パルプ・フィクション

パルプ・フィクション』(Pulp Fiction)は、1994年アメリカ合衆国クエンティン・タランティーノ監督による作品。時間的な順序とは異なった流れの当時としては珍しい手法で構成される。

パルプ・フィクション
Pulp Fiction
Pulp Fiction Logo.png
監督 クエンティン・タランティーノ
脚本 クエンティン・タランティーノ
原案 クエンティン・タランティーノ
ロジャー・エイヴァリー
製作 ローレンス・ベンダー
製作総指揮 ダニー・デヴィート
マイケル・シャンバーグ
ステイシー・シェア
出演者 ジョン・トラボルタ
サミュエル・L・ジャクソン
ユマ・サーマン
ハーヴェイ・カイテル
ティム・ロス
アマンダ・プラマー
音楽 カリン・ラクトマン
撮影 アンジェイ・セクラ
編集 サリー・メンケ
配給 アメリカ合衆国の旗 ミラマックス
日本の旗 松竹富士
公開 フランスの旗 1994年5月CIFF
アメリカ合衆国の旗 1994年10月14日
日本の旗 1994年10月8日
上映時間 154分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $8,000,000[1]
興行収入 アメリカ合衆国の旗カナダの旗 $107,928,762[1]
世界の旗 $214,179,088[1]
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1994年のアカデミー賞では7部門にノミネートされ、そのうち脚本賞を受賞した。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞。その他にも多くの賞を獲得した[2]

ストーリー編集

プロローグ
あるレストランにて、不良カップルのパンプキンとハニー・バニーが話をしている。2人はしばらく語った後、レストランでの強盗を企み拳銃を抜き店内に怒声を発する。
ギャングの殺し屋、ヴィンセントとジュールスはくだらない話をしながら、ギャングのボスの顔に泥を塗った裏切った青年グループらの部屋を訪ねる。
VINCENT VEGA & MARSELLUS WALLACE'S WIFE (ヴィンセント・ベガとマーセラス・ウォレスの妻)
ギャングのボスであるマーセラスから彼の愛妻ミアの世話を頼まれたヴィンセントは、彼女の望むまま食事や一緒にダンスをして時を過ごす。ところが、ミアがヘロインを誤ってコカインと間違えて鼻から吸引しオーバードーズを起こしヴィンセントは知り合いの売人を頼る。
THE GOLD WATCH (金時計)
落ち目のボクサーであるブッチは、ギャングのボスのマーセラスから大金と引き換えに八百長試合を持ちかけられて承諾するもののブッチはこれを裏切る。マーセラスからの報復を怖れたブッチは恋人のファビアンと逃走を図るが、ファビアンが形見の金時計を住んでいたアパートに置き忘れてきたことが発覚。ブッチはアパートに戻って金時計を回収に向かう。
THE BONNIE SITUATION (ボニーの一件)
マーセラスの顔に泥を塗った青年グループからアタッシュケースを取り戻したヴィンセントとジュールスは、ヴィンセントが誤射して殺してしまった死体の処理に困り組織の掃除屋のウルフを頼る。
エピローグ
「ボニーの一件」を終えたヴィンセントとジュールスがレストランで朝食を摂っていると、パンプキンとハニーバニーのカップルが店内で強盗を始める。強盗はジュールスに銃を向ける[3]

