能登群発地震

2020年から能登半島で発生している群発地震

能登群発地震(のとぐんぱつじしん)は[1]、2020年12月以降に石川県能登地方で発生している群発地震である。

能登群発地震の位置(日本内)
能登群発地震
2022年6月19日に起きたM5.4(最大震度6弱)の地震の震源地

概要編集

石川県能登地方では、2018年頃から地震回数が増加傾向となり、2020年12月から地震活動が活発になった[2]気象庁によると、2021年1月以降、震度1以上の揺れを150回以上観測した[3]。特に2022年6月19日に起きたM5.4の地震では、珠洲市で震度6弱の揺れを観測した[4]。また、2021年9月16日にも珠洲市で震度5弱を観測するM5.1の地震があった[5]。一連の地震活動は、東西約15km、南北約15kmの領域で発生しており、特に北側から東側にかけての領域で地震活動が活発である[6]。地震活動の領域は半島先端部を時計回りの方向で拡大する傾向を見せ、2022年11月以降は南東部の海岸沿いにも広がった[7]

群発地震の詳しい原因はわかっていないが[8]金沢大学教授の平松良浩によると、地下から上昇した流体により地殻が膨張している可能性があるという[3]。地面が隆起する地殻変動も観測されており、 珠洲市の観測点ではこれまでに地面が4cmほど隆起している[9]。能登地方のように周囲に火山がない場所でこれほどの地殻変動が観測されるのはかなり珍しいことである[10]東京工業大学教授の中島淳一は、同地域における過去の地震の伝播を解析した結果から、半島地下に水が広く存在していると推測した。また、それらの供給量や上昇経路を解明できれば、地震活動を予測できる可能性があるとしている[7]

2022年6月の地震編集

2022年6月19日15時8分頃、石川県の能登地方(北緯37度30.9分 東経137度16.5分 / 北緯37.5150度 東経137.2750度 / 37.5150; 137.2750座標: 北緯37度30.9分 東経137度16.5分 / 北緯37.5150度 東経137.2750度 / 37.5150; 137.2750)の深さ13kmを震源とするM5.4の地震(一連の地震活動で最大[11])があり[12]、石川県珠洲市で震度6弱の激しい揺れを観測した[13]。また、石川県能登では長周期地震動階級1を観測した[14]。石川県で震度6弱以上の揺れを観測したのは、2007年に起きた能登半島地震以来、15年ぶりである[15]

この地震は地殻内で発生した地震であり、発震機構は北北西-南南東方向に圧力軸を持つ逆断層型である[14][6]。この地震に対し、気象庁は地震波検知から8.6秒後の15時8分19.1秒に緊急地震速報(警報)を発表した[14]

震度4以上を観測した気象庁の発表地点[16][12]
震度 都道府県 観測点名
6弱 石川県 珠洲市正院町
5弱 石川県 珠洲市大谷町・能登町松波
4 石川県 輪島市鳳至町・輪島市門前町走出・珠洲市三崎町・能登町宇出津・能登町柳田

この地震により7人が軽傷を負ったほか、3棟の住家が一部破損した[17]。 震度6弱を観測した珠洲市では、住宅地のが倒れたり[18]、寺の墓石が倒れたりした[19][20]。珠洲市飯田町の春日神社では、鳥居が倒壊したほか[21][22]、境内の石灯籠が倒れたり、階段の一部が崩れたりした[23]見附島でも土砂が崩れ落ち、白い砂煙が上がる様子が確認された[24]

さらに、6月20日10時31分頃には、19日の地震の余震とみられるM5.0の地震が発生し、珠洲市で震度5強の揺れを観測した[9]

脚注編集

  1. ^ 富山の揺れ過去10年で最多 能登群発地震が影響 - 北日本新聞
  2. ^ 第235回地震予知連絡会 議事概要”. cais.gsi.go.jp. 地震予知連絡会. 2022年6月20日閲覧。
  3. ^ a b 能登半島、直近1年半で地震150回以上 昨年9月に震度5弱も”. 朝日新聞デジタル. 2022年6月20日閲覧。
  4. ^ 6人ケガ…能登地方で最大震度6弱の地震 タンスが倒れた住宅も「普通の地震じゃないぞと思った」(石川テレビ)”. Yahoo!ニュース. 2022年6月20日閲覧。
  5. ^ 石川で震度6弱 活発な地震活動、今後も注意―6人けが、津波なし・気象庁”. 時事ドットコム. 2022年6月20日閲覧。
  6. ^ a b 2022年6月19日石川県能登地方の地震の評価 - 地震調査研究推進本部・地震調査委員会
  7. ^ a b “能登半島で地震の頻発エリア拡大、地下の「水」が要因か…政府調査委「注視したい」”. 読売新聞. (2022年12月17日). https://www.yomiuri.co.jp/science/20221217-OYT1T50158/ 2022年12月17日閲覧。 
  8. ^ 能登半島、地震1年半で約150回 地殻変動が継続 - 日本経済新聞
  9. ^ a b 石川県 能登地方で震度5強の地震 津波の心配なし”. NHK. 2022年6月20日閲覧。
  10. ^ <再掲>火山のない能登、観測されていた異例の地殻変動と群発地震”. 毎日新聞. 2022年6月20日閲覧。
  11. ^ 石川県珠洲市で震度6弱 M5.4、一連の地震活動で最大”. 朝日新聞デジタル. 2022年6月20日閲覧。
  12. ^ a b 震度データベース検索”. 気象庁. 2022年6月21日閲覧。
  13. ^ 石川県珠洲市で震度6弱の地震 津波なし”. NHK. 2022年6月20日閲覧。
  14. ^ a b c 令和4年6月19日15時08分頃の石川県能登地方の地震について - 気象庁
  15. ^ 石川 珠洲で震度6弱 今後1週間ほど同程度の地震に注意を”. NHK. 2022年6月20日閲覧。
  16. ^ 石川県で震度6弱の地震 M5.4 津波の心配なし”. ウェザーニュース. 2022年6月20日閲覧。
  17. ^ 石川県能登地方を震源とする地震による被害及び消防機関等の対応状況 - 総務省消防庁
  18. ^ 震度6弱の石川・珠洲、住宅地の塀が幅10mにわたり倒れる…横揺れで根元のずれ最大1m(読売新聞オンライン)”. Yahoo!ニュース. 2022年6月20日閲覧。
  19. ^ 珠洲市で震度6弱 寺の住職「墓石が倒れる」”. NHK. 2022年6月20日閲覧。
  20. ^ 【被害まとめ】震度6弱 石川県珠洲市”. NHK. 2022年6月20日閲覧。
  21. ^ 地震で鳥居が倒壊、宮司の妻「絶句するしか」 能登で震度6弱”. 朝日新聞デジタル. 2022年6月20日閲覧。
  22. ^ 地震から一夜 震度6弱を観測した石川・珠洲市の様子は”. TBS NEWS DIG. 2022年6月20日閲覧。
  23. ^ 地震 震度6弱の珠洲市 春日神社 鳥居が根元から崩れる被害 - NHK
  24. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2022年6月19日). “【動画】石川地震 能登のシンボル「軍艦島」も土砂崩れ、砂煙上げ揺らぐ”. 産経ニュース. 2022年6月20日閲覧。

外部リンク編集