ニラ
ニラ(韮、韭、Allium tuberosum)はネギ属に属する多年草。緑黄色野菜である。
ニラ | |||||||||||||||||||||
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![]() ニラ (Allium tuberosum)
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Allium tuberosum Rottler ex Spreng. (1825) [1][2][3] | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Oriental garlic[2]、Chinese chives[2][3] |
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 88 kJ (21 kcal) |
4.0 g | |
デンプン 正確性注意 | 1.7 g |
食物繊維 | 2.7 g |
0.3 g | |
飽和脂肪酸 | (0.04) g |
一価不飽和 | (0.01) g |
多価不飽和 | (0.08) g |
1.7 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(36%) 290 μg(32%) 3500 μg |
チアミン (B1) |
(5%) 0.06 mg |
リボフラビン (B2) |
(11%) 0.13 mg |
ナイアシン (B3) |
(4%) 0.6 mg |
パントテン酸 (B5) |
(10%) 0.50 mg |
ビタミンB6 |
(12%) 0.16 mg |
葉酸 (B9) |
(25%) 100 μg |
ビタミンC |
(23%) 19 mg |
ビタミンE |
(17%) 2.5 mg |
ビタミンK |
(171%) 180 μg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 1 mg |
カリウム |
(11%) 510 mg |
カルシウム |
(5%) 48 mg |
マグネシウム |
(5%) 18 mg |
リン |
(4%) 31 mg |
鉄分 |
(5%) 0.7 mg |
亜鉛 |
(3%) 0.3 mg |
銅 |
(4%) 0.07 mg |
セレン |
(1%) 1 μg |
他の成分 | |
水分 | 92.6 g |
水溶性食物繊維 | 0.5 g |
不溶性食物繊維 | 2.2 g |
ビオチン(B7) | 2.1 µg |
硝酸イオン | 0.3 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[5]。廃棄部位: 株元 | |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
名称編集
『古事記』では加美良(かみら)、『万葉集』では久々美良(くくみら)、『正倉院文書』には彌良(みら)として記載がある。このように、古代においては「みら」と呼ばれていたが、院政期頃から不規則な転訛形「にら」が出現し、「みら」を駆逐して現在に至っている。近世の女房言葉に二文字(ふたもじ)がある。
方言では、ふたもじ(二文字。千葉県上総地方)、じゃま(新潟県中越地方)、にらねぎ(韮葱。静岡県、鳥取県などの一部)、こじきねぶか(乞食根深。愛知県、岐阜県の一部)、とち(奈良県山辺郡、磯城郡)、へんどねぶか(遍路根深。徳島県の一部)、きりびら(沖縄県島尻郡)、ちりびら(沖縄県那覇市)、きんぴら(沖縄県那覇市)、んーだー(沖縄県与那国島)などがある[6]。
特徴編集
夏には葉の間から30 - 40cmほどの花茎を伸ばす。花期は8 - 10月頃。花は半球形の散形花序で白い小さな花を20 - 40個もつける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、花弁が6枚あるように見える。雄蕊(おしべ)は6本、子房は3室になっている。子房は熟すると割れて黒色の小さな種を散布する。
本種の原種は、中国北部からモンゴル・シベリアに自生する Allium ramosum で、3,000年前以上前に栽培化されたと考えられる。この種とニラを同一種とみなす場合もある[7]。株分けまたは種によって増やす。
全草に独特の匂いがある。このため、禅宗などの精進料理では五葷の一つとして忌避される。匂いの原因物質は硫化アリル(アリシン)などの硫黄化合物である。
生産編集
利用編集
食材編集
緑色の葉ニラの他、次のものがある。
- 黄ニラ
- ニラの芽が出る前の根株に覆いを被せて光を制限することで軟白化させた中華料理の食材。ニラ特有の臭みがなく、より柔らかく、甘みが有る。日本では岡山県が主産地。