キャスト編集

ヴィンセント・ベガ ( Vincent Vega )
演 - ジョン・トラボルタ、日本語吹替 - 鈴置洋孝
本作の主人公。ギャングのボスであるマーセルスの部下の殺し屋。3年間いたアムステルダムから戻ってきた。短気で、人に命令される事が嫌い。マーセルスの命令で一晩だけミアの世話役をすることになる。裏設定では、ヴィンセント・ベガは『レザボア・ドッグス』のミスター・ブロンド(ヴィック・ベガ)の弟にあたるとされている。
ジュールス・ウィンフィールド ( Jules Winnfield )
演 - サミュエル・L・ジャクソン、日本語吹替 - 大塚明夫
マーセルスの部下で、人を殺す前に旧約聖書の一節を暗唱する殺し屋。相棒のヴィンセントと共に体験した出来事を奇跡と捉え、神の存在を感じた為、引退を考える。「BAD MOTHER FUCKER」と刺繍が入った財布を使用している。
ミア・ウォレス ( Mia Wallace )
演 - ユマ・サーマン、日本語吹替 - 勝生真沙子
マーセルスの妻。元女優。ヴィンセントと一緒に夜を過ごした時に、コカインと間違えてヘロインを吸いオーバードーズを起こし一時心停止状態になった。
ブッチ・クーリッジ ( Butch Coolidge )
演 - ブルース・ウィリス、日本語吹替 - 山寺宏一
本作のもう一人の主人公。プロボクサー。マーセラスに八百長試合を依頼される。
ファビアン ( Fabianne )
演 - マリア・デ・メディロス、日本語吹替 - 伊藤美紀
ブッチの恋人。
マーセラス・ウォレス ( Marsellus Wallace )
演 - ヴィング・レイムス、日本語吹替 - 玄田哲章
ビンセントらを取り仕切るギャングのボス。愛妻家で、妻のミアにマッサージをしたとされる男を部下を使いマンションから突き落としたという噂がある。大物だが、ファストフード店に1人で出掛けたりもする。
マーヴィン ( Marvin )
演 - フィル・ラマール
ジュールスの知人の情報屋。
ブレット( Brett )
演 - フランク・ホエーリー
マーセルスのギャングの青年メンバー。マーセラスのアタッシュケースを盗み、自宅アパートに篭もる。
ロジャー ( Roger )
演 - バー・スティアーズ
マーセラスのギャングのメンバー。ブレットと共にマーセラスを裏切る。
4番目の男 ( Fourth Man )
演 - アレクシス・アークエット
ブレットの仲間。
パンプキン ( Pumpkin )
演 - ティム・ロス、日本語吹替 - 安原義人
カップル強盗。食事をしているファミレスで強盗をしようと言い出す。イギリス訛りの英語を話す。
ハニー・バニー ( Honey Bunny )
演 - アマンダ・プラマー、日本語吹替 - 安達忍
パンプキンのガール・フレンド。本名はヨランダ。
ランス ( Lance )
演 - エリック・ストルツ、日本語吹替 - 宮本充
麻薬の売人。ビンセントにオーバードースで危篤状態になったミアを家に連れ込まれ救命を強要された。
ジョディ ( Jody )
演 - ロザンナ・アークエット、日本語吹替 - 田中敦子
ランスの妻。体中にピアスを通している。
ジミー ( Jimmie )
演 - クエンティン・タランティーノ、日本語吹替 - 立木文彦
ジュールスの友人。ジュールスにやっかい事を持ち込まれた。黒人の看護師・ボニーを妻に持つ恐妻家。裏設定ではフルネームはジミー・ディミックで、『レザボア・ドッグス』の主人公であるミスター・ホワイト(ラリー・ディミック)と血縁関係。
ザ・ウルフ ( The Wolf )
演 - ハーヴェイ・カイテル、日本語吹替 - 西村知道
冷静沈着で紳士的な掃除屋。仕事においては完璧な指示を行う。本名はウィンストン。
クーンツ大尉 ( Captain Koontz )
演 - クリストファー・ウォーケン、日本語吹替 - 菅生隆之
7年間ハノイに捕虜として抑留されていた軍人。ブッチの幼少時、ブッチの父の形見で先祖代々受け継がれている金時計を手渡した。
バディ・ホリー ( Buddy Holly )
演 - スティーヴ・ブシェミ、日本語吹替 - 梅津秀行
無愛想なウエイター。

