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エゾモモンガ(蝦夷小鼯鼠、Pteromys volans orii)は、ネズミ目(齧歯目)リス科リス亜科モモンガ族モモンガ属タイリクモモンガ種亜種で、北海道に生息するモモンガである(→写真)。

エゾモモンガ
エゾモモンガ
エゾモモンガ (Pteromys volans orii)
北海道上川郡東川町 (2009年3月)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: ネズミ目(齧歯目) Rodentia
: リス科 Sciuridae
亜科 : リス亜科 Sciurinae
: モモンガ族 Pteromyini
: モモンガ属 Pteromys
: タイリクモモンガ Pteromys volans
亜種 : エゾモモンガ Pteromys volans orii
学名
Pteromys volans orii
和名
エゾモモンガ
英名
Russian flying squirrel[1]
Pteromys volans range map.svg
エゾモモンガの生息図

目次

名称編集

和名「蝦夷小鼯鼠」の命名者は岸田久吉[2]の学名Pteromys volansの意味は「飛ぶ翼のある鼠」で、Pteromysが「翼のあるネズミ」、volansが「飛ぶ」。亜種名のorii折居彪二郎への献名

アイヌ語では「アツ・カムイ」(アツ=「群棲」・カムイ=「神」の意味、すなわち「群棲する神」の意味)[3]もしくは「アッ・カムイ」(「子供の守り神」の意味)と呼ばれた[4]

1940年代までは猟師山子(やまご)の間で[5]「晩鳥」(バンドリ)という俗名で呼ばれていた[6]

分布編集

北海道平野部 - 亜高山帯にかけての森林に生息する[7]札幌市内の森林公園円山動物園付近にも生息している[1]

ある程度の面積・巣穴にできる太さの樹木がある森林ならば鉄道の線路沿いにある防風林・住宅地近くの雑木林などにも生息するが、夜行性で警戒心が強いことに加え一生のほとんどを樹上で過ごすため継続して観察することは難しく、詳しい生態はあまり知られていない[3]

特徴編集

成獣の大きさにはオスメスでは違いがあり、体長はオスの方が長く16 - 18cm、メスは約15cm。尾長はオス・メスともほぼ同じで約10cm。体重は、オスが約120g[6]、オスとメスを区別していないデータでは、体重は80 - 120g。耳長は18 - 22mm。後足長は32 - 35mm[8]。体毛の毛先の色は1年を通してから胸部下腹部にかけて白色。それ以外の部位は白色または褐色。毛の下部は黒色。は体格に比して大きく、直径7 - 9mmあり、目の周囲の毛色は黒色。陰茎骨は細長い。数は、切歯が上2本下2本、犬歯は無し、前臼歯は上4本下2本、後臼歯は上6本下6本、合計22本。乳頭数は、胸部2対、腹部1対、鼠径部1対、合計8個。指趾数(の数)は、前肢が4本(第1指が無い)、後肢が5本、合計18本[6]

新生子の大きさは、体長は5.0 - 5.6cm。尾長は2.2 - 2.5cm。体毛はほとんど生えておらず、視力聴力はまだない[6]

飛膜・尾編集

本種は滑空するための飛膜を持っている。飛膜は後部から前肢まで、前肢から体側にそって後肢まで、後肢からの付け根まである。前肢の手首の先には硬い軟骨が伸びており、飛膜もこの軟骨にそって広がっている。の断面は扁平で[6]、滑空時は方向舵の役目を果す[9]

生態編集

本種は夜行性だが、日中も活動することがある。活動範囲は巣を中心とした領域で[10]、その広さは、オスは約2ha、メスは約1ha。メス同士の活動範囲は個体間で重ならないが、オス同士では重なる[8]。本種はほとんど樹上生活か、それに類する生活を送っており、地面に降りることはほとんどない。が鋭いため垂直の樹木や建造物等のモルタル壁の表面を自由に移動できる[11]。行動単位は、子育て中のメス以外は基本的には1匹であるが、1つの巣に複数の個体が同居していることも少なくない[10]