- 花ニラ
- ニラの花茎と若い蕾を食べる中華料理の食材。花ニラ専用の品種が栽培されている。日本で主に栽培されているのは、台湾から伝わったテンダーポールという栽培品種である。ハナニラ属 (Ipheion) のハナニラは別種である。
なお、形状や色がよく似たスイセンの葉をニラと間違えて食べ、中毒になった例があるので注意が必要である[8]。
調理編集
細長くまっすぐに伸びた葉は加熱すると柔らかく、和食で汁の実や薬味、おひたしなどにする他、中華料理、韓国料理によく用いられる。若い花芽もおひたしや炒め物として食べることが出来る。
中華料理では、単独や他の野菜や肉と合わせた炒め物、レバーと炒め合わせた物(レバニラ炒め、またはニラレバ炒め)、焼きそば(「韭菜炒麺」)、餃子の具(中国では一般の餃子にはニラを混ぜ入れることは少なく[9]、ニラを使う物は「韭菜餃子」と称して区別される)、ニラ饅頭(点心)、春巻き(黄ニラ)、ニラの卵とじなどがポピュラーな用途である。春節(旧正月)には、黄ニラと豚肉を使った春餅の料理を食べる[10]。北京料理では、羊肉しゃぶしゃぶの薬味のひとつとして、ニラの花の塩漬けが用いられる。 郷土料理では、岡山県で、黄ニラが寿司の具としても用いられる。栃木県鹿沼市などでは、蕎麦の具として茹でたニラを添えた、ニラ蕎麦がある。大分市周辺には、ニラを主な具とするニラチャン(ニラちゃんぽん)という麺料理がある。
栄養編集
栄養価が高く、スタミナが付く食材として利用されている。β-カロテンやビタミンA、ビタミンC、カルシウム、リン、鉄などのミネラルに富み、匂い成分の硫化アリルがビタミンB1と結合してその吸収を良くし、代謝機能、免疫機能を高め、疲労回復に役立つ。また、整腸作用があり、昔より胃腸(特に下痢)に効く野菜として親しまれ、症状が重い時はニラの煮汁を飲んでも効果がある。
生薬編集
- 種子は、韮子(きゅうし)という生薬で腰痛、遺精、頻尿に使う。賛育丹などに配合される。
- 葉は、韮白(きゅうはく)という生薬で強精、強壮作用がある。
文化編集
和名に「ニラ」を含む種編集
ネギ亜科の別属にも、和名に「ニラ」を含むものがあるが、本種とは近縁ではない。
- ニラモドキ Nothoscordum bivalve
- ハタケニラ Nothoscordum fragrans
- ハナニラ Ipheion uniflorum
画像編集
ニラの花(千葉大学キャンパス)
脚注編集
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium tuberosum Rottler ex Spreng.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月8日閲覧。
- ^ a b c "Allium tuberosum Rottler ex Spreng.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 18400121. Retrieved 2012-07-08.
- ^ a b Allium tuberosum Rottler ex Spreng., ITIS 2012年7月8日閲覧。
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ 尚学図書(編)『日本方言大辞典』小学館、1989年。
- ^ Blattner, FRANK R and Friesen, NIKOLAI (2006). “Relationship between Chinese chive (Allium tuberosum) and its putative progenitor A. ramosum as assessed by random amplified polymorphic DNA (RAPD)”. Documenting domestication: new genetic and archaeological paradigms. Univ California Press, Berkeley: 134-142.
- ^ “スイセンをニラと間違えて食べてしまったら… そっくりの有毒植物にご注意を! イヌサフランなど死亡例も…”. 産経ニュース (産経新聞社〈産経デジタル〉). (2016年4月23日). オリジナルの2016年4月26日時点によるアーカイブ。
- ^ 江獻珠『中國點心製作圖解』萬里機構・飲食天地出版社、1994年。中国、香港の点心の作り方を示す書籍にニラをまぜる記述がない。日本の料理書でも、第二次世界大戦前のものにニラを使う記述はない。
- ^ 青山企画(編)『中国料理百科事典』同朋舎出版、京都、1988年、p. 41。