ケーキ

ケーキと称される洋菓子、およびそれに類する菓子や食品

ケーキ: cake /kʰeɪk/, : gâteau /ɡa.to/)は、洋菓子の一種。

イチゴが乗った、切られたショートケーキ

概要 編集

日本語で単にケーキというと、一般には、スポンジケーキクリームを塗り果物を載せたものを指すが、広義では、チーズケーキフルーツケーキなどクリームや果物を載せないものや、クッキーを砕いた土台の上にクリームチーズの生地を敷き、冷やして固めたレアチーズケーキなど、様々な種類を指すこともある。

多くのケーキは何らかの穀物の粉末(多くは小麦粉)、結着剤(多くは鶏卵や小麦粉に含まれるグルテン)、油脂植物油バターラードシュマルツなど)、水分(牛乳バターミルク、果物のピュレーなど)、膨張剤(酵母重曹、ベーキングパウダーなど)を配合して作られる。また、欧米では焼き菓子のことを広く「ケーキ類」を示す語で指す。

なお、英語の用法では密度の高い食感の固形の食べ物や、石鹸などといった食品以外の固形物をcakeと呼ぶことがある。例としてはフィッシュケイク(fish cake=蒲鉾)、ライスケイク(rice cake=)、イエローケーキ(yellow cake=ウラン精鉱の別称)などがあり、脱水ケーキと呼ばれる汚水の処理過程で生成される固形物を単に「ケーキ」と呼ぶ場合もある[注 1]

店頭で販売されるときは、「ホール」単位、あるいは切り分けられて(カット)「ピース」単位で販売されることが多い。

名称と語源 編集

英語ではcake(ケーキ / ケイク)、ドイツ語ではKuchen(クーヘン(広義))、フランス語ではgâteau(ガトー)、イタリア語ではtorta(トルタ、大きなケーキ)、dolce(ドルチェ、広義で英語のsweetに相当する)、またはpasta(パスタ、麺類や小さいケーキ)という。

英語には1200年頃から見られ、古ノルド語 kaka から入ったとされる[1]

英語 cake
ノルド語アイスランド語 kaka
スウェーデン語 tårta
デンマーク語 kage
オランダ語 het gebak, de taart, de koek, de cake
ドイツ語 der Kuchen, die Torte
ロシア語 торт(cake)、Пирожное(pie, tart)
チェコ語 koláč
ハンガリー語 torta, sütemény, kalács(ミルク入りのパン)
イタリア語 torta, dolce, pasta
フランス語 gâteau
ワロン語 wastea
インドネシア語 kue
スペイン語 pastel, torta
中国語 蛋糕(ダンガオ)
韓国語 케이크

歴史 編集

最古のケーキはスイス新石器時代の村落跡から見つかっている。ただし、古代世界におけるケーキとは、穀物などを練ってパテ状にした平らで固いものを指す。このようなケーキは古代ギリシア、古代ローマ時代にもさかんに作られ、特に宗教儀式に用いられた。例えば、古代ローマのマルクス・ポルキウス・カト・ケンソリウス(大カトー)は著書の「農業論」の中で様々なケーキを列挙している。

現代のケーキのルーツはいくつかあり、その一つはパンである。長い歴史の中でケーキとパンの概念の差は非常に曖昧であるが、「ぜいたくな平らなパン」をケーキと称していたようである。1398年に書籍翻訳家のジョン・トレヴィサ(John Trevisa)がケーキの最大の特徴として、焼いている最中にひっくり返して両面を平たくすることであると記述している。

ポリッジ(オートミールなどの穀物を水や牛乳でおかゆにしたもの)もまたケーキのルーツの一つである。ポリッジにプラムを利用したプラムポリッジはおかゆというよりも、固形に近く、これを蒸してプディングにする製法が生まれた。そしてこれを焼いたものが中世の初期のフルーツケーキとなった。

またもう一つのルーツとして、パンケーキがある。パンケーキは小麦粉に牛乳と卵をといて焼いたものである。卵の膨張力を利用してふくらませるという製法が現代のケーキへの道をつけている。

