ハーヴェイ・カイテル(Harvey Keitel, 1939年5月13日 - )は、ニューヨークブルックリン出身のアメリカ合衆国俳優

Harvey Keitel
ハーヴェイ・カイテル
ハーヴェイ・カイテル
生年月日 (1939-05-13) 1939年5月13日(84歳)
出生地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ニューヨーク州ニューヨーク市ブルックリン区
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ジャンル 映画舞台
活動期間 1965年 -
活動内容 1965年:舞台デビュー
1967年:映画デビュー
配偶者 ロレイン・ブラッコ (1982-1993)
ダフナ・カストナー(2001-)
主な作品
ミーン・ストリート』『アリスの恋
デュエリスト/決闘者』『恋におちて
最後の誘惑』『テルマ&ルイーズ
バグジー』『レザボア・ドッグス
天使にラブ・ソングを…
バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト
ピアノ・レッスン』『ライジング・サン
パルプ・フィクション』『スモーク
クロッカーズ』『ユリシーズの瞳
フロム・ダスク・ティル・ドーン
コップランド』『U-571
レッド・ドラゴン
ナショナル・トレジャー』シリーズ
グランド・ブダペスト・ホテル
グランドフィナーレ』『アイリッシュマン
 
受賞
ベルリン国際映画祭
銀熊賞(審査員特別賞)
1995年スモーク』における優れた演技に対して
全米映画批評家協会賞
助演男優賞
1991年バグジー』『テルマ&ルイーズ』『愛を殺さないで
放送映画批評家協会賞
アンサンブル演技賞
2019年アイリッシュマン
その他の賞
インディペンデント・スピリット賞
主演男優賞

1992年バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト
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生い立ち 編集

東ヨーロッパ移民のユダヤ人の両親の間に生まれる[1][2]。16歳の時にアメリカ海兵隊へ参加しレバノンに出兵。20歳で除隊した後はセールスマンを経てマンハッタン裁判所速記官を務め生計を立てた。

キャリア 編集

友人の誘いで演劇を始めステラ・アドラーリー・ストラスバーグに師事。

オフ・ブロードウェイでの経験を積む一方で、ニューヨーク大学の学生であったマーティン・スコセッシと知り合い、1967年、スコセッシの長編映画デビュー作品『ドアをノックするのは誰?』で映画デビュー。同年、エリザベス・テイラー主演の映画『禁じられた情事の森』にも出演している。1973年の『ミーン・ストリート』でも再びスコセッシとコンビを組んだが主演のカイテルは注目されず助演のロバート・デ・ニーロが注目されるという不運に見舞われた。本作以降デ・ニーロと共演することが多かった。その後も俳優養成学校であるアクターズ・スタジオの入学試験で10年連続の不合格となるなど苦労が絶えなかった。

スコセッシと4度目の共演となった映画『タクシードライバー』で売春宿のポン引き役を演じて話題となった。しかし、1979年公開の映画『地獄の黙示録』の主役、ウィラード大尉役に抜擢されるが、監督のフランシス・フォード・コッポラとの意見の相違、及び契約書の文面を巡って撮影開始わずか2週間後に降板(代役はマーティン・シーン)し、これが映画会社との間で「俳優の都合による契約違反」とされたためにハリウッドにおいて敬遠されるようになり、以後徐々に端役しか与えられなくなった。

そのため、活動の拠点をヨーロッパの映画に移し、リドリー・スコットらの作品に出演を重ねて復活のチャンスを地道に待った。1980年代に差し掛かってもありきたりなギャングといったステレオタイプな役ばかりしか演じる機会が無かった。しかし、この頃の経験が後に大きなチャンスをもたらすこととなる。

1991年、カイテルの低迷期に苦楽を共にしたスコットの監督作品『テルマ&ルイーズ』で義理人情に厚い刑事を演じて復活の兆しを見せると同年公開の映画『バグジー』ではアカデミー助演男優賞にノミネートされた。他にも幾つかの映画賞を受賞。翌1992年には出演と製作補を兼任した『レザボア・ドッグス』で映画俳優としての地位を取り戻した。

以降は「暴力的」というイメージからの脱却と、演じられる幅の拡大を求めて出演作品を慎重に選択するようになった。時には全裸も厭わない度胸と長年の経験で培われた演技力で幅広い分野に亘り数多くの作品に出演。また、キャリアを築く過程で幾度と無く辛酸を舐めた経験から資金力や公開の機会に乏しいインディペンデント映画に対して理解を示している。製作総指揮も務めたベトナム人監督トニー・ブイの『季節の中で』では、サンダンス映画祭において史上初のグランプリ・観客賞同時受賞を果たした。

