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あらすじ編集

長距離トラックの運転手、ゴローとガンがとあるさびれたラーメン屋に入ると、店主のタンポポが幼馴染の土建屋ビスケンにしつこく交際を迫られていたところだった。それを助けようしたゴローだが逆にやられてしまう。翌朝、タンポポに介抱されたゴローはラーメン屋の基本を手解きしタンポポに指導を求められる。そして次の日から「行列のできるラーメン屋」を目指し、厳しい修行が始まる。

キャスト編集

ゴロー
演 - 山崎努
タンクローリー運転手[2]。かつてはボクシングジム笹崎拳所属のウェルター級ボクサーだった。「タンポポ」を日本一のラーメン屋にしようとプロデュースすることになる。
タンポポ
演 - 宮本信子
しがないラーメン屋の店主で未亡人。夫が営んでいたラーメン屋を見よう見まねで受け継いでいた。ラーメンはなかなか上手く作れないが、家庭料理の腕前は美味しく、特に漬物はゴローも認めるほど。ゴローと二人三脚で美味いラーメン屋になろうと努力する。
ガン
演 - 渡辺謙
ゴローと一緒にタンクローリーに乗っている助手的相棒。タンポポの西洋風調理服を作る。冒頭でラーメンの食べ方が書かれた本を読んだことで、ゴローと共にタンポポのラーメン屋に偶然立ち寄る。

メインストーリーに関わる人たち編集

タンポポを手助けする人編集

ピスケン
演 - 安岡力也
ヤクザまがいの土建業者。タンポポとは幼馴染で、毎晩子分連れで店に押し掛けてはしつこく交際を迫っているが、根は一本気で潔い性格。ゴローと一対一で決闘した後に和解し、店のリフォームを引き受け、タンポポに自らの創作メニュー「ネギソバ」を提案する。タンポポに「ケンちゃん」と呼ばれている。
センセイ
演 - 加藤嘉
ホームレスたちのまとめ役。元産婦人科医だったことからゴローたちから「センセイ」と呼ばれる。病院院長だった頃にラーメン好きの食道楽のせいで病院を妻と事務長に乗っ取られた。ゴローの紹介によりタンポポの指導に当たり、主にスープを担当する。
ショーヘイ
演 - 桜金造
モチをつまらせる老人の運転手兼料理人で怪しい関西弁を話す。愛人が銀行に行く際にも運転している。ラーメン好きで、主に麺を担当する。
モチをつまらせる老人
演 - 大滝秀治
蕎麦屋で愛人に止められていたすべてのメニュー(天婦羅そば、鴨南蛮、ぜんざい)を注文する。ぜんざいのモチを喉に詰まらせたところを居合わせたタンポポたちに助けられる。お礼として彼らを自宅に招いてスッポン料理を振舞った上、ショーヘイを仲間に加える。愛人からは「先生」と呼ばれている。

タンポポが偵察に訪れるラーメン屋など編集

大三元のおやじ
演 - 久保晶
タンポポの店の近くのラーメン屋で働く。一応繁盛しているが、ゴロー曰く「味は大したことない」。
弟子たち
演 - 兼松隆、大島宇三郎、川島祐介
大三元の店員たち。強面で私語や無駄な動きが多く、やたら声だけはでかい。
中華街のおやじ
演 - 高木均
それなりに美味いラーメンを作る。タンポポにスープの作り方を教える代金として100万円を要求する。
その隣のおやじ
演 - 二見忠男
中華街のおやじの店の隣で中国の服や小物の販売店を経営。タンポポにスープの秘密をこっそりと覘き見させてくれる、ちょっと怪しげなおじさん。
日の出ラーメンのおやじ
演 - 里木佐甫良
大三元とは対照的に描かれている美味いラーメン屋のおやじ。ゴローから陰でラーメンの味に太鼓判を押される。
その職人
演 - 都家歌六
日の出ラーメンで働く。無駄な動きがなく無言で黙々と美味しいラーメンを作る。
味一番のおやじ
演 - MARIO ABE
駅前の立ち食いラーメン屋を一人で切り盛りする。客の注文と順番を暗記する能力に長けている。
中華そば屋コック
演 - 横山あきお
中国人らしくカタコトの日本語を話す。ラーメンには自信があるが、タンポポの口車に乗せられて麺作りの秘訣をうっかり漏らしてしまうお人好しな性格。

