ファミリーレストラン
ファミリーレストランとは、主にファミリー客層を想定したレストランの業態。外食産業の一つで、チェーンストアとして営業するものが多い。略称は「ファミレス」。英語では業態を指す語として "family restaurant" は用いられず、和製英語に近い。
ショッピングモールと同様、モータリゼーションにより一般化した業態で、自家用車で行くことを想定し、広い駐車場を備えた郊外型ロードサイド店舗として展開する場合が多い。日本の都市部においては、駅前や繁華街などで商業ビルのテナントとして出店する都市型の小規模店舗も増えている。
概要編集
欧米においては、レストランの多くが子供の入店を禁じている。従ってファミリーレストランという言葉は「子供連れでの入店が可能なレストラン」を意味する。従って子供の入店が可能かどうかは、ファミリーレストランの一つの定義となる。
ファミリーレストランは家族連れを主な客層とする業態であり、メニューは老若男女に添ったものが提供される。また多くの客に同時進行で食事が供されるように広い店内が特徴的である。料理の価格帯はおおむね大衆的で、量・質ともに低価格で満腹感が得られる。また飲酒できない客に配慮しノンアルコール飲料が提供される。自家用車で行くことを前提とした立地・構造の店舗が多いため飲酒運転防止には特に注意が払われる。
ファミリーレストランの明確な定義は存在せず、例えばマーケティング調査会社の富士経済によれば以下のような定義が存在する[要出典]。
- 客単価=500~2,000円
- 注文から料理提供までの時間=3分以上(これより短い場合はファストフード)
- 座席数が80席以上
この上にはカジュアルレストランなど比較的「おしゃれな飲食店」があり、これはファミリーレストランとは客単価の面でやや重なる傾向が見られる。更にその上にはレストランでもいわゆる高級店などがある。なおチェーン展開しているとかフランチャイズ方式であるといったことも重視され、それらフランチャイズやチェーン店では「一律のサービス、均一化された料理、同一の価格設定」が見られる。ただし、マーケティング調査でも実際に各店舗の業態から判断される傾向もある。
ファミリーレストランの料理ジャンルは特に限定せず、洋風のメニューが多いが、本格派の特定の外国料理に特化するより家庭的な洋食メニューが充実している。中には、サイゼリヤ(イタリア料理)、バーミヤン(中華料理)、和食さと(和食)のように、特定地域の料理を中心に扱うチェーンも存在する。日本発祥の業態である回転寿司は、寿司に特化したファミリーレストランともいえる。
特徴編集
設備・サービス面編集
近年は同業種間での競争が激しいため他店との差別化戦略として、大型テレビによる衛星放送見放題、店内インターネットへの無料公衆無線LANによる接続サービス、料理の付属サービスで飲み放題のドリンクバーや、24時間営業といった業務内容でアピールしている。
店内は明るく寛げるよう配慮されており、低価格レストランの台頭により人件費圧縮のため、接客サービスはおおむね控えめである。長時間席を占有していてもあまり客に干渉しないこともあり、老若男女を問わず会合の場や、出張先の休息所・ドライブイン代わりにと、広い客層に受け容れられている。
調理のコストダウン編集
ファミリーレストランでは多くの場合、食品加工工場のような設備を備えた調理施設であるセントラルキッチンで、地域ないしグループ全体で一括して調理を行う。完成直前の状態まで仕上げた料理を、冷蔵または冷凍した上で各店舗に配送している。セントラルキッチンから配送され、店内の店舗の冷蔵・冷凍室にストックされた料理を、各店舗で湯煎や電子レンジ・オーブンで暖める・焼くなどして加熱し、彩りの野菜などを添えて食器に盛り付け、料理の最終的な仕上げを行って客に提供する。
セントラルキッチンで同じ製法で一括調理することにより、店舗立地が違っても同じ味の料理を提供することが可能となる。客にとっては、どこの店舗に入っても当たり外れがなく同じ味を楽しめるという利便性を与える。商業面では、調理作業と食材仕入れの効率化、味や品質の一定化が図れる。店舗には本格的な調理厨房が不要となるため敷地面積を最大限に活用することができる。また専門技術を持った料理人を雇用する必要もなく、店舗スタッフはマニュアルに従って配膳すればよいため、アルバイトなど非正規雇用の従業員で店舗運営を行うことが可能となる。商品コストや人件費をコストを低減し、品質を均一化した料理を大量供給することで、客単価を下げても利益を上げることができる。
日本のファミリーレストランの始まり編集
日本における主なファミリーレストランチェーンの開業は、1970年代前半に集中している。
