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日本の路面標示

道路標示から転送)
導流帯と(102)追越しのための右側部分はみ出し通行禁止。車両はこれらの路面標示に従い通行する。

本項では、日本の路面標示(ろめんひょうじ)について記述する。

日本では道路上の安全と円滑のために路面標示が設置され、同じ目的で設置される道路標識や交通信号機とは連関が図られる。路面標示の様式や設置方法などは道路標識、区画線及び道路標示に関する命令に基づいて定められている。この命令の中で路面標示は都道府県公安委員会が設置する道路標示道路管理者が設置する区画線に大別され、道路標示はさらに規制標示と指示標示に分けられる。なお、この命令では定められていない「法定外表示」が設置されることもある。

路面標示で用いられる塗料の品質は日本工業規格によって定められている。そして、実際に設置される道路の状況・環境や使用する材料に応じて路面標示の設置工事が行われる。

日本では大正時代から路面標示が設置され始め、戦後に全国で統一の様式が定められている。そして、国内の道路交通情勢の変化や技術進歩に伴って路面標示に改良が加えられ現在に至る。

目次

概要編集

 
道路標識などと有機的に設置される(横断歩道の例)

路面標示は道路交通に対して必要な案内、誘導、警戒、規制、指示などを路面標示用塗料、道路鋲、などによって行うものである[1]道路標識交通信号機とともに有機的かつ補完的に設置される交通安全施設という位置付けである[1]。安価ではありながらも、交通の流れを整え、運転者の注意を適切な場所に集中させる能力が大きく、交通の安全と円滑の寄与には非常に有効である[2]

路面標示は大別して道路標示と区画線に分けられる[3]。道路標示は道路標識との関係が深く、道路標示と道路標識をセットで設置するものがある[4]。この道路標示と区画線では意味等が全く同じもの、または類似した形態のものがある[4]。そのため、道路交通法第2条第2項により一部の区画線は道路標示とみなすようになっている[4]。色彩は区画線は白色のみ、道路標示は白色と黄色が用いられる[3]

道路標示・区画線のいずれにも分類されないものを法定外の標示としている[1]。また、NEXCO(旧:日本道路公団)関係では路面標示を「レーンマーク」と称する[5]

法律上の扱い編集

道路管理者は、道路の構造を保全し、又は交通の安全と円滑を図るため、必要な場所に道路標識又は区画線を設けなければならない。 — 道路法第45条
都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。 — 道路交通法第4条

路面標示の根拠は道路法道路交通法である[1]

前項の道路標識及び区画線の種類、様式及び設置場所その他道路標識及び区画線に関し必要な事項は、内閣府令・国土交通省令で定める。 — 道路法第45条第2項
道路標識等の種類、様式、設置場所その他道路標識等について必要な事項は、内閣府令・国土交通省令で定める。 — 道路交通法第4条第5項

様式や設置者の区分、設置位置などの項目が道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(以下、標識令)によって定められている[1]。道路法に基づいて区画線を、道路交通法に基いて道路標示(規制標示・指示標示)を設置するよう規定されている[6]道路管理者は区画線を設置し、都道府県公安委員会は道路標示を設置する[3]。ただし、道路状況によって様式を変えることが認められているため、更新のための時間・費用を削減する目的で標識令とは異なる寸法の標示を設置している地域もある[7]

道路標識・道路標示が設置されていない限り、道路交通法による法定の規制に従って道路を通行すればよい。このことを「標識標示主義」という[8]。言い換えれば、法定の規制は道路標識・道路標示が無い場所ではじめて成り立つ[9]

設置されている道路標示が不適切であることが判明した場合、道路交通法違反の取締が取り消されることがある[10][11]

路面標示の種類編集

以下の説明において、「()」は標識令での番号を示す。また、単位は cm = センチメートル、m = メートルを表す。

道路標示編集

規制標示編集

規制標示は特定の通行方法を制限または指定する目的で設置される[12]