本種は様々な物をとして利用し、キツツキの一種であるアカゲラの古巣(樹洞[12]・人為的に樹木に架けた用の巣箱人家などの屋根裏エゾリスの古巣などが巣となる[13]。巣穴は入り口が広いとクロテンなど天敵に襲われる危険性が高いため狭い巣穴を好み[14]、500円硬貨程度の大きさがあれば入ることができる[15]。本種自身も小枝樹皮を利用して巣を作る[8]。また本種は巣内に乾燥した柔らかい植物性巣材を運び入れ、その中で眠る[11]

食性雑食性で、基本的には植物性のものを食べているが、昆虫なども食べる。植物では樹木樹皮種子ドングリなどで、冬季は主にトドマツの葉やカラマツシラカバの冬芽や小枝の皮などを食べ、3月ごろにはハンノキの雄花の花穂を食べる[16]。昆虫は成虫幼虫も食べる。本種は手の指が長いので食物を手で持って食べることができる[11]。地上には天敵の肉食動物が多いため地上に下りて川・湖の水を飲むことはなく樹上で水分補給をし、夏は樹木の葉に付いた水滴・冬は枝に積もった雪を飲み食いして水分を補給する[17]

体毛の色は保護色になっており[18]、夏毛は茶褐色で冬毛は白っぽい[19]

冬季が近づくと冬毛に生え変わり、体を寄せ合い保温効果を高める目的で1つの巣穴に複数個体(通常は2 - 5匹、多い場合で10匹程度)が集まり集団で越冬する[19]。本種は冬眠せず[20][21]、氷点下25℃以下にまで気温が低下して髭が白く凍り付き[22]エゾモモンガの小さな体を吹き飛ばすような猛吹雪が吹き荒れる厳冬期でも餌を食べに巣穴の外に出て活動する[21]

天敵はクロテン・エゾフクロウ[23]タカなどで[21]、天敵に見つからないよう常に周囲を警戒し、樹上では自分の体が天敵に見つからないよう注意している[24]。本種が天敵に気づいたときの対処方法は、天敵が本種から離れて行くまで身動きせず、天敵に気づかれないようにすることである。その時間は1 - 2時間におよぶこともある[11]

寿命は、飼育個体では4 - 5年だが、野生個体では3年未満が多い[8]

滑空編集

本種は方向舵として使用することにより滑空中の旋回を可能としている[9]。滑空できる距離は約50mであるが、高所から低所へ滑空するので、離木位置と着木位置の高低差が大きければ滑空可能距離が長くなり、高低差が小さければ滑空可能距離が短くなる[11]

繁殖と子モモンガの独立編集

繁殖期は初春からにかけての期間で、2月下旬から3月下旬に発情し、4月中旬から8月に出産する。出産回数はその年の繁殖期に1,2回で、通常は1回。1回の出産の新生子数は2 - 5匹。妊娠期間は不明。子育てはメスだけで行う。ムササビ等と違い、他のオスに対しての攻撃性が殆どない。幼獣は生後約10週目に親離れし、翌年には繁殖が可能となる[25]

鳴き声編集

本種は「ジィージィー」と鳴く[11]

人間との関わり編集

1957年に合田昌義の文献『エゾモモンガによる材木害』にて「北海道中標津営林署養老牛国有林(北海道標津郡中標津町)でカラマツ120本の樹枝先端を食害した」例が報告されているが[26]害獣として駆除されるほどの実害は発生していないとされる[27]

森林伐採・孤立化や食物の不足などにより生息数は減少傾向にある[28]札幌市円山動物園では1967年から本種の飼育・繁殖に取り組んでいるほか[28]釧路市動物園[29]おびひろ動物園[30]でも本種が飼育されている。

