エンジンスワップ

エンジンスワップ英語: Engine Swap)とは、乗り物(自動車鉄道車両など)の性能向上を目的に元来搭載されているエンジンを取り外し、別のエンジンに載せ換えることを言う。

オースチン・ミニにホンダVTECエンジンを載せた例

概要編集

エンジンスワップは自動車の修理や性能向上、環境対応を目的に行われるものである。 基本的には同系車種・エンジン間で行われる。例えば、トヨタ・AE85にAE86用の4A-GEUを載せり、日産・スカイライン日産・セフィーロといったRB20/RB25搭載車にスカイラインGT-R用のRB26を載せるといったケースが度々見られるが、日産・ダットサントラックトヨタ・ハイラックスSR20DETを載せる[1]というメーカーの垣根を越えた改造や、ヒュンダイ・エラントラ4G63を載せる[2]というような国籍すら異なるケース、果ては三菱・ミニカカワサキ・ニンジャZX-9Rスズキ・GSX1300Rハヤブサのエンジンを載せる[3]など、四輪車同士に範囲を絞らないスワップも存在する。

ケースによっては車体を大きく加工する必要[4]もあり、その作業工程の数は場合によって開きがある。

法規制編集

一般的に申請不要でエンジンスワップを行う場合、シリンダーブロックに刻印されている型式と車検証上の型式が一致しなければならないが、型式が一致しても載せ替えるエンジンの排ガス記号より車両に搭載されているエンジンの排ガス記号が古くなる場合、公認取得が必要になる。

型式の異なるエンジンを載せ替える場合や燃料の種類を変更する場合は、改造後に排気ガス規制を満たすことを証明する書類が必要となる。

また、原則として車台の製造時期の保安基準が適用されることから、550 cc規格以前の軽自動車のエンジンを現行規格の660 ccのものに載せ替えた場合、軽自動車規格を逸脱するため普通車として扱われる。その場合は排気ガス規制値や車体強度(衝突安全性)なども登録車の保安基準が適用されることとなり、搭載するエンジンのほか、車型や生産年次によっては登録を行えないケースも存在する。

エンジンスワップが行われる背景編集

基本的には自動車の基本性能(最高出力/トルク、燃費、エミッション、耐久性等)を向上させるためにより高性能なエンジンに載せ替える、と言うパターンが多い。[5] ただ、「なぜエンジンスワップをする必要があるのか」と言うことにはいくつかの背景がある。

  • 基本性能の向上
  • 元々のエンジンの継続使用が困難になった場合。
    • エンジンの破損・故障・経年劣化
    • 排ガス規制で使用している車両に使用規制がかかった場合(例えばいわゆる自動車NOx・PM法)への対応(=環境性能の向上)
    • この他、ガソリンの無鉛化が進められていた時期には、有鉛ガソリンを指定されていた車種において無鉛化対応済みのエンジンにスワップすることもあった。
    • 旧車においては部品供給終息への不安を解消するために世代が新しいエンジンへのスワップが行われる。[5]英語版「Automobile engine replacement」も参照。
  • 上記事情とは逆に、高価/希少なホットモデルのモノコックが破損・老朽化した際、その交換用ボディとして同系廉価/量販グレードを安価に入手しエンジンや駆動系を移植するパターン(いわゆる「ハコ替え」)。例えば「"マークII3兄弟"の「ツアラーV」(ドリ車として需要が高い)がクラッシュした際、「グランデ(マークII)」「アバンテ(チェイサー)」「エクシード(クレスタ)」等を入手し1JZ-GTEエンジンや駆動系、足回りを移植する」、「ランエボⅤがサーキット走行会で全損してしまい、安く手に入ったミラージュを交換用ボディとしてそのすべてを移植する」[8]・・・など。
  • 人気グレードを「作る」
    • 例えば同一形式の車種でも市場や年式、ボディタイプなどにより高性能エンジンが設定されていない場合がある。
    • また、当該市場で販売していたとしていてもそのグレードの中古車価格が他のグレードと比較して著しく高額だった場合や程度が悪い場合、希少な場合はエンジンスワップは安価または良質な車両を作ることができる手段の一つとなりうる。[10]
    • 特に新興国や途上国にあたる地域(ただしこれらの地域に限った話ではなく、車種によってはいわゆる先進国でも間々ある。)では以下のような事情があり、エンジンスワップによる「人気グレード制作」が行われる。
      • 自動車の国産化に力を入れる関係で、完成車輸入に高額の関税が掛けられていたり中古車の輸入が規制されたりしている。[注 10]
      • 一方、国によっては現地ブランドはもとより、海外ブランドであっても自国の工場で生産していれば国産車と見なされ関税が免除される。[2]
      • そのため、以下の事例のように中古エンジンを輸入し載せ替える例がある。

鉄道車両におけるエンジン交換編集

自動車の場合と同じく、鉄道車両においてもエンジンの交換が行われることがある。理由としては、

  • 車両の性能向上[注 13]
  • 低燃費化を図ることによるランニングコストの低減[注 14]