番号 名称 様式 備考
101 転回禁止 転回状の矢印とバツ印。時間を限定してい規制する場合は「8 - 20」のように図示する。 同名の道路標識に併せてこの道路標示を設置するものとする[13]。また、橋梁トンネル等にかかる場合やまたは特定の位置に他の道路標識が集中する場合は、同名の道路標識に代えてこの道路標示を設置する[14]
102 追越しのための右側部分はみ出し通行禁止 道路中央部に橙色の実線(幅は15 - 20 cm) 略して「はみ禁」「はみ出し禁止」とも[15]。車両が追越しのために右側部分にはみ出すことを禁じて、交通の危険を防ぐ[16]。原則として道路標示による規制であり、同名の道路標識は規制の始点・終点を除いて原則として設置しない[17]。この道路標示を特に強調したい場合は2本線のものを用いることができるほか、道路鋲の設置・道路標示のワイド化や高輝度化を検討するのが望ましい[17]。高速自動車国道等での非分離2車線区間においては、簡易中央分離施設を設けるよう努めなければならない[17]
102の2 進路変更禁止 車線(車両通行帯)の境界部に橙色の実線。 車両通行帯を通行している車両が進路を変えることを禁止することを示す[18]。進行方向別通行区分が行われている交差点や横断歩道の手前、カーブ・急勾配・トンネル等で進路変更が危険な場所などで実施される[18]。交差点手前で実施する場合はおおむね30 mの規制とする[18]。一方の車両通行帯のみから進路の変更を禁ずる場合は車両通行帯境界線と併用する[18]
103 駐停車禁止 歩道に橙色の実線 停車及び駐車を禁止する[19]。設置方法や設置基準は(104)駐車禁止に準じる[19]。ただし、駐車禁止の区間に法定駐停車禁止の区間が現れる場合はこの道路標示を設置する[20]
104 駐車禁止 歩道に橙色の破線 車両の駐車を禁止する[20]。歩車道の区別がある道路の区間で、駐車禁止の規制を実施する場合は原則としてこの道路標示を設置しなければならない[21]。ただし、駐車禁止の規制を日または時間を限定して実施する場合はこの道路標示を設置しない[21]
105 最高速度 最高速度として指定する速度の数字を橙色で図示(縦5.0 m、横1.2 m) 道路標識に代替・補助の役割として設置される[22][23][24]
106 立入り禁止部分 立入り禁止とする部分の周囲は橙色の実線(幅15 - 30 cm)として、内部は1.0 - 1.5 m間隔で斜線(斜線の幅は30 - 45 cm) 車両の通行の用に供しない部分を指定し、車両の立入りを禁ずる[25]。見通しの悪い曲線などによって車両の衝突を避ける場合、または車線数の増減などで車両の導流を図る場合に設置される[25]。この道路標示は物理的・構造的に車両の立入りを防ぐことができない場合に限って実施され、真に必要である場合を除いて中央分離帯の代替として設置することは認められない[25]
107 停止禁止部分 停止禁止とする部分の周囲を白色の実線(幅15 cm)として、内部は1.0 - 1.5 m間隔で斜線(斜線の幅は10 cm) 標示されている部分の上で停止してはならないことを示す[26]。緊急自動車やバスの出入口付近に設置されるほか、交通整理の行われていない交差点や滞留車両が踏切に及ぶ可能性があって特に必要な場所でも設置される[26]
108 路側帯 路側帯と車道の境界に白色の実線(幅は15 - 20 cm) 標識令第7条により、歩道が設けられていない道路または道路の歩道が設けられていない側の車道外側線が路側帯とみなされる。路側帯の設置によって歩道が無い場合の歩行者や軽車両の通行場所を確保する目的で設置される[27]。原則として1.5 m以上の幅員を確保し、やむ得ない場合のみ0.5 m以上とする[28]
108の2 駐停車禁止路側帯 (108)路側帯の白色の実線に追加して道路左側に白色の破線(幅は10 - 15 cm) この路側帯によって、車両(軽車両を除く)の通行に加え駐停車も禁止される[27]。原則として1.5 m以上の幅員を確保し、やむ得ない場合のみ0.75 m以上とする[28]
108の3 歩行者用路側帯 (108)路側帯の白色の実線に追加して道路左側に白色の実線(幅は10 - 15 cm) この路側帯は軽車両も通行・駐停車を禁じる[27]。原則として1.0 m以上の幅員を確保し、やむ得ない場合のみ0.75 m以上とする[28]
109 車両通行帯 この道路標示は「車両通行帯境界線」(白色の破線、必要に応じて実線)と「車両通行帯最外側線」(白色の実線)に分かれる[29] 車線を規定し、交通流の整序化を図る[29]。区画線の(102)車線境界線は車両通行帯境界線、(103)車道外側線は車両通行帯最外側線として取り扱うことができる[30]
109の2 優先本線車道 劣後側の道路の接続部に白色の破線(幅は30 - 75 cm) 高速自動車国道等で本線車道が他の本線車道に合流する場合において、一方の本線車道が優先道路であることを明示するための標示[31]