音楽編集

作品解説編集

正式なタイトルが決定する前は「デンジャラス・デイズ」、「ゴッサム・シティ」と呼ばれていた。

発生イベントの配列と時系列の違い編集

この作中の主なイベント順序は、時系列上の順序とは下記のように異なる。

映画での構成 実際の時系列 シークエンスの内容
1 8 ハニーバニーとパンプキンの会話。オープニングシーン
2 2 ヴィンセントとジュールスの車中の会話
3 3 ヴィンセントとジュールス、アパート内移動、ミアについての会話
4 4 ヴィンセントとジュールスがアッタシュケースを回収しに向かう
5 9 ブッチとマーセラスがボクシング八百長密談(背景でヴィンセントとジュールスが帰還)
6 10 ヴィンセント、ランス宅にてヘロイン入手
7 11 ヴィンセントとミア、"ジャック ラビット スリムス"にて食事、後にダンス大会へ飛び入り
8 12 ミア、自宅にてヘロインオーバードースによる意識不明
9 13 ヴィンセント、ミアを連れて売人の元へ
10 1 ブッチ、少年時代の回想
11 14 ブッチ、試合会場より逃走
12 15 ブッチ、起床後に金時計が無いことに気づく。自宅へ回収に向かいマーセラスと出会う
13 5 ヴィンセントとジュールス遭難
14 6 ヴィンセントとジュールス、ウルフの助けを得る
15 7 ヴィンセントとジュールス、朝食を摂りにレストランへ、ハニーバニーとパンプキンによる強盗事件発生

受賞編集

[4]