が挙げられる。

注釈編集

  1. ^ 2JZ-GE搭載車は海外仕様車やワゴン(ジータ)にのみ存在し、日本仕様セダンにはない。その逆に3S-GEは日本仕様セダンにしかない。
  2. ^ T230系セリカなどにも搭載される2ZZ-GE+6M/Tの組み合わせがランクス/アレックスフィールダーWiLL VSヴォルツには設定があるがセダンにはない(ただし、北米専売のE130系カローラセダンには「XRS」というスポーツグレードのみ2ZZ-GE+6M/Tの組み合わせが存在していた)。
  3. ^ E140系/E160系フィールダーやE180系トヨタ・オーリス、T260系プレミオ/アリオン、GE20系ウィッシュなどにも搭載される2ZR-FAEの設定があるがE160系アクシオにはない(ただし、E140系アクシオには後期最終型の「1.8 LUXEL」のみ2ZR-FAEの設定が存在していた)。
  4. ^ ミニカのトールワゴンとして枝分かれした経緯のあるトッポBJには4気筒20バルブツインカムインタークーラーターボの設定があるが40系ミニカにはない。またミニカ・トッポともに1100cc車(ピスタチオ及びトッポBJワイド)が存在するが、ピスタチオは総生産台数わずか50台の激レア車である。
  5. ^ 東南汽車・リオンセル、プロトン・インスピラなど。
  6. ^ プロトン・サトリア(初代)、プリムス・コルトなど。
  7. ^ 大宇・ティコマルチ・800など。
  8. ^ プロドゥア・カンチル/クリサ/ビバなど。
  9. ^ 海外仕様車であるクレシーダはジンバブエや南アフリカでも生産された。
  10. ^ 例:マレーシアでの三菱・ランサープロトン・インスピラ・・・インスピラは現地生産車、ランサーは完成輸入車のためほとんど同じクルマなのに車両価格に格差が存在している。
  11. ^ 輸出先の規制・関税などの関係でコンプリート状態での輸出が困難という事情から切断された輸出用車両のこと。下記の岡野自動車商会のページによると、本当に部品として輸出するために切る場合が大半で、まれに「これは部品です」と言う建前で切断するケース(いわばノックダウン生産用)もあるという。
  12. ^ 実際、ワイルド・スピード第1作目においては「レース前にはSR20は高値で売れる」と言うセリフが存在しており、人気のほどが伺える。
  13. ^ JR化後にJR四国以外に所属するキハ40・47・48の大半でエンジン交換が行われたのはその一例である。
  14. ^ 例えばJR九州に所属するキハ66・67はエンジン交換(DML30DMF13)が行われた結果、性能を落とすことなく燃費の大幅な削減ができたほか、ラジエーターも小型化できたためメンテナンスコストの低減にもつながった。

出典編集

  1. ^ OPTION2 2005年3月号「元祖パーキングオートサロン」 ダットラ:100-101ページ、ハイラックス:103ページ。
  2. ^ a b c Option 2009年3月号「中国的改造車事情」。 リオンセル制作ショップのサイト
  3. ^ 【ENG Sub】三菱ミニカにKAWASAKIニンジャのエンジン積んだ珍ドリ車/ Amazing car with KAWASAKI Ninja engine on Mitsubishi Minica - DRIFT STATION(ドリフト天国系)、投稿日2019/03/19
  4. ^ GC10+2JZ-GTE2JZ-GE - チューニングショップ「C&Yスポーツ」。バルクヘッドを大きく切り取り、ハコスカに2JZ-GTEを搭載している。
  5. ^ a b SHOP INFO - 主に日産系の旧車にエンジンスワップを施した車両を制作・販売する「ロッキーオート」のHP。「毎日の実用にも使える快適な旧車~(中略)~(旧車に)すべてを求めてはいけないという当たり前の常識を変えたかった。」とあり、21世紀の現在でも当たり前に乗れることを目標に旧車の基礎体力向上を目論んだエンジンスワップを行っていることがわかる。
  6. ^ a b Pimp My Ride Sedaon5 第4回。この回ではアースデイにちなんでシボレー・インパラバイオディーゼル燃料対応のDuramaxディーゼルエンジンをスワップしており、ランボルギーニとのドラッグレースで勝てるほどの動力性能の高さも実証した。なお、インパラのオーナーは番組中で改造前は燃費の悪さで悩んでいた事を明かしている。
  7. ^ KCテクニカ スズキ アルトバンターボ 装備が簡略な(=軽い)バン仕様にK6Aターボを載せたコンプリートカーで、その軽さから「ワークスを超える」とまで喧伝している。
  8. ^ a b 「これがランエボじゃないなんて誰が信じるんだ!」1トンちょいの軽量ボディにフルチューン4G63エンジンの組み合わせは強烈すぎる! [Option(雑誌)|Web option]、公開日 : 2019/09/24 05:30 最終更新日 : 2019/09/24 05:30 - 修復ベースにミラージュを用いたことにより再製作コスト低減に加え軽量化も果たしている。
  9. ^ 【光岡 雷駆-T3 発表】佐川急便で実戦投入:Response.jp 2012年10月19日掲載、2020年3月10日閲覧
  10. ^ この実態が存在することを表す例の一つとして、頭文字Dコミックス第5巻において池谷と健二がイツキのAE85レビンに4A-Gを換装し「85改86」を制作することを匂わせる会話をしていたシーンがある。
  11. ^ YouTube 「MightyCarMods」チャンネル内(3部作)
  12. ^ (有)岡野自動車商会 BOSS日記 「ハーフカット」 本記事ではシビックR、ランエボ、シルビア/180SXのハーフカットもスワップ用として需要があるという。[リンク切れ]