109の3 車両通行区分 各車両通行帯に通行を指定する車両を文字で表記 車両通行帯が設けられた道路で車両の通行区分を設ける[32]。混合交通による交通事故や交通渋滞を防ぐ目的のほか、騒音や振動などの交通公害を防止する目的で規制が行われる場合もある[32]
109の4 特定の種類の車両の通行区分 特定の車両通行帯に通行を指定する車両を文字で表記し、その後方に矢印 車両通行帯が設けられた道路で、特定の車両が走行すべき車両通行帯を指定する[33][34]。一般道路では混合交通による交通事故や交通渋滞を防ぐ目的のほか、騒音や振動などの交通公害を防止する目的で規制が行われる場合もある[33]。高速自動車国道等では原則として大型貨物自動車等の第一通行帯への指定に限定される[34]
109の5 牽引自動車の高速自動車国道通行区分 指定する車両通行帯に「けん引」と表記し、その後方に矢印 重被牽引車を牽引している牽引自動車が走行すべき車両通行帯を指定する[35]。道路交通の安全・円滑を図るとともに、騒音や振動などの交通公害を防ぐ目的で規制される[35]
109の6 専用通行帯 一文字あたり縦2 - 4 mの文字によって車両を指定する。時間を定める規制する場合は手前に時間を表記。 特定の車両が通行しなければならない車両通行帯を指定し、かつ特定の車両以外の車両をその車両通行帯から排除する[36]。原則として第1通行帯が指定される[36]
109の7 路線バス等優先通行帯 「専用通行帯」と同様(文字は「バス優先」) 路線バス等以外の自動車に対して、後方から路線バス等が来て正常な運行に影響を及ぼしそうな場合は当該の車両通行帯から外に出なければならない(混雑によって外に出られなくなるおそれがある場合は当該の車両通行帯を走行してはならない)[37]。原則として第1通行帯を指定する[37]。ただし、道路中央側(一方通行の道路では道路右側)にバス停がある場合などはこの限りではない[37]
109の8 牽引自動車の自動車専用道路第一通行帯通行指定区間 第一通行帯に「けん引」と表記し、その後方に矢印 車両通行帯が設けられた自動車専用道路の本線車道で、重被牽引車を牽引している牽引自動車が第一通行帯を走行しなければならないことを示す[38]
110 進行方向別通行区分 各車両通行帯に進行方向の矢印 車両通行帯の設けられている道路で、車両が交差点で進行する方向に関して通行の区分を設けて交通流の整序化を図る[39]。規制区間は交差点の手前30 - 50 mを基準とする[39]。交通量が著しく多く道路標示が読み取れないおそれがある場合などは同名の道路標識を併設する[39]。なお、道路の状況によって特に必要がある場合は、破線による予告標示を設けることができる[40]
111 右左折の方法 右折の方法を示す場合は交差点の中心部にゼブラ状の記号または白色破線を設置し、右折車が通行する部分を矢印で表記。左折の方法を示す場合は矢印によって入るべき車線を示す 車両が交差点で右左折時に通行すべき部分を指定する[41]。ただし、二段階右折しなければならない原付はこの道路標示に従わない[41]。交差点の形状・交通の状況に応じて様式を使い分け、変形して用いる[42]
111の2 環状交差点における左折等の方法 白色の破線(幅15 -20 cm、延長1 - 3 m)を円状に配置し、その外側に矢印記号を併設
112 平行駐車 道路延長方向に沿って3.5 - 6.5 m、道路横断方向に1.7 - 2.5 mの区域を幅15 cmの白色実線で区切る 車両は駐車時に道路側端に設けられた道路標示に従って駐車しなければならない[43]。非舗装道路等で道路標示の設置が困難な場合は必要に応じて道路標識を設置しなければならない[43]
113 直角駐車 道路延長方向に沿って2.75 m、道路横断方向に5.0 mの区域を幅15 cmの白色実線で区切る
114 斜め駐車 (113)直角駐車を斜めに設置
114の2 普通自転車歩道通行可 縦0.7 m、横1.0 mの自転車の記号 普通自転車が歩道を通行できることを示すものであり[44]、この規制を強調する場合は(325の3)自転車及び歩行者専用を設置する[45]
114の3 普通自転車の歩道通行部分 縦0.7 m、横1.0 mの自転車の記号を設置し、通行すべき歩道の部分との境界に白色の実線(幅10 -20 cm) 普通自転車が通行すべき歩道の部分を指定する[44]。歩道の車道寄りを指定し、通行部分の幅員は1.5 m以上を確保すること[44]。横断歩道やバス停などの近くで歩行者が滞留する部分には設けない[46]。この規制を強調する場合は(325の3)自転車及び歩行者専用を設置する[45]
114の4 普通自転車の交差点進入禁止 道路進行方向に向かって自転車の記号と歩道の方向を示す矢印を設置し、その右側に橙色の実線をL字型に設置 この標示を越えて普通自転車が交差点に進入することを防ぐ標示[47]。当該交差点の大型自動車の交通量が多く、かつ普通自転車の歩道通行可が実施されている場合に限り導入される[47]
115 終わり 右上から左下にかけて斜線がある白色の円形。該当する交通規制の規制標示を手前に配置する 交通規制が終了する地点にて、道路標識の設置に併せて設置される[48]

