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ミートホープ

かつて日本の北海道苫小牧市にあった食品加工卸会社
ミートホープ本社苫小牧工場
(2007年7月19日撮影)

ミートホープ株式会社(Meat Hope inc.)は、北海道苫小牧市本社があった食品加工卸売会社。

会社概要編集

1976年昭和51年)に田中稔が創業[1]。当時は食肉の加工と販売が事業の中心であった。最盛期は、北海道の食品加工卸業界売上第1位であった。従業員は約100人、グループ全体で500人程度だったという(2006年1月現在)。また、ミートホープの創業者でもあった田中社長は、中学校卒業後、たたき上げで事業を展開、2006年4月には「挽肉赤身脂肪の混ざり具合を均一にする製造器」を開発したとして、文部科学大臣表彰創意工夫功労賞を受賞した(後に返上)。

しかし、受賞以前から食肉偽装が行われており(後述)、製造したチャーシューに対し、法律で指定した添加物の基準値が超えていたとして業務停止命令を受けている[要出典]

田中社長は自ら肉の研究をし、社内では肉のことを知り尽くした「天才」と言われていた。しかしその実態は「商品開発」と称して、内臓など安い物を配合し、人為的に品質を良いものに見せかけるというものだった。2007年(平成19年)6月20日に発覚した牛肉ミンチの品質表示偽装事件(次節に詳細)を筆頭に数々の不正が明らかとなり、事業の継続が不可能となった。2007年7月17日自己破産を申請、同日破産手続開始決定[2]2008年8月7日、費用不足のため破産廃止すなわち法人格消滅となり、本社屋も売却後に一旦は残されたものの買い手がつかなかったため解体されて現存しない。

田中社長は逮捕・起訴され[3]2008年平成20年)3月19日に、不正競争防止法違反(虚偽表示)と刑法詐欺罪で、札幌地方裁判所懲役4年の実刑判決を受けた。田中社長は「早く罪を償いたい」と、札幌高等裁判所控訴せず、確定判決となっている[4]

牛ミンチ偽装事件編集

2002年、元工場長の告発により地元紙に食品偽装事件が掲載されたが、社名と地域は報道されず、公的機関も動かなかった[要出典]

1995年に常務としてミートホープに入社した赤羽喜六は、偽装を知ると社長に改善を求めたが聞き入れられず、行政指導による改善を期待し、匿名で行政機関への告発を始めるが、調査は行われなかった[5]

2006年4月、赤羽はミートホープを退職。身分を明かした上で農林水産省北海道農政事務所に不正挽肉の現物を持参して調査を依頼したが、同事務所はこれを受け取らず、実質的にミートホープへの指導も行わなかった[6]。後に農水省は、事務所への訪問記録はあるが、肉の持ち込みを確認する情報は残されていなかったと回答している[7]。また農水省は「北海道内の業者と認識したため、3月24日に道に対応を依頼した」[8]としているが、北海道庁環境生活部は「そのような記録は無い」[9]とした。なお、2006年時点でミートホープは東京事務所を開設しているため、管轄は農水省にあったという。

後に数名の幹部も退職して赤羽に加わり、報道機関への告発を開始。北海道新聞社NHKには黙殺されたが[10]2007年春、告発を受けた朝日新聞社が調査を開始し、商品をDNA検査によって牛か豚かを調べた結果、偽装が立証される[11]。同年6月20日朝日新聞で北海道加ト吉(加ト吉連結子会社)が製造した「CO-OP 牛肉コロッケ」から豚肉が検出されたことを報道した。加ト吉が事実確認を行ったところ、北海道加ト吉には原料の取り扱いミスはなく、ミートホープの責任者は加ト吉に「納入している牛肉に豚肉が混ざっていた」と報告した[12]。同紙の取材にも社長は「故意ではなく、過失」であったと強調していた。

この件に対し、ミートホープの記者会見でも社長は故意である事を否定していたが、会見中に取締役であった長男に促され、自ら関与を認めた[13]。この時社長は、どのように肉を混ぜるのかという単価計算のされた紙を持っていた。

その後、牛肉100パーセントの挽肉の中に、豚肉鶏肉パンの切れ端などの異物を混入させて水増しを図ったほか、色味を調整するために、血液を混ぜたり、味を調整するために、うま味調味料を混ぜたりしたことなどが判明した。

その他にも、消費期限が切れた肉やクレーム品として返品された肉をラベルを変えて出荷したり、腐りかけて悪臭を放っている肉を屑肉にして、少しずつ混ぜたりする成型肉などの不正行為、牛肉以外にもブラジルから輸入した鶏肉を「日本産の鶏肉」と偽って、自衛隊などに販売していたことや、サルモネラ菌が検出されたソーセージのデータを改竄した上で、小中学校向け学校給食に納入していたことや、冷凍肉の解凍に雨水を利用していたことも明らかになっている。

6月24日北海道警察不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で本社など10ヶ所の家宅捜索を行った。

社長は、マスメディアの取材や公判に於いて、「半額セールで喜ぶ消費者にも問題がある」「取引先が値上げ交渉に応じないので取引の継続を選んだ(コストダウンのため異物を混入させた)」などと他者に責任を転嫁する発言を繰り返した[要出典]。一方で食に対する不安を与えた事への謝罪もしている[14]

これら一連の情報は、内部告発が発端となったもので、公益通報制度のあり方に一石を投じる事件でもあった。

この事件は告発者の赤羽にも深い傷跡を残しており、かつての取引先からは「偽装と知っていて売りつけたのか」と批判された。妻とも離婚し、ミートホープ時代の同僚とも連絡を絶ち、住んでいた苫小牧市を離れて生家の長野県で隠遁生活を送ることとなった[15]。赤羽は2017年の取材に「もし当時に戻れたら告発などしない」「本人の利益を考えたら告発はダメ」と後悔を滲ませていた[16]

