1964年に、カナダで、ノーマン・キャンベル(Norman Campbell)等によって制作、初演。1969年イギリス1970年日本1971年アメリカ合衆国で、それぞれ上演された。代表的なミュージカルナンバーは、アイスクリーム。日本では劇団四季が断続的に上演、他にもエステー主催で毎年8月に全国で上演しており、アン役はこれまでに山川恵里佳華原朋美島谷ひとみ神田沙也加高橋愛上白石萌音上白石萌歌[16]美山加恋[17]田中れいな[18]が務めている。また、「国連クラシックライブ協会」が主催の「生命のコンサート音楽劇」としても上演されている。近頃では、海外公演も行なわれている。なおミュージカルでない純粋舞台劇としては日本では唯一劇団エンゼルのみが上演可能(上演権許諾済)で、ここが主催する舞台『赤毛のアン-みどりやねの朝-』では嘗てアニメでアンを演じた山田栄子がマリラを演じている。

アニメ作品編集

漫画作品編集

  • 第1作『赤毛のアン』から第3作『アンの愛情』までの3作が、いがらしゆみこ高橋美幸により漫画化された。
  • 2013年では「小学館学習まんが 世界名作館」シリーズの1作として、第1作『赤毛のアン』が高見まこにより漫画化された。

その他編集

  • 日本においては、2009年にすべてのキャストを男性声優で行ったドラマCD『サウンドシアタードラマCD 赤毛のアン』が発売された(例えばアン役に代永翼、ダイアナ役に岸尾だいすけ等)。
  • 山本史郎『東大の教室で『赤毛のアン』を読む』 - 村岡訳にマシューの死後のマリラの独白を大幅カットしたのはなぜか?という問題を考察。
  • NHK連続テレビ小説花子とアン』 - 『赤毛のアン』の日本語翻訳の第一人者である村岡花子の生涯を描いたテレビドラマ。所々に『赤毛のアン』を題材としたエピソードが盛り込まれているが、続編にあたる『アンの青春』、『アンの愛情』を題材としたエピソードも採り入れている。序盤と終盤には本書翻訳・出版に至るエピソードが描かれた。
  • 湊かなえ白ゆき姫殺人事件』 - アンとダイアナの交流がモチーフとして使われている。

赤毛のアン事件編集

2001年に、『赤毛のアン』の原題である「Anne of Green Gables」の商標登録を認められたサリヴァン・エンターティメント・インターナショナル・インコーポレーテッド(カナダ:sullivan entertainment international inc)に対し、同カナダのプリンスエドワードアイランド州が、一部商品についての登録無効の審判を2004年特許庁に請求し、翌年無効審決を得た。これに対し、上記サリヴァン(カナダ)はこの無効審決の取消しを求める裁判を起した。

日本の知的財産高等裁判所は「審決は、原告(サリヴァン(カナダ))が、本件原作者の遺産相続人,被告,後記アン・オブ・グリーン・ゲーブルス・ライセンシング・オーソリティ・インク(以下「AGGLA」という。)らの承諾を得ることなく本件商標登録を行ったことは、これらの者との信義誠実の原則に反し、穏当を欠くものであり、かつ本件商標を我が国の商標として登録することは、被告を含むカナダ国政府との間の国際信義に反するものであると判断し、本件商標登録は、商標法4条1項7号に違反し、無効であるとした」とし、これを退けた[20][21][22]

関連書編集

関連項目編集

脚注編集

[脚注の使い方]

注釈編集

  1. ^ Raspberry cordial.
  2. ^ Currant wine.
  3. ^ 「ダイアナ」の由来がローマ神話の女神ディアーナであるため。「マシュー」はイエス・キリストの弟子「マタイ」の英語名。
  4. ^ 訳者である村岡花子と歌人・柳原白蓮との間柄を表す際にも用いられている。
  5. ^ 花子の(養女)・みどりの実娘であるため、実際は大姪に当たる。