指示標示編集

指示標示は特定の通行方法ができることや、その区間・場所の道路交通法上の意味、通行すべき道路の部分などを示す目的で設置される[12]

番号 名称 様式 備考
201 横断歩道 幅1.1 mの白線が1.2 m間隔に並ぶ。はしご状の様式では白線の前後に15 - 30 cmの側線を設けていた。 歩行者の横断場所を指定し、かつ車両等に対して歩行者保護の義務を課す[49]。交差点では歩行者を無用に迂回させないようにできるかぎり流れに自然となるように設置しなければならない[50]。また、交差点の面積を無駄に大きくしないよう、交差点の内側に近づける方が望ましい[51]。通常は車道と直角になるよう設置しなければならないが、交差点部に設置する場合は交差する車両の動線に平行に設けることも認められる[51]。横断歩道の長さは15 m(メートル)以下にすべきであり、それ以上の長さになるならば交通弱者に配慮して退避スペースを設けなければならない[52]。横断歩道の幅員は4 mを標準とし、車椅子横断者のすれ違いができるよう最小は2 mとなる[53]
201の2 斜め横断可 十字路の場合は交差点内に対角線上の横断歩道を設ける。時間を限定して行う場合は途中で横断歩道の標示を切る。変形交差点の場合は交差点内全域に幅0.45 m、間隔1.5 mで白線を敷く。 歩行者が交差点において斜め横断できることを示す[54]。信号機によるスクランブル処理が行われている場合はこの標示を用いる[55]。この道路標示を設置する場合、斜め横断をする歩行者が容易に視認できる歩行者用信号機を設置しなければならない[54]
201の3 自転車横断帯 幅15 - 30 cmの白色実線で横断帯を区切り、内部に縦0.7 m、横1.0 mの自転車の記号。 自転車の横断場所を指定し、かつ車両等に対して自転車保護の義務を課す[56]。横断歩道と併設する場合は5 cm(センチメートル)程度の間隔を空ける[57]。自転車どうしのすれ違いを考慮して、幅員は最低でも1.5 m以上にするべきである[46]
202 右側通行 右側にはみ出す部分と左側に戻る部分にそれぞれ矢印。 勾配が急な道路の曲がり角付近で、車両が道路の中央から右側の部分を通行することができる部分を指定する[58]。車道中央線がある曲線半径50 m以下の屈曲部で設置される[58]
203 停止線 道路進行方向からみて垂直な30 - 45 cm幅の白色実線。 車両のいかなる部分もこの線を越えて停止してはならないことを示す[59]。信号交差点や横断歩道、一時停止の規制を受けている交差点の手前には必ず設置しなければならない[59]。停止線を横断歩道の手前に設置する時は最低1 mの間隔を開ける[59]。右左折してくる車両の軌跡を考慮して、特に狭い道路では後退するなどして設置位置を考慮しなければならない[60]。いかなる停止線も交差道路の歩道の延長線上より前に出してはならない[60]。この道路標示の設置が困難な場合、視認性に問題がある場合は道路標識を道路標示に併せて、またはこれに代えて設置する[61]
203の2 二段停止線 停止線を2つ設け、それぞれ「二輪」「四輪」の文字。 二輪と二輪以外の車両とでそれぞれ異なる停止位置を示す[61]。停止線の間隔は交通状況に応じて3 - 4 mとし、「二輪」「四輪」の文字の大きさはそれぞれ1 m四方とする[62]
204 進行方向 進行方向を示す矢印 車両が進行できる方向を示す[63]。車両通行止めや一方通行等の規制が施されている場合に補助的手段として設置されるほか、道路の安全・円滑のために車両の進行できる方向を示すべき場所に設置される[63]。この道路標示は指示標示であるため車両の通行を制限できるものではない[63]
205 中央線 白色の実線、もしくは破線 「センターライン」とも[64]。道路の中央であることを示す[65]。道路管理者が設置した区画線の(101)車道中央線はこの道路標示とみなされる[65]。追越しのための右側部分はみ出し通行禁止は中央線を表示する道路標示と役割を兼ねる[65]。片側6 m以上の道路に設置する場合、法定追越し禁止の場所に設置する場合は実線を用いる[65]。法廷追越し禁止の場所以外で片側6 m未満の道路に設置する場合は破線を用いる[65]。この破線の間隔は5 mとする[65]。実線・破線問わず、中央線の幅は原則15 cmであるが、車両通行帯が設置される場所やその場所と連続する場所の場合は20 cmとする[65]。原則としてペイントによるものとするが、特に必要な場合は道路鋲・石等を用いることができる[66]。多車線道路で中央線を設置する場合など、必要に応じて中央線を2本の実線で表示することができる[67]リバーシブルレーンを実施する場合、中央線となるいずれの線も実線とする(その場合、自発光式の道路鋲も併設する)[68]
206 車線境界線 白色の実線、もしくは破線 4車線以上の道路で車線の境界を示したい場合に設置される[69]。一般的には破線が設けられるが、屈曲部などで追越しが望ましくない場合は実線にする[69]。破線の場合、線の長さは3 - 10 mであり、線どうしの間隔は長さの1倍から2倍となる[69]。線の幅は10 - 15 cmと規定されているが、一般には15 cmが望ましい[69]。ただし、高速道路の走行車線と登坂車線や変速車線(合流や分流の際に加速ないしは減速するための車線)の境界で設けられるものは長さ2 m(変速車線では3 mの場合も)、幅3 m、幅45 cmが一般的である[69]
207 安全地帯 縦15 - 30 m、横15 mの橙色実線(幅は長辺15 cm、短辺 30 cm)を設け、さらに内側に白色実線(幅は同一) 島状の施設が設けられていない路面電車停留所において、歩行者の安全を守るために設置される[70]。この道路標示が設けられる場所には道路標識の(408)安全地帯を必ず設ける[71]
208 安全地帯又は路上障害物に接近 障害物手前にゼブラ状の区域を設置し(45 cm幅の白色実線を1.0 mごとに配置)、その手前に矢印で車両を誘導する 安全地帯や路上障害物(分離帯・路上に設置された橋脚・トンネル等の入口の外壁など)に接近しつつあることを示す[71]
208の2 導流帯 ゼブラ状の区域を設置し(45 cm幅の白色実線を1.0 mごとに配置)、境界面を幅15 - 20 cmの白線で区切る 道路の安全かつ円滑を確保するために車両を誘導する[72]。安全対策上、車両の立入を禁止しなければならない場合は(106)立入り禁止部分の規制を行う[72]
209 路面電車停留場 手前側を斜線として、白色実線(幅15 cm)の台形を設置 道路幅員に余裕がなく安全地帯が設置されない場合に路面電車の停留所であることを明示し、歩行者の安全を守るために設置される[73]
210 横断歩道又は自転車横断帯あり 縦5.0 m、横1.5 m、幅20 - 30 cmの菱形 交差点に付属する横断歩道や自転車横断帯ではその手前30 mに1ヶ所設置し、さらに10 - 20 m手前にもう1ヶ所設置する[59]。道路状況によってはもう1ヶ所追加する[59]。一方で単路部の場合は30 mより少し上流に設置しても構わない[74]。なお、信号機があるなど前方に横断歩道や自転車横断帯があることが明瞭に分かる場合は設置しなくてもよい[59]。また、一時停止などによって横断歩道を渡る歩行者を妨げる可能性が低い場所も設置しなくてもよい[75]
211 前方優先道路 底辺1.0 - 2.0 m、高さは底辺の3倍とした白色の二等辺三角形(枠線のみ) 交通整理の行われていない交差点で、交差する道路が優先道路であることを示す[76]