タンポポが出会うホームレスたち編集

小さい乞食
演 - 辻村真人
親しみやすい人柄でおしゃべり好き。他のホームレスたちと同じく近所の料理屋の味を熟知している。
細長い乞食
演 - 高見映
ホームレスになる前の職業などは不明だが、プロ並みのオムライスが作れる。
顔の長い乞食
演 - ギリヤーク尼ヶ崎
のんびりしたもの言いが特徴。「フランス料理は焦げ味との戦い」との持論を持つ。
太った乞食
演 - 松井範雄
長年のホームレス生活によりいずれも食通揃いの乞食たちで、身なりは汚れているがよく笑う気のいいおじさん。
赤鼻の乞食
演 - 佐藤昇
ワインに造詣が深い。メドック産の80年物のワインを飲んだ時の感想を話す。
合唱する乞食たち
演 - 日本合唱協会
タンポポを助けることになったセンセイを見事な合唱で見送る。

サブストーリーの登場人物編集

白服の男の関係者編集

白服の男
演 - 役所広司
ギャング風で全身白色のコーディネイト[3]。かなりの食通で、死に際にも料理について語る。
白服の男の情婦
演 - 黒田福美
ボウルに入った生きた車海老を腹に乗せられるなど、白服の男の食道楽に付き合っている。
カキの少女
演 - 洞口依子
海女。白服の男が一人で浜辺を訪れた時に、自身が獲った生ガキを食べさせる。

マナー講座の関係者編集

マナーの先生
演 - 岡田茉莉子
西洋料理屋でのマナー講座で、生徒相手に決して音を立てながら食事をしてはならないと教えていたが、台無しになる。
マナー教室の生徒
演 - 坪井木の実根本里生子、他
マナーの先生の説明を受けるも、偶然近くで食べていた太った外人の食べ方こそ本場の食べ方と思って真似をする。
太った外人
演 - アンドレ・ルコント
西洋料理屋で行われていたマナー講座の近くの席で、パスタをすすったりげっぷを放つなどの騒音を出し、生徒たちが全員真似てパスタをすすって食べる元凶となった。

フランス料理店の会社役員たち編集

専務
演 - 野口元夫
フランス語のメニューが読めず、部下の出方を窺う。一人称は「ぼく」。
常務
演 - 嵯峨善兵
やはりフランス語のメニューが読めず、それほど腹が空いていないフリをしてごまかす。一人称は「わたし」。
課長
演 - 成田次穂
専務、常務に続いて「ぼくも同じ」と言う。
部長
演 - 田中明夫
困っている上司たちを見てボーイを呼び、「舌ビラメのムニエル」「コンソメスープ」「ハイネケンのビール」と手本を示す。全部のメニューが読めるかは不明。
課長
演 - 高橋長英
ヒラ社員を雑に扱う上司。ヒラのちょっとした行動に露骨に嫌な顔を見せたり(神経痛でもないのに顔をしかめるなど。)、小突いたりする。
ヒラ
演 - 加藤賢崇
見た目は冴えない鞄持ちだが、実はフランス料理に精通した食通。フランス語で書かれたメニューを読めない上司たちを尻目に、好きな料理を自由に注文する。所々でオネェ言葉を発する。
ボーイ
演 - 橋爪功
フランス料理に無知な重役たちとヒラの注文時のやり取りを見て、部屋を出る際にほくそ笑む。

歯の痛い男の関係者編集

歯の痛い男
演 - 藤田敏八
結構進行した虫歯のある男。歯医者帰りにベンチでアイスクリームを食べようとしたが果たせず、男の子にアイスクリームを譲る。
歯医者
演 - 北見唯一
虫歯の治療に訪れた患者の治療中、歯髄壊疽により発せられる臭いに顔をしかめる。
その助手
演 - 柴田美保子南麻衣子
歯医者の治療を補助する。二人とも歯医者の助手にしてはややセクシーな服を着ている。
人参を下げた男の子
演 - 海野喜一
母親に健康志向を強いられ首から、おやつ代わりの人参と共に「何も与えないでください」と書かれた札を下げる。

スーパーの関係者編集

マネージャー
演 - 津川雅彦
スーパーで働く。客が少ない夜の時間帯に店内で迷惑行為をする老婆を追う。
カマンベールの老婆
演 - 原泉
上品な格好をしたお婆さん。スーパーの売り場のカマンベールなどの食品を素手で触って感触を楽しむ。

老紳士の関係者編集

老紳士
演 - 中村伸郎
世間知らずの東北大学名誉教授を装って周囲をだまし、ただ飯にありつくのを生業にしているスリ。
連れの男
演 - 林成年
老紳士に投資話を持ちかける怪しい男。投資させるために美味しそうな中国料理でもてなす。
刑事
演 - 田武謙三
老紳士を張り込み、東北大学名誉教授を装う騙し方を「ワンパターン」と評して捕まえる。