取引先への影響編集

農林水産省調査では、ミートホープの流通量は、一般消費者用(4,300トン)、業務用(5,504トン)、特定施設向け(34トン)である[17]

  • 加ト吉 - 取引材料を使用した冷凍コロッケ計20種を回収[18]
    • なお、北海道加ト吉の工場長が本来捨てるべきであるコロッケをミートホープに販売して、20~30万円の利益を不正に受け取っていたことも明らかになった。この収益は会社の利益に計上せず社内の懇親目的に使用していたといい、この工場長は同日付で解任された。これに絡み、加ト吉創業家の加藤義和は経団連理事の他、社外の公職をすべて退いた[要出典]
  • 日本生協連 - 牛肉とされた23品目に豚肉が混入[19]
  • JT - 牛ミンチ使用の冷凍コロッケ計6種を自主回収[20]
  • ミスタードーナツ - ベーコンの取引。スープの販売を中止[21]
  • イオン - 総菜の牛肉コロッケの取引[22]
  • 苫小牧市公立小中学校給食 - ブラジル産の鶏肉を日本産と偽って出荷[23]。またサルモネラ菌などが検出されたハムやソーセージなどを出荷[24]
  • その他学校給食として、22道府県で14トンが取引された[25]

関係会社編集

また、元従業員により2008年に「正直コロッケ」が発売された[26]

脚注編集

  1. ^ テレメンタリー2007「裏切りの肉職人~偽装で叩き上げた丁稚社長の半生~」
  2. ^ ミートホープ(株) | 倒産速報 | 最新記事 | 東京商工リサーチ
  3. ^ asahi.com:ミートホープ社長、詐欺容疑で追送検 取引先だまし利益 - 食品不正
  4. ^ “元社長、実刑判決が確定 ミートホープ食肉偽装事件”. 共同通信. (2008年4月3日). https://web.archive.org/web/20140419082504/http://www.47news.jp/CN/200804/CN2008040301000149.html 2019年1月8日閲覧。 ※ 現在はインターネットアーカイブ内に残存
  5. ^ 食肉偽装・・・衝撃の手口”. ザ!世界仰天ニュース. エコ&偽装3時間スペシャル!. 日本テレビ (2011年6月1日). 2019年1月8日閲覧。 “→『エコ&偽装3時間スペシャル!』目次《放送年月日記載あり》”※ 現在はインターネットアーカイブ内に残存
  6. ^ 朝日新聞 2006
  7. ^ 農林水産省 2006 pp. 8-9
  8. ^ 国会質問答弁 2007
  9. ^ “責任は? 農水省と道が対立 ミート社巡る告発放置”. 朝日新聞. (2007年6月22日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200706210426.html 
  10. ^ 赤羽喜六軸丸靖子『告発は終わらない』長崎出版、2010年。ISBN 978-4-86095-377-5
  11. ^ 朝日新聞 2007
  12. ^ 加ト吉のプレスリリース
  13. ^ ミートホープ元社長の実刑確定が象徴するもの | 日経 xTECH(クロステック)
  14. ^ asahi.com:ミートホープの自己破産決定 債権者集会は11月 - 牛ミンチ偽装
  15. ^ 『告発は終わらない―ミートホープ事件の真相』赤羽 喜六 (著), 軸丸 靖子 (2010年、長崎出版)
  16. ^ 内部告発者の「誇り」と「悔い」 「事件後」の日々を追って Yahoo!ニュース 2017/6/14(水) 10:30 配信
  17. ^ 農林水産省 2007
  18. ^ “言説文加ト吉、コロッケ20種回収へ 偽ミンチ、農水省が調査 - 牛ミンチ偽装”. 朝日新聞. (2007年6月20日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200706200135.html 
  19. ^ “言説文各社鑑定でも豚検出 偽ミンチ - 牛ミンチ偽装”. 朝日新聞. (2007年6月23日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200706220455.html 
  20. ^ “言説文日本たばこ産業、冷凍食品を自主回収 ミンチ偽装問題 - 牛ミンチ偽装”. 朝日新聞. (2007年6月22日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200706220360.html 
  21. ^ “言説文ミスドがスープの販売を中止 ミートホープから材料 - 牛ミンチ偽装”. 朝日新聞. (2007年7月12日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200707120307.html 
  22. ^ “言説文イオン販売の「牛コロッケ」にも豚混入 偽装ひき肉事件 - 牛ミンチ偽装”. 朝日新聞. (2007年7月6日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200707060400.html 
  23. ^ “言説文給食用鶏肉、ブラジル産を国産と偽った疑い ミート社 - 牛ミンチ偽装”. 朝日新聞. (2007年6月21日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200706210408.html 
  24. ^ “言説文食中毒菌の肉を給食に ミートホープ、検査データ改ざん - 牛ミンチ偽装”. 朝日新聞. (2007年6月11日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200707110547.html 
  25. ^ “言説文ミートホープのミンチ使用256社 22道府県は給食に - 牛ミンチ偽装”. 朝日新聞. (2007年8月3日). http://www.asahi.com/special/070627/TKY200708030471.html 
  26. ^ [“正直”コロッケで再出発/ミートホープ元従業員ら | 全国ニュース | 四国新聞社 “正直”コロッケで再出発/ミートホープ元従業員ら | 全国ニュース | 四国新聞社]

参考文献編集

報道
政府調査
ドキュメンタリー番組

関連項目編集

外部リンク編集