区画線編集

区画線は道路の構造の保全や、交通の流れを適切に誘導する目的で設置される[12]

番号 名称 様式 備考
101 車道中央線 指示標示の(205)中央線と同一。
102 車線境界線 指示標示の(206)車線境界線と同一。
103 車道外側線 幅15 - 20 cmで白色実線[77] 一般に車道と路肩の境界を明示する[50]。交差点において交差する道路にも車道外側線がある場合は連続して設置する[50]ほか、交差する道路の部分に破線(ドット線)を敷くことで幹線道路側の視線誘導を図る場合がある[50]。街渠や防護柵によって車道と路肩・歩道との境界が明瞭な場合は設置しないこともある[78]
104 歩行者横断指導線 路端どうしを結ぶ幅15 - 20 cmの白色実線を2本設置することで横断を指導する区域を示す 歩行者の車道の横断を指導する場所に設置される[79]
105 車道幅員の変更 それぞれの道路幅員の部分を幅15 cmの白色実線の斜線で結ぶ 車道の幅員が変わることを示す必要がある場合に白色実線で車道幅員の変更を示す[80]。白色実線の外側に導流帯を設ければ表示効果が向上する[80]
106 路上障害物の接近 指示標示の(208)安全地帯又は路上障害物に接近と同一。
107 導流帯 指示標示の(208の2)導流帯と同一。
108 路上駐車場 幅15 cmの白色破線(実線部1 m、間隔1 m) 路上駐車場を設ける場合、その外縁に設置される[81]

法定外表示編集

法令では定められていないが、運転者への注意喚起や道路標識などの効果の明確化して交通事故を防止するために設けられる路面標示や法定外の標識を「法定外表示」としている[82]。「法定外表示」による路面標示としては、一時停止規制における「止まれ」の文字、減速マーク、交差点クロスマーク、自転車の通行位置を示す矢羽根が例として挙げられる[82]。また、ゾーン30バスレーン、自転車の通行空間関係などに関してはカラー舗装を実施することもある[83]。なお、無秩序に設置された場合は既存の道路標識や路面標示の整備効果を低下させるおそれがある[84]

材料編集

路面標示用塗料編集

路面標示に用いられる塗料は別名「トラフィックペイント」(traffic paint)とも言い[85]、品質と種類は「JIS K5665(路面標示用塗料)」で規定されている[86]2013年度の時点でアトミックがこの塗料が国内シェア首位の3割を占めている[87]。この塗料は液状の1種・2種、粉状の3種に分けられている[86]。いずれも物理的粘着によって路面と固着する[88]。この3種類のうち、最も多く使用されているのは3種で、全体の約90%を占める[86]。また、二液反応硬化型アクリル系樹脂を主な原料とする二液反応塗料も存在し[88]、この塗料は主剤と硬化剤を混合して用いる液体塗料である[89]

ホタテガイ貝殻の有効利用として路面標示用塗料の1種・2種に利用する方法が北海道立総合研究機構信号器材によって共同開発された[90]

なお、NEXCO東日本NEXCO中日本NEXCO西日本で使用されるものは「レーンマーク管理施工要領」によって仕様が規定されており、この性能規定に満足な材料を用いればJIS規格に満足しなくても使用可能とされている[91]

1種

1種は常温で路面に塗装する[92]。1種をさらに分類すると溶媒とする水系材料と、有機化合物を溶媒とする溶剤系材料に分けられる[92]。前者は溶媒の水が揮発すると、造膜助剤の作用によって塗膜が硬化する[92]。後者は有機溶媒の揮発のみに頼るものと、有機溶媒の揮発と合成樹脂の酸化重合によって塗膜が硬化するものがある[92]。乾燥時間は15分以内[93]。交通量の少ない道路や積雪寒冷地での施工に適する[94]。また路面が石畳レンガの場合、仮舗装や損傷が激しいといった舗装状態が良くない場合も適している[94]

2種

2種は50 - 80 ℃に加熱して路面に吹き付けるものである[92]。2種も1種と同様に水系材料と溶剤系材料に分けられ、塗膜が硬化するメカニズムも1種と共通する[88]。乾燥時間は10分以内[93]。道路縦断方向の施工や積雪寒冷地に適している[94]

3種

3種は一般に180 - 200 ℃に加熱溶融して使用される[86]。こちらは溶媒を含まないため、速乾性を持つ[89]。路面との粘着機構は、アスファルト舗装の場合は舗装と塗料の溶融結合であり、セメントコンクリート舗装の場合は物理的粘着である[89]。なお、セメントコンクリート舗装の場合、作業不良や舗装の亀裂などで接着不良を起こすことがある[93]。乾燥時間は3分以内[93]。車両や歩行者による摩耗が激しいと判断される場所に適している[94]。しかし、路面が石畳レンガの場合、仮舗装や損傷が激しいといった舗装状態が良くない場合は適さない[94]

「溶袋式」として、路面標示用塗料を入れる袋そのものが原料の一部となり、袋ごと溶解釜に入れるものも開発されている[95]