走る男の関係者編集

走る男
演 - 井川比佐志
サラリーマン。鉄道線路沿いの小さなアパートに妻と3人の子供と住んでいる。妻の臨終に駆けつけ、彼女を励まそうと「そうだ 飯を作れ!」と声を掛ける。
その妻
演 - 三田和代
病で死にかけており、自宅に医師と看護婦が来ていた。夫の「飯を作れ」という声にフラフラと立ち上がり、チャーハンを作る。家族がチャーハンを食べる姿を見て幸せそうに微笑むと、そのまま倒れて息を引き取る。
医者
演 - 大月ウルフ
「走る男」の死にかけの妻の診察に呼ばれ、家族の前で臨終を告げる。

その他の人物編集

ターボー
演 - 池内万平(伊丹・宮本の次男)
タンポポの小学生の息子。いじめられていたがゴローたちのアドバイスでいじめっ子たちを見返し、のちに一緒に登校するほどの仲となった。
いじめっ子
演 - 大沢健
ターボーの同級生。仲間と3人で、いつもターボーを殴る蹴るなどをしていじめる。
おめかけさん
演 - 篠井世津子
モチをつまらせる老人の愛人。老人の体を気遣って食事をする店まで付き添う。
ラーメンの無斎先生
演 - 柳太朗
ガンにラーメンの正しい食し方を教える。実際にはガンが読んでいる本の中の登場人物を作中で具現化したもの。
タクシーの運転手
演 - 関山耕司
詳しくは不明だが、ガンに頼まれて同業仲間と共に自前のメイク道具を持ってタンポポにメイクする。
ピスケンの子分
演 - 榎木兵衛粟津號、大屋隆俊、瀬山修
ピスケンを慕い、ゴローとピスケンがトラブルを起こした時に加勢する。
白服の男の子分
演 - 深見博長江英和加藤善博
最前列で映画を見る白服の男のために豪華な料理を小さなテーブルと共にセッティングする。
映画館のアベック
演 - 村井邦彦松本明子
映画館の上映直前に座席で音を立てながらスナック菓子を食べる男とその恋人。
守衛
演 - 福原秀雄
ビルに入居する料理屋に細長い乞食が不法侵入した時に、警備のために見周る。
タンポポの客
演 - 上田耕一

スタッフ編集

作品解説編集

映画のモデルとなったラーメン店は、東京荻窪の「佐久信」で『愛川欽也の探検レストラン』でのストーリー(荻窪ラーメン)を下書きにしたとされる。

本筋は売れないラーメン屋を立て直す物語だが、途中本筋とはまったく関係ない食にまつわるエピソードが大量にちりばめられて相当部分を占めている。これらは、時にはすれちがう人物をカメラが追いかけていくような形で、時には何のエクスキューズもなしに突然挿入される。ヤクザ風の白服の男は冒頭でカメラに向かって口上を述べたあと、本筋との関係も全く説明されないまま、繰り返し登場。スケッチ集とも取れる自由自在な作り方となっている。

 それとは別に、店舗は京都市中京区壬生相合町に存在したラーメン店「珍元」(2019年閉店)がモデルとする説も根強い。珍元には、伊丹と宮本信子と息子の3人が製麺所の紹介で実際に訪れ、調理の様子や店の外観をロケハンして帰った。店内には伊丹と宮本のサインが飾られていた[4]

 撮影は「春木屋」軽井沢店で行われた。

その他13のエピソード編集

  • 白服の男とその情婦。
    • オープニングでの画面に向って話しかけ、映画館での音をたてる飲食行為を恫喝。
    • 生卵を割らずに何回も口移しでやりとりするような濃厚な場面も展開される。
    • 男に牡蠣を食べさせる若い海女
    • 男は最後に何の説明もないまま射殺される。死の間際、情婦にを狩って山芋の詰まった腸を食べる話をする。この死は冒頭の口上から既に暗示されている。
  • ラーメンの正しい食べ方をガンに教示する老人(無斎先生)[5]東海林さだおのエッセイ「ショージ君の男の分別学」の「ラーメンについて」が元ネタ。
  • スパゲッティの食べ方を教えるマナー教室の先生の授業の傍でマナーを無視してスパゲッティをすする外国人。
  • フランス料理に詳しい空気の読めない新米サラリーマンとフランス語の読めない重役。
  • 子供(ターボー)にオムライスを作ってあげる細長い乞食[6]
  • 歯の痛い男。
  • 親に自然食以外を摂る事を禁じられた子供。
  • 店中の品物の感触を楽しむ老婆とその店の店長。
  • 大学教授になり済ましたスリ北京ダックを食べさせる詐欺師
  • 危篤の妻に玉子とザーサイチャーハンを作らせる男。
  • ラストは人間にとって「人生最初の食事」とも言うべき授乳のシーンで終わる。