私生活 編集

女優のロレイン・ブラッコと12年間同棲し、1985年に長女ステラをもうけている。2001年、カナダ人の映画監督兼女優のダフナ・カストナーと結婚し、2004年に一男をもうけた。

主な出演作品 編集

公開年 邦題
原題
役名 備考 吹き替え
1967 ドアをノックするのは誰?
Who's That Knocking at My Door
J.R. (吹き替え版なし)
禁じられた情事の森
Reflections in a Golden Eye
兵士 クレジットなし
1973 ミーン・ストリート
Mean Streets
チャーリー
1974 アリスの恋
Alice Doesn't Live Here Anymore
ベン TBA
1975 ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド英語版
That's the Way of the World
コールマン・バックマスター
1976 タクシードライバー
Taxi Driver
スポーツ・マシュー 日高晤郎(TBS版)
東地宏樹(ソフト版)
TBA(機内上映版)
走れ走れ!救急車!英語版
Mother, Jugs & Speed
スピード
ビッグ・アメリカン
Buffalo Bill and the Indians
エド・グッドマン 山口健
ロサンゼルス・それぞれの愛英語版
Welcome to L.A.
ケン
1978 ブルー・カラー/怒りのはみだし労働者ども英語版
Blue Collar
ジェリー
デュエリスト/決闘者
The Duellists
フェロー 麦人
マッド・フィンガーズ英語版
Fingers
ジミー・フィンガーズ
1979 イーグルス・ウィング英語版
Eagle's Wing
ヘンリー
1980 ジェラシー
Bad Timing
刑事 (吹き替え版なし)
スペース・サタン
Saturn 3
ベンソン 坂口芳貞(LD版)
小川真司(フジテレビ版)
SFデス・ブロードキャスト英語版
Deathwatch
ロディ
1982 ボーダー
The Border
キャット 仲木隆司(TBS版)
1983 愛と死の天使英語版
Exposed
コップキラー英語版
Copkiller
フレッド・オコナー
1984 恋におちて
Falling in Love
エド・ラスキー TBA(フジテレビ版)
ネモの不思議な旅/異次元惑星のプリンセスを救え!!英語版
Nemo
ミスター・レジェンド
1985 世にも不思議なアメージング・ストーリー
Amazing Stories
テレビシリーズ、クリント・イーストウッド監督の一編 大和田伸也
スター・ナイト英語版
El caballero del dragon (The Knight of the Dragon)
騎士クレバー
1986 殺人モニター/裏切りの報酬英語版
Blindside
ペンフィールド
殺意の絆英語版
Camorra (A Story of Streets, Women and Crime)
フランキー
オフビート英語版
Off Beat
ミッキー
メンズクラブ/真夜中の情事
The Men's Club
ソリー (吹き替え版なし)
インクアイリー/審問英語版
L'inchiesta
1987 ピックアップ・アーチスト英語版
The Pick-up Artist
アロンソ
1988 ゴルバチョフへの手紙英語版
Caro Gorbaciov
ニコライ 池田勝
最後の誘惑
The Last Temptation of Christ
ユダ (吹き替え版なし)
1989 乙女座殺人事件
The January Man
フランク・スターキー
1990 マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴英語版
Due occhi diabolici
ロデリック・アッシャー "The Black Cat"
黄昏のチャイナタウン
The Two Jakes
ジェイク・バーマン 小林勝彦
1991 テルマ&ルイーズ
Thelma & Louise
ハル・スローコム警部 菅生隆之
愛を殺さないで
Mortal Thoughts
ジョン・ウッズ捜査官 堀勝之祐
バグジー
Bugsy
ミッキー・コーエン 小林勝彦
1992 バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト
Bad Lieutenant
刑事 (吹き替え版なし)
レザボア・ドッグス
Reservoir Dogs
Mr. ホワイト 兼共同製作 堀勝之祐
天使にラブ・ソングを…
Sister Act
ヴィンス 堀勝之祐(ソフト版、日本テレビ版)
1993 ライジング・サン
Rising Sun
トム・グレアム刑事 小川真司
アサシン
Point of No Return
ヴィクター 小島敏彦(ソフト版)
池田勝(日本テレビ版)
佐々木勝彦(テレビ朝日版)
ピアノ・レッスン
The Piano
ジョージ・ベインズ オーストラリア映画協会賞主演男優賞 受賞 樋浦勉
スネーク・アイズ
Dangerous Game
エディ・イズラエル (吹き替え版なし)
プレイデッド
The Young Americans
ジョン・ハリス 堀勝之祐