ガラスビーズ

ガラスビーズは再帰反射によって夜間における視認性を高める反射材であり、小さな無色透明のガラス玉となっている[96]。路面標示用塗料の3種ではさらにガラスビーズの含有率によって1号(15 - 18%)、2号(20 - 23%)、3号(25%以上)に分けられる[97]。ガラスビーズの含有量が多くなるにつれて、経年での夜間の視認性が良好となる[98]。このガラスビーズも粒度によって1号、2号、3号に分類される[99]。製造方法は、溶融したガラス原料を流出してスプレーさせることでビーズ化させる「直接法」と、ガラスカレット(ガラス屑)を粉砕したガラス粒を加熱してビーズ化する「間接法」の2種類ある[100]。後者の間接法が最も一般的な製造法である[100]。雨天時には路面標示の部分が冠水・湿潤し光の屈折経路が変化することで視認性が低下する[100]。そのため、1991年(平成3年)頃からこの問題点を克服した「高視認性標示」が採用され始めた[101]

高視認性標示

1989年(平成元年)に実施された建設省の公募による評価試験で実用性が確認され、1991年(平成3年頃)から普及し始めた[101]。この標示には「リブ式」と「非リブ式」が存在する。前者(リブ式)は塗膜上に方形、または円型の突起(リブ)を形成し、突起を水膜から露出させることによって雨天時でもガラスビーズによる再帰反射を維持するものである[101]。リブ上を車両が通行すると振動が発生し、運転者への注意喚起の効果がある[101]。しかし、住宅地における騒音の問題や、横断歩道を通行する歩行者が通行しづらい問題点があった[101]。そこで、後者(非リブ式)はリブではなく溝や粗表面の形成や特殊なガラスビーズを採用することで夜間でも視認性を確保するようにしている[102]。溝・粗表面・特殊なガラスビーズは単独で用いるより、これらを複合して施工することが多い[103]。「非リブ式」より「リブ式」の方が設置数は多い[101]

貼付材編集

 
貼付材を用いた案内の一例

合成ゴムまたは合成樹脂からなる結合剤と、顔料・体質材・反射材の主成分とからなるシート状およびテープ状の路面標示用材料をいう[104]。複雑な文字やカラーマークの施工にも適する[105]。裏面に接着剤を塗布し、剥離紙を設けたものも存在する[93]。貼付方法は加熱粘着式と常温粘着式の2種類に分けられる[93]。加熱粘着式は路面にプライマーを塗布し、その上に置いたシート・シールを半溶融状になるまで加熱し、ハンドローラーなどで地面になじませた後に自然冷却をして設置する[93]。一方、常温粘着式は路面にシート・シールを貼り付け、ハンドローラーなどで圧着して設置する[93]。貼付材による路面標示は耐摩耗性が大きく、特別な設備を用いなくても簡単に施工が可能である[106]

道路鋲編集

道路鋲は路面標示用材料には含まれるが、塗料とは全く異なる材料である[107]。主な原料はアルミまたは樹脂[108]。一般的に、路面標示の視線誘導性能を補助するために、路面または縁石に取り付ける[107]。設置方法は、接着剤によって接着させるものと、道路鋲の脚部を路面に埋め込みモルタルなどによって接着させる方法がある[107]。反射式道路鋲と自発光式道路鋲の2種類に分けられる[109]。道路鋲の設置間隔は直線道路で2 m、曲線道路では1 mを目安として設置するのが望ましい[108]。ただし、分合流や交通事故多発地点などはより短い設置間隔にすることがある[108]

施工編集

主に路面標示用塗料を用いた施工方法について解説する。

設置編集

 
(201)横断歩道の路面標示を塗り直している

路面標示の設置工事は以下の特殊性がある[110]

  • 道路上を移動しながら連続作業する
  • 加熱した塗料、可燃物気などを取り扱う
  • 機敏な機動力を要求される

以上のような条件で行うため、消防法高圧ガス保安法労働安全衛生法などを厳守しつつ、工事従事者に対しての安全教育が怠れない[110]。また、供用中の道路上で行われるため、交通事故の危険性が高い[111]

日本国内で路面標示を施工するための資格として路面標示施工技能士がある[112]

塗装用の機械などの改良は進んでいるが、既設の構造物に合わせてバランスを確認していかなければならず人力による作業は現在でも変わらないとされている[113]

準備

事前の作業として、塗装する位置や内容の選定が行われる[114]。この作業では道路利用者が充分視認でき、かつ正しく伝わるよう配慮する必要がある[114]。測量用具やチョークなどを用いて、路面に罫書きする[114]。チョークの粉を付けた糸を張って墨出しをすることもある[115]。矢印や数字は既に様式が定められているが、地名に用いる文字はバランスを考えて工事毎にレイアウトが考えられる[113]。なお、この罫書きの作業を自動的に行うためのロボットが技工社(鳥取県鳥取市)から開発されており、熟練作業員の手作業に比べおよそ3分の1の時間で完了できるとされる[116]

既設の路面標示を補修する場合、塗料と旧塗膜との密着具合を調査し、施工に影響が出る場合は消去する必要がある[117]

塗装前はブラシによって路面を充分に清掃しなければならない[114]。この作業が不充分だとプライマーの接着不良が生じ、はがれの原因となる[114]。また、水分は強制的に乾燥するか、乾燥まで待たなければならない[114]