東京都で創業したすかいらーくが、1970年7月7日に1号店の国立店(ガスト国立店として現存[1])を開業したのが先駆けである[2](店舗名は「国立店」だが所在地は府中市[1])。
続いて福岡県で創業したロイヤルが、1971年12月にロイヤルホスト1号店として北九州市で黒崎店を開業した[3][4](カウボーイ家族青山店として現存[5])。
1973年にはイトーヨーカ堂がアメリカのデニーズ社と提携して株式会社デニーズジャパンを設立し[6]、翌1974年に1号店を横浜市のイトーヨーカドー上大岡店1階に開業した(イトーヨーカドー上大岡店の改築に伴い閉店)[7][8]。
また同1973年に千葉県市川市で創業したサイゼリヤが、1977年12月よりチェーン展開を開始し[9]、低価格路線で急速に店舗を増やした。本八幡駅北口の1号店は「サイゼリヤ1号店教育記念館」として保存されている[10][11]。
ゼンショー、吉野家ホールディングスなど、牛丼チェーン店から始まった企業もファミリーレストランに参入している。
日本の主なファミリーレストラン編集
グループ展開するチェーン編集
- すかいらーくグループ
- ガスト
- ステーキガスト
- バーミヤン
- ジョナサン
- 藍屋
- 夢庵
- グラッチェガーデンズ
- しゃぶ葉
- トマトアンドアソシエイツ
- イエスタデイ(閉店)
- ビルディ(閉店)
- ロイヤルホールディングス
- セブン&アイ・フードシステムズ
- ゼンショーグループ
- アークミール(吉野家ホールディングス)
広域展開するチェーン編集
- サイゼリヤ
- びっくりドンキー
- 不二家レストラン
- 和食さと(SRSホールディングスグループ)
- ジョイフル
- サガミホールディングス
- サガミ・味の民芸
- ステーキハンバーグ&サラダバー けん(MFS→ジー・テイスト)
- カプリチョーザ
- ポポラマーマ
- ヴォーノ・イタリア(ル・クール→NUKコーポレーション)
その他のチェーン編集
- 神戸屋レストラン
- サンマルク・バケット
- とんでん
- ばんどう太郎
- ピア・ジョリー
- 馬車道グループ
- あっぷるぐりむ
- まるまつ(株式会社カルラ)
- ブロンコビリー
- ピッツァ&パスタるーぱん
- 炭焼きレストランさわやか(静岡県)
- ハングリータイガー(神奈川県)
過去に存在したチェーン編集
脚注編集
- ^ a b “店舗検索 - ガスト国立店”. すかいらーくグループ. 2020年3月22日閲覧。
- ^ 日本経済新聞社・日経BP社. “すかいらーく創業 担保代わりの生命保険1億円|出世ナビ|NIKKEI STYLE” (日本語). NIKKEI STYLE. 2020年3月22日閲覧。
- ^ “沿革 | 企業情報”. ロイヤルホールディングス株式会社. 2020年5月3日閲覧。
- ^ “ちょっと見てきて:ロイヤルホスト1号店 (黒崎店→現青山店)”. デイリーポータルZ. 2020年5月3日閲覧。
- ^ “カウボーイ家族青山店”. カウボーイ家族. 2020年5月3日閲覧。
- ^ “伊藤雅俊「消費者が見える経営に戻りたい」長い沈黙を破って姿を現したヨーカ堂創業者(1996年掲載)” (日本語). 日経ビジネス電子版 (2017年1月13日). 2020年5月3日閲覧。
- ^ “国内1号店のデニーズ上大岡店が3月20日で閉店するってホント!?”. はまれぽ.com (2017年3月18日). 2020年5月3日閲覧。
- ^ “イトーヨーカドー上大岡店(仮称)、2019年4月開業 旧店舗跡に” (日本語). 都市商業研究所 (2018年10月1日). 2020年5月3日閲覧。
- ^ “沿革|企業情報”. サイゼリヤ. 2020年5月3日閲覧。
- ^ “1967年開業「サイゼリヤ1号店」のいま 閉店後はファンが支え「教育記念館」に” (日本語). J-CAST トレンド (2019年5月30日). 2020年5月3日閲覧。
- ^ “サイゼリヤ1号店で20年モノのサイゼリヤワインを飲む” (日本語). ねとらぼ (2019年6月29日). 2020年5月3日閲覧。
- ^ “ひばりヶ丘店ファミリーレストラン CASA 西友ひばりヶ丘店(カーサ)” (日本語). ひばりヶ丘店ファミリーレストラン CASA 西友ひばりヶ丘店(カーサ). 2020年5月3日閲覧。
- ^ “河辺ファミリーレストラン CASA 西友河辺店(カーサ)” (日本語). 河辺ファミリーレストラン CASA 西友河辺店(カーサ). 2020年5月3日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- 社団法人日本フードサービス協会 - 日本の業界団体
- 国会図書館第145回常設展示 外食の歴史 - 日本での歴史