テレビ番組編集

脚注編集

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  1. ^ a b エゾモモンガ」(札幌市円山動物園)より。
  2. ^ 理学博士、農学博士 --『野生動物調査痕跡学図鑑』(p397)より。
  3. ^ a b 富士元寿彦 2001, p. 3
  4. ^ 目黒誠一 1994, p. 3
  5. ^ 木樵など、山仕事をする人のこと --『広辞苑』より。
  6. ^ a b c d e 野生動物調査痕跡学図鑑』(p345)より。
  7. ^ 野生動物調査痕跡学図鑑』(p348)より。
  8. ^ a b c d 日本の哺乳類 改訂2版』(p124)より。
  9. ^ a b エゾモモンガと清水飼育員」(Maruyama Zoo Channel)より。
  10. ^ a b 野生動物調査痕跡学図鑑』(p346)より。
  11. ^ a b c d e f 野生動物調査痕跡学図鑑』(p347)より。
  12. ^ 富士元寿彦 2004, p. 39
  13. ^ 野生動物調査痕跡学図鑑』(p346, p347)より。
  14. ^ 富士元寿彦 2001, p. 23
  15. ^ 富士元寿彦 2001, p. 6
  16. ^ 富士元寿彦 2001, p. 27
  17. ^ 目黒誠一 1994, p. 32
  18. ^ 目黒誠一 1994, p. 53
  19. ^ a b 富士元寿彦 2001, p. 54
  20. ^ 目黒誠一 1994, p. 34
  21. ^ a b c 富士元寿彦 2001, p. 66
  22. ^ 目黒誠一 1994, p. 67
  23. ^ 富士元寿彦 2001, p. 21
  24. ^ 目黒誠一 1994, p. 62
  25. ^ 野生動物調査痕跡学図鑑』(p345, p346)より。
  26. ^ #哺乳動物学雑誌1967
  27. ^ 北海道の樹木の獣害 (Report). 地方独立行政法人北海道立総合研究機構(略称:「道総研」). オリジナルの2018-12-19時点によるアーカイブ。. http://web.archive.org/web/20181221095758/https://www.hro.or.jp/list/forest/research/fri/kanko/fukyu/jumoku/doubutu/gaiju.htm 2018年12月19日閲覧。. 
  28. ^ a b エゾモモンガ」(札幌市円山動物園)より。
  29. ^ #釧路市動物園
  30. ^ #おびひろ動物園
  31. ^ ダーウィンが来た(第9回・モモンガ驚きエコ生活)”. 日本放送協会(NHK) (2006年6月4日). 2018年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月3日閲覧。
  32. ^ ダーウィンの動物大図鑑 エゾモモンガ”. 日本放送協会(NHK) (2008年10月23日). 2009年5月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月3日閲覧。
  33. ^ さわやか自然百景のバックナンバー”. 日本放送協会(NHK) (2011年2月6日). 2018年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月3日閲覧。
  34. ^ ワイルドライフ選▽北海道 サロベツ原野 エゾモモンガ 凍(い)てつく森を生きる”. 日本放送協会(NHK) (2018年12月3日). 2018年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月3日閲覧。

参考文献編集

ウェブサイト

出版物

  • 門崎允昭『野生動物調査痕跡学図鑑』北海道出版企画センター、2009年10月20日。ISBN 978-4832809147
  • 石井信夫「タイリクモモンガ」『日本の哺乳類』阿部永 監修、自然環境研究センター 編集、東海大学出版会、2008年7月5日 第1刷発行、改訂2版、p124。ISBN 978-4486018025

辞典

  • 広辞苑岩波書店〈シャープ電子辞書 PW-9600 収録〉、1998年 - 2001年、第5版。

写真集・関連書籍編集

  • 富士元寿彦『子ども科学図書館 飛べ!エゾモモンガ』大日本図書、1998年1月。ISBN 978-4477008820
  • 目黒誠一『エゾモモンガ 目黒誠一写真集 -アッカムイの森に生きる-』講談社、1997年10月13日(原著1994年3月15日)、第5刷。ISBN 978-4062068833
  • 富士元寿彦『エゾモモンガ』北海道新聞社、2001年4月10日(原著2001年1月31日)、第2刷。ISBN 978-4894531338
  • 富士元寿彦『モモンガにあいたい seiseisha mini book series』青菁社、2004年12月24日、初版第1刷。ISBN 978-4883502035
  • 福田幸広『風の友だちモモンガ Little Friends』リベラル社、2007年10月1日。ISBN 978-4434110856
  • 西尾博之『えぞももんがのきもち』北海道新聞社、2016年4月20日。ISBN 978-4894538245
  • 太田達也『モモンガだモン! 北の森からのメッセージ』天夢人、2017年12月11日。ISBN 978-4635820257

関連項目編集

外部リンク編集