路面標示用塗料の3種を施工する場合は掃除・乾燥後はプライマーを必ず塗布する[117]。プライマーは塗料と路面との接着を強固にし、路面上の微細な汚れを洗浄する役割を持つ[117]

1種・2種の施工

路面標示用塗料が1種・2種の場合、ラインマーカー(路面標示用塗料を路面に塗装する機械)に付属するスプレーガンで塗料を吹き付ける工法が主流である[118]が、1種の場合はハンドローラーで塗装することも可能である[119]。小規模な工事ではこの工法が採用されることがある[118]。スプレーガンを用いる工法はエアレススプレーを用いるもの、エアースプレーを用いるものの2種類があるが[120]、現在は前者を使う工法が主流である[121]。一般的に塗装前にプライマーを塗布しないが、路面が新設のコンクリート舗装であり養生材やレイタンスが付着している場合は塗布した方が良い[122]。文字や記号を描く場合はラインマーカーを使用が困難なため、代わりにハンドガンを用いて施工する[123]

3種の施工

路面標示用塗料が3種の場合もラインマーカーを用いるが、工法は「スリット式」「噴射式」「フローコーター式」の3種類に分類される[124]

「スリット式」では、ラインマーカーの塗布部が路面と一定の間隔を持つことによって塗料を流下圧着させながら塗膜を形成する工法である[125]。機構が簡単で分かりやすく、小回りが利き、交通への支障も比較的小さいため、あらゆる種類の路面標示に適用が可能である[126]。そのため、「スリット式」が3種の施工では主流である[126]

「噴射式」は「スプレー式」とも呼ばれ[126]、塗料吐出口が路面と一定の間隔を保ちながら塗料を噴射して塗布する工法である[126]。塗膜の厚さは一定に保たれ、材料ロスも少なく、作業の安全性が高いメリットがある[126]。一方で、規模の小さい工事には向いておらず、機械の整備に手間がかかるというデメリットが存在する[126]。ラインマーカーは一般的に車載式のものが用いられ、長物(中央線や外側線、はみ禁など)の施工に向いている[126]。噴射機構は回転体スプレー式が主流であるが、エアレススプレー式やエアスプレー式のものも存在する[127]

「フローコーター式」は塗料吐出口付近に設けられたギアロールを施工速度に合わせて回転させ、塗料をカーテン状に塗布する工法である[117]。施工速度とギアロールの回転が連動しているため、適正な塗布量で施工ができ、材料ロスも少なく施工管理が行いやすい[117]

仕上

施工後は出来高の計測(厚み、寸法、線形など)を行い、その時に過剰に吐出された塗料やガラスビーズは除去して道路の通行の支障にならないようにしなければならない[128]。そして、ラインマーカーなどの施工用の機械を整理や写真撮影を行う[128]

撤去編集

道路・交通条件の変化に伴い路面標示を消去しなければならないことがある[129]。この方法は「物理的方法」と「化学的方法」に大別される[130]

「物理的方法」には、「塗装処理法」「機械的切削法」「ブラスト工法」「ウォータージェット工法」の4種類がある[131]。「塗装処理法」では黒色の路面標示用塗料を既設の路面標示に上書きする工法で、時間の経過とともに既設の路面標示が露出するため暫定的な方法として用いられる[129]。「機械的切削法」はカッターブレードによって塗膜を切削する方法であり[132]、作業が早く処理スピードが速いため最も多く採用されている方法である[133]。「ブラスト工法」はブラストを吹きかけて塗膜を除去する方法であり、吹付粒子を適切に選定することで路面をほとんど損傷することなく完全に除去できるメリットがあるが、労力を要し経費が割高になるデメリットがある[134]。「ウォータージェット工法」は超高圧水を吹きかけて塗膜を除去する方法であり、除去と同時に発生処理剤の吸引回収が可能で比較的早く作業が終えられる工法であるが、比較的大型の設備を用いるため作業に必要な面積が大きくなる欠点がある[135]

「化学的方法」には、「燃焼法」がある[136]バーナーによって加熱溶融して塗膜を取り除く作業であるが、路面を損傷する可能性があり、また燃焼物を取り除く手間が発生するため作業能率が良いとは言えない[136]。この方法を改善したものとしてジェットバーナーを用いた工法もある[136]。この方法は摩耗によって薄くなった標示や他の方法で消去したが消え残った標示に対して適用することが多い[133]

維持管理編集

 
横断歩道と自転車横断帯の路面標示が摩耗によって薄れている

路面標示は道路交通の安全と円滑のためには重要な交通安全施設であり、設置後に汚れや剥離などによってその効用が損なわれないよう維持管理を充分に行い良好な状態に保たなければならない[137]。視認性が良好な道路標示は、道路利用者に道路交通法を遵守させるためにも有効に機能する[138]。設置後の維持管理は原則として当初の設置者(警察・道路管理者)によって行われる[137]

路面標示の耐久性は設置時の工法、道路や交通の条件、気象条件などによって左右され、一概に決定することはできない[139]。特に積雪が多い地域では劣化が早く進みやすく、融雪後に点検を実施することが望まれる[140]タイヤチェーンによって摩耗することが多いが、スパイクタイヤが廃止されてからは路面標示の減耗が減っている[141]。標示の種類による違いとしては、停止線はわだち部分の摩耗が目立つが、車両に踏まれにくい矢印のマークは摩耗が進みにくい[142]舗装の種類による違いとしては、同じ横断歩道でも密粒舗装は間粒舗装と比べて視認性の低下が進みやすい[143]。これは間粒舗装の場合は塗料が内部まで浸透するため、表面が摩耗しても塗料が残るためである(しかし、夜間の視認性は確実に低下している)[143]