卵白の膨張力は古くから知られており、ルネサンス期の料理書にも記述されている。フォークの普及以前では卵白の撹拌作業は非常に大変な作業ではあったものの、次第に卵白を撹拌したものを菓子などのふくらみに利用されるようになっていった。1615年には現代のスポンジケーキと同じようなレシピが掲載された本が出版されている。(ジャーヴェス・マーカムの 「The English Housewife」)

17世紀、18世紀の調理器具の発達も重要である。輪型が作られなければ、円柱状のケーキは難しかっただろう。またオーブンの発達もケーキの進化に寄与している。特に1780年に調理用レンジが発明され、温度管理が容易になった。

また、18世紀初期、料理人はイーストの代わりに卵を使えばケーキが膨らむということに気づいていたようで、1727年エリザベス・スミスが「Compleat Housewife」の中で卵だけで膨らませるケーキのレシピを何点か載せている。ただし卵だけで膨らませるには大量の卵が必要であった。

そして化学的膨張剤が出現する。1790年代アメリカでは真珠灰(パールアッシュ)が利用され始めた。これは短時間にケーキをふくらませることはできたが、風味が良くなく、そのうち重曹にとって代わられた。1850年頃、ベーキングパウダーが発明され現代の軽くて柔らかいケーキが誕生した[2]

ケーキの種類 編集

生地の膨張方法による分類 編集

ケーキの口当たりをよくするためには、ケーキを焼き上げるときに何らかの形で生地に空気を含ませることが必要になる。このため多くのケーキは、

  1. 酵母(イースト)
  2. 固く泡立てた卵白メレンゲ
  3. 水を加えて泡だてた卵黄[3]
  4. 生地に練り込むか折り込むかした油脂(バターもしくはショートニング
  5. 重曹ベーキングパウダー
  6. 生地の水分

などのうち少なくともどれか1つを膨張剤として用いる。材料の配分により、酵母を使ったケーキは菓子パンとの、バターやショートニングを使ったケーキはパイとの区別をつけることが難しいものがある。

酵母(イースト)で膨らませるもの 編集

メレンゲで膨らませるもの 編集


練り込んだ油脂類で膨らませるもの 編集

重曹やベーキングパウダーで膨らませるもの 編集

生地の水分で膨らませるもの 編集

その他の分類 編集

シュー生地を使ったもの 編集

プディング状のもの 編集

ビスケット・クッキー状のもの 編集

形状や用途による分類 編集

ケーキのサイズ 編集

日本におけるケーキサイズの単位  編集

日本では、円形ケーキのサイズを「号」という単位で表示している。この「号」はケーキ本体の直径を表しているが、これは日本で過去に計量単位として使用されていた「尺貫法」に由来するものである。

1号は直径1寸(約3cm)を意味し、1号大きくなるごとに3cmずつ直径が長くなる[4]

号数×3cm=ケーキの直径

大きさの変化
サイズ 直径 3号を1としたときの面積比
3号 9cm 1
4号 12cm 1.77
5号 15cm 2.77
6号 18cm 4
7号 21cm 5.44
8号 24cm 7.11
9号 27cm 9
10号 30cm 11.11

道具 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 山形県の郷土菓子(山形県以外でも生産はされている)である「ミルクケーキ」は加糖練乳カルシウムを加え板状にして乾燥させたもので、一般的な意味での「ケーキ」ではないが、この定義に従って命名された「ケーキ」である。

出典 編集

  1. ^ Cake”. Online Etymology Dictionary. 2010年7月13日閲覧。
  2. ^ ニコラ・ハンブル『ケーキの歴史物語』原書房、2012年、14-35頁。ISBN 978-4-562-04784-0 
  3. ^ 野口道子「卵黄泡による小麦粉の膨化調理に関する研究 (第1報)」『家政学雑誌』第21巻第3号、日本家政学会、1970年6月20日、166頁、doi:10.11428/jhej1951.21.166ISSN 0449-9069NAID 130003868255CRID 1390001206329879680 
  4. ^ FAQ”. 一般社団法人日本洋菓子協会連合会. 2019年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月25日閲覧。

関連項目 編集