出典編集

  1. ^ Devereux, Cecily Margaret (2004). A Note on the Text. In Montgomery (2004), p.42. ISBN 9781551113623. http://books.google.com.au/books?id=9kpgvRjMlNMC&pg=PA42 
  2. ^ Montgomery, Lucy Maud (2004) [1908]. Devereux, Cecily Margaret. ed. Anne of Green Gables. Peterborough, Ontario: Broadview Press. ISBN 1-55111-362-7 
  3. ^ 'Anne of Green Gables' 1st edition sells at auction for US$37,000, a new record, "The Guardian", December 12, 2009
  4. ^ 「赤の補色である緑をイメージしたタイトルであるのも、その鮮やかな色彩の対照を意識させる(堀啓子『日本ミステリー小説史』2015年中公新書p.143)。
  5. ^ 赤松佳子「刊行百周年を機に読み直す『赤毛のアン』 (特集 ジェンダーと言語文化--少女・小説・ジェンダー)」『奈良女子大学文学部研究教育年報』第6号、奈良女子大学文学部、2009年、 37-46頁、 ISSN 13499882NAID 110008670590
  6. ^ 竹内素子/伊澤祐子/藤掛由実子「モンゴメリの日記(八) - 友の死…『日記抄』一九一九年二月七日をもとに -」『研究紀要』第33巻、仙台高等専門学校、2004年2月、 154-142頁、 ISSN 03864243NAID 110004734440
  7. ^ a b 実は誤訳や省略がいっぱいだった村岡花子訳の「アン」”. smartFLASH (2014年8月3日). 2020年11月1日閲覧。
  8. ^ 村岡恵理編『花子とアンへの道』(新潮社 2014年)「『赤毛のアン』誕生!ペンと共に生きた75年」によれば、村岡は他に『夢みる少女』とかも考えていた。
  9. ^ 第313回「赤毛のアン」の名付け親「小池喜孝」の本 - 山下敏明さんのあんな本、こんな本 なお、小池はその後、三笠書房を辞し、北海道北見北斗高等学校へ社会科教諭として赴任した。
  10. ^ 小池の提案は原稿が印刷所に回される前夜だったため、花子のこの翻意が1日遅ければ、邦題は『窓辺に倚る少女』となっていた可能性があった。(村岡恵理『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』マガジンハウス、2008年ISBN 978-4-8387-1872-6
  11. ^ 雑誌『少女の友』の昭和15年(1940年)2月号で紹介されたイギリスの画家、ラルフ・ピーコックの『エセル』と題した人物画。
  12. ^ 村岡恵理『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』マガジンハウス、2008年ISBN 978-4-8387-1872-6
  13. ^ カナダ人もびっくり! イタリアに『赤毛のアン』を広めたのは日本だった!
  14. ^ a b 2008年に行われた村岡美枝による改訂・補訳の際にも「異なる文化の二つの言語の奥にある心情の共通点をすくいあげて選んだこの言葉は残したい」としてあえて直さなかったとされる。出版翻訳家 村岡美枝さん「贈ることで心が伝わる、それが本。子どもたちに、そんな本を届けたい(後編)”. フェロー・アカデミー (2014年4月10日). 2015年2月22日閲覧。
  15. ^ “Netflix「赤毛のアン」をドラマ化、「ブレイキング・バッド」脚本家が参加”. 映画ナタリー. (2016年8月25日). http://natalie.mu/eiga/news/199187 2016年8月26日閲覧。 
  16. ^ 「赤毛のアン」アン・シャーリー役に上白石萌歌、昨年の姉からバトンタッチ”. ステージナタリー (2016年2月29日). 2016年2月29日閲覧。
  17. ^ “美山加恋、ミュージカル『赤毛のアン』主人公・アン役に決定!”. クランクイン! (ハリウッドチャンネル). (2017年3月1日). http://www.crank-in.net/entertainment/news/48547 2017年3月1日閲覧。 
  18. ^ “「赤毛のアン」アン・シャーリー役に田中れいな「皆さまに愛されるアンを」”. ステージナタリー (ナターシャ). (2019年2月28日). https://natalie.mu/stage/news/321873 2019年2月28日閲覧。 
  19. ^ 公式サイト
  20. ^ 赤毛のアン事件 知財高裁平成17(行ケ)10349号 平成18年9月20日判決(四部)<棄却> 〔特許ニュース2006年10月27日号〕
  21. ^ 審決取消請求事件 平成17(行ケ)10349 平成18年9月20日 知的財産高等裁判所
  22. ^ 松原洋平「判例研究 著著作物の題号と同一構成の商標が公序良俗に反し無効とされた事例 : Anne of Green Gables事件」『知的財産法政策学研究』第15号、北海道大学大学院法学研究科21世紀COEプログラム「新世代知的財産法政策学の国際拠点形成」事務局、2007年6月、 371-385頁、 ISSN 18802982NAID 120002277642
  23. ^ 熊井明子「花子・アン・シェイクスピア」村岡恵理監修『KAWADE夢ムック 文藝別冊 総特集 村岡花子』河出書房新社、2014年ISBN 978-4-309-97824-6

外部リンク編集