備考編集

  • 吹き替え版には少なくとも2種類存在する。その一つが、ヴィンセントとミアがレストランでメニューを選ぶシーンにて、ヴィンセントが「ステーキ、ステーキ」と言う吹き替え版と、ヴィンセントが上記のように「ステーキ」と言わずに、「牛食いてー」と言うシーンである。
  • 元々ジュールスの髪型はアフロヘアを想定されていたが当時のアシスタントが間違えてカーリーヘアのカツラを購入してしまったことから、そのまま使用された。
  • ブッチのボクシングのビッグマッチが行われる劇場のネオンサインに“クーリッジvsウィルソン”と書かれていたが、これはアメリカ大統領選を戦った“カルビン・クーリッジ”と“ウッドロー・ウィルソン”が由来。また小さな文字で書かれた“フォスラーvsマルティネス”はビデオショップの店員だった時代のタランティーノの同僚ラッセル・フォスラーとジェリー・マルティネスへのオマージュになっている。
  • “ボニーの一件”のあるシーンでタランティーノがジミー役としてカメオ出演していたが、この時カメラの後ろで監督をしていたのは『デスペラード』などで知られるロバート・ロドリゲスだった。
  • 元々、タランティーノは質屋でのマーセラスへのアナルファック拷問シーンでザ・ナックの“マイ・シャローナ”という曲を流す予定だった。しかし、同じ年公開の映画『リアリティ・バイツ』に使用されていたため、曲の変更を余儀なくされた。
  • ブッチが運転していた白いホンダ・シビックは1997年のタランティーノ作品『ジャッキー・ブラウン』でジャッキー・ブラウンが運転していた車と同じ車。この車は『キル・ビル vol. 2』(2004)のストリップクラブの駐車場シーンでもカメオ出演している。
  • ヴィンセントとミアがレストランから家に帰ってきた時、手にトロフィーを持っているが、これは盗んだトロフィーである、ブッチが歩いて家へと向かう途中、ラジオで優勝トロフィーが盗まれたというニュースが流れていた。
  •  本作でブッチを乗せたタクシードライバーの“エスメルダ”を演じたアンジェラ・ジョーンズはタランティーノの短編『Curdled』にも同じ役名で出演している。なお、その短編ではアンジェラの職業は犯罪現場の清掃員である。
  • クリストファ・ウォーケンは、長ゼリフで口腔内が乾いてしまうのを防ぐため、彼は長ゼリフの前にタバスコソースを唾を出すために飲んだという。
  • ジュールスが劇中で唱える聖書の一節はエゼキエル書25:17とされているが、セリフの後半部分しか合っていない。これは、タランティーノが独学で映画を学んだときに見た千葉真一の映画『ボディガード牙』に、アメリカの供給会社が勝手に付けた文を引用したものである。
  • 劇中での「fuck」の使用回数は250回を超える。
  • ヴィンセントがトイレで読んでいる本はパルプ・マガジンである。なお、ヴィンセントがトイレにいる間必ず悪いことが起こる。
  • クエンティン・タランティーノは仁侠映画、主に深作欣二の作品の大ファンであり、その事は劇中ではブッチが日本刀を武器として使用する点に見て取れる。
  • ジュールスが劇中で「BAD MOTHER FUCKER」という文字の刺繍が入っている財布を使用しているが、この財布は当時タランティーノが普段実際に使用していた財布である。
  • ヴィンセントの車に傷をつけた犯人はブッチである。劇中でヴィンセントとブッチが言い争い嫌悪な空気が流れるシーンがあるが、その腹いせにブッチがヴィンセントの車を傷つけたのである。
  • オープニングのパンプキンとハニー・バニーの会話シーンによく耳を澄ますとジュールスとヴィンセントの会話が入っているのが聞こえる。この手法は吹き替え版でも使用されている。
  • ビンセントとミアが訪れたレストランのメニューは、スターの名にちなんだ料理がある。
  • トラボルタが死体を処理し終わった後に着たTシャツは『カリフォルニア大学サンタクルーズ校』のもの。マスコットの『バナナスラッグ』(世界で2番目に大きいといわれるナメクジの種)と大学のロゴが入っている。監督のタランティーノは撮影当時、この大学の現役大学生と交際していた(サンタクルーズの名は同監督の映画『レザボア・ドッグス』にも登場する)。
  • ブッチがバーで注文したタバコ、レッドアップルは、タランティーノの創作した架空の銘柄で、『キル・ビル』の劇中で看板として登場するほか、以降の『ジャンゴ 繋がれざる者』や『ヘイトフル・エイト』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』などにも登場する[5]
  • ミアが口笛で口ずさんでいた曲がキル・ビルでコットンマウスの登場シーンの曲になる。
  • ジュールスが食べたハンバーガー、ビッグカフナバーガーが『デス・プルーフ』の会話の中で登場する。なお、このビッグカフナバーガーというハンバーガーショップは映画オリジナルの架空のショップである。
  • ミアが出演したTVシリーズのパイロット版「フォックス・フォース・ファイブ」の美女五人組は、キル・ビルでユマ・サーマンが演じたザ・ブライドが所属していた五人組「THE DiVAS」の元となっている。「フォックス・フォース・ファイブ」は正義のシークレット・エージェントだが,「THE DiVAS」は悪の殺し屋部隊であるため名前は変更されている[6]
  • パルム・ドール授賞式にて、タランティーノ監督は「(この作品がパルム・ドールとは)納得できない!」と叫んだ観客に向かって笑みを浮かべながら中指を立てた。
  • ストリートアーティストのバンクシーが当該作品をもとに同名のタイトルの絵をオールド・ストリート駅近くにある建築物の壁に描き残している。Pulp Fiction (Banksy)を参照。

脚注編集

  1. ^ a b c Pulp Fiction” (英語). Box Office Mojo. 2020年5月11日閲覧。
  2. ^ キネマ旬報増刊5月10日号フィルムメーカーズ[3]クエンティン・タランティーノ、1998年5月10日号、p.206
  3. ^ キネマ旬報増刊5月10日号フィルムメーカーズ[3]クエンティン・タランティーノ、1998年5月10日号、p.209
  4. ^ キネマ旬報増刊5月10日号フィルムメーカーズ[3]クエンティン・タランティーノ、1998年5月10日号、p.206
  5. ^ The Quentin Tarantino Archives[1]
  6. ^ 『「キル・ビル」&タランティーノ・ムービーインサイダー 『キル・ビル』とタランティーノに世界一詳しくなるガイドブック』

外部リンク編集