1994 詐欺/イマジナリークライム英語版
Imaginary Crimes
レイ
ゆかいな天使/トラブるモンキー
Monkey Trouble
ショーティ・コーン 穂積隆信
パルプ・フィクション
Pulp Fiction
ウィンストン・ウォルフ 堀勝之祐
サムバディ・トゥ・ラブ英語版
Somebody to Love
ハリー
1995 スモーク
Smoke
オーギー・レン 堀勝之祐
ユリシーズの瞳
To Vlemma tou Odyssea
A (吹き替え版なし)
ブルー・イン・ザ・フェイス
Blue in the Face
オーギー・レン
クロッカーズ
Clockers
ロッコ・クレイン 小林勝彦
1996 真夏の出来事
Head Above Water
ジョージ 堀勝之祐
フロム・ダスク・ティル・ドーン
From Dusk Till Dawn
ジェイコブ・フラー 大塚周夫(ソフト版)
野島昭生(Netflix版)
1997 フェアリーテイル
FairyTale: A True Story
ハリー・フーディーニ 麦人
コップランド
Cop Land
レイ 大塚周夫(ソフト版)
石田太郎(テレビ朝日版)
バッド・デイズ英語版
City of Industry
ロイ
1998 グレイスランド
Finding Graceland
エルヴィス 池田勝
ルル・オン・ザ・ブリッジ
Lulu on the Bridge
イジー・モーラー
1999 季節の中で英語版
Three Seasons
ジェームズ 兼製作総指揮
ホーリー・スモーク
Holy Smoke!
PJ ウォーターズ 津嘉山正種
2000 FAIL SAFE 未知への飛行
Fail Safe
ウォーレン・ブラック准将 テレビ映画 坂口芳貞
U-571
U-571
ヘンリー・クロフ曹長 池田勝(ソフト版、テレビ朝日旧版)
坂口芳貞(テレビ朝日新版)
リトル★ニッキー
Little Nicky
サタン 大塚周夫
2001 灰の記憶
The Grey ZOne
エリック・ムスフェルド軍曹 兼製作総指揮 青森伸
テイキング・サイド
Taking Sides
スティーヴ・アーノルド (吹き替え版なし)
2002 レッド・ドラゴン
Red Dragon
ジャック・クロフォード 池田勝(ソフト版)
有川博(テレビ東京版)
シグナル・コネクション英語版
Beeper
ゾロ
2004 ナショナル・トレジャー
National Treasure
ピーター・セダスキー 村松康雄
サン・ルイ・レイの橋
The Bridge of San Luis Rey
アンクル・ピオ (吹き替え版なし)
2005 Be Cool/ビー・クール
Be Cool
ニック・カー 水内清光
2006 ボディクライム 誘惑する女
A Crime
ロジャー・カルキン (吹き替え版なし)
アーサーとミニモイの不思議な国
Arthur and the Minimoys
声の出演
9.11 アメリカ同時多発テロ 最後の真実英語版
The Path to 9/11
ジョン・P・オニール
2007 ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記
National Treasure Book of Secrets
ピーター・セダスキー 村松康雄
2009 イングロリアス・バスターズ
Inglourious Basterds
無線の声(司令部) 声の出演 藤本譲
ハーヴェイ・カイテル 銃撃のレクイエム英語版
The Ministers
ジョセフ・ブルーノ
2010 ミート・ザ・ペアレンツ3
Little Fockers
ランディ 高松直輝
ラスト・ゴッドファーザー英語版
The Last Godfather
ドン・カリーニ
2012 ムーンライズ・キングダム
Moonrise Kingdom
ピアース司令官
2014 グランド・ブダペスト・ホテル
The Grand Budapest Hotel
ルドウィグ 竹本和正
2015 グランドフィナーレ
Youth – La giovinezza
ミック・ボイル 野島昭生
2016 アクト・オブ・ウォー英語版
CHOSEN
マックスの祖父
2017 マダムのおかしな晩餐会英語版
MADAME
ボブ
2018 犬ヶ島
Isle of Dogs
ゴンド 声の出演 土師孝也
ラスト・マン 地球最後の男英語版
The Last Man
ノエ
2019 アイリッシュマン
The Irishman
アンジェロ・ブルーノ 内田直哉
異端の鳥
The Painted Bird
2021 ギャング・オブ・アメリカ
Lansky
マイヤー・ランスキー

日本語吹き替え 編集

主に堀勝之祐が多く吹き替えている。

このほかにも、大塚周夫小林勝彦野島昭生なども複数回、声を当てている。

脚注 編集

  1. ^ H.W. Wilson Company (1994). Current Biography. Michigan: University of Michigan. pp. 293 
  2. ^ http://rogerebert.suntimes.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/19930117/PEOPLE/11010311

外部リンク 編集