点検を行う場合、以下の3項目をチェックする[140]

  • 剥離・汚れなどによる不鮮明部分の有無
  • 摩耗による不鮮明部分の有無
  • 夜間視認性の有無

この点検によって、視認性が低下したと考えられる場合は塗り替えを行う必要がある[140]。塗り替えの基準を考えるにあたっては、目視や画像解析によってランク分けをして判断する方法と、測定機器を用いて総合的に判断する方法がある[140]。点検を簡易にするため、遠隔地から携帯電話回線を用いてモニタリングする技術も愛知県立大学キクテックの共同研究で開発されている[144]

歴史編集

1919年大正8年)に自動車取締令道路法が制定されているが、この中で道路通行者は標示に従うよう定められている[145]1920年(大正9年)頃から、警視庁管内では白線2本による「電車線路横断線」が設置されている[145]。材料は石灰水で、1930年昭和5年)までこの材料が用いられていたとされる[145]1926年(大正15年)頃には石材やアルミニウム板が材料として用いられていた[145]1929年(昭和4年)には初めて白色の「横断歩道」が施工され、その後、真鍮製の「横断歩道」も施工された[145]

戦後、1952年(昭和27年)に道路交通取締令が制定された時点でも法律的なものとして規定されていない状態であった[146]。その後、1957年(昭和32年)の道路法改正時に「区画線」が規定された[146]

1960年(昭和35年)に道路交通法が制定され、公安委員会が設置する路面標示は「区画線」から「道路標示」となった[146]。また、同年に標識令が総理府・建設省令として制定され、このとき初めて路面標示(道路標示・区画線)の様式が全国で統一されたものとなった[146]。この頃から路面標示用塗料も溶融式(現在の3種)が用いられはじめ、塗装方法も人力によるもののほかに自走式の機械によるものが広まり始めた[146]

路面標示用塗料が日本工業規格で仕様化されたのは1951年(昭和26年)である[147]。その後、改正が繰り返され、2016年(平成28年)からは黄色塗料はクロムフリーにするよう規定された[147]

黄色の路面標示が夜間に白色と誤認されやすくなり、路面標示用塗料を作るメーカーが独自で赤みを付けた塗料を生産していた[148]。そのため、全国で異なる黄色が用いられる結果となった[148]。そこで、1978年(昭和53年)に路面標示に用いられる黄色の色相の基準となる「路面標示黄色」が定められた[148]。1978年6月に警察庁から出された通達により、公安委員会関係が発注する路面標示の工事にはこの黄色を用いるよう指示された[148]。それ以降、路面標示用塗料のメーカーが合同で年に1、2回測色し、基準通りに生産していることを確認している[149]

1989年平成元年)に建設省(現:国土交通省)から雨天(夜間)でも視認が可能な区画線の開発が公募に出された[150]。この時、高視認性路面標示用塗料が開発された[150]

脚注編集

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  144. ^ “道路標示の劣化、カメラで監視、愛知県立大で実証実験。”. 日本経済新聞. (2018年9月14日). 2018-09-14 
  145. ^ a b c d e 全標協 2012, p. 191.
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  147. ^ a b 製品と環境”. 路面標示材協会. 2018年9月30日閲覧。
  148. ^ a b c d 路面標示材協会技術委員会 2015, p. 4.
  149. ^ 路面標示材協会技術委員会 2015, p. 7.
  150. ^ a b 小川博巳 2016, p. 101.

参考文献編集

書籍
  • 路面標示材協会技術委員会 『路面標示材料』 路面標示材協会、2008年12月、第5版。
  • 路面標示材協会技術委員会 『路面標示用語』 路面標示材協会、2010年10月、第2版。
  • 交通工学研究会 『路面標示設置マニュアル』 丸善出版、2012年1月31日ISBN 978-4-905990-77-2
  • 全国道路標識標示業協会 『路面標示ハンドブック』、2012年10月、第4版。
  • 道路交通執務研究会(編)、野下文生 『執務資料道路交通法解説』 東京法令出版、2015年2月27日
  • 交通工学研究会 『道路交通技術必携2018』 丸善出版、2018年5月30日ISBN 978-4-905990-88-8
記事
  • 迫尾宏「区画線用塗料について」、『塗装技術』第28巻第8号、1989年8月、 81-86頁。
  • 森昌之「路面標示材の耐久性に関する一考察」、『路材協会報』第134号、2007年7月15日、 6-13頁。
  • 路面標示材協会技術委員会「高視認性標示について」、『路材協会報』第142号、2011年1月30日、 3-9頁。
  • 路面標示材協会技術委員会「路面標示用塗料の黄色について」、『路材協会報』第147号、2015年7月20日、 4-9頁。
  • 小川博巳「路面標示用塗料と塗料の動向」、『塗装技術』第55巻第12号、2016年、 97-103頁。
  • 松下勝・近藤博・蓮池里菜・小澤広直「安全で快適な運転を助ける路面標示 (PDF) 」 、『土木学会誌』第103巻第10号、土木学会、2018年10月、 48-49頁、2018年12月2日閲覧。
技術資料
通達

関連項目編集

外部リンク編集