音楽編集

作品内で随所に、フランツ・リスト作曲の交響詩前奏曲(レ・プレリュード)』が使われている。またマーラー交響曲等も使用されている。

研究編集

明治大学政治経済学部教授で文学者のマーク・ピーターセンは、自著『続 日本人の英語』の中で以下の研究を掲載している[7]

作中のゴローとタンポポがデートで焼肉屋に行った際の

タンポポ「ねえ、あたしよくやってる?」
ゴロー「よくやってるよ」
タンポポ「えらい?」
ゴロー「えらい、えらい」

という会話について「この場面はタンポポのラーメン修行が一段落ついたところで、彼女には甘えてみたい気持ちがある。褒められてみたい。未亡人の彼女がそこで自分のことを『えらい?』と素直に、子供のように訊くと、とても可愛く感じられる。しかし、それを感じても、私は、その『えらい?』を英語に訳せと言われたら困る。長い文章で説明するのなら、ある程度できるつもりであるが、一つの台詞として同じようなことを表現するのは、私には無理である」とした上で北米版の『タンポポ』の字幕

Tampopo : Am I trying hard enough?
Goro : Sure you are.
Tampopo :Am I good?
Goro :Sure.

を紹介し「この英語は、表面的には似たような内容の話にはなっているが、感覚的に言えば、ドライで、機械的な会話である。日本のオリジナルに比べたら、情けない英語である」と断じており、さらにこれを自身が日本語に再翻訳した

タンポポ「私は十分に頑張っている?」
ゴロー「それはそうだよ」
タンポポ「私には才能があると思う?」
ゴロー「思う」

を提示しつつ「えらい?」とタンポポがゴロ―に聞いたのは辞書的な意味ではなく、日本人ならわかるえらい「頑張りぶり」の前提の上に成り立つやり取りであるという趣旨の解説をしている[7]

公開・反響編集

伊丹十三監督の作品としては、本作公開の前年に公開された「お葬式」が異例のヒット作となったこともあり前評判は高かったものの、興行成績は「お葬式」の半分程度の水準にとどまった。しかし、一部のマニアックなファンや日本国外からは支持され、特に日本国外での反響が高く、アメリカでの興行成績は邦画部門2番目となっている[8]。この映画を見て日本通になったり、あるいはラーメン店を開業する外国人も出現した。

2009年にはこの作品のオマージュとしてロバート・アラン・アッカーマン監督による『ラーメンガール』が公開された。本作の主人公である山崎努も出演している。

オリジナル番組編集

日本映画専門チャンネルの2017年のオリジナル番組。2016年10月、宮本信子がNYで『タンポポ』が4Kデジタルリマスターニュープリントでリバイバル上映される、その舞台挨拶に向かう。NYでは1986年に『タンポポ』が上映されていた。

脚注編集

  1. ^ 大高宏雄「伊丹映画の新たな展開」『日本映画逆転のシナリオ』WAVE出版、2000年4月24日、144頁。ISBN 978-4-87290-073-6
  2. ^ 撮影前に山崎はこの役のために東急自動車学校大型自動車免許を取っている。
  3. ^ この役に役所を当てたのは映画公開と同じ年に放送された『親戚たち』で役所が演じた雲太郎という男で、ドラマの中で白いスーツを着ていたのを伊丹が見て決まった。(『伊丹十三の映画』p.73 新潮社 2007年)
  4. ^ 伊丹映画「タンポポ」モデルのラーメン店、無念の閉店…店主妻が急逝、失われた「庶民の味」”. デイリーニュース (2013年7月13日). 2019年7月13日閲覧。
  5. ^ 「まずラーメンの全容をじっくりと眺め、ラーメンの表面を軽く箸でひと撫で。チャーシューを右上のスープに軽く沈め、心の中で「後でね…」と詫びてから麺を一箸。次にシナチクを一本口中に投じ、さらに麺をすする。そして、シナチクを一本。続いてスープを3口すすり、軽くほーっとため息をついてからようやくチャーシューへ」などと教示する。
  6. ^ チキンライスに半熟オムレツを乗せて切り開く、いわゆる「タンポポオムライス」。「オムライスはオム(卵)とライスに分かれているのに、卵とご飯を一緒にするのはおかしい」と言う伊丹の発案を元に東京日本橋たいめいけんが作成し、現在も当店の名物の一つとなっている。
  7. ^ a b マーク・ピーターセン『続 日本人の英語』(岩波新書、1990年)ISBN 978-4004301394 p2-6
  8. ^ 一位は『Shall We ダンス?』。

外部リンク編集